【デイリー・コリア・フォーカス】26年1月29日号

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徐台教 2026.01.29
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

今日も韓国から徐台教が「デイリー・コリア・フォーカス」1月29日号をお送りします。

今年は仕事の幅と量を広げる年にしようと、色々と準備をしています。

バンバン取材やインタビューに出かけたいのですが、もう少しガマンです。

今日の目次は以下の通りです。

1. 危機脱出?出産率が17か月連続で前年比増
2. 金建希前大統領夫人に予想外の判決
3. 韓米間に新たな火種?‘DMZ法’めぐり衝突
4. 李大統領「砂糖税」の導入を検討か
5. 今日の時事韓国語「설탕」

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1. 危機脱出?出生率が17か月連続で前年比増

韓国の出生率(合計特殊出生率:15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの。韓国では合計出産率と表現)は、世界最低水準として広く知られています。

2015年には1.24だったものが、2023年には0.72となり、24年には少し回復したものの0.75と、依然として将来的に社会の維持が危ぶまれる数値となっています。

ちなみに日本の出生率は2015年に1.24、23年には1.20、24年には1.15となっています。

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政府の対策も失敗してきました。

2017年12月、文在寅大統領(当時)は「もはや生産可能人口が減る、経済が苦しくなるといった次元ではなく、大韓民国の根幹が揺らぐ、深刻な人口危機状況を迎えるだろう」と述べています。

この時に、歴代政府が出生率対策に約200兆ウォン(約21兆4000億円)を投入してきたがことごとく失敗したとし、「今こそが人口危機状況を解決する『最後のゴールデンタイム』である」と述べています。

しかしその効果もなく、24年、尹錫悦大統領(当時)は「人口国家非常事態」を宣言するに至っています。

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政府の統計を見ると、韓国の出生率は23年に底を打っています。実際に24年7月以降、出生児の数は17か月連続で前年同月を上回っています。

『京郷新聞』などでは、その間の増加は30代後半(35~39歳)で、所得水準は中位以上、職場で健康保険に加入している(家庭の)女性が牽引していると、専門家の研究を元に指摘しています。

収入が安定している家庭ということですが、経済的な安定を確保した後で出産する「晩婚・晩産」の傾向があるそうです。

また、こんな増加の背景には、24年に定められた2年以内に出産した家庭に住居を優先的に供給する政策や、不妊治療への支援、そして育児休暇制度の利用普及などがあるとされます。

婚姻件数も2024年4月から20か月連続で増えています、今後も増加傾向は続くとのことです。

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『朝鮮日報』は今月26日、政府が今年上半期の出生率を0.85と予想していると伝えています。

なお、2025年の出生率の統計は2月25日に発表を控えています。0.79もしくは0.80となる見込みだそうです。

韓国統計庁の試算によると、悲観的なシナリオでは2072年の人口は3017万人、楽観的なシナリオでは4282万人とされます。現在の韓国の人口は約5200万人です。

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この件に関し、面白い記事を一つ紹介して終わります。

28日、韓国のネットメディア『スローニュース』に掲載された福祉専門家による記事は、韓国の人口維持のためには今後、労働時間を減らしつつ労働生産性を高めることが求められると指摘しています。

このためには、AIやロボットを用いた「産業革命」が必要で、そのインフラを敷く資金は、不動産市場から株式市場への「マネームーブ」が起こることで可能になるとしました。

これはなかなか、時宜にかなった提言です。

28日、外国人投資企業との懇談会を開く李在明大統領。「世界最高の投資環境を作る」と豪語しました。青瓦台提供。

28日、外国人投資企業との懇談会を開く李在明大統領。「世界最高の投資環境を作る」と豪語しました。青瓦台提供。

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李在明政権下で商法改正などが行われ、株価指数が急上昇を続けている点は何度かお伝えしました、

李大統領は一方で、譲与税の免除に期限を設けるなど、無軌道な不動産取引への圧力を強めています。

その目的が不動産投機によるバブルとその崩壊を予防すること、さらに、不動産に向かう資金を株式市場に向ける点にあることを、李大統領みずからが明かしています。

記事では、こうした動きが進むことで「資源配分の転換」が可能になるとしています。また、高齢者と女性の労働力が欠かせないともしました。

韓国で人口危機を抜け出せる、奇跡的なパラダイムシフトが可能でしょうか。希望を持てる未来図を久しぶりに見た気がします。

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2. 金建希前大統領夫人に予想外の判決

28日午後、ソウル中央地裁は金建希(キム・ゴニ)氏に、懲役1年8か月、追徴金1281万5000ウォン(約137万円)の判決を宣告しました。

尹錫悦前大統領の夫人である同氏は、▲株価操作(資本市場法違反)、▲統一教会からの金品授受(斡旋収財罪)、▲政治ブローカーから金品に相当する世論調査結果を受け取った(政治資金法違反)という三つの嫌疑により、起訴されていました。

