【デイリー・コリア・フォーカス】26年1月28日号
皆さま、アンニョンハセヨ。
今日もお隣・韓国から徐台教が「デイリー・コリア・フォーカス」1月28日号をお送りいたいます。
金浦は今朝もマイナス9度。昨日お伝えしたように、洗濯機は今も凍ったままです。仕方なく昨晩おそく、コインランドリーに行ったところ、寒い寒い。
洗濯を終え乾燥機に山盛りの洗濯物を入れたところで、天井のヒーターが「60分500ウォン」で動くという貼り紙に気づきました。55円です。エイヤ、と付けたら家に帰る頃になってようやく暖かくなってきたというお話です。
さて、今日の目次は以下の通りです。
1. 「トランプ関税爆弾」にも韓国株式市場は強気
2. 李大統領‘鶴の一声’で生理用品に変化
3. 首脳会談の成果?中国が黄海で建造物を移動
4. 「あのお菓子」が献血不足を一気に解消
5. 故李海瓚氏の死の影に「拷問後遺症」か
6. 今日の時事韓国語「장례」
1. 「トランプ関税爆弾」にも韓国株式市場は強気
26日(現地時間)に突如、トランプ大統領がSNSを通じ、韓国の関税を現在の15%から25%へと引き上げることを発表しました。
理由は、「韓国の国会が米国との合意を守っていない」というもの。
昨年7月と10月、首脳会談を通じ関税を下げることで合意し、その条件を確認したが、韓国はまだ動いていないという主張でした。
この指摘は現実として存在します。
韓米は昨年の11月14日、「関税・安全保障に関するファクトシート」と共に「韓米戦略的投資に関する覚書」を発表しました。
その内容は、トランプ氏が米韓FTA(自由貿易協定)を無視し、一方的に25%へと引き上げた関税を15%に下げる代わりに、韓国は3500億ドルを米国に投資するというものでした。
具体的には、1500億ドルを造船分野に、年間200億ドルを超過しない範囲で2000億ドルを投資すると、取り決めました。
これを受け韓国の与党・共に民主党は昨年11月26日に「対米投資特別法」を発議しました。そしてその直後の12月4日、米政府は自動車ならび相互関税を15%に下げたのでした。
この法案は今も国会に係留中です。
実は、覚書にも韓国政府が対米投資を始める時期は書かれていませんでした。投資先を米国と共に検討し、国の金を巨額投資する手続きは煩雑で、組織作りに時間がかかります。
関連法の発案からわずか2か月で結果を求めるのは、いくらなんでも急ぎすぎでしょう。韓国メディアによると、同じ法案を作っているEUでは、5か月が経過しても動きはないとのことです。
トランプ氏はこんな事情をすべて知りながらも「韓国の国会がわざと止めている」と言わんばかりに、難癖を付けてきたのです。
だからこそ、韓国政府や財界も頭を抱えました。
その背景については、移民当局ICEによる住民殺害への反発に端を発する「米国内での支持率低下」や、一方的な関税引き上げの合憲性を問う最高裁判所の判決が迫る中、「成果(この場合は韓国からの投資)を急いでいる」と、概ね解釈されています。
また、「『安全保障を米国に依存する同盟国の韓国ならば、これくらい叩いても大丈夫だろう』という打算があるはず」といった専門家による分析も、メディアやSNSで散見されました。
このように、メディアを中心に悲嘆にくれる世論が形成されるかと思いきや、株価指数は上昇しました。
今月23日、「KOPIX(韓国総合株価指数)」が史上初めて5000を超えたことをお伝えしました。昨年の上昇率は75%、昨年6月の李在明政権発足後の上昇率は50%と、脅威的な上昇です。
実はこの時、終値(閉場時)では5000を下回っていました。
ですが明け方に関税引き上げの一報が駆け巡った27日、終値は5084と大きく上昇しました。
