【デイリー・コリア・フォーカス】26年3月17日号

皆さま、アンニョンハセヨ。
今日3月17日も、韓国から徐台教が「デイリー・コリア・フォーカス」をお届けします。
現在の時間は午後7時です。今日はニュースレター史上(といっても2か月程度ですが)、最もスタートが遅い日となりました。
子どもの塾のお迎えや晩ご飯の用意も挟んでしまうため、短めの内容にいたします。今日の目次は以下の通りです。
1. 李大統領「簡単な議題から順次改憲」統一地方選での国民投票の目は消えず
2.今日の時事韓国語「개헌」
1. 李大統領「簡単な議題から順次改憲」統一地方選での国民投票の目は消えず
これまで、本ニュースレターで何度か取り上げてきた「改憲」。6月3日の統一地方選を控え、ふたたび脚光が集まっています。
なぜ地方選かと言いますと、この時に国民投票を一緒に行えればという思惑のためです。
国民投票を別途行うよりも、コストは下がり、何より韓国の三大選挙の一つである地方選に合わせることで、より広範に民意を問うことができるからです。韓国は大統領選、国会議員選、統一地方選の際は、全国で休日となります。
これに伴い、最近とみに改憲への同調を求める声が上がっています。
今月10日、禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長は記者会見を開き、3月17日(今日)までに「改憲特委」を構成してくれるよう、国会に求めました。
「改憲特委」というのは、正式名を「国会憲法改正特別委員会」というものです。改憲についての社会の意見を広く集め、改憲案を国会に発議するのが仕事となります。改憲に向けた第一歩という位置づけです。
実は文在寅政権時代にも改憲の動きがありました。これは政府主導のものでした。
2018年1月に「国民憲法諮問特別委員会」が作られ、各地域で市民討論会を経た後、3月に改憲案が提出されています。
しかし、少数与党であったことから、5月に議決自体が成立しないまま「お流れ」となっています。
このように、改憲という国家の大事は「与野党の合意の下」に行われるべきという了解が存在します。
現在、国会の議席300(在籍295)の内、進歩系は180議席を超えます。あの手この手で、改憲に必要な「在籍議員3分の2の賛成」を進歩陣営が得られる可能性も完全にゼロではないでしょう。
しかし、この場合には政治的な名分が大きく損なわれます。与野党が参加する「改憲特委」の構成とそこでの合意が、改憲の前提となる所以です。

17日、国務会議で発言する李在明大統領。青瓦台提供。
禹元植議長がタイムリミットとした17日、李在明大統領が国務会議(閣議)の冒頭発言の中で、改憲に触れました。
まず「国会議長の言うように、国民が合意する簡単な議題から順次改憲しよう」と切り出しました。
さらに具体的な内容として、「5.18光州民主化運動の精神を憲法前文に入れること」、「地方自治の強化」、「戒厳要件の強化」を挙げました。
一つ目の内容をみてみます。
韓国の憲法前文には現在、「(前略)3·1運動により建立された大韓民国臨時政府の法統と、不義に抗拒した4·19民主理念を継承し(後略)」と書かれています。
これに対し、1980年5月18日から27日にかけて行われた、光州民主化運動を追記しようというものです。先に言及した2018年の文在寅大統領による改憲案の、同じ部分を抜き出してみます。
「(前略)3·1運動により建立された大韓民国臨時政府の法統と、不義に抗拒した4·19革命、釜馬民主化構想と、5·18民主化運動、6·10抗争の民主理念を継承し(後略)」
民主化に向けた歴史を明記することで、今や韓国のアイデンティティとなった民主主義をより強固にしようという狙いです。
付記すると、「釜馬民主化抗争」とは1979年10月に、韓国南東部の釜山(プサン)と馬山(マサン)で起きた民主化デモです。これを力づくで弾圧したことが、同年10月26日の金戴圭(キム・ジェギュ)中央情報部長による、朴正煕(パク・チョンヒ)大統領暗殺につながりました。
なぜ、光州民主化運動と釜馬抗争を並べるのかも重要です。
政治的なつながりもありますが、南西部(湖南ホナム)の光州と、南東部(嶺南ヨンナム)の釜山・馬山を並べることで、均衡を取る意味合いもあります。
また、「6·10抗争」というのは、1987年6月10日に起きた民主化を求めるデモです。ソウルをはじめ全国で数百万が集まり、6月29日の民主化宣言を引き出す導火線となった大きな出来事でした。
二つ目の地方自治の強化は、権力の分配を核とし、地方の立法、財政権限を大きくする方向に向かうものです。国土の均衡発展、さらに首都条項を作り、世宗(セジョン〕市を行政首都に定めることが入ります。
最後の「戒厳要件の強化」というのはやや複雑です。現在よりも非常戒厳を宣布しづらくする点を核とします。
具体的には、「(大統領が)改憲を宣布する際、国会がこれを承認しない場合に、自動で無効となる」というものに加え、「国会が(戒厳解除案を)可決する際、即時に戒厳が無効になる」といった点を含むものです。
これは、24年12月3日の尹錫悦大統領(当時)のように、理論的には大統領が恣意的に、いつでも非常戒厳を宣布できる状況を改めるもので、非常に重要です。
李在明大統領は17日の国務会議の中で、こうした内容を取り上げながら、「国民が皆、合意しており、野党も反対しないようなので、この問題(改憲)についても政府が努力すべき」と言及したのでした。

