【デイリー・コリア・フォーカス】26年3月6日号

皆さま、アンニョンハセヨ。
今日も韓国から徐台教が「デイリー・コリア・フォーカス」3月6日号をお送りいたします。
「イスラエルF-35、イラン戦闘機撃墜。『41年ぶりに有人機による空対空の撃墜』」(聯合ニュース)
「62億ウォンの魚雷一発で…米、第二次大戦以降、初の潜水艦攻撃」(京郷新聞)
先月28日の米国とイスラエルによるイラン攻撃から始まった新たな戦争は、韓国のニュースでも大きく取り上げられています。

「イスラエルF-35、イラン戦闘機撃墜。『41年ぶりに有人機による空対空の撃墜』」(聯合ニュース)
しかしその中には、上記のような、戦争プロパガンダと見紛うタイトルがついた記事も散見されます。聯合ニュースは韓国最大の通信社、京郷新聞はリベラル系日刊紙です。
韓国メディアは元々、軍事的な表現を好む傾向がありました。例えば海外のスポーツチームが韓国に来る場合、「訪韓」ではなく「韓国上陸」と書くといった形です。
「軍事主義的な表現を改めるべき」いうコラムや、メディアに詳しい有識者の指摘を以前、何度か読んだ記憶がありますが、あまり変わらないようです。
背景には、あらゆるメディアが「無料」という枠組みで競争するため発生する「クリック誘発競争(いわゆる‘釣り’です)」の中で、少しでも目立とうとする点があるのでしょう。
さらにより根本的には、朝鮮戦争の停戦状態が今なお続く上に徴兵制が存在するといった、「軍事的要素の身近さ」が存在します。今回の戦争で実戦に使われている韓国製兵器の優秀さを喧伝する記事も多く目につきます。
韓国社会は普段からこういった表現に慣れていて、私も知らず知らずの内に使っているかもしれません。
ですが、戦争の足音が少しずつ迫る中、戦争表現をできるだけ控える姿勢をいま一度明確にすべきではないか、メディアが会見を開き、戦争報道のスタンスを改めて社会と共有すべきではないかと考えています。
今日の目次は以下の通りです。
1. 時代の要求か?与党の独走か?「司法改革3法」が成立
2. 在韓米軍の兵器、一部は既に韓国外に移転済みか
3. 統一地方選まで90日…異色のサイトも登場
4. 今日の時事韓国語「사법부」
1. 時代の要求か?与党の独走か?「司法改革3法」が成立
5日、李在明大統領が主宰した臨時国務会議(閣議)を通じ、いわゆる「司法改革3法」の公布案が可決されました。
これにより「1987年以降、40年ぶりの大改革」と呼ばれ、韓国社会で大きな関心を集めてきた司法改革をめぐる過程は一段落しました。
今回、改正されたのは刑法、憲法裁判所法、法院組織法です。「3法」と呼ばれる所以です。それぞれの内容と問題点を見ていきます。
まず刑法では「法歪曲罪」が追加されました。判事や検事などが、法を歪曲する行為を処罰するものです。
具体的には、▲法令の適用要件が充足していないことを知りながらも法を適用し意図的に裁判・捜査結果に影響を及ぼす場合、▲証拠を隠滅、隠匿、偽造・変造する場合、▲適法な証拠が存在しないことを知りながらも、犯罪事実を認める場合です(以上『ノーカットニュース』より引用)。公布後、6か月後から施行されます。
問題点としては、積極的な捜査や判決を妨げる‘萎縮効果’をもたらすといった指摘があります。
また、現行の「職権乱用罪」で充分に対応可能である上に、判事や検事の「悪い意図」を判断するのも判事であることから、その実用性に疑問を呈する指摘が絶えません。判事や検事に対する告訴が乱発されるのではという見立てもあります。
次に憲法裁判所法では、「憲法訴願法」が追加されました。これは、従来は憲法訴願請求の対象から除外されていた裁判所(韓国では法院と呼称)の裁判を、新たに対象に含めるものです。
韓国は三審制であるため、これまで大法院(最高裁)で判決が確定していました。今後は、大法院の判決に不服がある場合、裁判そのものの違憲性を憲法訴願という形をもって、憲法裁判所に問えるようになりました。
公布後すぐに施行されますが、刑事訴訟法や民事訴訟法などの改定も必要で、まずは憲法裁判所が事前審査部を運用する形でスタートする予定です(『毎日経済』より引用)
なお法案には、▲憲法裁判所の決定に反する趣旨の裁判、▲憲法・法律上の適法な手続きの違反、▲憲法・法律の違反による明確な基本権の侵害(以上、『法務法人セジョン』より引用)という条件が定められており、無軌道な憲法訴願を防ぐ装置となっています。
問題点としては実質的な「四審制」となり、裁判の長期化を招く可能性が取りざたされます。
さらに、裁判の継続に莫大な弁護士費用がかかる中(裁判自体は無料)、この制度は結局、経済的に余裕のある富裕層のためのもになるのではないかという指摘があります。「そもそも違憲ではないか」という声も、保守陣営からは出ています。

