【デイリー・コリア・フォーカス】26年3月19日号

皆さま、アンニョンハセヨ。
3月19日、木曜日です。今日も韓国から徐台教が「デイリー・コリア・フォーカス」をお届けします。
もう木曜日ですね。時間が過ぎるのが早すぎて参ってしまいます。
今日の目次は以下の通りです。
1. 韓国が原油危機警報を「注意」に引き上げ、ナフサは「経済安保品目」に
2. [コラム紹介] 「敵対的二国家」、北韓式の終戦宣言
3. 今日の時事韓国語「왕사남」
1. 韓国が原油危機警報を「注意」に引き上げ、ナフサは「経済安保品目」に
イランをめぐる不安定な情勢が続く中、産業通商部は18日、報道資料を通じ「同日15時から原油についての資源安全保障警報を、これまでの『関心』から『注意』段階へと引き上げる」と明かしました。
これにより、国際共同備蓄分の放出分量を購入し、ホルムズ海峡を通過しない分量の確保などを推進するなど供給の多角化に拍車がかかることとなります。また、公共部門でのエネルギー節約の義務化や、民間への節約キャンペーンといった方案を実施するとしています。
一方、天然ガスについては、「価格上昇は憂慮要因であるとしながらも、貯蔵量や需要の減少などを勘案し『関心』状態を維持する」としています。カタール産の天然ガスの輸入が全面的に中断される場合も、問題がないという立場です。
また、日本と同様、石油化学にも影響が出ています。3月10日のニュースレターでお伝えしたように、中東からのナフサ輸入が滞っていることから、これを原料とするエチレンの価格が上昇しています。
18日の地上波『SBS』では、現状で既に20%近く値上がりし、4月からは最低でも50~60%値上がりするという、関係者のコメントを伝えています。
同局によると、韓国のナフサの40%は国内で原油を元に生産され、60%は海外からの輸入に頼っています。いずれの供給も滞っていることから「ナフサ不足→エチレン不足」が起きているのです。
同局はさらに「造船業界も船舶の建造に欠かせない『切断用エチレン』不足を訴えている」とし、経済への影響が出ていることを示しました。
このため韓国政府は18日、ナフサを「経済安保品目」に指定しました。これにより、供給確保に向け、政府が企業の支援に乗り出すことになります。
なおこの日、韓国の産業界がロシア産の原油とナフサの輸入を、韓国政府に打診するという記事もありました。通信社『ニュース1』によると、韓国がロシア産の原油を輸入したのは22年4月が最後でした。21年には全体の輸入量の5.6%がロシア産だったとしています。
18日には、別の動きもありました。
戦略経済協力のための大統領特使としてUAE(アラブ首長国連邦)を訪問していた、姜勲植(カン・フンシク)大統領秘書室長が帰国したのです。両国は「特別戦略的パートナーシップ関係」を結んでいます。
同氏は記者会見で、「韓国よりも先に原油を供給される国はない。韓国は原油の供給で最優先だ(ナンバーワン・プライオリティ)」というUAE側の発言を伝えました。
その上で、新たに1800万バレルの原油を優先的に売ってもらうことになったとし、ナフサを積んだ船舶一隻も韓国に向かっていると明かしました。
イスラエル・米国とイランがどのように戦争を終わらせるのか不透明な中、経済的な悪影響を防ぐための韓国政府の動きが活発化しています。
2. [コラム紹介] 「敵対的二国家」、北韓式の終戦宣言
様々なコラムを紹介する、新コーナー(?)です。
今日は3月17日付『京郷新聞』に掲載された、『敵対的二国家、北韓式終戦宣言』を見ていきます。
書いたのは、韓国の国策シンクタンク「統一研究院」のホン・ミン選任研究委員です。たくさんの韓国メディアで南北関係を解説する著名な専門家です。
タイトルの敵対的二国家というのは、金正恩氏が23年12月以降、とみに強調している韓国との新たな関係性のことです。もはや同じ民族ではなく、統一という同じ価値観を分け合う存在(同質関係)でもないとしたものです。
そしてこれは今年2月に行われた朝鮮労働党第九回党大会でも踏襲されました。2月28日のニュースレターに整理した通りです。
ホン研究委員はコラムの冒頭で、金正恩氏がなぜ「敵対的二国家」を押し出しているのかを四つの理由から説明します。
一つ目は「国家の利益」です。
北朝鮮の目標は「核保有国としての戦略的な地位を強固にし、脅威を減少させることに重点を置いた、米国との間の核軍備統制と、これを通じた対外関係の根本的な改善」であるとします。
やや難解ですが、米国に核保有を認めさせつつ、米国との間にある種の関係を作り、これをテコに諸外国とも関係を改善してゆく狙いと読み解けるでしょう。
しかし「北朝鮮の非核化」を基軸とする韓国の対北朝鮮・対米政策はこんな北朝鮮の国家の利益と対立すると指摘します。このため、韓国の介入を遮断する必要があり、それが「敵対的二国家」という韓国との関係断絶を選ばせたというものです。
二つ目は、南・北・米という「三者構造」の解体です。
北朝鮮は韓国を「朝米対話における邪魔者」と見ているとホン氏は解釈します。韓国の進歩陣営や保守陣営いずれも、その目的は米国をそそのかし、北朝鮮に変化の圧力をかけてきたという理解です。
一つ目と似ていますが、いずれにせよ、韓国との関係を断ち切ることで、韓国が介入する名分そのものを消滅させるもくろみがあるという見立てです。

