【デイリー・コリア・フォーカス】26年4月2日号

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徐台教 2026.04.02
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

4月2日、木曜日です。今日も韓国から「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。

今朝の気温は4度でした。節約のためオンドル(床暖房のようなものです)を切っていたので、寒さで目が覚めました。

今は14度まで上がりなかなかの陽気ですが、まだ「春!」とはいかないようです。それにもかかわらず、小さな庭では雑草がどんどん芽を出し、大きくなっています。

ここ最近は、一つのテーマに文字数を費やしてきたので、今日は短めのものをいくつかお届けします。目次は以下の通りです。

1. 39年ぶり改憲に向け「国民の力」以外の政党が連係…カギは‘造反’
2. 尹錫悦氏に1億円以上の「領置金」あつまる
3. 李在明大統領や各政党の支持率を読む
4. 今日の時事韓国語「종전」

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1. 39年ぶり改憲に向け「国民の力」以外の政党が連係…カギは‘造反’

1948年の韓国政府樹立以降、10度目となる改憲に向けた韓国内の動き。3月17日のニュースレターで一度、詳しくお伝えしました。

実はあの記事の最後尾の部分、つまり、取材を元に今後の展開について書いた部分は、非常に確度の高い情報に基づいたものでした。

それから二週間、改憲の動きはどうなっているのでしょうか。結論から言うと、その通りに少しずつ進んでいます。

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3月19日、国会で改憲のための「院内代表連席会議」が開かれました。

禹元植(ウ・ウォンシク)議長をはじめ、与党・共に民主党(議席160)、第二野党の祖国革新党(同12)、第三野党の進歩党(同4)、第四野党の社会民主党(同1)、基本所得党(同1)の院内代表(国対委員長に相当)が参加したものです。

同会議はさらに3月30日に二度目の会議を持った上で、同31日に国会で記者会見を行いました。

禹元植議長はこの日、「国会は圧倒的多数の(国民の)思いと国会諸政党の意志を集め、今日から憲法改定安の発議手続きに着手する」と述べました。

会見ではまた、「超党的な改憲推進のための共同宣言文(以下、宣言文)」が発表されました。

3月30日の二度目の連席会議の様子。中央が禹元植議長。禹元植のFacebookより引用。

3月30日の二度目の連席会議の様子。中央が禹元植議長。禹元植のFacebookより引用。

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宣言文の中には、具体的な改憲案が含まれていました。内容は以前お伝えしたように三つです。

(1)題名および前文の改定

憲法の題名を漢字の「大韓民国憲法」からハングルの「대한민국헌법」へとする。

さらに、前文にある「4·19民主理念」を「4·19革命、釜馬(プマ)民主抗争および5·18民主化運動の民主理念」に改定するものです。後は改憲回数と日付けの更新です。

漢字からハングルに変える理由については、2026年がハングルの日制定から100周年にあたること、さらに訓民正音の発表から580周年であるととを理由に挙げています。

釜馬民主抗争(1979年)と5·18民主化運動(1980年)については、1960年の4·19革命以降の民主主義の歴史が反映されていないという問題意識からとなります。

「釜馬民主抗争」とは1979年10月に、韓国南東部の釜山(プサン)と馬山(マサン)で起きた民主化デモです。これを力づくで弾圧したことが、同年10月26日の金戴圭(キム・ジェギュ)中央情報部長による、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領暗殺につながりました。

「5·18民主化運動」は1980年5月18日から27日にかけて光州(クァンジュ)で起きた民主化闘争です。戒厳軍と対峙した市民は大きな犠牲を払いましたが、韓国市民を奮い立たせ、1987年の民主化を大きく引き寄せました。

また、南東部(嶺南ヨンナム)の釜山・馬山と、南西部(湖南ホナム)の光州を並べることで、根強い地域対立感情への配慮も存在しています。

光州民主化運動については、私が6年前に書いたこの三本立ての記事が詳しいです。未読の方はぜひお読みください。

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(2)非常戒厳を規定する憲法77条の4項と5項の改定

憲法77条4項ではまず、大統領が非常戒厳を宣布する際には、国会への通告と国会の承認を必ず得るようにしました。承認が否決されたり、48時間以内に承認されない場合に、非常戒厳は即時効力を喪失します。

これは、大統領の一存で非常戒厳が宣布されることを防ぐためです。

24年12月3日の尹錫悦大統領(当時)による非常戒厳は、要件も手続きも無視したものですが、現実として非常戒厳として成り立ちました。こうした出来事が二度と起こらないようにするためのものです。

