【デイリー・コリア・フォーカス】26年4月22日号

皆さま、アンニョンハセヨ。
4月22日、水曜日です。通りすがりのパン屋さんのイートインから「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。
今日の目次は以下の通りです。
1. 日本の「殺傷兵器輸出解禁」を眺める、韓国の複雑な事情
2. 今日の時事韓国語「방산」
1. 日本の「殺傷兵器輸出解禁」を眺める、韓国の複雑な事情
昨日は日本で大きな動きがありましたね。そうです、高市内閣による武器輸出の目的における「5類型」の撤廃です。
これにより、日本で「殺傷能力のある武器の輸出が全面的に解禁される」(朝日新聞、21日夕刊)こととなりました。
輸出に際しては国家安全保障会議(NSC)が強い権限を持ち、監視の役割が期待された国会は「事後通知」を受け取るのみとのこと。ずいぶん前のめりな印象です。
21日の晩、韓国の地上波三社はメインニュース番組の中で、一斉にこの動きを取り上げました。一つずつ見ていきましょう。

KBSの該当ニュースをキャプチャしたもの。
まず日本のNHKにあたる公営放送KBSでは『日本、殺傷武器輸出のかんぬきを解除…政府「平和憲法の精神を堅持すべき」』と報じました。
決定の内容を伝えながら、輸出の対象が米国や英国、豪州といった17の友好国である点に言及しています。なお、韓国は対象国の中に含まれていません。
さらに韓国外交部のコメントも伝えています。全文は以下の通りです。
「日本の防衛安保政策が、平和憲法の精神を堅持しながら、域内の平和と安定に寄与する方向へと行われることが望ましい」
KBSはさらに、「新しい軍国主義の妄動を断固として阻止する」という中国の姿勢や、その中国と南シナ海をめぐり領有権問題を抱えるフィリピンが日本の動きを歓迎している点に触れました。

MBCの該当ニュースをキャプチャしたもの。
次は、やはり公営放送(KBSとは運営・管理制度が異なります)のMBCです。こちらは『日本、結局、武器輸出の足かせを解く…殺傷武器の輸出を全面許容』というタイトルでした。
ニュースの前半部で取り上げたのですが、イラン情勢を散々やった後だったためか、導入部が特徴的でした。引用してみます。
「このように(イランをめぐる)戦争が行われている隙に、日本はその間抑制してきた殺傷武器の輸出を全面的に許容することにしました。特に戦争中の国家へと武器を輸出する可能性まで開かれており、戦後80年間維持してきた‘平和国家’という基調と合わない動きを見せています」
なかなかエッジの効いた原稿ですよね。MBCはリベラル系です。
さらに、韓国の保守系シンクタンク(先日、石破茂前首相を招待した所です)「峨山(アサン)政策研究院」の専門家のコメントがありました。
「(防衛産業の輸出を)いわゆる正常国家の水準にしようというのが、高市の意図に見える。責任を負うときには責任を負う、安全保障の参加国という位相(格)へと変わろうとするもの」という分析です。
一方で、あくまで「平和国家として歩んできた道を固守する」という日本政府の立場も紹介しています。ですが、これに反論する大阪成蹊大学の佐道明広副学長のコメントが取り上げられていました。

SBSの該当ニュースをキャプチャ。
最後に、民放のSBSです。『台湾海峡でも‘神経戦’…日本「殺傷武器の輸出許可」』というタイトルでした。
冒頭では昨今の日本を表現する際の定番のフレーズ、「戦争のできる国」への言及がありました。
今月17日、自衛隊の「軍艦」が台湾海峡を通過した点に触れ、これに中国が反発している中、武器輸出指針を改正したという流れです。
今回の決定の背景に、防衛産業を強化する目的があると伝える一方、日本国内でも「戦争のできる国へと向かう動きが速まる事への憂慮がある」としました。
また、高市首相が靖国神社に供物を奉納した点にも触れました。日本の右傾化を印象づける報道の仕方です。
なお、社説で今回の動きに触れた日刊紙はありませんでした。
一連の報道を見ると、表面をさらりとなでるだけという印象です。
韓国のテレビニュースは一つのテーマにつき一般的に2分(最大で2分半)で収めるのが慣例であるとはいえ、重要な場合には二つ、三つと重ねていきます。取り上げはしたものの、掘り下げる程には注目されていないと判断できます。
その理由は、韓国企業と韓国政府こそ、バンバン武器兵器の輸出を行っているからです。
おそらく韓国の多くの視聴者がこの日のニュースに触れ、「え?日本はこれまで武器を売っていなかったの?」と思ったことでしょう。
どういうことでしょうか。
世界的に権威を認められているストックホルム平和研究所(SIPRI)が今年3月に発刊した『2025年世界武器移転動向報告書(原題:TRENDS IN INTERNATIONAL ARMS TRANSFERS, 2025)』によると、2021年から25年まで、韓国は世界9位の兵器輸出国となっています。シェアは3.0%です。
報告書によると、韓国の主要輸出先は1位から順に、ポーランド、フィリピン、UAEとなっています。
また、NATO(北大西洋条約機構)に対し、米国に次いで2番目に多い兵器を韓国が輸出しました。シェアは8.6%です(米国は58%)。
一方でこれを報じた韓国の通信社「聯合ニュース」によると、韓国は同じ期間の間、海外からの兵器の導入の規模が54%減少しています。背景には国内生産が増えた点があると同社は分析しています。

