【デイリー・コリア・フォーカス】26年4月13日号

本ニュースレターは、サポートメンバーおよび一般登録会員すべての方にお送りしております。
徐台教 2026.04.13
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

4月13日、月曜日です。ソウルは快晴です。今日も「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。

今週からニュースレターの形式を少し変えてみます。これまでのように項目別に分けるのではなく、レター形式で前日までに起きた内容をなるべく早く整理する形です。

変更の理由は、どうしてもリニューアルの準備に割く時間が足りなくなったしまったためです。

今も本ニュースレターの開封率は7割近く、少なくない方が読んでくださっています。

そうした中、変更するのは心苦しいのですが、リニューアルのためのクラウドファンディングを準備している中、このままだと何もかもが中途半端になる可能性があり、とても焦っています。ご理解いただけると幸いです。

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月曜日なので、週末の動きを整理してみます。

(1)李大統領により始まった韓・イスラエル間の「舌戦」…その読み方

まずは金曜日にもお伝えした、李在明大統領がXでイスラエルを直接批判した一件です。

これに対し、土曜日の早朝4時半頃(韓国時間)、イスラエル外交部のXの公式アカウントが李大統領の発言に対し「到底容認できない。強く非難されるべき」と書き込みました。

その約3時間後、李大統領がイスラエルと名指しはしないものの「絶え間ない反人権的・反国際法的な行動により、苦痛を受け苦しんでいる全世界の人々の指摘を(聞いて)、一度くらい省みることがあってもよさそうなのに、失望だ」とXに書き込みました。

そしてその後すぐ、韓国外交部がこれを支援する形でイスラエル外交部を批判しました。

「イスラエル外交部が、李在明大統領が特定の事案ではなく、普遍的な人権に対する信念を表明した書き込みの意図を、間違って理解し、これに反駁したことに対し、遺憾に思う」という形です。

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両国間のやり取りはここまでです。私はこれについて各種SNSで「李大統領の勇み足」と低く評価しました。

理由は大きく三つです。

一つ目は、メッセージが整頓されていないことです。批判をするならば、国務会議(閣議)での冒頭発言や演説、記者会見、外交部や青瓦台のメッセージなど、より重みのある形式はいくらでもあります。

大統領個人がXで投稿することで、いきなり「戦線」が開き、ごちゃごちゃになりました。

二つ目は、外交的な準備ができていないことです。韓国の外交政策が対米追従をやめ、世界各国と等距離につきあう路線に変更した上でやるのならば、それはそれで結構です。

しかし韓国外交がそう変わった形跡はありません。それなのに、大統領の一存でとつぜん何かが変わってもよいのでしょうか。実用外交を掲げるのならばより周到な根回しがあるべきです。それが李在明の外交ではなかったのでしょうか。

三つ目は、前例から学んでいないことです。XやFacebookでは、李在明大統領の発言を称賛する日本の市民の声がたくさんあります。私の「勇み足」という見方にも納得がいかないという反応が少なからずありました。

それはそれでよいのですが、普段から韓国の大統領制度そのものが持つ、権威主義的な性格に強い問題意識を抱いている私の目には違った形に写るのです。

政府としての手続きを踏んで決めた政策を大統領がSNSで宣伝したり、誇ったりするのは自由です。

しかし手続きを飛び越す行動を(自身も政府も)許容する場合、その行き着く先がどこかに対する憂慮があるのです。トランプにしろ、尹錫悦にしろ、卑近な例はいくらでもあります。

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こう書くと必ず「ではあなたはイスラエルにダンマリで良いというのですか」という人が出てくるのです、そういう話ではないことをご理解いただければと思います。

なお、野党の「北朝鮮の人権にはダンマリなのか」という批判ですが、これをいつもの「レッテル貼り」と扱うことはできません。

北朝鮮の人権問題を表立って批判しないのは、南北間の「相互不干渉」原則によるものですが、この問題を進歩派が正面から扱わないことで、全体的な北朝鮮への関心が落ちていることを、もはや否定することはできません。遠からず適切な言及が必要でしょう。

韓国各紙の反応を見ると、保守紙は外交問題をもたらしたという認識、進歩紙では評価もしくはイスラエルに自省を求める論調でした。

しかし、与党内からは「事前にSNSにおけるメッセージを精査すべき」という声も出ているようでした。

長くなってしまったので一旦やめますが、とにかく「やるならしっかりやろう」と整理できます。韓国という国が国際社会に果たす責任があり、そうしなければ生きていけない時代です。

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(2)イラン・米国協議決裂に「ハノイ米朝決裂」を思う

週末には他に、イランと米国の交渉という大きな出来事があり、決裂に終わりました。

あくまで「核」で譲らないトランプ政権の姿勢を前に、韓国では19年2月のベトナム・ハノイの米朝首脳会談を思い出した人も少なくないようでした。

私もまた、「米国という国は自分たちの事しか考えない」という言葉が脳裏をよぎりました。過去、朝鮮半島問題を取材する中で韓国の元高官や専門家達から何度も聞いた言葉です。

