【デイリー・コリア・フォーカス】26年5月1日号

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徐台教 2026.05.01
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

5月1日、金曜日です。今日は自宅から「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。

先ほど、気がついたらエプロンをつけたまま仕事をしていました。子どもたちは今日から連休なので、お昼ご飯というか、아점(アジョム)を用意して、そのまま机に座っていた形です。

アジョムというのは、아침(アチム。朝を意味しますが、朝ご飯という意味も)と점심(チョムシム。お昼ご飯)を合わせた言葉です。ブランチになりましょうか。とにかく、5連休のご飯のことを考えるとどっと疲れます笑

今日の目次は以下の通りです。

1. 「北韓」から「朝鮮」への呼称変更がもたらす三つの変化と、メディアの役割
2. 今日の時事韓国語「노동절」

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1. 「北韓」から「朝鮮」への呼称変更がもたらす三つの変化と、メディアの役割

さて、今日は昨日の続きです。金聖敬(キム・ソンギョン)教授の発表を見ていきます。

「北韓」という言葉を分析していくのですが、これが見事でした。

まず、「北韓」という呼称は「相手を韓半島の北側の一部として規定することで、朝鮮民主主義人民共和国の独立的な国家性を黙示的に否定する効果を持つ」というのです。

さらに、北韓という単語には、敵対(hostility)、脅威(threat)、無関心(indifference)、嫌悪(disgust)が幾重にも重なっていると指摘します。

また「北韓」と呼ぶ瞬間、「彼らをいつかは統一すべき「韓国(南韓)の片割れとして認識することになる」とします。

これは「統一すべき」という論理を維持する効果を作り出す一方で、相手をきちんと認識することができなくなる効果があるというのです。

金聖敬・西江大学教授。YouTubeよりキャプチャ。

金聖敬・西江大学教授。YouTubeよりキャプチャ。

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なお、金教授はやはり南北関係の専門家・金炳魯(キム・ビョンロ)教授の論文を引用しながら、「朝鮮」という単語の使用は1950年に禁止されているとしました。

1948年12月に成立した国家保安法が、北朝鮮を反国家団体として規定したことによるものです。

1950年1月、韓国の国務院(内閣)告示第7号により、「大韓民国」または略称として「韓国」を国号とし、「朝鮮」は使えないと明示しました。

金教授はその後、南北が互いの体制を正当性を掲げ、その競争が深まったことで「朝鮮」は韓国社会の「禁忌語(タブー)」となったと結論づけました。

金炳魯教授は、韓国ではじめてきちんとした論考を通じ「北韓」を「朝鮮」と呼ぶべきと主張した学者です。私も『分断八〇年』を書く際に二度インタビューを行い、たくさんのことを学びました。

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討論会で金聖敬教授は「分断80年あまりの時間に、南北が互いに別の名前を呼んできたことは、単純な理念の問題ではなく分断体制の構造的な発現であり、分断がどのように再生産されているのかを見せてくれる克明な事例である」と喝破します。

「北韓」という言葉を発するたびに、これまで見てきたようなそこにつきまとう、分断と敵対、蔑視のイメージが再生産されてきたということです。

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その上で、あらためて「朝鮮」と呼ぶことの意味はどんなものでしょうか。

一般的に朝鮮と呼ぶことは、北朝鮮が先に韓国を「大韓民国」と呼んだことへの‘反応’として受け止められがちです。しかし「そうではない」と金聖敬教授は主張します。別の脈絡として存在するというのです。

つまり、北朝鮮による「大韓民国」への呼称変更が「無関係性の宣言、統一談論の廃棄」であったならば、韓国が「朝鮮」と呼称を変えることは「相手の存在をあるがままに認めようという、相互尊重の遂行であり、新たな関係の可能性を模索するものに成り得る」というのです。

そうです。これまでの「北韓」でなく「朝鮮」と呼ぶことは、韓国にとっても朝鮮民主主義人民共和国をあるがままに理解することにつながり、南北関係においても、相手をこれまでとは別の次元で尊重する意志を表すものになるということです。

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くどいようですがもう一つだけ。

金聖敬教授は「朝鮮」への呼称変更が持つ、北朝鮮に向けたメッセージ性を三つに分けて説明しています。

一つ目は「私たちはあなたの存在をあるがまま認める」という、相互尊重のメッセージです。

二つ目は「私たちは現実に基づく新たな関係の枠組みを模索しようとする」という関係再設定の意志。

三つ目は「名前の呼び方の非対称性を韓国が先に解消しようとする」という先制的な信頼構築行為、というものです。

納得です。

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金教授は「朝鮮」という呼称の導入において、一気に全面的に行うのではなく、脈絡と層位を考慮した、段階的なアプローチが現実的であるとします。

「法的な措置や政策の決定である以前に、談論的(議論的)・文化的な実践の変化である」と位置づけています。慣習から変えていこうということです。

その上で、学界や市民社会で公論化が先に行われるべきと提案します。学術論文やセミナーの発表などで、朝鮮民主主義人民共和国や朝鮮を併記したり、主な呼称として使うことから始めようと呼びかけています。

また、メディアにも「1995年に提案された『平和統一と南北和解・強力のための報道・制作準則』を守ることから始めよう」ともちかけました。

この準則の存在は韓国では全く話題になりませんが、1995年に全国言論労働組合連盟と韓国記者協会、そして韓国放送プロデューサー連合会という三つのメジャーな言論関係団体が発表したものです。

