【デイリー・コリア・フォーカス】26年3月9日号

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徐台教 2026.03.09
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

今日も韓国から徐台教が、「デイリー・コリア・フォーカス」3月9日号をお送りいたします。

3月の二週目が始まりましたね。

私が住んでいる金浦(キンポ)は、まだ春とは言い難い気温です。今日も最低気温0度、最高気温は8度とのこと。とはいえ、日差しは冬のものとは明らかに異なるので、春の装いの人もちらほら。

この3月から(韓国は3月から新学年です)中一に上がった娘も薄着派(?)で、体育着のジャージで登校しています。「寒くないの?」と聞くとケンカになるので聞きません。

一方で、こんな平和が突然うしなわれた人々に思いを馳せます。韓国メディアでは「中東戦争」という単語を使い始めています。早期の収束を願う一方、戦争が韓国社会や朝鮮半島情勢にもたらす影響を注視しなければなりません。

今日の目次です。

1. 世界女性の日を迎え、尹錫悦弾劾集会支えた女性市民に賞
2. 「権限の分だけ責任がある」、李在明大統領のメッセージが話題
3. 「トランプ大統領の決断を期待する」…文在寅氏、訪米先で米朝対話を呼びかけ
4. 今日の時事韓国語「유가」

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1. 世界女性の日を迎え、尹錫悦氏の弾劾集会支えた女性市民が‘受賞’

3月8日は『世界女性の日』でした。

1908年3月8日に、米国で女性労働者たちが男性と平等な賃金と投票権を求めた運動を行ったことに由来するものです。

国連では1975年に世界女性の日を記念日に定めましたが、韓国政府は2018年と遅れての記念日となりました。

他方、韓国の国家人権委員会によると「市民の間では1920年から記念されたものの、『日帝の弾圧』により脈がたたれ、1985年の第一回韓国女性大会を開くことで公式に記念することを始めた」そうです。

118周年を迎えた今年も、韓国メディアでは女性の地位の現在地を探る特集が多く組まれ、土曜日の3月7日には各地で集会も行われました。いくつかの記事を抜粋していきます。

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まずは「今年の女性運動賞」の話題からです。

韓国女性団体連合が毎年、この日に合わせ発表するもので、女性運動の発展または性平等(ジェンダー平等)と女性の権益向上に貢献した個人・団体に与えられます。

今年の受賞者は「尹錫悦を弾劾する広場で、平等・助け合い・連帯の実践により、性平等民主主義の価値を実現した女性たち」が受賞しました。

24年12月3日の尹錫悦大統領(当時)による非常戒厳宣布とその解除後、同氏の職務停止や弾劾(25年4月4日)を求める集会を牽引した女性たちのことです。

京郷新聞ではこの市民たちを「応援棒の女性たち」と端的に表現しています。応援棒とはアイドルを応援するペンライトのことです。

尹錫悦大統領による非常戒厳宣布から一週間後の24年12月10日、同氏の弾劾を求め与党・国民の力(当時)党舎前に集まった市民たち。手には応援棒が握られている。筆者撮影。

尹錫悦大統領による非常戒厳宣布から一週間後の24年12月10日、同氏の弾劾を求め与党・国民の力(当時)党舎前に集まった市民たち。手には応援棒が握られている。筆者撮影。

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受賞理由について同連合は、「女性たちは能動的で平等な方式で集会を導く主体となり、広場を民主主義を新たに描く実践の場に転換させた」とし、また「市民の発言を通じ、日常化した性差別の経験を明らかにし、政治が無視してきた女性と少数者の人生の問題を議題化した」と7日の受賞式で発表しました。

実際に尹錫悦氏の弾劾を求める一連の集会では、早くから性平等の原則、女性や若者に対する「褒めず・上から教えず」の姿勢が周知され、より間口の広いものへと集会文化が更新されました。

また、著名人ではなく、たくさんのマイノリティが壇上に上がり、自身の人生を語る集会の形も話題となりました。集会が尹錫悦氏の弾劾だけでなく、社会の改革を求める声として機能する上で、女性たちの参加は明らかに新たな風を吹き込んだといえるでしょう。

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一方、各紙の記事からは、変わらぬ韓国社会の実情も浮き彫りになりました。

『京郷新聞』は9日付けの記事の中で、韓国の男女賃金格差がOECD(経済協力開発機構)で最下位であると改めて指摘しています。

2024年の統計によると、女性労働者の毎月の所得(中間値)は240万ウォン(約25万4千円)で、男性の344万ウォン(同、約36万5千円)よりも30.2%少ない状況です。

同紙はまた、生涯の周期ごとの所得への変化を通じ、その不平等を強調します。

女性の場合は30代後半で所得が311万ウォン(同)とピークを迎え、40代からは下落する一方、男性は40代後半に479万ウォン(同)と最高点を迎えるというデータです。

