【デイリー・コリア・フォーカス】26年1月27日号

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徐台教 2026.01.27
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

韓国から徐台教が「デイリー・コリア・フォーカス」1月27日号をお送りいたします。

韓国の首都圏ではここ10日ほど、朝の気温がマイナス10度前後まで落ち込んでいます。昼も零下ということが多く、わが家の洗濯機は凍ってしまい使い物になりません。だからどうした、という話なのですが笑

さて、気を取り直していきましょう。

今日の目次は以下の通りです。

1. 韓国政府、原発2基新設を決定
2. 「個人情報流出」クーパンと韓国政府の対立激化
3. 北朝鮮ミサイル「露ウ戦争通じ改良」
4. 統一教会からの金品授受、迫る「Vゼロ」への一審判決
5. 米国防次官「韓国は模範的な同盟」
6. 今日の時事韓国語「원전」

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1. 韓国政府、原発2基新設を決定

1月21日の「デイリー・コリア・フォーカス」を通じ、世論の支持やAI(人工知能)や半導体産業での需要から、李在明大統領が原発新設に踏み切る可能性が高いとお伝えしました。

そして昨日26日、気候エネルギー環境部長官が会見を開き、原発新設を正式に発表しました。

同部の報道資料では原発導入の根拠としてまず、世論の支持を挙げています。

「今後拡大が必要なエネルギー源」について原発が再生エネルギーに次ぐ支持を得たこと、「原発が必要だ」という回答が80%以上にのぼったこと、「新規原発計画を推進すべき」という回答も60%以上であったと列挙しました。

また、同部のキム・ソンファン長官は「気候(変動)への対応のために炭素排出をあらゆる分野で減らさなければならず、特に電力分野の炭素減縮のために石炭・LNG(天然ガス)発電を減らす必要があることから、再生エネルギーと原発中心の電力運営が必要である」と、原発新設の背景を説明しました。

韓国メディアではさらに、東西に狭い韓国の国土上の特徴から、太陽光発電などの再生エネルギー利用には限界があるという、政府による説明を付け加えています。

購読する『京郷新聞』では原発新設が一面トップの扱いでした。筆者撮影。

購読する『京郷新聞』では原発新設が一面トップの扱いでした。筆者撮影。

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需要面では、政府はやはり、AIや電気自動車産業の拡大による需要があると繰り返しています。AIに関してはデータセンターと半導体工場が莫大な電力を消費するとのことです。

具体的な時期については、約半年かけて建設地を決め、2030年代の初めに建設許可を取得、2037年もしくは38年の竣工を目標にするとしています。

こうした計画は昨年2月に策定された政府の電力需給計画に拠るものですが、ここでは2.8GW規模の大型原発2基、0.7GW規模の小型モジュール原子炉(SMR)を新設するとされていました。

この日政府は、「これ以外にも新設する計画があるのか」というメディアの質問に対し「可能性を閉じずに検討する」と答えたそうです。

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政府の電撃的とも言える決定を前に、各紙社説も反応しています。保守紙『朝鮮日報』は歓迎しながら、「始まりに過ぎない」と指摘しています。

現在、原発は韓国の電力生産の30%を賄っているとしながら、これを維持するだけでも、2050年まで最低でも20基の新たな原発が必要だとしました。

また、「ロシア産の安価な天然ガスに頼り脱原発を行った」ドイツが、電力代の高騰と不安定な供給に直面し、製造業の稼働に苦しむ上に、AI産業への投資も低調であると例を挙げています。

もっと原発建設を急げ、時間はないぞ、とせき立てる形です。

やはり保守紙の『東亜日報』も歓迎する論調でした。

「世界的な製造業の強国である韓国が化石燃料の全量を輸入に頼り、再生エネルギー生産の効率も高くない中、原発を基底電力とすることは避けられない」というものです。

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一方、リベラル紙2紙は批判的な論調です。

『京郷新聞』は政府の公論化過程が充分であったのかと疑問を投げかけています。

政府が25年12月になって開いた政策討論会も「結論ありき」で、「大規模な電力が必要」という前提で原発の導入を聞く世論調査も「中立的ではない」と指摘しました。

また、気候危機への対応と企業の競争力確保(再生エネルギーの100%使用を定める「RE100」などの国際的イニシアティブが存在)のために、「再生エネルギーの拡大を疎かにしてはならない」と主張しました。

