【デイリー・コリア・フォーカス】26年5月11日号

皆さま、アンニョンハセヨ。
5月11日、月曜日です。小雨がぱらつく金浦の街角から、「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。
週末には財団法人・鶴峰奨学会の20周年記念式という、重要なイベントがありました。
1928年に日本に渡り、苦学して事業に成功した在日一世の李基鶴(イ・ギハク)さんが私財を投じて設立した財団で、今は息子の李研鉉(イ・ヨンヒョン)さんが運営しています。鶴峰(ハクポン)というのは、李基鶴さんの号です。
この日配布された資料によると、同財団は20年の間、3672人に約16億ウォン(約1億7000万円)の奨学金を支援してきたとのこと。その対象は、韓国で30年以上続く「ノドゥル障害者夜学」に通う障害者の方々をはじめ、幼稚園から大学生まで広範囲にわたります。
また他に、学者に対しては優秀論文賞を、日韓社会を扱うジャーナリストに対しては報道賞を設けるなど幅広い社会事業を行う財団としても知られています。私も2022年に報道賞(優秀賞)を受賞したことで李研鉉さんと知己を得て、その姿からたくさんのことを学んでおります。
200人以上が集まっていたであろう記念式は、笑いあり、涙ありのとても素晴らしい時間でした。社会的な仕事というのは素晴らしいものですね。

財団法人鶴峰奨学会の李研鉉理事長。筆者撮影。
という訳で、今日の目次は以下の通りです。
1. 「チェ上兵死亡事件」海兵隊師団長に懲役3年
2. 「三回の殺人に耐えた」強気くずさぬ李在明大統領
3. 朝鮮人民軍、モスクワの閲兵式に初参加
4. 今日の時事韓国語「26만전자」
1. 「チェ上兵死亡事件」海兵隊師団長に懲役3年
尹錫悦前大統領は非常戒厳によりその身を滅ぼしましたが、その以前から、政治的に追い込まれる状況が続いていました。
すべて身から出た錆なのですが、中でも「チェ上兵死亡事件」は、尹氏の大統領としての資質に大きな疑問を投げかける出来事でした。
何度かニュースレターでも取り上げた出来事ですが、改めて整理すると以下のようになります(過去記事に加筆)。
(1)尹錫悦政権下の23年7月にあった集中豪雨の際、水かさの増した河で行方不明者の捜索に当たった海兵隊のチェ・スグン一等兵(死後に上等兵に特進)が急流に流され亡くなりました。部隊は救命チョッキも着用おらず、安全管理ができていない状態でした。場所は韓国南東部の慶尚北道(キョンサンプクト)醴泉郡(イェチョン)郡の河川でした。
(2)パク・チョンフン大領(大佐)を団長とする海兵隊捜査団が事故を調査。イム・ソングン海兵隊第一師団長をはじめ8人(第一師団長、旅団長、大隊長2人、中隊長、現場幹部3人)を業務上過失致死の嫌疑があるとまとめ、手順に従い捜査結果を警察に移牒することに。
(3)この過程で、李鍾燮(イ・ジョンソプ)国防長官により一度決裁された捜査結果にストップがかかる。移牒を強行したパク大佐は「抗命および上官名誉毀損」の嫌疑で職を解かれ軍事裁判に。
(4)国防部調査本部が事故調査を再検討し、8人のうち大隊長2人だけに「業務上過失致死嫌疑」を適用。6人は除外。どのような介入があったのか、尹錫悦政権下では実態が解明されず、李在明政権下の25年6月に特別検察が調査を開始。
(5)結果は、尹錫悦氏を含む12人の起訴。介入の頂点に尹錫悦氏がいるとされ、イム・ソングン前海兵隊第一師団長も業務上過失致死、軍刑法違反の嫌疑で起訴されました。
なお、パク大領は軍事裁判の結果、無罪が確定し、今年1月に准将へと進級しています。昨年10月1日の「国軍の日」には憲法的な価値を守護した功により「報国勲章・三一章」を受勲しました。
そして5月8日、イム・ソングン元師団長の一審判決が出ました。結果は懲役3年。イム氏は法廷で拘束されました。特別検察は懲役5年を求刑していました。
裁判所はチェ上兵が含まれていた部隊に無理な捜索を命じたのは、イム師団長が「成果のための積極的な捜索を強調したため」と結論を下しました。また、「事故を防止する義務を無視した」とも指摘しました。なおこの日、現場の指揮官などにも有罪判決が下っています。
この件を9日付けの社説で取り上げた京郷新聞によると、特別検察は韓国で「チェ上兵死亡事件」と呼ばれるこの事件を、「尹錫悦政権の権力型犯罪」と位置づけているとのこと。
社説ではさらに同事件を「大統領と参謀、国防部・海兵隊の首脳部がひとつになって、罪のない若い兵士の死を糾明する捜査を防いだ犯罪」だと断じ、「政治権力がイム師団長ただ一人を庇護するために、国紀を打ち倒した事件」と強く批判しています。国紀というのは、国のあるべき秩序という意味です。
尹錫悦前大統領も起訴されているため、今後の裁判の行方にも注目です。
やはり社説で取り上げた「ハンギョレ」も「この事件の本流は『捜査への外圧』である」と指摘し、厳重な審判が下されるべきとしています。
亡くなったチェ上兵は親思いの好青年だったそうです。遺族のことを考えると胸が痛みます。

