【デイリー・コリア・フォーカス】26年5月15日号

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徐台教 2026.05.15
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

5月15日、金曜日です。5月ももう折り返しですね。今日も30度越えの陽気です。揺れるバスの名から「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。

今日の目次は以下の通りです。

1. 8年ぶりに’朝鮮’チームが訪韓、南北サッカー対決の「受け止め方」
2. 今日の時事韓国語「축구」

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1. 8年ぶりに’朝鮮’チームが訪韓、南北サッカー対決の「受け止め方」

皆さん、来週20日に韓国で南北朝鮮のサッカー対決があるのはご存知でしょうか。

アジアサッカー連盟(AFC)の女子チャンピオンズリーグ(AWCL)、準決勝の試合です。

朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)の「내고향녀자축구선수단(ネゴヒャンニョジャソンスチュックダン)」と韓国の「수원(スウォン)FC 위민(ウィミン)」が、韓国で試合をします。

朝鮮の「내고향녀자축구선수단(ネゴヒャンニョジャソンスチュックダン)」というのは、同国の企業「내고향(ネゴヒャン)」が運営する「녀자축구선수단(女子選手蹴球団)」のことです。

「내고향(ネゴヒャン)」をあえて日本語にするならば「わが故郷」となりますが、日本サッカー協会では「ネゴヒャン女子蹴球団」としています。

他方、韓国の「수원(スウォン)FC 위민(ウィミン)」は、水原(スウォン)市をホームとする女子サッカーチームです。日本では「水原FC」もしくは「水原FCウィメン」とされます。

ややこしいですが、本記事では「ネゴヒャン女子蹴球団vs水原FCウィメン」と称します。

顧客情報漏えいで話題のクーパンは、試合を無料で中継するとしています。同社提供。

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韓国メディアによると、ネゴヒャン女子蹴球団は選手27人とスタッフ12人、計39人が17日に韓国入りします。

朝鮮の選手団の訪韓は、2018年の平昌(ピョンチャン)五輪以来、8年ぶりとあって、韓国社会で高い注目を集めています。12日に売り出された一般チケット7000枚は半日で完売しました。

また、この試合には韓国の統一部が3億ウォン(約3200万円)の補助金を出し、3000人の合同応援団が結成されるといった盛り上がりも見せています。

試合は水原総合運動場で20日午後7時から行われます。私も当日は友人たちと見に行く予定です。

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一方、ネゴヒャン女子蹴球団の訪韓は、韓国に選手団を送った朝鮮側の真意がどこにあるのか、そして韓国はこれをどう受け入れるべきなのかといった問題を突きつけています。

何度かニュースレターでもお伝えしたように、南北関係は今、過去最大の断絶期間を迎えています。

2020年1月以降、南北を行き来した人物は一人もおらず、南北間を直接に結ぶホットラインも全て不通のままです。

それどころか、金正恩国務委員長(朝鮮労働党総書記)は韓国との関係を「最も敵対的な国家対国家の関係」と位置づけ、「韓国を同族という範疇から永遠に排除」すると言ってはばかりません。

この3月には、憲法からは祖国統一に関する一連の文言が削除されたばかりです。

こんななぞなぞのような状態をどう読み解けばよいのか。11日、国策シンクタンク「統一研究院」は『北韓、ネゴヒャン女子蹴球団の訪韓と意味』というレポートを通じ分析しました。今日はこれを紹介します。

レポートの表紙。

レポートの表紙。

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レポートでは今回の訪韓を、「行き詰まった南北関係の中で、北韓がどのような方式で、韓国との接触を管理しようとするのかを見せる事例」として受け止めています。

その上でまず、「今回の訪韓を南北関係改善の信号として解釈することには、慎重にならなければならない」とクギを刺しています。あくまでAFCが主管する国際大会の一部であることを「明確に認識すべき」と強調します。

つまり、今回の訪韓は南北交流という性質のものではなく、あくまで「国際スポーツという制度的な枠の中で、制限的に発生した南北接触」であるというのです。

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レポートは次に、なぜ「敵対的二国家を明文化した北側がチームを派遣したのか」について分析を試み、四つの理由を挙げています。

一つ目は、北韓が国際規定を守る国家であることを認識させる目的があるとしました。相手が韓国だからといって参加しないことは、北韓にとって今後、不利益につながる可能性があるとします。

二つ目は、北韓の女子サッカーチームの実力を対外的に誇示する目的です。

「ネゴヒャン」チームは既にリーグ戦で「水原」チームに勝っている上に、北韓女子サッカーは、2024年には20歳以下W杯で、25年には17歳以下W杯でいずれも優勝するなど(世界一です)、その実力は折り紙付きです。

「国際スポーツの舞台で正常的に活動する国家であるという点を見せることができる」としました。

三つ目は、国家代表ではないクラブチームであるからこそ、政治的な象徴性が薄まり、政治的な負担を軽減することが派遣につながったという見立てです。

過去、北韓の国家代表チームの訪韓には「南北関係の改善」、「民族同質性(の回復)」、「体育交流の再開」といった政治的な意味がついて回りましたが、今回はそれがないということです。