1日から4日まで、シンガポールとフィリピンを歴訪した李在明大統領。青瓦台提供。
最後の法院組織法は「大法官増員法」と呼ばれています。これは文字通り、大法官(最高裁判官)の増員を定めるものです。現行の14人から、毎年4人ずつ、26人まで増やします。こちらは公布から2年後となる、2028年から増員となります。
現状では、大法官が膨大な訴訟を処理しなければならないため、これを緩和し、スピードアップを図る点が、与党により立法の目的として説明されてきました。
しかし、大法官を増やす場合、それを支える人員が必要となる上に、増員される人員が時の政権に影響を受けるといった問題も提起されています。
『法律新聞』によると、李在明大統領は退任する2030年6月までに、26人の大法官のうち22人を任命できることになります。
そもそも、こうした「司法改革」はすべて、五つの裁判を抱える李在明大統領の立場を有利にするためのものではないかという疑問も存在します。
なお、五つの裁判はいずれも、25年7月以降、審理が中断しています。裁判所は中断に際し、「職務に専念し国政運営の継続性のため」という理由を挙げています。
さらに、与党・共に民主党内で李大統領の裁判の公訴取り消しを求める声が大きくなっている点も、こんな疑問を裏付けます。2月23日には、所属議員105人が参加する組織が党内に発足しました。彼らは「検察のねつ造起訴に対する国勢調査を推進する」としています。
一方、司法府だけが「聖域」のようになり、改革の対象とならないのはおかしいという声も、与党をはじめとする進歩陣営に根強く存在します。
いずれにせよ、最大野党・国民の力が「大韓民国の法治主義に対する司法クーデター」と評するなど、国会で充分な議論を尽くしたとは言い難い中、韓国の司法制度を根本から変え得る、新たな制度が導入されることとなりました。
2. 在韓米軍保有の兵器、一部は既に韓国外に移転済みか
4日のニュースレターでもお伝えしたように、イラン攻撃が長引く場合に、韓国に駐留する在韓米軍の兵器や弾薬を中東へと送る案が考慮されているようです。
韓国メディアを総合すると、地対空ミサイルの「パトリオット」、終末高高度防衛システム「THAAD(サード、ミサイルのみ移動とも)」、などの移転が検討されているとのこと。また、最新型の多連装ロケットや防空システムなどが候補に上がっているそうです。
韓国と米国の間では、兵士の運用に関しては協議する必要があるものの、米軍が保有している武器弾薬の移動は自由であると、『MBC』などは伝えています。
これに関し、6日付け『朝鮮日報』は駐韓米軍がすでに兵器を中東に移したと報じました。単独報道、つまりスクープです。