宣言文では国会が従来持っていた「戒厳解除要求権」を「戒厳解除権」へと強化すると表現しています。

また5項では、戒厳の宣布後に、国会で戒厳解除が決議された場合には即時、戒厳が解除されるように改定されます。

24年12月の非常戒厳の際には、国会での解除決議案の可決後、尹錫悦氏が国務会議(閣議)を通じこれを受け入れ解除するまで、約3時間半かかりました。

余談ですが、それでも戒厳制度自体を無くさないのはやはり、南北対立と朝鮮戦争が未だ休戦状態にあることが関連しているのでしょう。

2日、エネルギー節約のため自転車で国会へと出勤した禹元植議長。背景の国会本会議上には「すべての権力は国民から生じる」という文句が刻まれている。これは憲法1条2項「大韓民国の主権は国民にあり、すべての権力は国民から生じる」から取られたもので、非常戒厳阻止(早期解除)から一年にあたる昨年12月3日に合わせ新たに刻まれた。Facebookより引用。

2日、エネルギー節約のため自転車で国会へと出勤した禹元植議長。背景の国会本会議上には「すべての権力は国民から生じる」という文句が刻まれている。これは憲法1条2項「大韓民国の主権は国民にあり、すべての権力は国民から生じる」から取られたもので、非常戒厳阻止(早期解除)から一年にあたる昨年12月3日に合わせ新たに刻まれた。Facebookより引用。

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(3)憲法123条2項を改定

憲法の第9章「経済」の中にある123条2項を、従来の「国家は地域間の均衡ある発展のために地域経済を育成する義務を持つ」から、以下のように改定します。

「国家は全ての国民が居住地域と関係なく、均等な生活の質と機会を享受できるよう、地域の経済を育成し、生活の基盤を構築し、地域間の格差を解消し、均衡ある発展を促進する義務を持つ」

欲張りな内容ですが、非常に重要なものです。

これは文字通り、韓国の地域間の格差を解消し、均衡な発展をもたらすことを義務づけるものです。従来の「地域経済の育成」よりも先を行く内容であると宣言文では説明されています。

ここでの「生活の基盤」には、教育・医療・文化・雇用・住居・交通などが包括的に含まれるとします。地方消滅の危機がさけばれる中、憲法に「地域(地方という言葉は見下すようなニュアンスがあるため、今は使われません)」の概念をしっかり込める形です。

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いかがでしょうか。

私が一人の韓国市民として考える場合、上記の三つの内容は39年ぶりの改憲にあたり、十分に納得できるものであり、さらに「最小水準の案(皆が最小限合意できる内容)」という今回の改憲の趣旨に沿っていると思います。

しかし、最大野党・国民の力(議席数107)は31日の記者会見はもちろん、改憲を議論する連席会議にも参加してません。

その理由について、張東赫(チャン・ドンヒョク)代表は「国民に対し内容を知らせ討論する過程を持たず、改憲を推し進めるのは正しくない」と説明しています。

また、「李在明大統領の重任のためという疑いを持たれてしまう」旨を述べ反対しています。

この部分については、日本でも間違った情報で煽り立てる人が出てくると思うので書いておきます。将来的な改憲を通じ、大統領の任期が現在の5年一期から4年二期に変わることがあっても、それが現任の大統領に適用されることはありません。

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改憲を実現するためには「国会での発議→国会での可決→国民投票での過半数賛成」という段階が必要です。

発議には在籍国会議員(295人)の半数(148人)以上が必要で、これは与野党6党でカバーできます。

国会での可決には在籍議員の3分の2(197人)以上が賛成する必要があります。

現状では、与野党6党を合わせても188人であるため、可決のためには国民の力から最低でも9人が「造反」することが欠かせません。国民の党は「反対」の党議拘束をかけると見られます。

そこで改めて改憲案が重要になります。

今回の改憲は、尹錫悦による非常戒厳宣布のような事態が、二度と起こらないようにするためのものだからです。

これに反対する事は「尹錫悦に同調する」ことと、世論に受け止められる可能性が多分にあります。国民の力にとっては簡単な選択ではありません。

選挙日程も関連してきます。どういうことでしょうか。

今のところ、4月6日に改憲案が発議される予定です。この場合、国会での議決は5月4日から10日の間になると見られます。改憲案の議決は記名投票であるため、国民の力から何人が賛成票を投じたのかが分かります。

そして6月3日は統一地方選です。

つまり同党が改憲案に反対する場合、尹錫悦と決別できない党という印象は世間でさらに強まり、統一地方選に不利にはたらく可能性があります。このため、造反者が出ると目算できます。

改憲を求める市民たちによる改憲。禹元植議長のFacebookより引用。

改憲を求める市民たちによる改憲。禹元植議長のFacebookより引用。

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実際に1日、同党の金龍泰(キム・ヨンテ、35)議員は自身のFacebookを通じ、党内に「改憲議論に参加しましょう」と呼びかけました。「現在の改憲案には国民の力が反対する内容がない」とはっきりと述べています。立派です。