特別検察の求刑は懲役15年、罰金20億ウォン(約2億1300万円)、追徴金約9億5000万ウォン(約1億円)でした。

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軽い刑が宣告されたのは、上記三つの嫌疑のうち、裁判所が統一教会からの金品授受だけを罪と認めたことによります。

統一教会が同教団のイベントへの政府予算支援を請託(お願い)する代価として、高価なバッグとネックレスを受け取ったというものです。

株価操作加担については、これを行った一団に対し、金氏の積極的な役割が見られず、共犯とは言えないとして無罪を宣告しました。

世論調査の受け取りも、これを受け取った多数のうち一人に過ぎず、財産上の利益を得ていないとして、無罪となっています。

この日の判決を受け、検察側は「法理的にはもちろん、常識的には納得できない」と控訴の意を明かしています。

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世論はどうでしょうか。

リベラル紙『ハンギョレ』が一面で「納得いきますか」と書いたように、この判決をめぐり「軽すぎる」という批判が存在します。

同紙は29日付けの社説で、明確な証拠があるにもかかわらず、裁判所が見逃したのではないかと、強く主張しました。

なお、ウ・インソン裁判長はこの日の公判を始めるにあたり、「法の適用には、法を適用される者が権力者であろうが、権力を無くした者であろうが、例外や差別があっていはいけない」と述べ、「「疑わしきは罰せず」というラテン語も引用していました。

やはりリベラル紙『京郷新聞』は、尹錫悦・金建希両氏を指し夫婦で実刑を受ける初の大統領夫婦となるとしながら、「証拠は明確。納得いかない」という論調でした。

保守紙『東亜日報』、『中央日報』は有罪となったことで、判決の重さを受け止めよと指摘しました。後者の社説では、判決に対する過度の不満の表出は司法府への外圧にあたると、与党を批判しました。

29日の『ハンギョレ』一面。「金建希‘懲役1年8か月’、納得いきますか」とある。

29日の『ハンギョレ』一面。「金建希‘懲役1年8か月’、納得いきますか」とある。

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一方、保守紙『朝鮮日報』の論調は際立ちました。

まず、文在寅政権が2020年に始めた金建希氏の株価操作加担疑惑が結局、無罪になったとしました。進歩陣営による無理筋な攻撃だったというものです。

その上で、大統領として検察に圧力をかけ夫人を守り続けた、尹錫悦氏への残念さをにじませました。もっと早く、金建希夫人の失敗を認めていれば、非常戒厳に至らなかったという認識です。

金建希氏には他に、二つの裁判が残っています。23年に統一教会の信徒を当時の与党・国民の力に入党させ、その対価を受け取った嫌疑と、高級ブランド品を受け取り人事ポストを提供した疑いもあります。

また、裁判に至っていない疑惑も、第二次特別検察により起訴が見込まれています。

尹錫悦夫妻への追及はまだまだ続くでしょう。いささかうんざりですが、膿を出し切らないことには同じ事が繰り返されるため、仕方ありません。

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3. 韓米間に新たな火種?‘DMZ法’めぐり衝突

朝鮮半島の南北分断の象徴となっている板門店(パンムンジョム)。

以前は人気の観光地でしたが、23年7月に米軍兵士が軍事境界線を超え北側に逃れて以降、一般人の観光プログラムは停止されたままです。

私も何度も行きましたが、23年4月以降が最後です。今もどうやら、関連学会による見学など特殊な形で行けるようですが、参加の機会がないままです。

この板門店を含むDMZ (非武装地帯)は、国連軍司令部により管理されています。訪問する際には、必ず同司令部の許可が必要です。

唐突に私が登場。23年4月の板門店訪問時のものです。奥が北朝鮮です。

唐突に私が登場。23年4月の板門店訪問時のものです。奥が北朝鮮です。

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その根拠は1953年に締結された休戦協定にあります。

なお国連軍司令部とは、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の南侵により朝鮮戦争が勃発した直後の、1950年7月に結成されたものです。司令官は在韓米軍司令官が兼任しています。

