【デイリー・コリア・フォーカス】26年4月9日号

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徐台教 2026.04.09
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

4月9日、木曜日です。遅くなりましたが今日も韓国から、「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。

昨日は(正確には一昨日の晩ですが)、とても良い事がありました。あの!渡辺満里奈さんが拙著『『分断八〇年 韓国民主主義と南北統一の限界』を読んでいることが分かったのです。

渡辺さんは7日午後10時頃、「久しぶりに新幹線に乗ったんだけど、長い移動はじっくり本読めて楽しいな」とXに投稿されていたのですが、添付された写真になんと、本が写っていたのです。しかも、カバーは外され、ページの折り目も見えるなど、読み込まれた形跡が明らかにありました。

7日深夜の時点で知人から教えてもらい、早くにこの一件を知ったのですが、静かにしていました。というよりも、反応する気がありませんでした。反応するなら「分断八〇年を読み終えた」というような書き込みをされた時であり、今ではないと思ったからです。

しかし、たくさんの方が「渡辺満里奈さんが分断八〇年を読んでいる」ということ自体を喜んでくださり、X上で様々な反応をしてくださったため、これ以上反応しないのもおかしいと判断し、昨晩、お礼の書き込みをした次第です。とにかく嬉しい出来事でした。

ということで、今日の目次は以下の通りです。

1. 石破前首相が訪韓、日米韓軍事協力のビジョンを明かす
2. 「嫌われたい」が本音?北朝鮮外務省が韓国を「バカども」と表現
3. 今日の時事韓国語「중재」

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1. 石破前首相が訪韓、日米韓軍事協力のビジョンを明かす

石破茂前首相が7日から8日にかけて訪韓しました。韓国の民間シンクタンク「峨山(アサン)政策研究院」の招聘によるものです。

同氏は8日午前、同シンクタンク主催の大型シンポジウムで基調講演を行った後、青瓦台(大統領室)に移動し、李在明大統領と面会しました。

シンポジウムで石破氏は「五つの主要な安全保障上の課題」を掲げ、かなり踏み込んだ発言をしました。一つずつ見ていきます。

一つ目の「北朝鮮に対する抑止力」では、北朝鮮が核兵器計画と運搬手段の両方を着実に進めているという、脅威の認識を示しました。

そんな北朝鮮に対する懲罰的・報復的な抑止力を機能させるため、日米韓・日韓・韓米間の連係を通じた協力を「全く新しいレベルへと引き上げなければならない」と主張しました。

二つ目の「核の共有」はこの延長上にあります。

核を持たない韓国や、非核三原則を堅固に維持している日本にとって、現在の取り組みだけでは、日米同盟や韓米同盟における核抑止力の「信認性を強化するには不十分」という認識を示しました。

その代案として日米韓の三か国で「(核の共有のための)継続的な協議」を行い、「緊密な連係を維持できる恒常的な枠組みを早急に構築すべき」という考えを提案しました。

基調講演を行う石破茂前首相。峨山(アサン)政策研究院定提供。

基調講演を行う石破茂前首相。峨山(アサン)政策研究院定提供。

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三つ目の「台湾海峡の有事への対応」では、台湾有事の際に中国が日本を攻撃する可能性は「かなり低い」としながら、日本が存続危機事態と判断することのリスクを指摘しました。

一方で、台湾有事の際には日本国内の米軍基地が「ほぼ間違いなくフル稼働することになる」としながら、この時に韓国も日本と同様に重大な決断を迫られることになる点に触れました。

その上で、台湾有事と朝鮮半島の有事が同時に勃発する事態を防ぐために、日韓は戦略的な連携を深化させなければならないと主張しています。

四つ目は「アジア版NATO」です。いくつかのモデルを例示しながら、米国と安全保障条約を結んでいる国々間の水平的な結びつきを強化し、NATOのような枠組みに発展させる道筋を「最も現実的である」と強調しました。

また、これを実現するためには、日本が「戦争遂行能力の保有」という制約を克服しない限り困難であると指摘し、議論を求めていました。

最後は「日韓間の安全保障協力の強化」です。ここでは昨年9月、天安門広場に中露朝の指導者が並び立ったことや、イランをめぐる紛争を例に挙げながら、日本と韓国の緊密な協力が「地域および世界の平和にとって極めて重要」であると位置づけました。

