【デイリー・コリア・フォーカス】26年4月20日号

皆さま、アンニョンハセヨ。
4月20日、月曜日です。15度と涼しい金浦から「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。
先ほど、大きな地震があったようですが大丈夫でしょうか。心配です。
昨日、日本全国で戦争と憲法改正に反対する集会があったというニュースを目にしました。東京の国会前だけで3万6千人(主催者発表)ということで、韓国との「差」を感じました。
差は規模にあります。韓国社会でも米国・イスラエルによるイラン攻撃以降、反戦集会が行われていますが、その規模は日本に比べはるかに小さいものです。
日本社会には、武器輸出が解禁され、高市首相が改憲に意欲を見せている点などから「イラン戦争が日本を変えてしまう」という独自の危機感があるのでしょうか。
こういう紛争時に韓国が休戦状態にある国家であることを実感します。
情報がぎゅっと絞られ(例えば、ウクライナへの砲弾迂回支援の現状はどうなっているか分かりません)、市民もそれを見て見ぬフリをするような、固唾を呑んで見守る雰囲気があります。だからこそ、日本と韓国の市民社会が協力することが欠かせません。
今日の目次は以下の通りです。
1. 「4.19革命」から66年
2. 世界3位の集客、韓国国立中央博物館が有料化?
3. 米国と対立?統一部長官「失言騒動」の読み方
4. イラン情勢を見据えた49か国会議、李大統領が参加
5. 今日の時事韓国語「국중박」
1. 「4·19革命」から66年
韓国現代史にはいくつか「革命」と呼ばれる出来事があります。しかし、保守・進歩という陣営によって、その対象が異なる場合があります。そうした中、国家が正式に「革命」と読んでいるのが「4·19(サーイルグ)」です。
1960年4月19日に、当時の李承晩(イ・スンマン)政権を打倒するためのデモが全国的に起きたことから、その日付けを取って「4·19」と呼ばれます。
強い権力欲に突き動かされ、北朝鮮との戦争・対立をも自身の権力強化のため利用し、さらに憲法も思うままに変える独裁者・李承晩の下野を求める運動は、同年2月から既に本格化していました。
2月28日には、南東部の大邱(テグ)市で1000人以上の高校生が、李承晩政権の独裁に反対するデモを行いました。「2·28学生民主義挙」とも、「2·28民主運動」とも呼ばれるもので、反李承晩運動の嚆矢となりました。2018年に国家記念日に指定されました。
その後、3月15日の大統領選挙で、李承晩は組織的かつ明確な不正選挙を行い当選します。不正選挙を目撃した市民はふたたび立ち上がり、やはり南東部の馬山(マサン)で大規模な集会がデモが起きます。
警察は市民に向け発砲し、死者も出ました。その過程で16歳の高校生・金朱烈(キム・ジュヨル)君が行方不明になります。
金君は4月11日になってようやく見つかります。馬山の埠頭で遺体となって浮かびあがった金君の目には催涙弾が刺さったままでした。
そして再び、デモに火が点きます。馬山ではこの日、3万人がデモに参加したと言われます。数千人の学生が含まれていました。
4月になり、デモは全国に広がります。ソウルでは18日の高麗大学生のデモをきっかけに学生たちが立ち上がり、19日には先述したように全国で同時にデモが起きます。
ソウルの集会は10万人とされる大規模なもので、市民は李承晩大統領のいる景武台(現・青瓦台)を目指しました。警察はやはり実弾射撃を行います。この日、ソウルだけで数十人の市民が亡くなりました。
その後もデモは続き、ついに4月26日、李承晩大統領が下野宣言を行います。韓国で初の民主革命が起きた瞬間でした。

