【デイリー・コリア・フォーカス】26年6月4日号

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徐台教 2026.06.04
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

6月4日、木曜日です。韓国は昨日、統一地方選(正式名は第9回全国同時地方選挙)と、14の選挙区での国会議員再・補欠選挙がありました。

昨日おニュースレターをお送りしたのが23時過ぎでしたが、その後、いくつかの選挙区で結果が出ない状況が続きました。

大邱(テグ)市長選で金富謙(キム・ブギョム)元総理が涙をのみ、釜山・北区甲の補欠選挙で韓東勲(ハン・ドンフン)氏が笑ったのも、午前2時を過ぎてからでした。

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さらに同時進行で、投票用紙不足を糾弾する動きが広がっていきました。

ソウル市内・松坡(ソンパ)区の投票所では、投票箱の持ち出しを止めようと警察と市民が対峙し(今も続いています)、ソウル郊外の中央選管の建物前にも、多くの市民が駆けつけ「不正選挙」、「選挙無効」の声を上げ続けました。

私も4日0時半くらいの段階で行くか行くまいか迷いました。

しかしYouTubeで見た現場のライブ映像とそこに集まるコメント、実際に取材に出た知人記者の情報から「今さわいでいるのは、不正選挙デマと陰謀論を信じる人々に過ぎない」と判断し、家で開票速報を見守ることにしました。

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もし、たくさんのレイヤーを持つ市民が集まっていた場合には、取材に出かけていたでしょう。午前4時半くらいに眠りにつきました。しかしこの時もまだ、ソウル市長選の決着はついていませんでした。

そうとはいえ、与党・共に民主党の鄭愿伍(チョン・ウォノ)候補がずっとリードしました。しかし朝起きると、形勢は逆転していました。最大野党・国民の力の呉世勲(オ・セフン)候補がリードしていたのです。そしてそのまま、逃げ切りとなりました。

このように、選挙の話はずっと書いていられる上に、整理すべき内容が多いのですが、それは明日5日に回します。選挙の総括記事は5日にYahoo!ニュースで配信します。

代わりに今日は、先月、アジア女子チャンピオンズリーグに参加するため韓国を訪れ、見事優勝した朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)サッカーチームに対する、二つの興味深いコラムを紹介します。

韓国政治の話ばかりでニュースレターがマンネリ化してきたためです。

たまにはメインの(?)南北関係の動きにも触れてみます。

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1. 来韓し「アジア女子チャンピオンズリーグ」で優勝…朝鮮『ネゴヒャン女子蹴球団』をめぐる視線

一つ目は亜洲(アジュ)大学亜洲統一研究所の韓起鎬(ハン・ギホ)教授による、『ネゴヒャン女子蹴球団が残していったもの』というコラムです。5月29日付け「亜洲経済」に掲載されています。

韓教授は今回の朝鮮サッカーチームの韓国訪問を、「分断という巨大な病気を抱えて生きる韓国社会の多面的な感情を、水面上に表すに十分な時間だった」と総括しました。

普段は表に出てこない感情が、南北のクラブチームの対決により呼び起こされたというものです。

5月20日夜7時、ソウルから1時間ほど南に行ったところにある水原(スウォン)市総合競技場で、アジア女子チャンピオンズリーグの準決勝戦が開かれました。

土砂降りの中で相見えたのは、『ネゴヒャン女子蹴球団』と韓国の『水原FCウィメン』。試合は2対1でネゴヒャンが勝利しました。この時、私も競技場に訪れましたが、確かに同情や応援、異質感など様々な感情を覚えました。

韓起鎬教授のコラム。「亜洲経済」をキャプチャ。

韓起鎬教授のコラム。「亜洲経済」をキャプチャ。

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韓教授はまず、なぜネゴヒャンチームは来韓したのか?と疑問を投げかけます。当時、韓国メディアでは朝鮮チームが来ない可能性があるとしていました。

これに対し、韓教授は準決勝、そして『東京ヴェルディ・ベレーザ』との決勝戦の勝利後に、ネゴヒャンの選手達がそれぞれ、朝鮮の国旗を掲げた点に着目しました。

朝鮮の「正常国家化」を目指す金正恩政権の下で、国旗は国家を象徴する第一の象徴になっているとしながら、これを掲げる機会を「挑戦しがいがあるもの」と判断しただろうとします。

さらに、ボイコットした場合には最低でも10万ドル(約1600万円)の罰金や、アジアサッカー協会(AFC)が主管する大会への出場停止があった可能性も指摘しました。

朝鮮の女子サッカーは世界的な強豪です。2025年には17歳以下W杯で優勝していることもあり、後輩達の前途をふさぐような行動は取れなかったのでは、とも見立てました。

いずれにせよ、ネゴヒャンの来韓はギリギリになって決まったため、韓国側では同チームを「ひとつのクラブチーム」として受け入れる準備が不足していたとします。

メディアも「7年5か月ぶりのスポーツ選手団の来韓」と書き立て、ネゴヒャンの選手の一挙手一投足を生中継しました。

このような注目について韓教授は、韓国社会に内在している「民族的な修辞」によるものと判断しています。韓国政府も韓国の市民応援団を金銭的に支援するなど、「北側の敵対基調を『歓待』をもって受け入れた」と評価しました。