同党には他にも数人、造反が見込まれる議員がいますが、その数は今後も増えていくと見られています。

ちなみに、24年12月14日の尹錫悦弾劾訴追案が国会で可決された際には、同党から最低でも12人の造反者が出ました。当時は無記名投票でした。

このように、39年ぶりの改憲は次第に現実味を帯びてきています。韓国の憲政が一歩前に進むことが期待されます。

韓国の歴代改憲一覧。筆者作成。

韓国の歴代改憲一覧。筆者作成。

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2. 尹錫悦氏に1億円以上の「領置金」あつまる

一つ目を長く書きすぎてしまいました。次は脱力系(?)のニュースです。本当に脱力しますよ。

1日、共に民主党の金容民(キム・ヨンミン)議員が法務部の資料を元に公開したところによると、昨年7月10日に再逮捕されて以降、3月15日までの約8か月間、尹錫悦前大統領が12億6236万ウォンの領置金を得ていたそうです。

日本円で約1億3200万円という、とんでもない金額です。

領置金というのは、受刑者が使うためのお金です。1日2万ウォン(約2100円)まで使えるそうです。外部からは、差し入れのような形で送金することができます。

送金方法はネットにたくさん出ています。例えば郵便局を通じては、ソウル拘置所の住所と尹錫悦氏の受刑者番号があれば簡単に一日90万ウォンまで送れるとのことです。

拘置所内で保管できる領置金は400万ウォンまでと決まっており、それ以上になると個人の口座へと振り替える形になります。尹氏の出金回数は358回にのぼると金議員は明かしています。

このお金は支持者たちが主に、尹錫悦氏の弁護士費用のためにと寄付しているものです。「目標は1000億ウォン」という書き込みもありましたが、いずれにせよ、大変な金額が動いていることになります。

無期懲役判決を受けたとはいえ、大統領を最後まで支持するという人たちはたくさんいるのですね。脱力ならぬ脱帽です。

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3. 李在明大統領や各政党の支持率を読む

久しぶりに世論調査のお話です。よく韓国で一般的に参考できる世論調査会社として、「ギャラップ」、「リアルメーター」、「KSOI(韓国社会世論研究所)」があります。「世論調査コッ」を入れる人もいて、私も見ていますが、数値のブレが大きいためここでは3社を見ることとします。

まず、李在明大統領の国政評価です。肯定的と答えた回答者の割合は以下のようになります。これが支持率と見なされます。

AIにインフォグラフィックを作ってもらったため、余計な解説が入っています。

AIにインフォグラフィックを作ってもらったため、余計な解説が入っています。

「ギャラップ(調査期間3月24~26日)」肯定評価65%、否定評価24%
「リアルメーター(同3月23~27日)」肯定評価62.2%、否定評価32.2%
「KSOI(同3月23~24日)」肯定評価62.2%、否定評価32.6%

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肯定評価の根拠について「ギャラップ」では1位から順に、経済/民生(17%)、全般的(10%)、外交(8%)、不動産政策(8%)、コミュニケーション(7%)の順です。

「KSOI」では同様に経済回復(31.1%)、外交安保(10.6%)、福祉/労働(10.1%)、国民の統合(6.8%)、内乱勢力の剔抉(5.9%)の順でした。

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各政党の支持率については以下の通りです。調査期間は上記のものと同様です。

上記と同様です。説明は無視してください。

上記と同様です。説明は無視してください。

「ギャラップ」共に民主党46%、国民の力19%、改革新党3%、祖国革新党2%、無党層27%
「リアルメーター」共に民主党51.1%、国民の力30.6%、改革新党2.7%、祖国革新党1.6%、進歩党1.5%、無党層10.2%
「KSOI」共に民主党46.8%、国民の力27.1%、改革新党3.7%、祖国革新党2.7%、進歩党2.1%、無し12.4%

多少ばらつきがありますが、与党・国民の力が圧倒しています。国民の力の低迷の半分以上は、尹錫悦氏と完全に決別できない点から来ていると見るべきでしょう。

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4. 今日の時事韓国語「종전」

「チョンジョン」と読みます。漢字では「終戦」です。最近ニュースでとみに聞かれる単語です。戦争はいつ終わるのでしょうか。

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今日は以上です。

今日午後2時からは、李在明大統領が国会で補正予算案に関する施政演説を行いました。また、海向こうではトランプ大統領が国民向け演説を行い「イランへの強力な打撃」を行うことを明かしました。混乱は続きそうです。

こうした話は明日またしたいと思います。

それではまた。いつもありがとうございます。

アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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