24年12月3日の非常戒厳の際、塀を越えて国会に入る禹元植国会議長。戒厳にあらがう国会を象徴する一枚です。国会議長室提供。
そしてやはり今日17日には、李官厚(イ・グァヌ)国会立法調査処長が『京郷新聞』への寄稿文を通じ、改憲の必要性を訴えました。
立法調査処というのは、100人近い博士級の人材を抱える国会内の機関で、議員からの立法に関する疑問・要請に応える一方、様々な国政課題に対するレポートも発表する、一種のシンクタンクの役割を果たしています。
李処長のコラムは、前述した内容をなぞるものでした。その中でも、米国の政治学者ロバート・ダールの著作を引用し、改憲の持つ意味に言及した冒頭の部分は印象に残りました。
それによると、米国は改憲のハードルが非常に高いため、時代の変化による改憲ができず、民主国家として発展することが難しいというものです。
「9条」というセンシティブな内容を含みますが、改憲の全くない日本にも一脈通じる話かもしれません。

韓国の歴代改憲の歴史。筆者作成。
一方、韓国も現行の1987年憲法まで9回の改憲があったものの、それ以降は改憲が行われていません。李処長は寄稿文の中で改憲を求める世論を紹介していきます。
その資料となるのが、国会が2月22日に発表した「憲法改正に関する国民に対しての設問調査」でした。オンライン1万513人、面接2056人という大規模調査でした。
これによると、回答者の68.3%が改憲に賛成し、先に挙げたような非常戒厳の要件を強化する内容については、77.5%が賛成しているとします。
さらに、回答者の70.4%が改憲が必要な理由として「社会的な変化および新たな問題に対する対応の必要性」を挙げているというのです。
李処長はこう書いています。
「1987年の憲法は、必ず必要な憲法だった。独裁を終息させ、民主主義の礎石を置き、最小限の基本権を保障した誇らしい憲法だ。しかしその時は、人口の消滅も、地方の消滅も、気候危機も、人口知能(AI)もなかった」

李官厚国会立法調査処長。少壮派の政治学者でもある。今年2月、筆者撮影。
このように、今日17日は、改憲に向けた一種の論陣が張られた日となりました。
しかし残念ながら今日まで「改憲特委」は構成されませんでした。このため、韓国紙の多くは6月3日の地方選での国民投票は「不透明」と見立てています。
その一時的な原因は、改憲を「選挙用」と批判する最大野党・国民の力の姿勢にあることは明確です。
韓国で最も影響力を持つアドボカシー(政策提案)NGOの『参与連帯』も17日に出した論評の中で、(昨年6月の)大統領選で国民の力も改憲を公約に掲げていたと言及し、同党の消極的な姿勢を叱咤しています。
改憲を定める憲法条文によると、4月7日までに改憲案が発議されない限り、6月3日の国民投票は不可能となります。
今年3月1日、11年ぶりに国民投票に関する法案が改正され、在外国民も国民投票に参加できることになったことで、国民投票における違憲状態が解消されました。
制度的なハードルが除去されたことに加え、前述したような韓国社会の熱望にもかかわらず、て韓国の民主主義を一歩進めるための改憲が全く進まない状況は、非常にもどかしいものがあります。
それでは実際に改憲は難しいのでしょうか。
17日晩、詳しく事情を知る韓国政府関係者に電話で取材したところ、そうではないことが明らかになりました。改憲の目はまだ残されています。
前述したような4月7日までの改憲案発議は、在籍議員の半数、つまり150人で可能となります。これは与党・共に民主党単独でも可能ですし、改憲に賛成する勢力が集まれば手続き的に問題ありません。
そして、国会の議決から30日以内に国民投票を行うため、5月4日から11日までに議決されれば、国民投票に進めることになります。
このように、日程的な部分は問題ありません。さらに、「改憲特委も必須ではない」とこの人物は説明します。元々、同委員会は全面的な改憲をする場合に設置されるもので、今回のような要点の決まっているピンポイント改憲の場合には、必ずしも設置する必要はないというものです。
そして最も重要な部分、つまり国会での議決(在籍議員の3分の2)においては、「逆に統一地方選を控えていることが有利にはたらく」といいます。
これは、統一地方選が始まる中で、各地方に立候補する国民の力の候補たちが「改憲に反対する党」とのイメージを嫌がり、同党所属の議員たちに賛成を求めるという見立てです。
前述したように、今回の改憲はピンポイントで分かりやすい上に、国民(有権者)の高い支持を得ている内容です。これに面と向かって反対することは選挙に不利にはたらくため、断ることは容易でないというのです。
以上のような理由から、この人物は「楽観的ではないが、改憲がなくなったという訳ではない」と総括しました。
韓国社会がもう一歩前に進むための改憲、まだまだ目が離せないようです。続報していきます。
2. 今日の時事韓国語「개헌」
「ケホン」と読みます。感じでは「改憲」です。
アカデミー賞を受賞した「ケデホン」のように、うまくいってほしいですね。
今日は以上です。
書いている内に力が入り、こんな時間になってしまいました。それでも改憲論議の最前線をお伝えできてよかったです。
今週はいくつもの締め切りがありかなりハードですが、なんとか乗り切ります。
それではまた明日^^
アンニョンヒケセヨ。(徐台教)
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