【デイリー・コリア・フォーカス】26年4月3日号

皆さま、アンニョンハセヨ。
4月3日、金曜日です。今日も韓国から「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。
ニュースレターを書き始めた今の時刻は午前10時54分ですが、済州(チェジュ)では『済州4·3事件』の犠牲者を悼む追念式が行われています。私は家庭の事情から残念ながら現地に行けず、中継を見ています。
韓国現代史最大の悲劇の一つであり、少なくない在日コリアンの源流ともなった事件です。どういう出来事だったのかを説明するには多大な文字数を要します。
それでも簡略に整理すると以下のようになるでしょう。
『済州4.3事件』とは
1948年4月3日から54年9月まで済州島で続いた、島民と軍・警察との間に起きた闘いと弾圧の過程だ。通称では『済州4.3事件』と呼ばれるが、今はまだ正式な名称がない。当初は済州島の住民が「継続する警察や右翼組織による弾圧への反対」や「南北同時選挙の実施」さらに「米軍政の拒否」を掲げ蜂起した。これに韓国政府が「焦土化作戦」と呼ばれる激しい弾圧を加え、住民を巻き込んだ虐殺を行った。
その後1950年に朝鮮戦争が始まると、政府は「4.3」に加担したとされる人物を北朝鮮に協力する恐れがあると見なし、無差別に殺害しもした。
7年7か月のあいだ、全島人口の10分の1にあたる25,000人から30,000人が亡くなったと推定されている。犠牲者の85%以上は、韓国の軍警によるものである。
韓国政府は2000年に『済州4.3事件真相究明および犠牲者名誉回復に関する特別法』を作り、ようやく事件の真相究明に本腰を入れた。その後、2021年には名誉回復と補償に重点を置く形で同法を全面改正し、民間と力を合わせ、一人一人の傷を治癒しようとしている。
…追念式を見ているので、これについて書きたいところですが、本来決めていた内容があるため、まずは一旦、本文に入ります。
今日の目次は以下の通りです。
1. その数28回…李大統領が国会予算演説で「危機」を連呼
2. インドネシア・フランス首脳、米議員団が相次いで訪韓
3. 今日の時事韓国語「골든타임」
1. その数28回…李大統領が国会予算演説で「危機」を連呼
2日午後、李在明大統領は国会を訪れ、予算演説を行いました。
同氏が国会で演説を行うのは、就任直後の25年6月の施政演説、同年11月の予算演説に続き三回目となります。
今回は度々お伝えしているような、26兆2000億ウォン(約2兆7500億円)の補正予算を説明する演説でした。
約15分にわたって行われた演説で李大統領は、冒頭から「中東戦争が引き起こした重大な(原文では重且大な)危機の前に、国民の生活と経済を守らなければならないという、切迫した心情でこの場に立った」と述べるなど、危機感を露わにしました。
韓国メディアによるとこの日、演説の中に「危機」という単語は28回も登場したそうです。実際に数えてみるとその通りでした。
李大統領は、株価の上昇や半導体・造船企業などの活躍により、韓国経済が飛翔する機会を得たものの、「中東戦争により予想外の複合危機がやってきた」と述べ、さらにこの状況は「短期間で終わらないかもしれない点」があるという認識を示しています。