米国は自国と釣り合う国はないと考えがその基底にあるというのです。このため、「アメリカは分かってくれる」という考えがいかに意味のないことなのかを、散々聞かされました。

北朝鮮も19年当時、「トランプは分かってくれる」と期待したのかもしれませんが、やはりそれはありませんでした。当時の米国は今よりも政府が機能していたため、なおさらです。

決裂によりその後、北朝鮮はより核に執着することになりましたが、イランはどう出るのでしょうか。

19年2月、ハノイ。二人とも今よりだいぶ若いですね。朝鮮中央通信より。

19年2月、ハノイ。二人とも今よりだいぶ若いですね。朝鮮中央通信より。

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(3)「戦時予算」が成立…スピード執行の計画

韓国国内としては金曜日10日の晩に、26.2兆ウォン(約2兆7500億円)の補正予算が成立しました。

一部増額ほぼ原案通りで、野党が批判していた国民の約70%を対象に約1万円から最大で約6万円分の地域クーポンを支援する「高油価被害支援金」も含まれています。

政府の企画予算処は、予算の85%を上半期の内に執行するとしています。「高油価被害支援金」は99%を目指すそうで、今月27日から申請が始まります。なお、永住権者、結婚移民者、難民認定者などの外国人も対象となります。

李在明政府はこれを「戦時予算」と名付けています。

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また韓国は今のところ、4月分、5月分と一定量の原油を確保することに成功しています。

4月7日の時点で、5月分は70%を確保したと政府が明かしていましたが、12日になって80%になったと明かしています。月に8000万バレルが必要なので、800万バレルの上乗せがあったことが分かります。

これにより、備蓄油の放出なしに5月まで乗り切れると金正官(キム・ジョングァン)産業通商部長官が12日に述べています。ナフサの供給についても「4月と5月には80%の水準になる」ともしました。

なお、ホルムズ海峡内に韓国籍の船は26隻が閉じこめられており、タンカーは7隻です。

大統領秘書室長が訪問したことで、カザフスタンからの原油輸入も見込めるという報道もあります。政府と企業が一丸となって原油確保に動いています。

一方で、3月2週目から政府がガソリン・軽油価格を抑制している中、3月4週目には双方の消費量が前週よりも1割以上増える統計が発表され注目されています。

「安いうちに給油しておこう」ということのようですが、節約を呼びかける政府の動きとは逆の結果になりました。人間の心理というのは面白いものです。

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(4)労働分野にも切り込む大統領

最後は労働分野でのお話です。10日、李大統領は韓国最大の労組組織である全国民主労働組合総連盟(民主労総)の指導部と会い、いくつかの重要な発言を行いました。

一つは零細自営業者の集団的交渉権についてです。例えば、チェーン店や納品業社、配達ライダーといった同じ業態の零細自営業者が横のつながりを持てるようにしてはどうかというものです。

チェーン店の店主同士がフランチャイズ本部と交渉できるようにするイメージです。実際に昨年12月に法改正がされており、今年12月31日からはこのような行動が可能になります。李大統領の発言は、この範囲を広めることを提案するものでした。

次に、非正規雇用を2年続ける場合、正規雇用に転換しなければならないという法律が作用していない点を指摘しました。2年に達する直前に契約を終える事が増えているというものです。

一方、民主労総側は、製造業の現場にAIロボットが進入し始める現状を受け、政府がAI導入と雇用の問題を調整する「AI労働影響評価」を行う制度を導入しようと提案しています。これは目下、非常に注目されている分野です。

いずれにせよ、韓国はとにかく大統領、大統領です。いかに大統領の影響力が大きいのかが分かるというものです。

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(5)民主共和制の基礎、大韓民国臨時政府樹立から107年

もう一つだけ別の話題を。

4月11日は大韓民国臨時政府樹立記念日でした。1919年の同日に上海で樹立したものです。

この時に宣布された大韓民国臨時憲章の第一条には「大韓民国は民主共和制にする」とあり、第三条には「大韓民国の人民は男女貴賤および貧富の階級がなく平等だ」とあります。

植民地下でありましたが、人々が王政への復古ではなく民主共和制を選んだこの時が、現在の韓国の始まりでした。

ソウルには大韓民国臨時政府記念館があります。ぜひ一度足を運んでみてください。

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(6)今日の時事韓国語「인권」

最後に、今日の時事韓国語は「인권」です。

「インクォン」と読みます。漢字では「人権」。本来ならば、誰もが納得する概念ですが、この前に「北韓」が付くと、韓国では途端に最も先鋭的な政治的議論となってしまいます。

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今日はここまでです。

やり方を変えてみましたが、分量も所要時間はあまり変わりませんでした(笑)。もう少し試行錯誤してみます。

それにしても、ハンガリーのオルバン政権が倒れたのは一番のニュースですね。人間の底力を見た思いです。

それではまた明日。

お読みいただきありがとうございます。

アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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