在韓米軍の武器1000個が、昨年12月に搬出されたことを伝える朝鮮日報。
記事では「在来式の爆弾に装着し、精密打撃を可能にする『スマート爆弾』を作れる‘誘導爆弾キット’1000余個が、昨年12月16日に米本土へと搬出された」としています。
また、やはり6日付け『東亜日報』も、米韓が共同で利用する烏山(オサン)空軍基地に、別の地域の米軍基地にあったパトリオットの砲台およびミサイルが移されたと報じました。
同紙はさらに、米軍のC-17、C-5といった大型の輸送機が同基地に駐機している様子も、写真と共に伝えています。また、在韓米軍側は「いかなる回答もしない」という立場であるとのことです。
韓国メディアによると青瓦台(大統領府)は在韓米軍保有の兵器搬出について、今のところは「米側との協議はない」とし、韓国の国防部も「言及するのは適切ではない」という立場を維持しています。ですが、具体的な動きは始まっていると見た方がよさそうです。
こうなると、どうしても「韓国内の防衛が手薄になる」という声が上がらざるを得ないでしょう。中東での新たな戦争の影響は、朝鮮半島にもさっそく及んでいます。不安が募ります。
3. 統一地方選まで90日…異色のサイトも登場
6月3日の統一地方選(韓国での呼称は「地方選挙」)まで90日を切り、公職にある者は職を辞すなど、韓国社会は選挙モードになりつつあります。戦争の話と選挙の話が同時に扱われる、落ち着かない雰囲気です。
今回の選挙では、「広域団体長」と呼ばれる各特別市・各道(県に相当)の首長、「基礎団体長」と呼ばれる各区・各市郡の首長、「広域議会議員・基礎議会議員」と呼ばれる地方議員が選出されます。
また、国会議員の補欠選挙も10数か所(6日時点では5か所が確定)で行われる可能性があります。
選挙の注目はソウル市や釜山市といった大型自治体の市長選挙など目白押しです。補欠選挙の数も多く、文字通り「ビックマッチ」となる見通しです。
そうした中、現在までの候補者(予備候補ふくむ)を一覧にまとめたサイトが話題です。『모두의 선거(皆の選挙)』という名前のものです。
このサイトでは、3396人(6日、午後3時35分時点)の候補者を分析し、平均年齢(55.3歳)、男女比(女性21.6%)、前科記録(前科記録保有者36.5%)などの客観的データを分かりやすく示しています。
また、地域別に候補者をチェックできるようにもなっています。試しに、私が住む金浦(キンポ)市を見ると、現時点で15人の候補者がいることが分かります。一人一人の名前、年齢、所属政党、経歴も見ることができ、中央選挙管理委員会に登録された詳細なプロフィールへのリンクもあるなど、至れり尽くせりです。

金浦市に登録した候補者の一部。同サイトをキャプチャ。
李在明大統領の支持率(国政への肯定評価)は65%程度を維持し、昨日のニュースレターでお伝えしたように、最大野党・国民の力は低支持率の上に候補者不足にも悩まされるなど、選挙は与党有利の構図がはっきりしています。
さらに、中東で戦争が始まったこともあり、有権者の気持ちは、さらに与党側に傾く可能性があります。
それでも、何があるのか分からないのが韓国政治。選挙の話もしつこくならない程度に追いかけていきます。

サイトを制作したのは、国民の力所属の九里(クリ)市会議員キム・ハンスルさん。素晴らしい仕事です。聯合ニュースより引用。
4. 今日の時事韓国語「사법부」
「サボップ」と読みます。漢字では「司法府」です。行政府、立法府と共に、三権分立を担います。韓国のニュースに本当に多く登場する言葉です。
今日はここまでです。
当面は、イラン戦争がもたらす朝鮮半島情勢への影響にしぼって、ニュースレターを書く方がよいのかなと考えています。
韓国政治、韓国社会というのは関心対象ですが、一人でやる分量には限界があるためです。
悩みは尽きませんが、週末のうちに結論を出してみます。
皆さまにおきましても、良い週末をお過ごしください。そろそろ桜の季節ではありませんか?^^
ありがとうございます。(徐台教)
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