【デイリー・コリア・フォーカス】26年4月7日号

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徐台教 2026.04.07
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

4月6日、火曜日です。今日も韓国から「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。

毎日、様々な場所、分野で本当に多くの出来事があり、報道記事があふれています。もちろん、全てを知ることなどはできず、どうしても芸能ニュースが後回し(というか娘に聞く以外はほぼ知らず)になったりしますが、社会・政治・国際分野の動きににはできるだけ目を通すようにしています。

ご存知のように(?)、私の一番の関心分野は南北関係、つまり大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の関係です。しかし、これだけを見る場合、視点はどんどんマニアックになっていかざるを得ません。

マニアックは専門的と言い換えることもできるでしょう。そんな知識も必要ですが、韓国社会において南北関係の問題が占めるポジションや、人々の関心度合い、世論のありかといったものを測る場合には、周辺事情への理解が欠かせません。

問題自体の理解と、問題がどう動くかへの理解は異なるということです。

余談だけで終わってしまいそうなので、本論に入ります。

今日の目次は以下の通りです。今日こそは一つ一つを短く書きます。

1. 「極右ユーチューバー隆盛」尹錫悦前大統領の弾劾から一年
2. 韓国の日刊紙、売り上げ1位はどこ?
3. 李在明大統領が北朝鮮への「ドローン投入」に遺憾表明
4. 今日の時事韓国語「특사」

***

1. 「極右ユーチューバー隆盛」尹錫悦前大統領の弾劾から一年

25年4月4日、憲法裁判所が尹大統領の罷免を宣告しました。

その内容の詳細は昨日のニュースレターに書いた通りですが、リベラル系日刊紙『京郷新聞』が6日付で掲載していた、面白い記事を紹介します。

同紙はなんと、罷免直後の昨年5月から、韓国の極右YouTubeチャンネル80か所をモニタリングしてきたそうです。そして約一年経ったいま、その内の60か所のチャンネル登録者が増えていることを明かしました。

ちなみにここでいう「極右」は、同紙によると「尹錫悦前大統領による不法な戒厳を擁護し、弾劾に反対するといった内容を扱った」という点を根拠とするものです。

一般的に極右は「反民主主義」と理解されることが多いですが、その線で考えればよいでしょう。

***

栄えある1位は「ペ・スンヒ弁護士」というチャンネルです。161万人(25年5月、以下も同じ)から177万人(26年4月5日、以下も同じ)へと登録者数が増加しました。

女性弁護士のペ・スンヒさん。私も何度か怖いもの見たさで聞いたことがあるのですが、偏り方がハンパじゃない方です。

そしてこんな人が、YTNという権威あるニュース専門チャンネルの朝のラジオニュースを担当していたことがありました。

YTNが民営化した24年4月から、非常戒厳を宣布した尹錫悦氏に対し国会が弾劾訴追案を可決する直前(12日)の24年12月12日に辞めるまで続いていました。

私はもう何年も、毎朝、YTNラジオのニュースを聞いているのですが、このペさんは極め付けでした。とにかく尹錫悦の肩を持ち、時代遅れの反共思想も交えながら、めちゃくちゃな放送でした。

辞めてホッとしたのをよく覚えています。チャンネルの様子は以下の通りですが、リンクは貼りません。観る価値がないチャンネルです。

ペスンヒ弁護士のチャンネル。こんなファンシーな内容ではありません。

ペスンヒ弁護士のチャンネル。こんなファンシーな内容ではありません。

***

2位は老舗の「神の一手」です。ここは161万人から158万人へと登録者数が減っています。極右デモの司会を務めるシン・ヘシクという人物が主宰するチャンネルです。その様子は、著書『分断八〇年』でも触れました。

3位は「シン・インギュンの国防テレビ」で151万から153万人への増加です。4位は尹錫悦氏も観ていたという「コ・ソングクTV」で126万から133万人へと増えています。

そして10位に「チョン・ハンギルニュース」が84.2万人でランクインしました。25年5月からなんと、56.3万人の増加です。元予備校講師で極め付きの陰謀論者です。私が愛用するカフェのオーナーも最近、ファンになってしまい頭が痛いです。

同紙の記事によると、この期間、極右YouTubeは全体の平均として登録者が15%増えたそうです。増加数は280万2300人程度とのことです。極右思想が次第に広がる韓国社会の一断面を表す数字と言えそうです。

***

2. 韓国の日刊紙、売り上げ1位はどこ?