その上で、今後の具体的なステップとして、日韓の「物品・役務相互提供協定(ACSA)の締結」を挙げました。これは自衛隊と他国の軍隊が軍需物資を相互に融通する協定です。日本はドイツ、英国、オランダなどと結んでいます。

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いかがでしょうか。

読者の中には、石破氏の首相在任時の姿から「自民党の中のリベラル」といった印象を持つ方が少なくないかもしれません。しかしその安全保障政策は、明らかに日米韓・日韓のさらなる軍事的密着を志向しています。

周辺国や国際情勢の脅威が高まっているという認識があり、その上でいわば「予防的措置」として日韓協力の深化を呼びかけているのは理解できるとしても、明確に一歩踏み出す措置を韓国に求めているのです。

石破氏を招聘した「峨山(アサン)政策研究院」が、こんな路線に親和的な保守派シンクタンクであることから、いくらかはその線に沿った主張があるかもしれません。

しかし、同氏が提案する五つの項目が日韓関係の次のステップであるとしたら、韓国内の反応は厳しいものになるでしょう。

特に韓国では「相互軍需支援協定」とも訳されるACSAへの反発は、進歩陣営で今なお強く存在します。「実用外交」を掲げる李在明政府の観点からも、陣営への深入りを招く選択は非常に悩ましいところでしょう。

石破氏による今回の基調講演の内容は、韓国のニュースで大きく扱われている訳ではありません。

そうとはいえ昨年まで首相を務めた人物を通じ、安全保障面における日韓協力の向かう先が、日米韓の軍事的なつながりを強化する方向であることが改めて明確になったという点で、注目に値します。

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青瓦台で石破前首相を歓迎する李大統領。青瓦台提供。

青瓦台で石破前首相を歓迎する李大統領。青瓦台提供。

90分にわたって行われた李在明大統領との午餐会(昼食会)では、日韓の外交関係についての会話が交わされました。青瓦台が公開した写真や映像を見ると、二人は大変楽しそうに見えます。

双方ともに、日韓の協力関係が重要である点に共感を示しました。

石破氏は「経済・社会・安保など多様な分野でより活発に疎通し、協力を拡大することが重要だ」としています。在任中に、最も力を入れた外交関係が日韓関係であるとも明かしています。「世界で最も立派な二国関係にしたかったし、今もそうだ」と述べています。

李大統領も日韓両国が困難な問題を管理し、未来志向的な協力を固く続けていく上で、石破氏が積極的な役割を果たすことを頼みました。

それにしても、過去にない日韓の友好ムードの根底に、23年3月の尹錫悦大統領による元徴用工裁判における「第三者弁済案」があることを否定する人はいないでしょう。

日本企業の賠償責任を韓国政府が肩代わりしたことで、「日韓関係」は大きく改善されたのです。日本政府、自民党、被告企業は何もしていません。

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2. 「嫌われたい」が本音?北朝鮮外務省が韓国を「バカども」と表現

7日のニュースレターを通じお伝えしたように、最近、南北間は「いい感じ」でした。

李在明大統領が6日、昨年から今年にかけて韓国の民間人が行った、北朝鮮へのドローン投入に対し遺憾表明を行ったことが発端でした。

これに対し北朝鮮の金与正・朝鮮労働党総務部長が談話で応え、その中で金正恩氏が李氏を「度量の深い」と評した発言を紹介するなど、一定の評価を表明したのでした。

さらに翌7日、韓国政府がこの出来事に触れ、「意味のある進展」、「南北首脳の意思が迅速に確認され疎通を行われた」(統一部)、「南北間の迅速な相互意思の確認」(青瓦台)と肯定的に受け止めていました。

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チャン・グムチョル副相の談話。朝鮮中央通信をキャプチャ。

