[63号] 韓流は北朝鮮住民をどう変えたか?、ドキュメンタリー「沖縄アリラン」、尹政権は夫人スキャンダルで‘四面楚歌’など

ジャーナル形式の63号をお送りします。
徐台教(ソ・テギョ) 2024.10.18
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 サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。韓国の徐台教です。韓国は秋雨で肌寒いすが、日本はいかがでしょうか。前回のお知らせで記事は火曜日に、ジャーナル形式のニュースレターは木曜日とお伝えしたのですが、やってみたところ木曜日は無理でした。後述するように水曜日を終日取材に当てたのですが、そうなると木曜日は難しいという結論になりました。

 火曜日(15日)にお送りした記事はお読みいただけましたでしょうか。

 この日、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)が南北を結ぶ道路2本を爆破したことで南北関係に緊張が集まりましたが、その背景に尹政権が出し続けている「ちょっかい」の存在があることを指摘した記事です。まだ未読の方はリンクを貼っておきますのでごゆっくりお読みください。

 さらに翌16日、ポリタスTV(津田大介さんを中心にたくさんのMCが活躍するYouTube番組)に出演し、この問題について説明しました。後半部で今月10日にノーベル文学賞を受賞した韓江(ハン・ガン、)さんのノーベル賞受賞が「進歩派が進歩するきっかけになれば」という問題意識を明かしました。

 これは今、私が持っている一番最先端の問題意識です。こんな部分を整理しながら韓国言論界に飛び込んでいこうと考えています。

***

 それでは今号の内容です。プチリニューアルという形になります。今後は基本的に、▲一週間の朝鮮半島情勢整理、▲韓国政治・社会、▲ドキュメンタリー・映画、▲その他、という形で進めていきます。

 ●63号目次
 (1)一週間の朝鮮半島情勢の整理
 (2)韓国政治:尹政権は夫人のスキャンダルで崖っぷち
 (3)ドキュメンタリー紹介:沖縄アリラン(24年8月、KBS)
 (4)韓流は北朝鮮住民をどう変えたか?最新論文から読む
 (5)あとがきに代えて

***

(1)南北関係と朝鮮半島情勢(10月10日〜18日)

◎10月10日

・トランプ前大統領が9日(現地時間)、遊説中に過去、金正恩委員長と通話したと明かしました。「どちらの核ボタンが大きくて強いか」とやりあっていた18年1月に、金正恩から電話が来てそれが同年6月の首脳会談につながったといいます。こんな話は初めて聞くもので信憑性は低いです。

・9日午前、北朝鮮が国連軍司令部に電話通知文を送り、南北の陸路の完全な断絶のための工事を行うと通報しました。その内容は韓国軍によると「9日から南側の国境線一帯で、わが方の地域で大韓民国と連結されていた東部・西部の道路を鉄路を完全に絶つための工事を進める」というものです。「工事には多数のわが方の人員と重装備が投入され、爆破作業も予定されている」、「貴方は必要な対策を責任を持って準備すべき」としました。15日、これが実行されました。

・9日、韓国のNGO『北韓人権情報センター(NKDB)』は『2024北韓人権白書』を発表しました。これについては次号以降でまたお伝えします。NKDBでは「信念および表現の権利」の侵害例が2020年代には10年代よりも10倍に増えたと強調しています。

首脳会談を行う日韓首脳。大統領室提供。

首脳会談を行う日韓首脳。大統領室提供。

・尹錫悦大統領と石破新首相がラオス、ビエンチャンで首脳会談を行いました。この二人の会談は初めてです。この場ではミサイルに対する「警報情報」をリアルタイムで共有することを続ける点が強調されるなど、北朝鮮の脅威(ロシアとの協力含む)に対抗することが主に語られました。