地上波『MBC』によると、開場直後に個人投資家が1兆ウォン(約1060億円)を売るなど下落しましたが、その後、海外の個人や投資機関などが買い、終値は5000を超えることとなりました。
特に『KBS』が「これ以上、耐えられない」と報じた自動車関連株の中で、最も規模が大きい現代(ヒョンデ、日本ではヒュンダイ)自動車も閉場時には下落分を取り戻しました。
KOSPI5000突破を伝えるニュース。SBSをキャプチャ。
こうした動きの背景には、トランプ大統領のSNSでの発表が「ブラフ(ふっかけ)」であることを、市場はいち早く感じ取ったという点があるようです。無理難題を突きつけ、そこから引き算をしていくトランプ式のやり方に慣れてきた、といった指摘が目に付きました。
韓国の各メディアは‘トランプはいつもビビって引き下がる’という意の「TACO(Trump Always Chickens Out)」という単語を使い、この現象を説明しました。
そして27日(現地時間)、トランプ大統領は米メディアに対し「韓国と共に解決策を作る」旨を明かしています。
とはいえ、楽観は禁物でしょう。韓国は産業通商部の長官や通商交渉本部長といった交渉チームを米国に派遣することを明かしています。
また、国会に係留中の法案も2月末から3月初頭を目処に成立させると、与党側は明かしているとのことです。
2. 李大統領‘鶴の一声’で生理用品に変化
韓国では以前から、女性の生理用品が高いと言われていました。
値段は今も上がり続け、『SBS』によると過去5年で19%も高くなり、他の品目の物価よりもその上昇幅は大きいそうです。
こんな状況を前に、李在明大統領は積極的な発言を続けています。
通信社『ニューシス』によると、昨年12月19日には、公正取引委員会の業務報告の場で「韓国の生理用品の価格が海外よりも39%も高い」と述べました。
また、今月20日の国務会議(閣議)でも「必要な最低品質を備えた生理用品を安く作り、無償で供給できるか一度研究してみようと思う」と明かしています。
そして今、こうした言及が単なるリップサービスではなかったことが分かりつつあります。
27日には、生理用品を供給する大手3社のうち一つである「LGユニチャーム」に、国税庁が調査に入りました。販売コストをわざと上げる形で、約1500億ウォン(約160億円)の税金を故意に漏らした(脱漏)した疑いによるものです。
また、「ユハンキンバリー」、「ケクタンナラ」という他の2社にも税務調査の対象になっているそうです。この3社で生理用品のシェア8割を占めると前出の『SBS』は伝えています。
大統領のひと声で動くのは、さすが(?)韓国といったところですが、企業側にも言い分があるようです。
以前より低価格帯の生理用品を作り、貧困家庭への生理用品寄付も続けてきたと反論しています。「ユハンキンバリー」社はこうした低価格帯の商品の価格を11年間据え置きにしているそう。
しかし結論としては、こんな低価格帯の商品はコンビニならどに並ばず、入手が難しいということのようです。これら3社は、低価格帯商品の供給と流通を増やすことを明かしています。
こうした動きは、李在明氏ならではでしょう。
実は李氏は京畿道(キョンギド)知事時代の2020年にも、満11歳から18歳までの全ての女性青少年に、生理用品の購入費用を支援する政策を行っていました。以前、私も記事を書いたので添付しておきます。
ポピュリズム政策といえばそれまでですが、利用者にとってはプラスになることは間違いありません。「中道保守」を自認する李在明氏ですが、その根底にはまた別の志向があるようにも思えます。
3. 首脳会談の成果?中国が黄海で建造物を移動
1月初頭、訪中した李在明大統領。中国との関係を重視していることの表れでしたが、懸案材料には事欠きません。
その中の一つに「西海構造物」があります。