朝鮮労働党第9回党大会の様子。朝鮮中央通信より。
三つ目は、「核抑止力を行使するための倫理的・戦術的な障害物の除去」です。
北朝鮮がこれまで掲げてきた、統一戦線や「わが民族同士」という論理の下では、韓国に核で狙いをつける状況との間に矛盾が起きるため、「敵対国」と規定することで、韓国に対する戦術核使用の正当性を確保する狙いがあるというものです。
四つ目は、「体制競争と、吸収統一の恐怖からの解放」です。
民族と統一という論理がある以上、統一における(韓国への)優位を確保するために体制の比較や競争を行う必要があり、これは北朝鮮にとってストレスとして作用するというものです。
また、韓国による吸収統一と、外部からの情報・文化の流入が体制に風穴を空ける恐怖を指摘します。
こうした大問題から解決するために、韓国との対話や協力の一切をやめるというもので、これは北朝鮮住民を単一国家論理に縛る「統治企画である」とも定義します。
ホン研究委員はこの上で、北朝鮮の行動を「北韓式の終戦宣言」と位置づけます。
どういうことでしょうか。その論理は、現在の停戦協定体制への解釈によって特徴付けられます。
停戦協定を「国家間の条約ではなく、戦争参加者たちの軍事的合意の性格」を持ち、「政治的な解決を未来に先延ばしにした臨時体制である」と位置づけるのです。
さらに停戦協定の7割がすでに死文化している中、「北朝鮮による『敵対的二国家』と(南北)国境の画定は、これ以上、統一を媒介に、戦争や政治的な統合という論理に埋没したくないという、戦争状態に対する放棄宣言に近い」と結論づけるのです。
やはり難解です。
ホン研究委員の主張は、金正恩氏による「敵対的二国家」という関係設定を、曖昧さからの脱却と捉えるものです。コラムのタイトルにある「終戦宣言」は、この点を指しています。
ホン氏はこう続けます。
「(敵対的という表現は)‘(韓国が掲げる)平和的共存’と相対するもののように見えるが、消耗的な対決を避け、停戦協定の曖昧さを取り除き、国境線に基づく‘断絶した安定’を追求する点で、実用的な共存という志向点を(韓国と)共有すると見ることができる」
要約するならば、韓国が掲げる平和的共存と、北朝鮮が掲げる敵対的二国家は、本質的に相手の主権を侵害しないという点で共通しているという解釈です。
それでは韓国はどうすべきか。
ホン氏は「韓国の戦略も、‘非核化・南北関係改善’という単線的な枠組みから抜け出し、韓半島を取り巻く核の秩序と技術の層位を統合的に管理する‘拡張された戦略的な安定性’として、再設計すべき」と訴えます。
つまり、朝鮮半島を離れたところから、改めて朝鮮半島を含む環境を眺め、これをコントロールしていこうという提案です。ホン氏は最後に管理の核心部分として、「脅威の減少」と「相互の安定」を掲げています。
何度も言うように、難解なコラムでした。
北朝鮮の「敵対的二国家」宣言を、南北関係における曖昧さを取り除くものとする解釈には、意見が分かれるところでしょう。文字通り、本当に敵対視している可能性もあるからです。
そうとはいえ、ホン氏の解釈が間違っているようには思えません。金正恩氏は「韓国が手を出さない限り、私たちも手を出さない」という旨を何度も明かしているからです。
ですが、あちこちで戦争が起きる不安な現状の中で、ホン氏の意見は韓国社会で簡単には受け入れられないでしょう。
コラムにあったような解釈や論点について、実際に南北が話し合うことになればよいのですが、それは遠い先の事ととなりそうです。
3. 今日の時事韓国語「왕사남」
「ワンサナム」と読みます。映画『왕과 사는 남자(ワングァ サヌン ナムジャ、王と住む男)』の略語です。
この映画は今年2月4日に韓国で封切られ、3月19日まで1384万人が観覧しました。
韓国の人口が約5200万人であることを考えると、4人に1人が観ていることになります。歴代6位の観客数です。
もちろん、わが家も全員観ました。朝鮮王朝時代の実話をベースにした、笑いあり、涙ありの名作でした。まだ日本での上映は決まっていないようですが、その内決まるでしょう。お楽しみに!

「王と住む男」のポスター。
今回はここまでです。
コラム紹介が思わず長くなってしまいました。
党大会以降、私自身で整理した記事を出せていない点が心残りです。他にもニュースレターとは別に書くべき記事が溜まり、焦っている状態です。
とにかく今日はこの後もずっと、色々と書き続ける一日です。
それではまた明日。アンニョンヒケセヨ!(徐台教)
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