1960年4月19日、デモを行う学生・市民たち。国家記録院提供。

「4·19」で破壊されたソウルの街並み。国家記録院提供。
「苛烈な独裁の鎖を断ち切り、大韓民国憲法の根として生まれた4·19精神があったからこそ、2024年12月の冬の夜、私たち大韓国民はついに内乱の夜を追いやることができたのです」
それから66年。4月19日にソウルにある国立4·19民主墓地で行われた「4·19革命記念式」で李在明大統領はこう述べました。
韓国に脈々と行き続けてきた民主主義への熱望が、24年12月の尹錫悦大統領(当時)による非常戒厳に立ち向かう力を与えたという解釈です。
韓国の憲法前文の冒頭には「不義に抗拒した4·19民主理念を継承し」とあります。
このように、独立運動をたたかった年配層から、学友をうしなった学生までが命がけで立ち上がった「4·19革命」は韓国民主主義の原点であると言えるでしょう。
なお、革命の翌年1961年5月16日には、朴正煕(パク・チョンヒ)少将がクーデターで政権を掌握します。その後、同氏が暗殺される1979年まで韓国市民はふたたび、独裁の時代を生きることになります。
これに関しこの日、李大統領は演説の中に興味深い一文がありました。
「独裁の軍靴は不平等と貧困の溝に入り込み、民主主義の破壊を正当化します」というものです。
だからこそ、政治は国民の生活に責任を持たなければならないと続くのですが、これは李大統領のある種の政治哲学のようです。いつもこの話をします。
もう一文だけ演説文から引用します。
「民主主義こそが、5200万の国民ひとりひとりの潜在力と力量を発見し、それぞれの夢を持って幸福を育て、それぞれの人生を尊厳と共に作っていくことができる、もっとも有用で合理的な体制であることを、絶え間なく立証していかなければなりません」
今の演説秘書官は広告会社出身の方ですが、なかなか上手いものです。
韓国現代史が持つ「民主主義の物語」は、これからも守られ、再生産されていくのでしょう。そんなことを思う4月19日でした。
2. 世界3位の集客、韓国国立中央博物館が有料化?
ソウルを東西に流れる漢江(ハンガン)のちょうど中間あたりの北側に、龍山(ヨンサン)という地域があります。米軍基地があり、尹錫悦政権時には大統領室も置かれていました。ここに韓国の国立中央博物館があります。
地下一階、地上六階の本館をはじめとする7つの施設に、約1万点の展示があります。三国時代の6~7世紀に作られた半跏思惟像2点(いずれも国宝)が並ぶ「思惟の部屋」などが有名です。

「思惟の部屋」の様子。同博物館HPより。
この博物館はなんと、世界で3番目に観覧客が多いそうです。
地上波MBCが18日に伝えたところによると、2025年の世界博物館の観覧客統計では、ルーブル博物館(フランス)の904万人、バチカン博物館(バチカン)も693万人に次いで、650万人で3位にランクインしたそうです。2024年から70%も観覧客が増加したそうです。
なお、4位は大英博物館(英国)で644万人、5位はメトロポリタン・ミュージアム(米国)の598万人とのこと。
人気の裏には、世界的な「韓流」ブームなどがあるのでしょうが、入場料が無料である点も関連しているようです。
そして今、有料化の話が持ち上がっているそうです。
「静かに展示を見るには人があまりに多く、位相(格)は上がったが管理する人員は足らず、展示の室も昔のまま」とMBCは指摘します。博物館の予算は10年間、40億ウォン(約4億3000万円)で据え置きのままです。
しかし現行法下では有料化した場合も、ルーブル博物館のように、莫大な収益で博物館の展示を充実させるようにはいきません。その収益はすべて国庫に回収され、博物館側が使うことはできないそうです。
この点をどのように改革するのかが目下、議論されている模様です。有料化する場合にも、それにより疎外される人が現れてはならず、さらに地方とも収益を分配する必要など、ニュースでは様々な視点が紹介されていました。
私ももう何年も訪れていませんが、久しぶりに行ってみようと思います。

博物館の外観。同博物館HPより。
3. 米国と対立?統一部長官「失言騒動」の読み方
金曜日から週末にかけて、韓国の鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官に関するニュースが高い注目を集めました。統一部とは、南北関係の改善を司る政府部署です。
17日、日刊紙「東亜日報」は『[単独] 鄭東泳『北クソン核施設」発言…米「情報共有を制限する方針』という記事を配信しました。
暗号のようなタイトルですが、[単独]というのは、日本でいう「独自スクープ」といった扱いです。韓国メディアが自社の記事のオリジナル性を強調する時によく使います。
記事の内容は、鄭東泳長官が3月6日、国会で北朝鮮のウラン濃縮施設の場所として「亀城クソン」に言及した事を米国が問題視。韓国政府に対し、北朝鮮情報の提供を一部制限することを通達したという内容でした
鄭長官は当時、ウラン濃縮施設の場所として、寧辺(ヨンビョン)と亀城、降仙(カンソン)」の三つを挙げていました。
その根拠として、ラファエル・グロッシー国際原子力機構(IAEA)事務総長による3月2日の発言を挙げましたが、実際にはここに亀城は含まれていませんでした。
このため米国側は「亀城」への言及が、米国当局が韓国当局に非公開を前提に共有した情報によるものであると判断したようです。米国は不満を持ち、韓国への情報共有を縮小すると決めたと、同紙は書いています。
さらに19日、日刊紙「ハンギョレ」がやはり単独記事を配信しました。
「米国から毎日50~100ページ届くはずの北朝鮮情報が、一週間ほど届いていない」という内容です。記事によるとこの情報は、米国が偵察衛星などを通じ収集するもので、核施設の位置は最高機密にあたります。