西海というのは黄海のことで、構造物というのは、中国が韓中の暫定措置水域(Provisional Measures Zone:PMZ)に設置したものです。
下記写真にあるようなもので、人が住める形に改造できることから、領土・領海を拡張する根拠とするのではないかとされ、将来的に外交問題に発展する可能性が取り沙汰されています。
3つある構造物のうち一つ。共に民主党・イビョンジン議員室提供。
設置は2018年から24年にかけて行われ、現在3つの構造物があります。
なお、経済紙『韓国経済』によると、暫定措置水域というのは2000年に韓中間で締結された漁業協定に拠るもので、両国の排他的経済水域(EEZ)が重なる部分を指すものです。
海上の境界が確定するまでの間、漁業資源に限り、共同で管理することが決められています。
中国側は、漁業協定に構造物に関する取り決めがないことから、設置に問題はないという立場です。あくまで魚(鮭)の養殖管理のための施設としています。
今回、中国はこの中の一つを撤去することにしました。27日、中国外交部が明かしています。
3つある「構造物」のうち、石油試錐船の形態をしたものを、暫定措置水域の外に移動させるというものです。この船にはレーダーやヘリポートが併設され、軍事用に転用される懸念もありました。
中国外交部は表向きは「企業の事情」を挙げていますが、韓国との「緊密な疎通と協力」にも言及していることから、先の首脳会談における成果と受け止められています。
事実、昨年から撤去(移動)に向けた交渉があった韓国外交部は認めており、青瓦台(大統領府)も28日、「意味のある進展」と評価しました。
移動は31日まで完了するとのことです。
しかし、色々なことが起きているものですね…。
4. 「あのお菓子」が献血不足を一気に解消
突然ですが、復習の時間です。
「두쫀쿠」とはなんでしょうか?
1月16日の「デイリー・コリア・フォーカス」で紹介しましたよね。正解は「두바이 쫀득 쿠키」、読み方は「ドゥバイ・チョンドゥク・クッキー」で、韓国で流行りのお菓子です。
ピスタチオとホワイトチョコを和えた具を、ココアパウダーをまぶした柔らかい生地で包んだ甘いものです。
「トゥチョンク」。写真は京郷新聞より拝借しました。
私も未だに食べたことがないのですが(味は先ほど娘に聞きました)、その話題性から入手困難になり、人々が列をなし求めていたこのお菓子。
なんと今、「献血不足」の救世主になっているそうです。
韓国では毎年、冬になると献血者が減るそうです。外出が減り、学生は冬休みになるからです。
特に今年はインフルエンザの早期流行や需要増が重なり、備蓄量が減っているというニュースが一週間前に出ました。私もそのニュースを聞いたことを覚えています。
関心・注意・危機という三段階のうち、AB型やA型の血液は備蓄量は3日分を切る「注意」段階となり、他も「関心」段階に突入していたというのです。
しかしここ2~3日、この問題が解決されたというニュースがたくさん出ています。
理由は、献血者に対し、入手困難な「두쫀쿠」を配布したからだそうです。
今月16日から赤十字社のアイディアで配布が始まるや、献血者が増え、27日基準で備蓄量は全体で4.9日分まで回復したそうです。
もちろん、記事には「いかにクッキーを確保するか」という赤十字社の苦労も書かれています。
5. 故李海瓚氏の死の影に「拷問後遺症」か
今日の最後の内容です。
1月25日にベトナムで亡くなった、李海瓚(イ・ヘチャン、享年73)元総理。韓国の民主主義の発展と定着に深い足跡を刻んだ人物として、追悼ムードは今も続いています。
27日、その遺骸が韓国に戻り、5日間の葬儀が始まりました。
葬儀は「社会葬」と、最後の職場であった民主平和統一諮問会議による「機関葬」という形で行われます。
