【デイリー・コリア・フォーカス】26年7月1日号

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徐台教 2026.07.01
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

今日は7月1日、水曜日です。昨日、最南端の済州島と南部で梅雨入りしました。ようやくです。首都圏も早晩続くでしょう。天気予報では今晩おそくから降り始める雨が、一週間以上つづくとしています。

さて、さっそく今日のトピックです。

(1)高校野球で「光州」を侮辱する野次…韓国メディアは「嫌悪(ヘイト)が教室を覆っている」と表現

6月29日に行われた韓国高校野球の青龍旗大会一回戦で、ソウルの私立高校・培材(ペジェ)高校と、韓国南西部・光州(クァンジュ)の公立校・光州第一高校が対戦しました。

青龍旗大会というのは、1946年から続く大会で、日本でいう甲子園大会に相当するものです。

この試合途中、培材高校の選手たちが「行け、行け、スターバックスに行かなきゃ。タンクデイ」という野次を飛ばしたのです。8回表の出来事でした。

ニュースレターの読者の方々はこのひどい野次にピンと来たはずです。

そうです。今年5月18日に韓国スターバックスが始めた販促イベントにおいて、民主化運動と光州市民を侮辱する文言が使われた事件です。

韓国スターバックスが引き起こした事件を整理したニュースレター。クリックで該当ページに飛びます。

韓国スターバックスが引き起こした事件を整理したニュースレター。クリックで該当ページに飛びます。

1980年の5月18日といえば、民主化を求める光州の大学生たちを当時の最高権力者・全斗煥(チョン・ドゥファン)麾下の戒厳軍が激しく弾圧し、光州市民の決起を呼ぶことになった日です。

この日から10日間、光州では市民軍が組織されるなど熾烈な民主化運動が行われ、ついには戒厳軍の武力により鎮圧されました。この時の不屈の精神が7年後の韓国民主化の原動力となったことは、これまで何度も強調してきました。これが、「光州民主化運動」です。

培材高校の野次は、今年5月のスターバックスを持ち出すことで、光州の高校である光州第一高の生徒はもちろん、光州市民、そして民主化運動を馬鹿にするものでした。

すぐに光州第一高のコーチが抗議しましたが、この様子は29日晩のニュースで全国に伝わり、市民に衝撃を与えました。

批判が集まるや、培材高校側もすぐに謝罪文を出しました。

「今回の事態を単純な逸脱や失敗ではない、倫理意識と歴史認識に対する総体的な崩壊に由来するものと見て、深刻に事案を受け止めている」とし、これについて「惨憺たる思いで恥を感じている」としました。

実際の試合では、培材高の選手を同高校側のコーチ・監督陣が制止する様子はなく、光州第一高側の抗議を受け、ようやく止みました。

8回表が終了した後、培材高の監督は選手を強く注意したとしています。自チームの選手達を退場させるよう審判に求めもしました。

なお、地上波MBCによると、ソウル市教育庁による調査に対し、野次を飛ばした培材高の選手達は「正確な意味を知らない状態で、元々あった別の応援歌の歌詞を変えて歌ったもの」と陳述したそうです。

そして1日、大韓野球ソフトボール協会は培材高に対し、6か月の全国大会出場停止の処分を下しました。これにより、2回戦は没収試合となり培材高は大会を去りました。

***

ここで「本当に知らなかったのか?」という疑問が生まれます。

韓国社会の反応は、生徒に責任を求めるよりも、「普段、周囲の大人がやっていることを見聞きし、インターネットにはびこる光州を卑下する書き込みを見て、影響されたのだろう」と社会の問題であると見ています。

日本ではなかなか想像がつきませんが、全羅南北道、光州を含む湖南(ホナム)地方への卑下・差別感情は驚くほど根深いものがあります。

例えば先週の金曜日、こんな出来事がありました。私がソウルでタクシーに乗った際に、運転手とたまたま、湖南に政府が大規模投資を行うという話になりました。この時すでに投資計画の輪郭は出ていたので不思議な展開ではありませんでした。

するとそれまで紳士然としていた運転手が突如、「あなたは湖南の人ではなさそうだから言うけど」と前置きし、あの地域は何をやってもダメだという内容で話し始めたのでした。その口調には明らかに差別感情が混ざっていました。

培材高に掲載された謝罪文。同校のHPをキャプチャ。

培材高に掲載された謝罪文。同校のHPをキャプチャ。

***

湖南地方は、韓国の高度経済成長から恣意的に除外されてきました。

その契機は1971年の大統領選にありました。全羅南道の木浦(モクポ)を基盤とする金大中(キム・デジュン)は当時、現職大統領の朴正煕(パク・チョンヒ)を選挙で追いつめます。

この時の腹いせとして、朴正煕は自身の故郷がある南東部の嶺南(ヨンナム、慶尚道、大邱、釜山)に経済開発を集中させたことから、湖南と嶺南の対立が生まれ、ひいては湖南を見下す風潮が生まれたとされます。

さらに1987年の民主化まで、「反共」は韓国にとって国是と言えるものでした。1980年の光州民主化運動を、当時の全斗煥ら指導部は「アカ(共産主義者)による暴動」とレッテルを貼り矮小化し、全国にこれを広めました。

こうした事情が、直近のニュースレターで取り上げた「3大メガプロジェクト」において、湖南が重要視される背景の一つにもなっています。

李在明大統領は30日、光州を訪れプロジェクトの説明を行う際に「若無湖南 是無国家(湖南がなければ国家がない)」という李舜臣(イ・スンシン)将軍の言葉を引用しています。