次もメディア関係です。ネットメディア『スローニュース』が4月6日に報じていました。

文字通り、韓国の各日刊紙の年間売り上げを整理したものです。その内容は以下の通りです。4位以下は数値が出ていなかったので、私が自分で調べました。

1位:中央日報(3,210億ウォン/約340億円)
2位:韓国経済(2,970億ウォン/約314億円)
3位:朝鮮日報(2,894億ウォン/約307億円)
4位:東亜日報(2,715億ウォン/約287億円 ※24年)
5位:毎日経済(2,347億ウォン/約249億円 ※24年)
6位:京郷新聞(766億ウォン/約81億円 ※24年)
7位:ハンギョレ(760億ウォン/約80億円)
8位:韓国日報(738億ウォン/約78億円 ※24年)

スローニュースによると、1位の中央日報は、新聞の売り上げは24年の1766億ウォンから1889億ウォンへと少し増加した程度でしたが(これもすごいと思いますが)、広告事業など他の売り上げが969億ウォンから1320億ウォンへと増えたそうです。

また、2位の韓国経済も大きく躍進しました。こちらは「文化芸術の展示、屋外広告など事業の多角化に成功した」そうです。なお、3位の朝鮮日報は24年の4387億ウォンから大きく減少しました。

日本はどうでしょうか。

読売新聞2270億円、朝日新聞1758億円、日本経済新聞1770億円など、桁が違います。これは日本の人口が韓国の2.5倍に達する点など様々な理由があり、単純に比べることはできないでしょう。

一方、韓国日刊紙各紙の部数はどうでしょうか。

これはなんと、正確には分かりません。日本と同様にABC協会があるのですが、部数を水増ししていたことが分かり、21年7月に政府の支援金が打ち切られるなど、信頼を失いました。その後、日本のように部数が透明に公開されてはいません。

なお、同協会は昨年12月に最新のデータを公開しています。取り寄せて見てみましたが、主要紙はデータ提供を拒否しているようで、あまり意味のない統計でした。

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3. 李在明大統領が北朝鮮への「ドローン投入」に遺憾表明

毎週火曜日に行われる国務会議(閣議)ですが、今週は非常経済点検会議を兼ね、月曜日の昨日6日に前倒しで開かれました。

非常経済点検会議というのは、中東情勢による経済的な悪影響を最小化するために設置されたものです。それだけにこの日は、中東情勢を受けたエネルギー政策に重点が置かれました。

また、26年第一四半期の国政課題の推進状況といった、重要な議題も取り扱われました。

これら全てを一度に扱うことはできないので、今日は「無人機(ドローン)再発防止および接境地域の平和安全の増進」というテーマにだけ触れます。

これに対し、李在明大統領は国務会議の冒頭発言で以下のように述べました。少し長いですが引用してみます。

現在の政府(李在明政府)になって、あってはならない、民間人による無人機事件が発生しました。さらにそこに、国家情報院の職員と現役の軍人が関わっていた事実が、捜査の結果、確認されました。

大韓民国の憲法と法律は、個人たちによる私戦行為、私的な挑発を禁じています。

国家の戦略上の必要に応じてそのような事を行う際にも、極度に慎重であらなければならないのに、個人的にこのようなな『対北挑発行為』をしたという事実がとても残念です。

いったい誰のためになるのか、しっかりと考えてみる必要があります。今回の事件により、誰よりも接境地域の住民たちの憂慮が大きかったでしょう。深い労りの言葉をおかけします。

そして、たとえわが政府(李在明政府)の意図ではありませんでしたが、一部の無責任で無謀な行動により、不必要な軍事的な緊張が誘発されたことに対し、北側に遺憾の意を伝えます。

4月6日李在明大統領の国務会議における冒頭発言
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過去に何度もお伝えしてきたように、李在明政府が発足した25年6月以降、4度にわたって北朝鮮にドローンが投入されました。目的は核施設があるとおぼしき地域の偵察(撮影)でした。

前出のように、民間人によるものですが、軍警による合同捜査の結果、軍や情報機関が「個人的に」関わっていたと結論付けられています。民間人1人、将校2人、国情院職員1人が書類送検されています。

