【デイリー・コリア・フォーカス】26年4月17日号

皆さま、アンニョンハセヨ。
4月17日、金曜日です。金浦のカフェから「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。
今日は日中、とある仕事で必要な資料の読み込みをしなければならず、ニュースレター作業の開始が大幅に遅れました。なんと、19時です(!)。
さっそく、本論に入ります。
(1)米国・イラン関係と朝鮮半島の‘共通項’は「平和共存の原則」
まずは、興味深いレポートを紹介します。韓国の国策シンクタンク「統一研究院」から今月15日に発表された『ホルムズ海峡から眺める韓半島の平和共存』というものです。
著者は徐輔赫(ソ・ボヒョク)専任研究委員です。朝鮮半島をはじめ世界の平和体制の研究で知られる専門家です。拙著『分断八〇年』にも登場する旧知の人物でもあります。
米国とイランは現在、休戦期間を設け、終戦に向けた協議を進めています。レポートはそんな中、今なお朝鮮戦争の休戦協定の下にある朝鮮半島からの視点をもって、米国とイランの未来を照射します。
レポートを貫通するテーマは「平和共存」です。これは李在明政権の対北朝鮮政策のテーマでもあり、イランと米国にとっても終戦協議が目指す成果として位置づけられるものです。
とはいえ、これは抽象的な概念であると徐氏は指摘します。
その上で平和共存を、敵対的共存・競争的共存・協力的共存・制度的共存の四つの水準・形態に分類します。
朝鮮半島については「1953年の休戦協定以降の70年間、敵対的共存と競争的共存の間を抜け出せていない」と診断します。
具体的にはどういうことでしょうか。
レポートによると、敵対的共存とは「双方が戦争後にも相手の存在を公式に認めず、敵対感を持続させながら、戦争の再発を抑制する限度の中で、政治・軍事的な措置を取る水準」というものです。
一方で、競争的共存については、「互いの実体を認め、部分的に交流・協力を行う水準の関係」となります。
確かに、朝鮮半島は休戦協定の直後から冷戦終結までは敵対的共存、2000年代に一時、競争的共存がありましたが、今はまた敵対的共存の状態にあると見ることができます。徐氏も同様に書いています。
余談ですが、この徐輔赫研究委員は豊富な読書量で知られ、そこから得られた様々な概念を用い言語化する点に長けています。
徐氏はこうした歴史的な経緯から、米国とイランの関係に通じる教訓を引き出します。それが「平和共存の原則の否定」です。
この原則については国連憲章を引用しながら、▲主権の尊重と領土的な統合性の保障、▲不可侵、▲平等と互恵、▲国際紛争の平和的な解決、▲協力、といったものであるとします。
しかし、米国がイランに提示した15項目にわたる提案の中に、こんな平和共存の原則が存在しない一方、イランが米国に提示した10項目の提案の中には「不可侵」が含まれている点に、徐氏は注目します。
そしてここから、過去30年にわたり、米国が北朝鮮との間の核交渉において失敗を続けてきた点を読者に想起させながら、その核心的な原因として「敵対的なアイデンティティ」があると指摘します。
徐氏はこれを「存在する一つの政治・経済体制として認めず、『悪(の枢軸)』としてアプローチする姿勢」と表現します。
米国もイランも、互いに「平和共存の原則」を深く考慮せず、強い敵対意識を持っている中で、米国が北朝鮮に対し持ち続けてきた上記のような姿勢をイランに対しても持ち続ける限り、交渉の成功はおぼつかないと見立てているのです。
トランプ大統領が米国の交渉案が受け入れられない場合に、軍事行動を再開すると脅したり、イスラエルによるレバノン空襲を黙認する態度を続ける場合、平和共存の道は途絶えるというのです。
いったん、レポートの引用はここまでにします。
徐輔赫氏の指摘は、以前わたしがニュースレターで引用したような、「アメリカは自分たちのことしか考えない」という朝鮮半島専門家の言と一脈通じるものがあります。
イランに対する「上から目線」とも言うべき敵視感情がある限り、敵対的共存にたどりつくことすら困難になるでしょうし、それができたとしても、不安定なものになるということです。
さすが専門家という指摘でした。
レポートでは逆に、米国とイランの関係が朝鮮半島に与える示唆点についても分析しています。これも非常に興味深いものなので、ごく短く引用します。
以下の五つのポイントがあります。
①非核化の交渉と平和協定の交渉を分ける
②南北関係を国際関係の延長線上で再構成する
③消極的平和(戦争のない状況)がいかに大切かの確認
④平和共存に対する柔軟なアプローチ
⑤平和共存を支える思想(共存・共栄・共感)の提示
②は「統一を、理念と国家の一体化ではなく、韓半島型の平和共同体を作って行く過程へと再定義する」というものです。
何よりも共感できたのが③です。戦争のない状態を維持することの大切さが、米国によるイラン侵攻から浮き彫りになった点は、今後の南北関係にも大きな影響を与えるでしょう。
見てきたように、今なお休戦協定や米朝・南北対立の枠組みの中にある朝鮮半島にとって、今回の中東での戦争から得られる教訓は多大なものがあります。
(2)今日の時事韓国語「생중계」
「センチュンゲ」と読みます。漢字では「生中継」となります。
先ほど、Xを眺めていたら、16日に高市首相が「中東情勢に関する関係閣僚会議」をわずか15分しか行っていないという書き込みを見かけました。
朝日新聞が公開している首相動静を調べると本当でした。高市首相のXに公開されていた大仰な会議の写真からは想像もできない短さでした。

「中東情勢に関する関係閣僚会議」の様子。高市首相のXより引用。
これを見て、韓国政府が行っている同じような会議が思い浮かびました。本ニュースレターで何度も引用しているような「国務会議(閣議)兼非常経済点検会議」のことです。
毎週行われるこの会議は、2時間以上にわたって行われ、その全てが生中継されています。中継後にはアーカイブ動画として公開されます。
中央集権国家で政治主導の韓国と日本では、国家運営の形がやや異なるのでしょう。一概に比べることはできませんが、透明性を担保しようとする韓国政府の立場は評価されてもよいでしょう。
今日はここまでです。
夜は家事の他に別の仕事があるためです。時間切れです。今日いろいろと書くはずだった内容は来週またお届けします。
それにしても、基本的に韓国や北朝鮮、南北関係で起きていることについて、お伝えしたいことがたくさんありすぎて、毎日のニュースレターでは間に合いません。
こうなるとやはりYouTubeの出番となります。スタジオとして使う離れの掃除を明日やるので、なんとしても4月内に始められるようにします。
それでは皆さま、よい週末をお過ごしください。
今週もお読みくださりありがとうございました。
アンニョンヒケセヨ。(徐台教)
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