・北朝鮮で朝鮮労働党創建79周年記念公演と宴会が行われ、金正恩氏や娘・ジュエ氏が出席しました。また、これに伴い金正恩氏が談話を発表しました。

***

◎10月11日

・北朝鮮の外務省が重大声明を出し、10月に入り3度にわたって平壌の中区域(まさにド真ん中です。朝鮮労働党本部庁舎があります)に韓国からの無人機が飛来しビラを撒いたとしました。「すべての攻撃力の使用を準備する」とし「韓国に対する最後通牒」としました。

・韓国軍はこれに対し「そんな事実はない」(国防部長官)としましたが、後に「確認しない(NCND:neither confirm nor deny、確認も否定もしない)」に変わりました。また、北朝鮮に対し「もし北韓がわが国民の安全に危害を加えるならば、その日がまさに北韓政権の終末になると明確に警告する」としました。

・韓国内の学者から「戦術核の(韓国への)再配置は北朝鮮の判断ミスを招く」という指摘が出ました。これは「北朝鮮の核兵器攻撃に対応し、米国はそれに見合った制限的または比例的な対応にとどまるという意味に誤解されるおそれがある」というものです。それよりも今のように「『北韓が核を使ったら政権が終わる』と言ったほうがよい」とのことでした。難しい、というか恐ろしい話をしているものです。

・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表が、北朝鮮が南北軍事境界線付近を要塞化するとしたことを受け、これを即時撤回するよう北側に要求しました。さらに「ゴミ風船」撒布も止めるように言いながら「(北朝鮮が)いくら宣言しても南北は決して別の二つの国になれない」、「血を分けた兄弟が外国人にはなれない」としました。また、尹政権い対してはチキンゲームを止めて対話を模索するよう求めました。

***

◎10月12日

・北朝鮮で前日の外務省重大声明が労働新聞の一面に掲載されました。朝鮮中央通信は主に対外向けですが、今回の一件は労働新聞、朝鮮中央テレビ、ラジオ(中央放送)でも伝えており、これにより平壌に韓国の無人機が来たというのは周知の事実になりました。ある韓国の専門家は「もはや隠せないのだろう」と指摘しました。そういう側面もありそうです。

北朝鮮メディアが公開した「ビラ」の写真。朝鮮中央通信より。

北朝鮮メディアが公開した「ビラ」の写真。朝鮮中央通信より。

・金正恩氏の妹、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党副部長は「韓国の仕業」であり、次に同じ事が繰り返される場合には「おそろしい惨事が必ず起こる」としました。

・韓国の申源湜(シン・ウォンシク)国家安保室長が『TV朝鮮』に出演し、南北関係について語りました。「平壌の防空網が破られたことの損よりも、体制への脅威をチャンスとして利用する利益の方が大きいと戦略的に判断したのでは」と、金正恩氏が無人機の一件を明かした背景を分析しました。結論は「すべての責任は北朝鮮側にある」というものです。

***

◎10月13日

・韓国の与党「国民の力」のスポークスマンは「わが国民の安全を脅かす場合には『政権の終末』を覚悟すべき」と明かしました。

・12日、朝鮮人民軍の総参謀部の指示により国境線付近の砲兵連合部隊と重要火力任務が賦課された部隊たちに完全射撃準備態勢をとるよう作戦予備指示を下達した。「戦時定員編成に従い完全武装した8つの砲兵旅団を13日20時まで射撃待機態勢に転換し、各種作戦保障事業を完了」すべきとの内容でした。

***

◎10月14日

・13日(現地時間)、ウクライナのゼレンスキー大統領が演説の中で、北朝鮮が占領軍(ロシア軍)に人を送っていると明かしました。これに先立ち、いくつかのメディアが北朝鮮軍の人員がロシアに派遣されウクライナ戦線に投入されていると伝えていました。ロシア当局は否定しています。

・韓国の統一部は一連の北朝鮮の無人機をめぐる動きに「住民の統制が目的、内部の需要によるもの」という見方をしました。追い詰められているという判断です。こうした見方は尹政権に一貫しています。

・北朝鮮の金与正氏が再び談話を出し「無人機は韓国軍の仕業」としました。しかし証拠は示さず。この辺の部分は前掲の記事に書いてありますが、形式的にまとめています。

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