チャン・グムチョル副相の談話。朝鮮中央通信をキャプチャ。

しかし同日、こんな流れを断ち切るような出来事がありました。

北朝鮮外務省のチャン・グムチョル第一副相の談話で、前述したような韓国の反応に言及しながら、「(このように)受け止めて、犬の夢のような戯言を言うのならば、これはやはり世人を驚かす、マヌケなバカによる『希望の混ざった夢占い』として記録されるだろう」と書いたのです。

チャン副相は10局の局長も兼ねる人物です。10局は過去、労働党の傘下で対南政策を担った統一戦線部が外務省へ移り生まれたもので、この日はじめてその存在が公開されました。

チャン氏は、先の金与正氏の談話の核心が「平穏に暮らしたいのなら私たち(北朝鮮)にちょっかいを出すな」という点であることを強調します。

一貫して、韓国側が勝手に都合の良いように解釈していると見下す姿勢を崩しませんでした。

国連人権委員会が3月30日(現地時間)に採択した北朝鮮人権決議案に、韓国政府も参加した点を取り上げながら、韓国を「周辺の犬につられて吠える、疥癬持ちの犬」に例えるなどひどいものでした。

談話の末尾は「朝鮮民主主義人民共和国の最も敵対的な敵手国家である韓国のアイデンティティは、当局者がどんな言葉と行動をとっても絶対に変わらない」と締められています。

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相変わらずといえばそれまでですが、大統領の遺憾表明に連なる反応としては、外交的な礼儀を欠いた内容です。

8日、青瓦台は「非難と侮辱的な言辞は、韓半島の平和と安定のためにならない」と明かし、「相互尊重の土台」を強調しました。

私はこの一連のやり取りを眺めながら、これもまた、北朝鮮にとってはある意味、当然の姿勢ではないかと思いました。

23年末の金正恩氏による「敵対的二国家」宣言以降、韓国との関係を切り離す北朝鮮の姿勢は一貫しています。

それは韓国と距離を置くというレベルではなく、韓国の影響が北朝鮮国内に一切およばないようにすると言わんばかりに徹底したものです。背景には韓国文化の流入を防ぐ目論見があると見られています。

今回の突き放すような談話も、その延長線上にあるのではないでしょうか。

韓国が北朝鮮との関係を少しでも深めようと踏み出してきそうな時に、敢えて突き放し、これを事前に遮断する役割を果たしたのではないかと思うのです。

チャン氏の談話内容は、8日晩の韓国の地上波ニュースでもしっかりと報じられています。

これを見た韓国市民は「北朝鮮はやはり変わらない」と少なからず失望するでしょう。これこそが、北朝鮮当局のねらいではないでしょうか。

韓国の世論が北朝鮮を心理的に見捨て、切り離す時にこそ、北朝鮮は韓国の影響から完全に逃れることができるからです。

極端な見方かもしれませんが、南北の政府が見ている世界はかくも異なるのだなと、改めて認識する出来事でした。

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なお、北朝鮮は7日に一度、8日に二度、弾道ミサイルの発射実験を行っています。9日、朝鮮中央通信はこれらのミサイルが集束弾(クラスター爆弾)の試験であったことを明かしています。

前述したような石破前首相の立場と、北朝鮮政府の立場。韓国はどんな外交姿勢を取ればよいのか、難しい局面にあります。9日から10日にかけて、王毅・中国外交部長が6年7か月ぶりに訪朝します。

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3. 今日の時事韓国語「중재」

「チュンジェ」と読みます。漢字では「仲裁」です。

8日朝に、米国による全面攻撃がギリギリで回避されたましたが、その背景にパキスタンの仲裁がありました。朝鮮半島問題における仲裁者はどの国なのでしょうか。

8日、統一部が「韓半島における平和体制構築のための4者協議シナリオ開発」という研究課題で、公募を始めました。この場合の4者というのは「南北米中」です。韓国は敵対を宣言してやまない一つの国と、二つの大国を相手にしなければなりません。可能でしょうか。

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今日は以上です。

午後6時にもなると、前日からのニューストピックが渋滞してしまいます。仕方ないですが、その分、ニュースの読み方に重点を置いてお伝えするようにしました。

それではまた明日。

アンニョンヒケセヨ。ありがとうございます。(徐台教)

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