40代後半で比較すると、女性266万ウォン(約28万円2千円)、男性479万ウォン(約50万8千円)とその差は歴然です。

背景には「出産と育児によるキャリアの断絶」があるとのことです。他にも、性別で差別する企業文化もあるとします。

同記事ではさらに、「ガラスの天井」の存在も指摘しています。女性管理職および役員の比率は17.5%と、やはりOECD平均の33%の約半分に過ぎず、韓国の100大企業に限る場合、その比率はわずか6.5%です。

こうした現実を前に女性団体を中心に、性別による賃金を透明に公開する「雇用平等賃金公示制」の導入を要求しており、政府もこれに応える動きがあるそうです。実現する場合、賃金格差が可視化され、政府や社会がこれを監視しやすくなる効果が見込めるそうです。

また、別の記事では、女性に関する法案の立法が、他の法案と比べて遅れている点も指摘しています。

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2. 「権限の分だけ責任がある」、李在明大統領のメッセージが話題

李在明大統領は不動産問題などと関連し、積極的にXを活用しています。週末にも(むしろ週末に)欠かさず投稿があり、特に今月7日のものは大きな反響を集めています。

「責任と権力」というタイトルのものですが、そんなに長くないので、全訳を載せてみます。

<責任と権力>

権限を持つことは、同じ量の責任を負うことを意味します。

大統領の最も大きな責任は国民を統合することです。常にお伝えしているように、大統領になるまでは一方を代表しますが、大統領になった瞬間から国民全体を代表しなければなりません。

大統領になるまでに持っていた理想や価値、約束を決して放棄してはなりませんが、大統領になり執権勢力になったからと、思い通りすべてを行うこともできませんし、そうしてもいけません。

あらゆる公的な懸案を決定する際に議論し、意見を集め、大勢に支障が出ない範囲で調整し妥協する理由は、ある意見が間違ったり正しいからでなく、全ての意見にそれなりの妥当性があるからです。

自分の意見だけが真理かつ正義で、あなたの意見は不義で偽りだという態度は、極限の対立や失敗の原因となり得ます。

主張し批判することで十分な立場と、主張する分だけ代案を出し、その結果に対して無限の責任を負う立場はまた異なります。 

心のまま、感情のままに、自身の利益に従って行動したいのは当然のことですが、権限に見合った重い責任を負う公人は、公正な第三者の視点と冷徹な理性で、国家と国民の最大多数に最大の幸福をもたらす道を熾烈に探さなければなりません。

どんなに上手に包み隠しても、集団知性体へと進化した国民大衆を欺くことはできません。特定の個人や集団の政治的立場や、選挙での有利不利が国家の未来や国民の利益に優先することはできません。

権限と責任の大きさは同じであるという事実を、偉大な国民知性の恐ろしさを決して忘れてはいけません。

李在明大統領のXより
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正直に言ってよいでしょうか(笑)「何を当たり前のことを」としか思わない、胸焼けのする文章でした。

ですが、日本のSNSでは随分と話題で、かなり肯定的に受け止められています。どうやら、高市首相と比較する視点が根底にあるようです。

一般的に、こうした「政治的な建前」というのは重要です。市民が政府を評価する基準になり得るからです。建前すらない高市首相との差を感じたのかもしれません。

国会にすら顔を出さず、日がな一日官邸にこもっている高市首相と、全国を飛び回り熱心に働く李在明氏の姿勢は対照的で、そのコントラストから注目を集めたのでしょう。

李在明大統領のX。

李在明大統領のX。

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再びメッセージに戻りましょう。考えるべきは、なぜ今、こんな「当たり前のこと」を書いたのかという点でしょう。

本ニュースレターを通じ何度もお伝えしてきたように、韓国では今、「政治不在」の状況が続いています。

その最たる原因は、憲法違反の非常戒厳を強行し、一審で無期懲役判決を受けた尹錫悦と絶縁できない、最大野党・国民の力の体たらくにあります。

同党が「絶尹」しない限り、韓国政治は与党一極体制が続き、いずれ大きな問題に直面するでしょう。李大統領のメッセージは、この危機的な状況を与野党、そして自らに喚起するものとして受け止められるべきです。

他方、李大統領はメッセージの中で、「大統領の最も大きな責任は国民を統合すること」と強調しています。

「統合」というのは、政治的な分極化が進む中、進歩・保守陣営ともに同じ方向に向かって歩いていけるようにすることを指します(わたしは「和合」という言葉がより適切だと思いますが)。

しかし保守陣営が「『内紛』を超え『瓦解』に向かう」と評される中、現状では非常に難しい状況にあります。そんな意味で、このメッセージは、保守陣営にとって痛手であったように思えます。

なお李大統領は、3月8日の世界女性の日に合わせてはこう書きこんでいます。一部だけを引用します。

最近まで、私たちは女性家族部を廃止するという公約を掲げた前政府(訳注:尹錫悦政府)により、性平等政策が縮小され、後退する時期を迎えたこともありました。

これからはその流れを逆転させ、性平等政策を元の位置へと復元し、過去の空白を埋め、実質的な性平等社会に向けて一歩一歩進んでいます。

差が差別とならず、違いが排除の理由にならない社会。そうして誰もが安全で尊厳をもって生きていける共同体を必ず作ります。

大韓民国が名実ともに性平等国家と生まれ変わるよう、与えられた役割と責任を果たします。

李在明Xより

この一文は立派でした。

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3. 「トランプ大統領の決断を期待する」文在寅氏、訪米先で米朝対話を呼びかけ