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韓教授はさらに、今回のネゴヒャンの来韓により得られたものとして、「朝鮮の旅券と『訪南証明書』の共存可能性」に言及しました。

従来、国と国の関係ではない南北の往来は「入国」ではなく「入境」とされ、互いの訪問は証明書をもって行われました。

しかし今回、ネゴヒャンの選手たちは来韓時にあらかじめ韓国側が発行していた証明書ではなく、朝鮮の旅券を空港で提示しました。韓国の統一部によると、旅券に入国スタンプは押さず、あくまで身元を確認する資料として扱ったといいます。

いささかコメディのような形ですが、それでもネゴヒャンの選手団が韓国入りしたことを、韓教授は「共存可能性」と読み解いたのです。この点が私にとっては興味深い解釈でした。要は、新たな関係性が始まったということでしょう。

韓教授は最後に、ネゴヒャンと水原の両選手が試合後に握手した場面を「冷淡な南北関係の中で、長い間、膾炙されるだろう」と評価しました。

これを撮った「聯合ニュース」の写真があるのですが、著作権の関係上ここには貼れないので、リンクをつけておきます。なかなか渋い一枚でした。17番(白)がネゴヒャンのエースで主将のキム・ギョンヨン選手で、20番の選手が水原のイ・ユジン選手です。

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二つ目は、別の角度からネゴヒャンの選手達を見た内容でした。

書き手は李日奎(リ・イルギュ)さんです。元駐キューバ朝鮮大使館で政治参事官を務めた人物です。2023年11月に韓国へと亡命した脱北民です。

タイトルは『ネゴヒャン女子蹴球団が見せた、北韓の素顔』です。6月1日の朝鮮日報に掲載されています。

コラムではまず、金正恩氏の「韓国との関係に残ったものは何もなく、あるとするならば、わが国益に準ずる冷静な計算と徹底した対応のみ」という発言を引用します。今年2月の朝鮮労働党党大会でのものです。

そして、ネゴヒャンの来韓をこの「国益の延長線上から理解すべき」と説きます。

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さらに「北韓の立場では、スポーツは露骨な政治宣伝よりもはるかに効率的な政治の道具である。スポーツの舞台を通じ、自らが主張する「二国家論」を自然と刻印しようというものだ」と続けます。ただ来ただけではないよ、という観点です。

また、ネゴヒャンチームは、金正恩氏の警護を担当する護衛総局の所属である点に触れ、「金正恩の個人的な体育団に他ならない」と指摘します。「その勝利は指導者の業績になる」ということです。

ネゴヒャンの選手達の体格の良さなどから、最高クラスの環境で生活していることが分かるとも書いています。

李日奎さんのコラム。朝鮮日報をキャプチャ。

李日奎さんのコラム。朝鮮日報をキャプチャ。

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コラムの核心は、このようにネゴヒャンに映る北側の体制と、韓国の「自由民主主義体制」の違いを衝く点にあります。

今回、空港では韓国市民の応援団がネゴヒャンを歓待し、競技場にも応援団が訪れました。これを「スポーツそのものを尊重し、選手達を礼遇する姿には、大韓民国の社会の開放性と自信がはっきりと現れている」と評しました。

一方で、空港で表情を変えず、応援団と目も合わさなかったネゴヒャン側の態度、無愛想な監督の様子を取り上げ、「『ありがとう』という挨拶も自由にできない姿に、心が重くなった」と告白しました。

そしてその背景にも理解を示します。

「南側に好意的な態度を見せたという理由だけで、とてつもない不利益を被る可能性がある。その恐れが言行を統制し、感情を押し込めただろう」というのです。

その上で、ネゴヒャン側の行動は「体制に対する忠誠というよりも、生存のための選択に近い。自由に笑い、挨拶し、感謝する事すら制約を受ける現実が、北韓の体制の限界だ」と結論づけました。「北韓が正常国家になるには、まだまだ遠い」とも付け加えています。

李日奎氏は最後に「今回の競技は、サッカー以上の意味を残した。私たちは同じ競技場を共有したが、互いに全く異なる体制を生きる二つの集団の姿を見た」とつづっています。

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いかがでしょうか。

このように、同じ事象を元に書かれた二つのコラムの視線や論調は明確に異なります。

しかし、いずれの著者の視線も私にとっては価値があるものと思われます。どちらの見方が正しいのか、優れているのかを競い、比べる必要はありません。

この態度こそが、凝り固まった朝鮮半島情勢を、ひとつひとつほぐしていくものと、私は確信しています。

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2. 今日の時事韓国語「당선」

「タンソン」と読みます。漢字では「当選」となります。

なお、当選した人物は実際に職務を始めるまでの間は「당선인(タンソニン、当選人」と呼ばれます。

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今日はここまでです。ひと言で疲労困憊です(笑)

それでは明日またお届けします。いつもお読みくださりありがとうございます。

アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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