2021年から2025年にかけての、武器兵器世界上位10か国をグラフにしたもの。SIPRIより引用。
一方、別の通信社「ニュース1」は今月14日、やはりストックホルム平和研究所が集計したデータを引用し、2025年だけで区切ってみる場合、韓国の武器輸出は世界4位であるとしました。シェアは6.0%です。
1位は米国で42%、2位はフランスで10%、3位はイスラエルで7.8%です。なお、韓国の2024年の「実績」は8位(シェア3.6%)でした。
韓国防衛産業の勢いの背景には、10数年にわたる政府の後押しがあります。特に2020年代に入り、その位置づけは明らかに変わりました。
李在明政府は任期5年間に達成する123の国政課題を挙げていますが、その113番目は「K-防衛産業の育成および獲得体系の革新を通じた、防衛産業4大強国への進入」とあります。
K-POP、K-ドラマのように、韓国の防衛産業をブランド化し、世界ベスト4の実力を持とうという目標です。これを実現するための手段として「防衛産業輸出企業と中小ベンチャー企業に対する集中的な支援」を掲げているのです。
防衛産業は「国家の安全保障に寄与する」ものであると同時に、「国家経済の主力として育成する」という位置づけられているのです。

国政課題の113番目は防衛産業の育成です。その進捗も細かく更新されています。政府サイトより引用。
韓国の武器・兵器は実際、長い南北分断と対立の中で改良され性能が向上、さらに自主国防の目標の下で新規技術開発が続き、国際的な信頼を得ています。さらに納期面でも他国より速く、技術移転や運用面でのパッケージも含め、競争力があるようです。
今やその分野は練習・攻撃機から自走砲、戦車、誘導迎撃ミサイルまで多岐にわたります。
韓国の国策銀行・輸出入銀行は、2026年の韓国防産企業の新規受注額を270億ドル(約4兆3000億円)と見通しています。
このような事情を知ると、日本の殺傷兵器の「輸出解禁」に対し比較的しずかな韓国の雰囲気が理解できることでしょう。
今や韓国市民にとって武器輸出は、プライドの一つともなりつつあるのです。関連企業の株価上昇も止まりせん。反対の声は小さな範囲にとどまっています。
果てしない南北対立の中、徴兵制をはじめ軍事的な緊張が常在する韓国ならではの事情です。日本とはまた異なる感覚、異なる社会がここにあります。
さらにこんな韓国の存在が、日本の軍拡に影響を与えていることは間違いないでしょう。韓国が原子力潜水艦の導入を発表するや、日本でも関連議論が盛り上がった例などが代表的です。
東北アジアの平和は非常に危ういバランスの上に成り立っています。今回の日本の「輸出解禁」により、その危うさは減るのでしょうか。
2. 今日の時事韓国語「방산」
「パンサン」と読みます。漢字では「防産」です。
防衛産業の略語で、ニュースでも頻出します。これに「株」が付くと「방산주(パンサンジュ、防産株)」となります。防産関連企業の株のことです。
今日はここまでです。
今回もどうも暗いですね。
それではまた明日!お読みいただきありがとうございます。
アンニョンヒケセヨ。(徐台教)
すでに登録済みの方は こちら
提携媒体
コラボ実績
提携媒体・コラボ実績