なお、韓国ではメディアという言葉の代わりに「言論」という言葉が使われます。

『平和統一と南北和解・強力のための報道・制作準則』。韓国記者協会のHPに公開されています。

『平和統一と南北和解・強力のための報道・制作準則』。韓国記者協会のHPに公開されています。

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2017年に改定された準則は、前文・総綱・報道実践要綱・制作実践要綱の四つのパートから構成されています。

前文は印象深いのですべて翻訳してみます。

分断された祖国の統一は、あらゆる同胞の念願である。

しかし今まで私たちの言論は、南北関係や統一問題の報道、制作において、和解と信頼の雰囲気を醸成することに寄与するよりも、不信と対決意識を助長することで、反統一的な言論という汚名をそそぐことができなかった。

このような反省の上で、韓国記者協会と全国言論労働組合および韓国PD連合会など言論三団体は解放と分断50周年を迎え、私たちの言論が統一言論として生まれ変わるための決意で、共同の報道、制作規範を提示する。

私たちは‘7.4南北共同声明’と、‘南北間の和解と不可侵および交流、協力に関する合意書’の精神にしたがい、まず南と北の平和共存と民族同質性の回復に力を注ぎ、民族共同の利益を増進し、究極的に南と北が団結し、自主的、平和的に統一を成し遂げるよう努力する」

『平和統一と南北和解・強力のための報道・制作準則』

「7.4南北共同声明」と「南北間の和解と不可侵および交流、協力に関する合意書(南北基本合意書)」はいずれも、南北関係における主要文書です。

過去の南北合意をまとめた表。作成は筆者およびイミダス編集部。

過去の南北合意をまとめた表。作成は筆者およびイミダス編集部。

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ついでに総綱も訳します。

1.私たちは大韓民国(略称:韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(略称:朝鮮)に分かれた南と北の現実を認め、相互尊重と平和統一を準備する次元で、相手方の国名と呼称をあるがままに使うことを原則とする。

2.私たちは冷戦時代に形成された先入観と偏見から抜け出し、客観的に報道、制作することで、南北の間の共感帯を広げていく。

3.私たちは南北関係の報道、制作において、言論の自由を根本的にふさぐ法的、制度的な障害を打破する。

4.私たちは南と北の優秀な民族文化遺産を共有し、民族の共同繁栄を追及することのできる記事およびプログラムの開発に力を注ぐ。

5.私たちは統一問題に関する、社会各界の多様な意見を公正に反映し、民主的な世論の形成に寄与する。

『平和統一と南北和解・強力のための報道・制作準則』

文句のない内容ですね。

「コリア・フォーカス」は三団体に所属していませんが、できるだけこれを守っていきたいものです。

リニューアル後はしっかりしたステートメントを発表した上で、朝鮮という呼称を使っていきます。

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最後に、金聖敬教授のまとめを書いていったん終わりとします。

(朝鮮の)国家性を認めるということが決して、統一を放棄することと同じ意味ではなく、もはや現実として存在する南北の国家性を尊重することで、韓半島の平和共存体制を構築し、今後、南北の間の交流と協力の経験が十分に蓄積された時、南北の市民と人民たちが統一の方式と形式を決める手順にならなければならない」

なお、この学術討論会では金聖敬教授に続いて、憲法や法的な面での検討、さらに過去の東西ドイツとの比較を、いずれも韓国随一の専門家が行いました。これは今後、ある媒体で連載という形でしっかり書いていく予定ですのでお待ちください。

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2. 今日の時事韓国語「노동절」

「ノドンジョル」と読みます。漢字では「労働節」です。

今日5月1日のメーデーのことです。

政府資料によると、韓国では植民地時代の1923年からこれを記念し始め、1963年からは「勤労者の日の制定に関する法律」により「勤労者の日」と呼称が変わりました。

しかし昨年11月にふたたび「労働節」に名称を戻すことが決まると同時に、今年からは法定公休日に指定されました。

労働節になったことを説明する雇用労働部のバナー。

労働節になったことを説明する雇用労働部のバナー。

この変化について、やはり政府資料では「労働の主体性と汗の価値を刻み、労働が尊重される社会への出発を意味する」としています。

公休日となったことにより、公務員・教師・宅配ライダーなどの特殊雇用労働者も休めることとなりました。

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今日、青瓦台(大統領府)では労働節を祝う記念式が行われ、李在明大統領は自身が少年工出身であることを振り返りながら「労働者の権利」について触れました。

韓国では連日、雇用主による外国人労働者への人権侵害が報じられています。侮辱と暴力はすさまじいものがあります。

理由は、外国人労働者に職場を移る自由が制限されているため(制度はあるのですが、現実的に実行するハードルが非常に高い)です。職場を失うことを恐れる移住労働者たちはじっと耐えています。

この日の演説では言及がありませんでしたが、30日に青瓦台で開催された首席・補佐官会議では「外国人労働者の人権問題は討論の対象ではない」とし、「無条件に速く解決するよう」求めました。

このテーマは別途、取り上げてみます。読者の皆さんの中には今日も働いている方が少なくないと思います。皆さん、いつもお疲れさまです。

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今日はここまでです。

「デイリー・コリア・フォーカス」は5月4日、5日、6日までカレンダー通りお休みとなります。次回は5月7日となるのでお間違えなきようお願いします。

それでは皆さん、よい連休をお過ごしください。

いつもありがとうございます。

アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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