演説する李在明大統領。青瓦台(大統領室)提供。
ニュースレターでこれまで触れてきたように、李大統領は現状を「非常時」と位置づけています。
その上で、この危機に対応するためにはスピードが何よりも重要であると訴えました。国会に対し、予算案通過を頼み込むものです。
補正予算についてはまず、「中東戦争の危機により、(予算が)必ず必要な場所へと果敢に投資しながらも、その負担が国民と経済に転嫁されないよう設計した」と、その趣旨を説明しました。
今回の予算が追加税収により賄われている点も強調しています。これは李大統領について回る「バラマキ」のイメージを、払拭しようとするものです。
続いて、予算の詳細な説明がありました。これは4月1日のニュースレターで行ったので割愛します。
代わりに、この部分を聞いていて「建て前だとしても立派だな」と思った一節があったので引用してみます。
「危機は困難で大変な所により深い傷を残します。危機状況をより早く、より大きく体感する脆弱階層は、より厚く保護することが重要です」
そして李氏は、食料品と生活必需品を無償で提供するセンター(名前は「そのままあげますセンター」)を、これまでの150か所から300か所へと2倍拡大すると明かしました。
このセンターは、一度目の訪問では物資をそのまま受け取れ、二度目の訪問からは相談も同時に行われるものです。手の届く福祉を行うための一つの窓口の役割も果たしているそうです。
私は取材に行ったことがないので、一度行って話を聞いてみたいです。それよりも在韓日本メディアの出番かもしれません。
李大統領は「少なくとも食べるものがないことで、極端な選択(自死のことです)をしたり、犯罪に手を染めることがないようにする」と続けました。
他にも、青年層への支援や、再生エネルギーへの転換といった部分にも言及しています。また、文化芸術分野への支援も明かしています。
前述したように、この日の演説の特徴は「危機」という認識を繰り返した点にありました。
そしてこれを別の角度から「現在の危機はすぐに止む夕立ではなく、いつまで続くか分からない巨大な暴風雨」に例えもしました。危機がいつ終わるか分からないという、厳しい認識です。
これを乗り切るために「国民が一つになることが必要」としました。節約と互いへの配慮を行い、共に克服する意志を持とうという呼びかけです。
全体主義を想起させるため、私はこういう表現は好みませんが、「配慮」という言葉は良かったです。
李氏はその後も何度か「速度」を強調し、演説を終えました。退場する際には最大野党・国民の力の議員が座る一帯に向かい、一人ひとりと握手してゆっくりと議場を後にしました。
国民の力の指導部は演説後、補正予算について口を揃えて「選挙用」と強く批判しました。6月3日の統一地方選を見越した「買票行為」というのです。
とはいえ、予算案は在籍議員の過半数の賛成で成立するため、共に民主党単独で票が足りている状況です。4月10日の国会本会議で議決される予定です。

2日、国会を訪れた際に「すべての権力は国民から生じる」という文句の前で写真を撮る李在明大統領。いかにもな演出ですが、韓国社会の今をうつす断面の一つでもあります。ここは戒厳軍が押し寄せた24年12月には、憲政を守る最前線でした。青瓦台提供。
なお、この日の演説に先立ち、李在明大統領は禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長をはじめ、与野党の代表団と歓談しています。
その中で改憲について「憲法はあまりにも古くなった。国家秩序の根幹となる憲法は、時代の状況に合わせ柔軟に整理される必要がある」と言及し、改憲の流れを後押ししています。
2. インドネシア・フランス首脳、米議員団が相次いで訪韓
次は最近続いた外交日程をかいつまんでお伝えします。重要な国家の首脳や議員団が相次いで訪韓しました。
4月1日には、インドネシアのプラボウォ大統領と李在明大統領の首脳会談が青瓦台で行われました。
会談を通じ両国の関係は「特別包括的戦略同伴者(パートナーシップ)関係」へと格上げされました。
以前お伝えしたように、韓国の外交関係は一般的に、①同伴者(パートナーシップ)関係→②包括的同伴者関係→③戦略的同伴者関係→④包括的戦略的同伴者関係、という順です。
後者になるほど関係が深まっていき、最後は同盟になります。
なお、同盟国は1953年に「韓米相互防衛条約」を結んだ米国だけです(デンマークとも価値同盟である「緑色同盟」を締結しています)。
インドネシアには「特別」という呼称が付いています。
これは李大統領いわく「韓国にとってただ一つの関係」とのことです。それくらい、インドネシアは韓国にとって大切な関係ということです。

