【デイリー・コリア・フォーカス】26年3月11日号

皆さま、アンニョンハセヨ。
今日も韓国から徐台教が、「デイリー・コリア・フォーカス」3月11日号をお送りいたします。
東日本大震災から15年になる節目の日ということもあり、韓国メディアにも関連記事がいくつか出ています。スペースの関係上、これは明日、取り上げてみようと思います。
読者の皆さんの中には、震災で被害に遭われた方がいらっしゃるかもしれません。あたたかい一日になることを願ってやみません。
今日の目次は以下の通りです。
実は昨晩から今朝にかけてニュースをチェックしながら、「ニュースレターに書くべき」と考えた記事が8つくらいありました。
しかし時間的にも、文字数的にも全て取り扱うべきにはいかず、もどかしいところです。ストックしてあるので、ゆっくりとお伝えしていきます。ストックした話題が既に40個くらいある点だけが問題です。
1. 北朝鮮報道についての断想
2. 韓国政府が生理用品の無料配布を決定、試験運用予算は約3億円
3. 今日の時事韓国語「이란」
1. 北朝鮮報道についての断想
これはちょっとまとまらない考えなのですが、整理がてら書いてみます。
9日、保守紙『東亜日報』に「平安北道の道党庁舎放火事件の意味」というオピニオン記事が載りました。書いたのはチュ・ソンハ記者。
北朝鮮出身のいわゆる脱北民であり、金日成総合大学を出ていることや、その筆の冴え、さらに豊富な著書などから、韓国でかなり著名な人物です。
記事の概要は、昨年12月、中国遼寧省の丹東市と鴨緑江を挟んで向かい合う、北朝鮮の新義州(シニジュ)市にある朝鮮労働党党舎が燃えたというものです。
チュ記者は「党舎の中心部が燃え5人が死亡し、大型の肖像画と彫刻なども焼け落ちた」としながら、「当局は火災を電気のショートに見せかけた放火と結論を下し、隠密に捜査を行っている。まだ犯人を捕まえてはいない」と続けます。
この党舎はいわば、平安北道(県にあたる)の本部であるため、重要かつ象徴的な建物ですが、それがなぜ燃えたのか。チュ記者はその根底にある北朝鮮社会の問題に迫っていきます。核心は経済難、生活難です。
背景としてはまず、金正恩氏が、「北朝鮮住民の生活を数十年にわたり支えてきた、チャンマダン(市場)経済の核心部分をわずか2年で崩した」点を挙げました。
具体的には、その間、地方に40個の工場を建てる一方、中国から輸入していた主に生活必需品からなる180種の製品の輸入を禁止。電気も原料もない工場はろくに稼働せず、市場で輸入品を売っていた人の収入は絶たれたというのです。
さらにウォン安と共に物価は上昇し、食糧生産も減少しました。
チュ記者は後者について、国の肥料を後払いで使うことを義務化した金正恩の施策により、収穫量が分からないまま農業を続けられないと、結果として肥料を買わなくなったことによるものと診断しました。
その上、金正恩が要求する建設ノルマを満たすため、住民は供出を強いられ、病院も高い金を払わなければ治療が受けられない形に変わったというのです。
そしてこうした苦しみが積み重なった上に、冒頭の新義州での朝鮮労働党舎の火事を読み解きます。前述したように、あれは放火だったというものです。「どうせ死ぬなら、火でも付けてやろう」という人の仕業だとしました。
記事の最後の段落にはこうあります。
だからこそ、どうせ死ぬなら火でもパッとつけてやるという人が出てくるのだ。
イランのように、大規模な民衆蜂起が起きた後、米国が金正恩を取り除いてくれるという信頼さえあるのならば、北朝鮮の住民たちはみな街に繰り出すかも(デモを起こすかも)しれない。
肝心の金正恩はこんな民心を知ってはいるのか。幼い娘を連れて銃を撃って回る姿をみるに、全く知らないようだ