文在寅前大統領が先週、訪米しました。退任後初の外遊でした。

6日(現地時間)米国カリフォルニア州にあるランド研究所(RAND Corporation) で行われる座談会に出席した文氏は、演説を通じ米朝対話を呼びかけました。

文氏のFacebookに全文公開された文書によると、演説は大きく三つのパートに分かれています。

第一パートではまず、韓米の結びつきを強調しました。

今や先進国となった韓国の「成就」の基には、「韓米同盟という揺るぎない安全保障の土台」があった点を強調しました。米国の支援こそが「奇跡のような繁栄を可能とした滋養分であった」という認識です。

その上で、「米国にとって韓国ほど信頼でき、検証された友邦は存在しない」とし、「この特別な友情を基に、韓米両国がより明るい未来に向けて共に歩んでいけるよう望む」としました。

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次の第二パートでは、自身の大統領時代の経験から今日的な課題を導き、米朝対話を促しました。

2017年5月の就任後から「平和への転機」を作り出すため渾身の努力を傾け、2018年の三度の南北首脳会談、そして米朝会談を導き出したとしながら、朝鮮半島をめぐる地政学的な環境は当時よりも厳重で危ういと指摘しました。

一方で、過去の経験から、韓米が北韓(朝鮮民主主義人民共和国、北朝鮮)と対話を断絶させ圧迫を強める時に北朝鮮が逆に核能力を強め、対話局面では核開発を中断したことを想起させました。

続いて、「北朝鮮の実質的な変化を引き出す最も強力で有効な戦略は結局、対話であることを忘れてはならない」と強調しました。

3月6日(現地時間)ランド研究所で演説する文在寅元大統領。同氏のFacebookより引用。

3月6日(現地時間)ランド研究所で演説する文在寅元大統領。同氏のFacebookより引用。

その上で、今年4月のトランプ大統領の訪中は、朝鮮半島の平和に向けたきっかけになり得るとし、トランプ大統領に対し「決断を期待する」と持ちかけました。

さらに「特有の『度量のある決断』が現在の膠着状態を解く唯一のカギと成り得る」とトランプしを持ち上げつつ、「トランプ氏が朝鮮半島の平和の新たな道を開くならば、『ピースメーカー』として世界史に長く残る偉大な業績になる」と続けました。

他方、金正恩委員長にたいしては、「対話の意志を明かしたトランプ大統領と李在明大統領の手をつないでほしい」と訴えかけました。

さらに、「金委員長にとってトランプ大統領はまたとない最上の対話のパートナーである」とし、「李在明大統領の平和と協力に対する意志も明らかだ」と説得を試みています。

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最後の第三パートでは、対話の重要性と、ソフトパワーとしての韓国を取り上げました。

文在寅氏は現在の世界を「第二次世界大戦以後の、普遍的な協力秩序が倒れる危機に直面している」と診断しました。

そしてこの危機を乗り越えるただ一つの道は「対話を通じた平和」であり、「包容と協力」という根本的な価値に立ち返ることだと主張しました。

そのためには「開かれた心」が必要で、この点において「文化の力で世界の人々の心を掴んでいるソフトパワー国家の韓国」が、「世界と連帯し、人類の普遍的な価値を拡散させる先導国家として、その責任を果たしていく」と明かしました。

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今回の文在寅元大統領の発言からは、正直なところ、現実とあまり合わないという印象を抱きました。

もはやトランプ大統領に何かを期待する次元はとうに過ぎていて、トランプ政権下での米朝合意はあり得ないと見るのが正しいでしょう。

今は何より、戦争の余波が朝鮮半島に及ばないよう最大限の注意を払うこと、つまりは「管理」が求められていると私は思います。

ただ、対話の姿勢を常に持ち続けることは大切で、さらに、韓国のソフトパワーがそんな雰囲気の醸成に寄与することができるという指摘には得心がいきます。「手段としての文化」という認識には一貫して反対ですが…。朝鮮半島、どうなりますか。

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4. 今日の時事韓国語「유가」

「ユカ」と読みます。漢字では「油価」です。発音する場合には「ユッカ」に近い形になります。

ガソリンとディーゼル油の価格を合わせた表現です。「유가 상승(ユッカサンスン、油価上昇)」といった形で使われます。

今日はイランでの戦争に影響についての記事はありませんでしたが、今日の韓国株式市場は、急激な値下がりのため二度も取引制限がかかる大荒れとなり、「油価」の上昇も続いてます。

ちょうど今日、青瓦台で非常経済点検会議が開催されました。この話はまた明日お届けします。

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それでは今日はここまでです。

皆さまアンニョンヒケセヨ。ありがとうございます。がんばりましょう。(徐台教)

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