しかし与党・共に民主党の一部議員は、韓国の領土であることを根拠に、生態調査や非軍事的・平和的な目的に限り、韓国政府の許可だけでDMZに入れるようにする法案(DMZ法)を発議しました。

これに対し28日、国連軍司令部は会見を開き「DMZ法は休戦協定と衝突する」という強い立場を明かしました。

目的にかかわらず、同地域に入るための許可は、国連軍司令部だけが出せるというものです。70年間やってきたではないか、なぜ、というニュアンスです。

一方の韓国政府にも、非軍事的な分野にまで国連軍の統制を受けるのは主権の侵害であると見る向きもあります。

李大統領と関係の深い鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官などは「国会が法を制定するのは立法府の権限だ」と主張しています。

韓国では今、この件が新たな米韓間の軋轢の火種になるのではないかと注目されています。

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4. 李大統領「砂糖税」の導入を検討か

「タバコのように砂糖への負担金で砂糖の使用を抑え、その負担金で地域・公共医療の強化に再投資…皆さんの意見はどうですか?」

28日午前、李在明大統領は『ソウル新聞』の記事を引用し、自身のX(旧Twitter)にこう書き込みました。

李在明大統領の該当ツイート。

李在明大統領の該当ツイート。

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記事には「砂糖税」を導入した各国の事例が紹介されています。

砂糖税とは、砂糖や人工甘味料が添加された飲料や食品を対象に、添加された分量に応じて税金を課すものです。

記事内で引用されているソウル大学健康文化事業団によると、同税は世界保健機構(WHO)の勧告により、世界120か国あまりで導入されているそうです(類似の政策含む)。

同事業団はまた、砂糖は脳の報酬システムを刺激し、麻薬よりも強い中毒性を誘発し、老化とうつ病を招くとしています。

それにもかかわらず、韓国では依然として個人の嗜好の問題として受け止められ、規制外にあると主張しました。

英国では同税導入以降、実際に飲料の砂糖含有量が47%低下したそうです。また、他の記事によると、年間2億ポンド(約423億円)に及ぶ税収は学校などに再投資されているとのことでした。

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こんな「健康と税収」という一石二鳥の「砂糖税」ですが、導入にはいくつかのハードルがありそうです。

まずは「増税」という印象です。世界のどの政治家にとっても、増税は支持率低下に直結するため慎重になるところです。

実際に李大統領も同日午後10時頃、Xに「李大統領が砂糖税を導入しようとしている」と断言する論調で報じた『京郷新聞』や『毎日経済』の記事を引用し、内容を正しく書いてほしいと書き込みました。

今年6月に統一地方選があるため、敏感になっている様子でした。「自分は市民に尋ねただけだ」とセコい(?)言い訳をしました。

次のハードルは「物価高」です。2024年5月以前の、前期の国会で発議され廃案となった砂糖税に関する法案によると、同税が導入される場合、コーラ1リットルあたり110ウォン(約11.8円)の値上げになるそうです。

そして「公正性」もあります。砂糖税の導入が低所得層の負担増を招くというものです。

最後のハードルは「食品業界の反発」です。砂糖税により、特定の食品に悪いイメージが付き、企業活動を阻害するという論理です。

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しかし「砂糖税」導入の議論は進むと私は考えます。

既にこういう話が大きく出ていることに加え、何よりも世論がそれを支持しているからです。冒頭で紹介した記事には、1月12~19日まで1030人を対象に行われた世論調査が引用されています。

これによると、回答者の80.1%が砂糖税の導入に賛成しており、対象として炭酸飲料(75.1%)、お菓子・パン・お餅類(72.5%)を挙げているとのことでした。

李大統領の世論調査好きには定評があります。

8割の支持に世界的傾向、健康と税収の増進とあれば、やらない手はないでしょう。

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5. 今日の時事韓国語「설탕」

「ソルタン」と読みます。砂糖のことです。

砂糖をそのまま韓国語で読むと「サタン(사탕)」となるため、よく日本語話者の方は「ソルタン」と「サタン」がこんがらがってしまうのですが、韓国で「サタン」はあめ玉を指します。

お間違えないよう^^

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今日は以上です。

既に14時近いですね。皆さまよい午後の時間をお過ごしください。

それではアンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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