インドネシアのプラボウォ大統領と李在明大統領。青瓦台提供。外交関係はずっと政府提供の写真ばかりとなります。早くコリアフォーカスを拡大し、独自の写真を撮りたいものです。
石炭やLNG(液化天然ガス)といった資源の供給元、約2億9000万人のマーケット、さらに民主主義国家であり中堅国であるという共通点などがあります。
プラボウォ大統領も同様に、「共に太平洋国家であり、貿易に依存する国家であり、経済成長のためには良い対外関係を維持することが必要な国家」と述べています。
さらに「韓国には優秀な産業能力と科学技術があり、インドネシアには豊富な資源、大きな市場がある(中略)そのため、私たちは互いに補完的な役割を果たすことができる」ともしています。
そして4月2日には、青瓦台でジーン・シャヒーン米上院議員(民主党、上院外交委員会幹事)をはじめ、共和党・民主党で構成される議員代表団と接見しました。
この場では韓米関係に関する様々な議題について意見が交わされました。
李大統領はトランプ氏への批判めいた言及を一切行わず(当然ですが)、韓米同盟の発展を取り上げると共に、トランプ氏との合意に基づく米国への投資を改めて強調しました。
また、朝鮮半島の非核化や平和・安定のための韓国政府の努力を説明したと青瓦台は明かしています。

米議員代表団と歓談する李在明大統領。左手をあごに当て、足を組んで笑う右から3番目の女性がジーン・シャヒーン米上院議員。青瓦台提供。
やり取りの中で印象的だったのは、戦時作戦統制権に言及した部分です。
「軍事費の増額だけでなく、戦時作戦統制権の還収(返還)を通じ、米国の負担を減らし、最小限、韓半島の近くでは私たちが自力で東北アジアの安全と平和を守らなければならないと考えている」というものです。
これは「同盟は米国の軍事力にただ乗りしている」というトランプ大統領の論理を逆手に取り、歴代進歩派政権の悲願ともいえる戦時作戦統制権を取り戻す考えの表れです。
これがあって初めて、韓国の自主国防や、外交的な空間の拡大が可能になるのは言うまでもありません。
そして今日3日には、前日から訪韓しているフランスのマクロン大統領と首脳会談がありました。今年はフランスと韓国の修交140年にあたるそうです。
ちょうど先ほど、首脳会談が終わり共同記者会見がありました。この席で李在明大統領は両国の関係を「グローバル戦略的同伴者関係」に格上げすることを明かしています。これも同盟以外では最上位の関係となります。

修交140年を記念し、フランス政府が発表したバナー。「創意・機会・連帯」がキーワードのようです。おしゃれです。フランス政府提供。
会談の成果について李大統領は、▲貿易の拡大、▲先端科学と未来産業分野での共同成長、▲文化協力の強化、を掲げています。
特に二つ目の「先端科学と未来産業」では、人工知能(AI)・半導体・量子分野での協力や、原子力発電分野での協力が含まれています。
さらに三つ目の「文化協力」では、両国語の学習者を増やし、文化遺産の分野でも協力を深めると明かされています。
マクロン大統領はまた、今回の会談を通じ、今年6月にフランスで開催されるG7サミットに李大統領を正式に招待しました。9月の国際映画・映像産業サミットを、フランスと韓国が共同主催しようという提案もあったそうです。
そして何より両国は「中東戦争が引き起こした経済およびエネルギー危機に共同で対応」し、共に努力すると表明しています。
ちなみに、プラボウォ大統領、マクロン大統領ともに、訪韓する前に日本を訪問し、高市首相と会談を行っています。

3日、青瓦台でマクロン大統領を出迎える李在明大統領。ネクタイがトリコロール柄でした。KBSをキャプチャ。
3. 今日の時事韓国語「골든타임」
「ゴルドゥンタイム」と読みます。カタカナで「ゴールデンタイム」です。
数日前に一度、本文の中で触れた単語です。何かに対応する際に、効果的な時間を示す言葉で、例えば生き埋め事故では72時間といった形で社会に共有されている概念です。
2日になった李大統領の予算演説でも「経済を回生させるゴールデンタイムを逃さないという覚悟の元で補正予算を作った」と使われています。
このように、何か良くないことが起きている時に頻出する言葉です。2014年のセウォル号沈没事故、2022年の梨泰院雑踏事故の際にもよく聞かれました。
今日はここまでです。
「済州4·3」については、月曜日に整理いたします。
それでは皆さま、良い週末をお過ごしください。
今週もありがとうございました。
アンニョンヒケセヨ。(徐台教)
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