同地域は、日本との戦争(文禄・慶長の役)の際、李舜臣率いる朝鮮海軍の根拠地であると共に、物資の集積地として戦線を支えています。

李大統領は「さらに、「疎外と排除、悲しみと悔しさを少しでも挽回し、東西または首都圏と地方が均衡に成長する第一歩となるだろう」、「差別の苦痛と悲しさに耐え、大韓民国の民主主義を作り、守ってきた湖南に対する歴史的な国民的な補償」とも述べ、光州への配慮を見せました。

多少弱まったとはいえ、今なお湖南への歴史的な差別は根強いものがあり、インターネットのミーム(定番ネタ)として消費され続けています。培材高の生徒達は、こうした風潮に影響されたのではないかということです。

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今日付けの進歩紙「京郷新聞」の一面に、「遊びになった嫌悪(ヘイト)、教室を覆った」という記事がありました。

この記事では、先の光州や湖南を卑下するようなヘイト文化が、日本の「2ちゃんねる」と同様のサイトである「日刊ベスト貯蔵所(イルベ)」を通じ、若者たちに広まっているという事例が示されていました。

同サイト発のスラングを生徒が口にすることが増え、これを注意する先生に対し「左翼か」、「全教祖(日本の日教組)か」、「フェミか」などと反発するといった内容です。

テストや課題にもミームを持ち出し、注意すると「知らなかった」と開き直るという様子からは、先の培材高の姿が思い浮かびました。

一方で、スターバックスといった大企業みずからが「タンクデイ」のイベントを行うことなどが、若者に影響を与えているとし、「既成世代として、より成熟した社会を作れなかった責任を痛感し、学生が受け止めなくともよい傷と負担を与えてしまったことが申し訳ない」という全教祖・光州支部のコメントを伝えています。

1980年5月の光州を振り替えるパン・スウォン氏。後に光州を根拠地とするプロ野球チームで活躍し、韓国プロ野球初のノーヒットノーランを成し遂げました。MBCよりキャプチャ。

1980年5月の光州を振り替えるパン・スウォン氏。後に光州を根拠地とするプロ野球チームで活躍し、韓国プロ野球初のノーヒットノーランを成し遂げました。MBCよりキャプチャ。

また、1日晩のMBCニュースでは、1980年5月当時、戒厳軍に殺されそうになった光州第一高出身のパン・スウォンさんの証言を伝えています。

光州生まれで他地域の大学に進学していた同氏はこの時、たまたま光州市内に戻ってきており、90年代末に中日ドラゴンズで活躍した宣銅烈(ソン・ドンヨル)氏の家で過ごしていました。

戒厳軍は光州一高の選手に狙いを定め、パン氏の胸に銃剣を突きつけました。既に銃剣で市民が殺される様子を目撃していた同氏はすぐに気絶。この時に宣銅烈選手の父が膝をついて戒厳軍に哀願したおかげで一命を取り留めたそうです。

恐ろしい内容であると同時に、今回の培材高の野次が重大な意味を持つことが改めて分かるというものです。

***

一連のニュースを見ながら、日本における在日コリアン差別について考えざるを得ませんでした。日本が一定の経済的発展を遂げる中で多少弱まったものの、インターネットの発達と日本の停滞の中で、今なお一定の力を保持しています。

いみじくも数日前から、作家の柳美里(ゆう みり)さんに対し、X(旧Twitter)上で差別発言が集中しています。これに対し多くのXユーザーが連帯の声を上げていますが、差別発言の中身はひどいものです。まともな人ならば精神をやられてしまう可能性もあるでしょう。

さらにそれを、朝鮮半島や外国にルーツを持つ若者たちが見たらどう思うでしょうか。一生こころに残る傷を負う可能性もあります。私も柳美里さんに連帯する投稿を行いましたが、これにも100以上の差別的コメントがついています。

人間社会はそういうもんだ、と言えばそうなのでしょうが、だからといって「これでよい」とはなりません。韓国と日本で同時に、差別について考える日となりました。

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(2)今日の時事韓国語「파묘」

「パミョ」と読みます。漢字では「破墓」です。

少し前ですが、韓国に同名のヒット映画がありました。やや荒唐無稽ですが面白いので、未見の方はどうぞ。

KADOKAWAより引用。

KADOKAWAより引用。

この言葉は、何らかの理由によりお墓をいったん開き、別の場所に移すことを指します。もしくは、墓を掘り起こす行為自体を指します。

以前お伝えしたように、与党・共に民主党では8月17日の党大会を控え、現代表の鄭清来(チョン・チョンレ)氏と、現国務総理の金民錫 (キム・ミンソク)氏、さらに元代表の宋永吉(ソン・ヨンギル)氏の三人が次期代表の座をめぐり激しい争いを繰り広げています。

この過程で、誰が共に民主党、つまり韓国の民主勢力の正統な跡継ぎであるのか競いあっているのですが、過去を暴くやり方で相手候補を批判する形が目立ちます。

ひと言でひどいやり取りでして、これを見かねた同党のベテラン議員・朴智元(パク・チウォン、84歳)が「(党が)まとまってこそ生き残れる。破墓する場合、皆が死ぬ」と諌めたのでした。

誠に時宜にかなった指摘でした。

***

今日はここまでです。

昼間に、文在寅元大統領と李在明大統領が会合を持ちました。なかなか興味深い内容でしたので、明日取り上げてみます。「文在寅はなぜ不人気なのか」という、よく聞かれる質問にも答えてみます。

明日、クラウドファンディングの内容も更新されます。引き続きよろしくお願いいたします。

それではアンニョンヒケセヨ。ありがとうございます。(徐台教)

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