社会葬というのは聞き慣れない言葉ですが、『朝鮮日報』によると「国家と社会に功績を残した人物が亡くなった時に、社会各界の代表が自主的に葬儀委員会を構成し行う葬儀」であるとのことです。
葬儀委員長は金民錫(キム・ミンソク)国務総理、共同葬儀委員長は白楽晴(ペク・ナクチョン)ソウル大名誉教授と、鄭清来(チョン・チョンレ)共に民主党代表が務めます。
27日、弔問に訪れた李在明夫妻。青瓦台提供。
27日には李在明大統領夫妻が弔問に訪れる中、通信社『聯合ニュース』の記事が目に止まりました。
「故李海瓚を生涯苦しめた拷問の後遺症…‘南山の悪夢’は現在進行形」という記事がそれで、73歳と比較的早くに亡くなった李海瓚氏の死に、韓国当局による拷問が影響を及ぼしたのではという内容でした。
実際に李海瓚氏は2010年代後半から、言葉に詰まり手が震える様子が見られ、2年前からは支えが必要だったとしています。
私も2020年の総選挙を取材する過程で近くからその姿を見ましたが、確かに健康そうには見えませんでした。
同氏は過去、民主化運動を行う過程で74年、79年、80年と当局に連行され、拷問を受けています。
特に、1980年5月、ソウル大復学生代表として「ソウルの春」と呼ばれた一連の民主化運動集会に関わった際にひどく殴打されました。
同年5月18日から27日にかけて、全羅南道・光州(クァンジュ)で起きた市民による民主化運動と、政府による激しい弾圧がありました。200人に迫る死者が出ました。
後に『5.18光州民主化運動』と呼ばれる出来事ですが、この時、当局は金大中(キム・デジュン)氏に「内乱陰謀」の罪をかぶせ死刑判決を下します。この際に、李海瓚氏もその一派とされ逮捕されたのです。同年、6月24日のことでした。
実際には無関係でしたが、ソウル南山の中央情報部に連行された同氏は、殴る蹴るの激しい拷問を受けます。
その様子は回顧録に「歩くことができず、伏せたまま身体を動かして移動した。トイレにも行けなかった。便器に座る際に太ももがちぎれそうだった」と記されています。
先の『聯合ニュース』の記事では、拷問が被害者の脳や精神の疾患やPTSD(心的外傷後ストレス障害)をもたらし、心臓の血管の疾患が発生する危険を高めるという医療界の論文を紹介しています。
李海瓚氏の死因も心筋梗塞でした。
『李海瓚回顧録』。筆者撮影。
前出の回顧録には、拷問を受けた後に、過去に逮捕された時の捜査官に見つかり、さらに激しい拷問を受けるところを、担当者が光州出身の軍人で見逃されたというエピソードが続きます。
すさまじい暴力をもって民主化運動を弾圧した、当時の雰囲気がよく分かります。
しかし驚くことに回顧録には「私は他の人よりも弱く拷問を受けた」と書かれているのです。
なお、誰よりも激しい拷問を受けたことで知られる民主化運動家であり政治家である金槿泰(キム・グンテ)氏は2011年、64歳で亡くなっています。
こんな記事や回顧録を読みながら、改めて「軍事政権当時」に思いを馳せました。それを倒すために、どれだけの犠牲があったのだろうかと。
李海瓚氏が精魂込めて支えた民主党の功罪に言及するにしても、あの時代を生きた方たちへの敬意を失ってはならないと思った次第です。
私も明日、葬儀場に行ってきます。
6. 今日の時事韓国語「장례」
「チャンレ」と読みます。漢字では「葬礼」となります。お葬式を指します。
韓国では一般的に「삼일장(サミルチャン、三日葬)」で行われますが、社会的に著名な人物の場合は「오일장(オイルチャン、五日葬)」となります。三日目、五日目に告別式を行い、火葬・納骨を行う形です。
今日は以上です。
朝10時から一心不乱に書いていたら、過去最長となってしまいました。
たまにはこういう日もあるでしょう。
それではまた明日。アンニョンヒケセヨ。(徐台教)
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