2月27日、主要幹部に銃を下賜した金正恩氏。その過程で娘「ジュエ」が射撃に興じている。朝鮮中央通信より。
私はこの記事を批判しようというのではありません。
実際に、この火事の記事を北朝鮮に詳しい知人の記者や学者に見てもらったところ、「経済難の背景の部分はその通りだ」というお墨付きが得られました。
一方で、「実際に放火かどうかは分からない」と慎重な態度を見せました。
この反応は予想できたものでした。
言うまでもないことですが、引用記事の核心部分は、昨年12月の各紙の報道により広く知られたこの事件の真相が「放火」であるという点です。
そんな独自情報を手に入れたからこそ、チュ記者はこの記事を書いたのでしょう。
ですがここで行き詰まってしまうのです。
現場が北朝鮮でなければ、後追い報道という形で、朝鮮労働党や現地警察(人民保安省)に確認を取れば事足ります。それができないため、この話はいったんここで止まることとなります。
YouTubeではこの記事を引用し「北朝鮮で住民反乱が始まった」と煽る人が出てくるでしょう。そうなるとまた別の方向に話は進んでしまいます。
このように、北朝鮮報道というのは「確認ができない」という問題を常に抱えています。
このため、北朝鮮内部を取材するメディア同士で、または北朝鮮国内の人権問題を扱うNGO(非政府組織)同士で互いの情報をチェックする「クロスチェック」制度を作ろうという話が2000年代からありました。今はどうなっているかは分かりません。
一方で、日本のアジアプレスのように、映像や写真付きで北朝鮮内部の消息を伝える場合、その解像度はグッと上がります。
例えば、3月10日に公開された映像ニュース「<北朝鮮映像>住民の服装が小ぎれいになった秘密とは?『みすぼらしい姿を中国側に見せるな』当局が裏で指示」では北朝鮮の人々の表情までもが確認できます。
また、昨年12月23日の記事「<北朝鮮動画>これが朝中の車両密輸の証拠映像だ BYD、トヨタからダンプまで…鴨緑江に重機で『通路』」も、まさに一目瞭然という記事でした。
いずれも北朝鮮と中国の国境まで足を運び、撮影された映像を元に取材を追加して行われたすぐれた報道です。北朝鮮報道の最前線と言ってよいでしょう。
チュ・ソンハ記者は前出の記事の中で、「北朝鮮住民の民心は、金正恩が権力の座について行こう、最悪となっている」とし、「今冬に1990年代中盤の『苦難の行軍』以降、30年ぶりに多くの餓死者と凍死者が発生した」としています。
そして、「北朝鮮は今、完全に封鎖されており、様々な地域で餓死者が多く出ても、外部に知らせが伝わらない」と書いています。
後者は事実ですが、前者は現段階で事実かどうか分かりません。このように、北朝鮮報道は中国との国境地域から内部にはなかなか入れない状況が続いています。
日本と韓国のすぐ隣にこのような状態に置かれた国があるとは、にわかに信じられません。
韓国の人気作家、張康明(チャン・ガンミョン)は2016年に発表した小説『我らが願いは戦争(原題우리의 소원은 전쟁)』の中でこう書いています。
「同じ言語を使い、同じ歴史を共有しながら、はるかに裕福に暮らす人たちがすぐ自分の隣にいる、貧しい人々を無視するのは恥ずかしいことではないか」
これは韓国に当てた言葉ですが、一連の記事を読む中で思い出しました。
何が言いたいのか。私もうまく言葉にできないのですが、もう少し私も世界のメディア(特に韓国)も、やれることが、いや、やらなければいけない事があるのではということです。

なかなか読ませる小説です。未読の方はぜひ。amazonより引用。
2. 韓国政府が生理用品の無料配布を決定、試験運用予算は約3億円
1月28日の「デイリー・コリア・フォーカス」で、女性の生理用品が他国に比べて高いという李在明大統領の「鶴の一声」により、その構造が変わるかもしれないというトピックを紹介しました。
それから約40日経った、3月10日、性平等家族部(前女性家族部)は国務会議(閣議)で、生理用品の無料配布を進めることを報告しました。
『聯合ニュース』などによると、今年7月から12月までテスト事業として行われ、「公共施設に無料自動販売機を設置する形」で配布されるそうです。
対象地域は、人口規模や産業の現況、生活パターンなどを考慮し決めるとしました。
予算は30億ウォン(約3億2千万円)ほど。テスト運用の状況を見て、来年から本事業に「格上げ」するとのことです。
画期的な政策です。SNSを見る限り、とても歓迎されているようです。
3. 今日の時事韓国語「이란」
「イラン」と読みます。そのまま、イランを指します。
こういう単語は分かりやすいのですが、私が昨日のニュースレターで盛大に間違えたような「ナフサ(私はナフタと一貫して表記)」などは困ります。
韓国語では「나프타(ナプタ)」と表記されるからです。まあ、なぜナフサを知らないのかと指摘されると、返す言葉がありません…。
今日はここまでです。
5つのトピックを用意していたのですが、この後、午後から大事な約束があるため時間切れとなってしまいました。
また明日以降、お届けします。ありがとうございます。(徐台教)
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