【デイリー・コリア・フォーカス】26年6月24日号
皆さま、アンニョンハセヨ。
今日は6月24日、水曜日です。今日のソウルは日中は28度と、そこそこ過ごしやすい一日でした。
今日も一日、ソウルで取材と勉強をしていたため、ニュースレターが遅くなってしまいました。最近はずっとこの時間ですよね。
現在は特別な有料コンテンツが無いにもかかわらず、サポートメンバーとしてニュースレターを応援してくれている方が少なからずいらっしゃいます。
文字通り、日々の取材を支えていただいている形です。申し訳ない気持ちと、ありがたい気持ちを噛みしめながら日々を過ごしております。
7月末までのクラウドファンディングをうまく着地させ、リニューアル後は有料会員(サポートメンバー)向けのコンテンツを追加していきます。もう少しだけお待ちいただけますと幸いです。
今日の午前は、ソウル市内でアジアプレス大阪事務所の石丸次郎さんによる、公開セミナーがありました。
『金正恩政権が企図した新たな経済秩序を暴く』というタイトルの下、アジアプレスがその間、朝鮮内部で行った大規模な価格・流通構造の現地調査の内容を報告するものでした。
東北部の咸鏡北道(ハムギョンプクト)、北部の両江道(リャンガンド)で、今年5月から6月にかけて6人の取材協力者が50回以上行った調査の結果と、中国の取材協力者の取材結果をまとめたものです。
内容はパワーポイントのスライドで80枚を超える膨大なもので、ここで全てを紹介することはできません(著作権的にも)。

セミナーの様子。盛況でした。筆者撮影。
結論から言うと、2023年10月以降、金正恩政権が労働者の月給を10倍に引き上げ、「国家唯一(統一)価格制」を導入すると共に、同年1月から市場での糧穀の販売を禁止するなど、国家に富が集中する体制を作ったものの、これは上手くいっていないという分析でした。
2026年6月の今、価格制は崩壊し激しいインフレが起きているといいます。
物を売り買いしていた市場が統制されたことで、多くの都市住民の現金収入が減少し、これにインフレが加わることで没落したとのこと。また、首都・平壌と地方は完全に別の社会になるなど、格差が拡大しているという結論でした。
他方、今年2月からは、ロシアへの戦争協力の代価であろう、ロシア産の小麦が国家が運営する糧穀販売所で多く売られていることが確認できたとしています。
解説・討論を行った朝鮮経済の専門家であるソウル大経済学部の金炳椽(キム・ビョンヨン)教授は、金正恩氏がこのような経済政策を行う背景には、社会構造を変える目的があると見立てました。
核開発に伴う国際社会からの経済制裁が続く中、外部の衝撃に強い体制を作ることで、核を保有し高度化するための「体力」を育てているというものです。
しかし、国家が市場や物流を統制し、貿易を独占しようとするこのような政策は、既にその兆しが見えているように、いずれ行き詰まるだろうと見通しています。
私も普段、韓国に住んでいますが、朝鮮内部の物価や流通、経済政策を細かく追った記事やセミナーというのはまず存在しません。
この日のアジアプレスの報告には、食糧をはじめ公共料金、工業品などの詳細な物価が含まれており、会場に詰めかけた人々はスライドを必死に撮影していました。いかにそうした情報を求めているのかが分かる光景です。
韓国のマスメディアには、このような報道を行う力はもはやありません。
以前ならば「やればできる」と言えたはずですが、もう10年以上、どのメディアもそうした取材をしていないため、もはや「やろうとしてもできない」と結論付ける他にありません。人材も、取材網も、お金も、やる気もない状況です。とても情けないことです。
ちなみに拙著『分断八〇年』をお読みの方はご存知のように、私は今から10数年前に、アジアプレスで仕事をしていました。今は関わりはありませんが、地道な調査報道の意味を感じる時間でした。
昼食後に次のセミナーの会場へと歩いて移動しました。途中、光化門の大韓民国歴史博物館を通り過ぎたのですが、ふと見ると『風の通り道、DMZ』という企画写真展をやっているではありませんか。
DMZというのは非武装地帯のことです。南北関係の展示に目がない私は、ふらふらと吸い込まれていきました。
展示はDMZの軍事、自然、歴史、人といった様々な側面を写した数十点の写真により構成されていました。
そんなに大きな展示ではなく、私にとってはいずれもどこかで見たことあるものでしたが、それでも朝鮮戦争勃発日である6月25日を明日に控え、色々な考えが浮かぶ時間でした。9月までやっていて無料なので、ソウルに来られる方はぜひ訪問してみてください。

길목(キルモッ)という言葉は翻訳が難しいです。通路、要所、隘路、街角、通り道など、様々な意味があるからです。なんとなく通り道としましたが、しっくりきません。何がよいでしょうか。

展示の入り口。path for peaceというサブタイトルからも「キルモッ」には道のニュアンスがありそうです。

これも展示の一つ。休戦交渉が行われていた当時の板門店です。

お決まりの地図。釜山からユーラシアへと続く鉄道の予想図です。いつになれば実現するのでしょうか。
なお、大韓民国歴史博物館の企画写真展特別ページはこちらです。写真がたくさんあります。
午後には別のセミナーに出席しました。こちらは「民青学連同志会」が主催したもので、『南北2国家2国号 現実と相生平和』というタイトルでした。
「民青学連事件」というのは1974年に当時の朴正煕(パク・チョンヒ)政権がでっち上げた時局事件です。北朝鮮から指令を受けたスパイ団がいるとし、大学生を中心に200人以上が身柄を拘束され拷問を受け自白を強要されました。
6人に死刑判決が下りましたが、市民や国際社会の尽力により、後に釈放されています。当時有罪とされた人々は、2000年代以降、無罪判決・嫌疑なしの決定を受け、名誉が回復されました。

セミナーの様子。24日、筆者撮影。
二国家というのは、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国ということで、二国号というのは、互いに韓国、朝鮮と呼び合うことです。この是非を議論する会で、これは昨日のニュースレターに書いた内容とも通じるものです。
この日は、「二国家体制は、統一への意志を弱くさせる」という観点からの問題提起が行われる一方、「二国家は『民族共同体統一方案』における南北連合に向かう道筋として位置づけられる」という解釈もありました。
一連のセミナーで議論された南北関係についての話は、近々Youtubeなどでゆっくりやります。とにかく、今週をなんとか乗り切ってから、すぐにやるのでお待ちください。
今日はここまでです。明日は6月25日。朝鮮戦争はいったいいつ終わるのでしょうか。
それではアンニョンヒケセヨ。明日はコラムをお送りします。(徐台教)
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