最後が興味深いのですが、北側が南北関係を「敵対的な二国家関係」に再規定したからこそ、韓国訪問がしやすくなったのではないかという見方です。

やや繰り返しのようになりますが、今回の派遣は北韓にとって、「二つの国家関係」という議論の枠組みと、「国際スポーツへの参加」を並行させる事例と、レポートでは整理しています。

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次の問題設定は「今回の女子サッカー団の訪韓が、南北関係にどんな影響を与えるのか?」というものです。

これについては、南北の接触が国際スポーツの分野では制限的とはいえ行われることを示すものである一方、今回の接触が南北対話につながる可能性は「現段階では高くない」と評価しています。

朝鮮内での報道のされ方も分析の対象となります。朝鮮内部で「韓国との接触が政治駅な和解と受け止められないよう管理する」意図を、読み取れるかどうかに注目しています。

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レポートは最後に、韓国政府の受け止め方について論じています。

ひと言で、「大げさに対応せず、、国際大会が安全かつ円滑に行われるよう、実務的に管理する点に焦点を合わせなければならない」というものです。

これを「特別対応でも、冷遇でもない、正常的な国際大会参加チームへの待遇」と表現しています。繰り返し見てきたように、余計な欲を出さずに、淡々と対応せよという話です。

他方、北朝鮮への経済制裁違反に気をつけるべきという指摘もありました。

宿泊や交通、食事の提供、競技の運営支援は可能でも、選手団に対する現金の提供や高価なプレゼント、後援と受け止められる物品の提供などが議論を呼ぶ可能性があると、注意を喚起しました。

そして韓国政府に対しても慎重な対応を要求しました。まるで「南北関係改善の信号」のように誇張せず、前述のように実務的な態度を維持すべきというものです。これは冒頭でお伝えした通りです。

より具体的には、「今回のきっかけが、南北間の最小限の信頼回復と、今後の非政治的な交流の可能性を模索する、小さな出発点になることを期待するという程度の表現が適切」とガイドラインを提示しました。

「北韓」を「朝鮮」と呼ぶべきと提案したように、鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官はじめ、韓国政府の(一部の)期待もひとしおでしょう。

しかし入れ込み過ぎる場合、韓国内に対しても、そして北側に対しても間違ったメッセージとなる可能性があります。これは重要なアドバイスといえます

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実は、前述したような韓国市民団体の応援団も「どう応援すべき」かをめぐって議論を重ねたそうです。

5月11日と13日に会議を開き、「ACLのガイドラインに従い、両チームの名称と選手の名前を呼びながら、熱心に応援する」という結論を出しました。

この会議に参加した方に話を聞いたのですが、「北韓ではなく朝鮮と呼ぶべきか」といったような議論はなかったようです。あくまでクラブチームの試合という点が今回、ひと呼吸おくクッションになったのかもしれません。

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北朝鮮の事前点検団として訪韓中の玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏。2018年1月22日筆者撮影。

北朝鮮の事前点検団として訪韓中の玄松月(ヒョン・ソンウォル)氏。2018年1月22日筆者撮影。

それでも正直なところ、「だいぶ面倒になったな」という思いです。北側のチームが来たら来たで、批判する人はすればよいし、歓待する人はすればよいという時代ではなくなったということです。

2018年2月の平昌五輪の際には、北側の先遣隊団長の玄松月(ヒョン・ソンウォル、当時はサムジヨン管弦楽団長、今は朝鮮労働党副部長)に対し、文字にできない罵声を投げ掛ける韓国市民がいました。

これは褒められた行動ではないかもしれませんが、いずれにせよ、もはやそういう時代には戻れないといったところでしょう。

終わりがあれば始まりもある、そんな気持ちです。また続報をお伝えします。

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2. 今日の時事韓国語「축구」

「チュック」と読みます。漢字では「蹴球」です。

韓国では日本のように「サッカー」という表現はほとんど使いません。

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今日はここまでです。

実は今日の日中、日本から来た先輩や知人の方々と一緒に、ソウルから西方に1時間半くらい離れた、江華島(カンファド)と喬桐島(キョドンド)に行ってきました。

美味しい食事(とマッコリ)をいただき、江華平和展望台から朝鮮側を望みました。その距離、約2.3キロ。こういった南北の接境地域を訪れるたびに思うのですが、「近くて遠い国」です。

朝鮮民主主義人民共和国の黄海北道・開豊郡です。天気が良ければ開城工業団地まで見えます。筆者撮影。

朝鮮民主主義人民共和国の黄海北道・開豊郡です。天気が良ければ開城工業団地まで見えます。筆者撮影。

今週もお読みいただきありがとうございました。周囲の方に本ニュースレターの存在を広めていただけると幸いです。

それではまた来週。

皆さま、楽しい週末をお過ごしください。

アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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