鄭東泳長官。同氏のfacebookより引用。
米韓の間に亀裂が入ったということで、最大野党・国民の力は鄭東泳長官の更迭を求めています。
統一部も対応に追われています。
しかしあくまで、亀城については米国による情報ではないと説明しました。「亀城におけるウラン濃縮の可能性は、2016年の米国のISIS(科学国際安保研究所)のレポート以降、最近まで様々な研究機関および主要メディアが報道している」というものです。
実際にはどうでしょうか。日本メディアの過去の記事を調べてみました。
2021年3月25日の産経新聞で、安全保障問題専門家で国連専門家パネル元委員の古川勝久さんが、米国のCNNを引用し、亀城に核兵器貯蔵施設があるのではと書いている程度で、他にはありませんでした。
韓国メディアでも亀城に関連する記事は、ミサイル発射施設のものばかりです。「東亜日報」によると、これまで韓国政府と国際原子力機構(IAEA)が公式に認めた北朝鮮のウラン濃縮施設は平安北道の寧辺(ヨンビョン)と、平壌近郊の降仙(カンソン)の二か所だけです。
真相はどこにあるのでしょうか。
一連の騒動を受け20日、鄭東泳長官は韓国メディアの記者団と会い、「公開された資料を使い政策を説明しただけで、それを『流出』の方向に持っていくのはとても遺憾だ」と述べています。
鄭長官は「統一部長官に就任する前に国会で行われた、昨年7月14日の人事聴聞会の席でも亀城に言及した」と改めて釈明し、「この問題を問題視する目的が疑わしい」と述べました。
しかし、これ以上の具体的な言及はなく「国益を中心に判断して欲しい」とし、「中東戦争により安全保障の環境が厳重な中、何も問題がない韓米関係の危機説を広げる、一部の行動が心配だ」と言及しました(以上、京郷新聞)。
さらに20日午後、鄭長官は自身のFacebookに「昨年7月25日に統一部長官に就任して以降、国内の情報機関から核施設に関する情報提供を受けたことは一度もない」と明かしています。漏えいも何も、その根拠から間違っているという主張です。
これらの動きをどう受け止めるべきなのでしょうか。
鄭東泳長官こそが李在明政権が発足して以降、北朝鮮との関係改善のための「譲歩」を率先してきた人物であるため、それを快く思わない人物や勢力の的になった可能性があります。
また、以前のニュースレター(1月29日号)で言及したように、国連軍司令部(実際は米軍)と鄭長官はDMZ(非武装地帯)の管轄をめぐり正面衝突しています。目の上のたんこぶと見られている可能性は小さくありません。
統一部の中堅職員の一人は20日、筆者に対し「米国からの牽制ではないか。統一部が米側と衝突している部分は一つや二つではない」と述べています。
拙著『分断八〇年』の中で私は、「トリレンマ」という言葉を紹介しています。朝鮮半島問題において、韓国国内の政治対立・南北関係・国際秩序のニーズをすべて満たす正解は存在しないということです。
保守野党にとっては良い「おもちゃ」を手に入れたようなものでしょう。過去に何度も繰り返されてきた場面です。人事権者としての李在明大統領のお手並み拝見です。
4. イラン情勢を見据えた49か国会議、李大統領が参加
長くなりすぎました。最後にイラン情勢に関するものを一つ。
17日(現地時間)、フランス・パリで国際会議がありました。
ホルムズ海峡の自由な航行についての会議で、フランスとドイツの呼びかけで開催されました。オンライン・オフライン合わせ49か国の首脳・代表が参加しました。韓国からは李在明大統領がオンラインで出席しています。
青瓦台によると、李大統領は、フランス・英国・ドイツ・イタリアの首脳の次に発言しました。
「ホルムズ海峡の封鎖に世界のエネルギーや金融、産業、食糧安保の全般が揺れる状況」に憂慮を示しました。
さらに韓国が「ホルムズ海峡を通じ原油の約70%を輸入する核心的な利害当事国である点」を強調しながら、「海峡内の航行の自由の保障のため、実質的に寄与するという強い意志を明かした」とのことです。

17日、会議に参加する李在明大統領(左端)。青瓦台提供。
同会議を詳細に報じた20日付の日刊紙「朝鮮日報」の記事によると、ノルウェー外相は同会議を「今回の戦争に参加しない上に、米国とイスラエルはもちろん、イランとも同盟を結びたくない第三国達の連合」と位置づけたそうです。なお、米国は参加していません。
何をどうするのか、具体的な内容についてはこれから決めていくようですが、米国一辺倒だった韓国外交は少しずつ新しい方向へと進んでいるようです。
戦争協力ではない国際協力の実現に向け、しっかりと動いてほしいものです。一方、日本の高市首相はなぜ、この会議に参加しなかったのか(日本からはNSCから参加)。その背景も知りたいところです。
5. 今日の時事韓国語「국중박」
「クッチュンバッ」と読みます。漢字では「国中博」。そうです、国立中央博物館の略語です。トーハク(東京国立博物館)のようなものです。なんでもかんでも略しますね。
今日はここまでです。
一本目の「4·19」が長くなりすぎましたが、それでも全然書きたりません。以前つくったYouTube映像があるので、お時間ある方はいちどご覧ください。
それではまた明日。
ありがとうございます。
アンニョンヒケセヨ。(徐台教)
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