今年3月、李在明大統領と握手するパク・チョンフン准将。三精剣授与式にて。青瓦台提供。
2. 「私の命は国民のもの」強気くずさぬ李在明大統領
5月9日の朝8時過ぎ、李在明大統領がX(旧ツイッター)に書きこんだ内容が韓国社会に波紋を呼んでいます。
まずは書き込みの内容から。全訳すると以下のようになります。
検察の造作起訴を通じた司法殺人
テロ犯を動員した凶器殺人
造作言論を動員した名誉殺人この危重な(重大な)3大殺害の脅威から国民、すなわち天が私を救ってくれたので、私の命はもはや完全に国民のものです。
天が私に生命の保全を超え、大きな仕事まで任せてくれたので、私がすべきことはただ、国民のための国、ただ国民だけのために作動する権力を作ることです。
国民の皆さん、ひたすらありがとうございます。
最後の瞬間まで、身体が壊れることがあっても、国民すなわち天のために、衷心と全力を尽くします。

李大統領の該当ツイート。
このようなやや感情的な書き込みには、リベラル紙京郷新聞の記事がリンクされていました。
「権益委『李在明代表の襲撃事件の際のヘリによる転院当時、前副委員長の不当な介入があった』と認める」というものです
読者の方には覚えている方がいるかもしれませんが、2024年1月2日、釜山(プサン)市内で当時、共に民主党代表だった李在明氏は暴漢に襲われました。首に裂傷を負い、もう数ミリ深かったら死亡するというあわやの出来事でした。
李氏はすぐに釜山大病院に運ばれ、そしてソウル大病院にヘリで転院することになりました。
この際の手続きに問題があったとして、24年7月、国民権益委員会のチョン・スンユン副委員長が独断で、病院の医者や釜山消防本部の職員などを「公務員行動綱領を違反した」と結論づけていました。
今回、この判断について同委員会は調査を行い、チョン副委員長の行動を「不適切な介入」と判断しました。今月8日のことです。
国民権益委員会というのは、不正腐敗の防止や国民の権益が守られない出来事をただす目的で、国務総理傘下に設置された組織です。2008年に設立されています。
似た名前の組織に国家人権委員会がありますが、こちらはすべての市民の「人権」を守る目的のものです。一方の国民権益委員会は「権益」を守る組織と位置づけられます。
この「介入」は尹政権下で起きた出来事であるため、李在明氏を批判したい動きがはたらいたものと見られていました。同委員会の人事は任命職なので、政府の意向が作用します。
李大統領のツイートに戻りましょう。
この書き込みは、6月3日に投開票を控えた統一地方選の「悪材料」となる可能性から、政界に波紋を呼んでいます。
5月7日のニュースレターで紹介したように、与党・共に民主党が立法しようとしている『尹錫悦政権、造作起訴特別検察法』という法案があります。
造作(チョジャク)というのは、でっち上げという意味です。五つの裁判を抱える(公判停止中)李在明大統領への捜査と起訴が、尹錫悦政権によるでっち上げだったという疑いの元に作られている法案です。
法案によると、大統領が任命する特別検察官に、公訴を維持するか否かを判断する権限が付与されます。公訴取り消しの場合、裁判自体がなくなります。
いくらなんでもこれはやり過ぎたという批判が、共に民主党内や進歩陣営から盛んに出ています。選挙にも良い影響を与えないと、同党の候補者たちも公然と声を上げています。
一方の野党は、劣勢の中、政府と与党を攻撃する格好の材料ができたとして、最大限にこれを活用しています。
強い批判世論を受け、党指導部も法案の立法プロセスを統一地方選後に延期させることにし、この問題にようやく蓋をしたのですが、この書き込みにより、李大統領みずからが問題を蒸し返した形になりました。
書き込みには当然、何らかの目的があります。
「李大統領は正面突破するつもりだ」という見立て、つまり公訴取り消しまでやり切るだろうと予想が優勢のようですが、私もそう思います。どうなるでしょうか。
3. 朝鮮人民軍、モスクワの閲兵式に初参加
5月9日、モスクワの赤の広場で行われたロシアの戦勝節記念式に、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の兵士たちが参加しました。
第二次世界大戦の勝利を祝うこの日、北朝鮮軍は閲兵式に「陸海空軍混成中隊」を派遣しました。参加は初めてのことです。
国営メディアの朝鮮中央通信は、閲兵式の後、プーチン大統領は指揮官(朝鮮人民軍大佐)に対し謝意を表明したと伝えています。

閲兵式に参加した朝鮮人民軍。朝鮮中央通信より。
今回の出来事は韓国メディアでも大きく取り上げられています。
保守紙「中央日報」は今日付けの社説で、「北・露関係が単純な支援を超え、事実上の『戦時同盟』であることを対外的に闡明(せんめい)した象徴的な事件だ」と評しています。
明日、ようやく北朝鮮の改正憲法など一連の動きを整理するコラム記事を出す予定です。もう少しお待ちください。
4. 今日の時事韓国語「26만전자」
「イーシプユク マン チョンジャ」と読みます。漢字で書くと「26万電子」となります。
前の数字はその時々で変わります。「サムスン電子」の株価を指す用語です。
半導体の需要から、今年第一四半期に6兆円を超える営業利益をたたき出した同社の株は、上昇を続けており、連日、ニュースで大きく取り上げられています。なんと、国民の一割近い460万人が同社株を保持しているそうです。

サムスン電子株の今日の終値は28万5500ウォンでした。「28万電子」となります。
派生語に「○○만닉스(○○マンニックス)」というものがあります。こちらも絶好調の半導体企業、SKハイニックスの株価を指す用語です。
今日はここまでです。
それではまた明日!アンニョンヒケセヨ。(徐台教)
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