この出来事に関しては過去、南北関係を主管する鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官が二度にわたって遺憾の意を表明していますが、大統領による遺憾表明ははじめてのことです。

原稿を読んでいた李大統領ですが、「北側に遺憾の意を伝えます」という部分ではしっかりと顔を上げていました。南北関係の文脈では遺憾というのは、謝罪を意味します。

北朝鮮に遺憾の意を表明する李在明大統領。国営放送KTVをキャプチャ。

北朝鮮に遺憾の意を表明する李在明大統領。国営放送KTVをキャプチャ。

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さらに李大統領はこう続けました。やはり引用します。

関係部署は類似の事例が再発しないように、即刻的な制度の改善とともに、今すぐ執行可能な措置を迅速に取るようにしてください。

世界各地の紛争により、共同の規則と互恵に基づく国際秩序が大きく揺らいでいます。このような時期だからこそ、韓半島の平和と安定が何よりも重要で、また、これに責任を負うべき主体は、私たち自身であることを明確に認知しなければなりません。

冷酷な国際秩序の変化を鋭意注視しながら、韓半島の平和のためにより責任ある行動が必要な時です。

4月6日李在明大統領の国務会議における冒頭発言

これはまさにその通りで、世界各地で紛争が起こる中、朝鮮半島の安定は韓国の生存に直結する問題となっています。

これを韓国みずからがしっかり責任を持って管理することの大切さを表現したと言えるでしょう。韓国は朝鮮半島の主体であるということです。

こんな李氏の遺憾発言について、北朝鮮側もすぐに反応しました。

6日夜、朝鮮労働党の金与正(キム・ヨジョン)総務部長が談話を出し、その中で李大統領の遺憾表明について「とても喜ばしいことで、(韓国)自身にとっても賢明な対応だとわが政府は評価した」と言及しました。

また「わが国家首班」、つまり金正恩国務委員長の言葉として「率直で大胆な人間の姿勢を見せたものと評した」と伝えています。

これに対し、7日、青瓦台(大統領室)は「今回の南北間による迅速な相互の意思確認が、韓半島の平和共存に寄与することを期待する」と明かしています。金与正氏のコメントへの評価は避けました。

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一連の動きをどう見るべきでしょうか。

昨日6日、北朝鮮専門家たちと話をする機会があったのですが(遺憾発言が出る前)、北朝鮮はとにかく「『韓国が手を出さなければ何もしない』という立場ではないか」という見方が一般的なようです。

国際的に紛争が続く今のところは、李在明政府のやり方がひとまずは正しいということになるでしょう。

しかし、「(韓国側は)いかなる接触の企図も断念すべきだ」と前出の談話で金与正氏が明かしたように、南北の接触は容易ではないでしょう。一歩一歩、です。

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4. 今日の時事韓国語「특사」

「トゥクサ」と読みます。漢字では「特使」です。

韓国ではいま、二つの特使が話題です。

一つは日本と同様に原油確保のためのものです。7日、姜勲植(カン・フンシク)大統領秘書室長は自身が‘原油特使’として、カザフスタン、オマーン、サウジアラビアを訪問することを明かしました。今晩、出発するそうです。

もう一つの特使は、先に振れた北朝鮮への特使です。こちらは国策シンクタンクから過去の北朝鮮向け特使についてまとめた関連レポートが出るなど、にわかに注目を集めています。現時点で政府は特使派遣を否定しています。

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今日はここまでです。

韓国では今日、巡礼文化を作った「済州オルレ」の創設者、徐明淑(ソ・ミョンスク)さんの訃報がありました。

オルレというのは済州島の方言で「道」ですが、徒歩で済州島を回る「オルレキル」を張り巡らし、大いに済州島の魅力を高めた人物でした。日本各地にある「オルレ」のはしりでもあります。

徐明淑さんはまた「時事ジャーナル」という週刊誌の編集長として辣腕を奮った、伝説のジャーナリストでもあります。女性ではじめてメジャー紙の編集長になった人物でした。

ここで薫陶を受けた人物が韓国の調査報道分野にたくさんいます。68歳。仕事でたいへん仲良くしていた妻は涙にくれています。残念です。

それではまた明日お届けします。

アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

徐明淑さん。ご冥福をお祈りいたします。

徐明淑さん。ご冥福をお祈りいたします。

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