『ハンギョレ』はさらに強く批判しています。

やはり公論化の期間が「ひと月しか無かった」点を取り上げ、「熟議の過程は事実上ゼロであった」と、政府に厳しい姿勢を示しました。

また、原発からの核廃棄物を処理する施設が韓国に存在しないとしながら、新設を「トイレのないマンションを建て続けること」に例えました。

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こんな原発新設について、読者の皆さんはどう受け止めますか。

地震が少なく規模も小さい韓国では、過去に大きな原発事故が起きていないことから、原発への危機感が日本より少ないのは確かです。なお、細かい事故は年間平均で10件以上おきています。

また、政府は何よりも経済を優先させるべきという考えが、日本よりも遥かに社会に根付いている点も、原発新設への肯定的な世論が形成される背景にあります。

しっかりと監視し、廃棄物の問題などは、より議論を深めていく必要があるでしょう。『ハンギョレ』には、未来の世代の意見を聞くべきとの提言もありました。難しいものです。

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2. 「個人情報流出」クーパンと韓国政府の対立激化

1月7日の「デイリー・コリア・フォーカス」でお伝えした、韓国最大の通販サイト「クーパン(coupang)」の個人情報流出問題。

3000万件以上が流出するも会社側がその否を正面から認めず、さらに何人もの死者を出す同社の過酷な労働環境ともあいまって、韓国社会の批判世論が高まりました。

今も政府は広範囲にわたり同社への捜査を続けています。

警察は同社の韓国法人代表に警察への出頭を求めていますが、同代表はこれに応じていません。

三度目の出頭拒否は逮捕というのが、韓国の慣例であるため、逮捕令状が発付されるとの見方もあります。

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クーパン側も強気の姿勢を崩していません。

本社を置く米国で積極的なロビイングを展開し、米国の政治家や政府を通じ韓国政府に圧力をかけています。

また、クーパン社に投資する企業も「韓国政府により損をした」米政府の貿易代表部に請願したというニュースもありました。

これは韓国政府の捜査により、クーパンの利用者が減り、損をしたという論理です。

最悪の場合、韓米の政府間の議題となってしまうため、韓国政府も「クーパンが米国企業だからと厳しくしている訳ではない」と、その立場を説明しているそうです。

このように、クーパン社の実力(?)も相当なものです。

先日訪米した政府のナンバー2、金民錫(キム・ミンソク)国務総理に対し、ヴァンス副大統領が会談の席で「米国の企業であるクーパンが具体的に、どんな問題があるのか」と切り出したこともありました。

金総理は記者団に対し「攻撃的な質問ではなかった」とし、「丁寧に説明して事なきを得た」旨を明かしましたが、このニュースはクーパンのロビーの力をまざまざを知らしめると共に、同社の「反省なき姿」をより印象付ける結果となりました。

韓国メディアによると、クーパンからの顧客離脱は続いているそうです。ちなみに私も、別の通販会社に乗り換えました。

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3. 北朝鮮ミサイル「露ウ戦争通じ改良」

待ちわびていた『京郷新聞』の「北朝鮮派兵一年」特集。

27日に掲載された三本目となる記事は、北朝鮮のミサイルについてでした。

ウクライナ情報局によると、2024年、ロシアがウクライナに向け発射した194発の弾道ミサイルのうち、約60発が北朝鮮製の「火星-11」だったそうです。

これは「北朝鮮版イスカンデル」とされる固形燃料式の短距離弾道ミサイルで米国は「KN-23」と呼んでいます。

一方、少なくない死者を出すなど、被害を受けたウクライナの人たちはこれを「太った金正恩ミサイル」と呼んでいるとのこと。

金正恩氏は25日、平壌市にある万寿台(マンスデ)創作社を訪問し、建設中の「海外軍事作戦 戦闘偉勲記念館」に設置予定の北朝鮮兵士のレリーフをチェックしたそうです。海外軍事作戦とは「露ウ戦争」への派兵のことです。朝鮮中央通信より。

金正恩氏は25日、平壌市にある万寿台(マンスデ)創作社を訪問し、建設中の「海外軍事作戦 戦闘偉勲記念館」に設置予定の北朝鮮兵士のレリーフをチェックしたそうです。海外軍事作戦とは「露ウ戦争」への派兵のことです。朝鮮中央通信より。

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記事ではウクライナの専門家を引用し、このミサイルが「ロシアのイスカンデルミサイルと双子のような存在」としています。

また過去の旧ソ連時代、北朝鮮はウクライナの防衛産業を担う企業にスパイを送り続けたといいます。当時からミサイルへの関心は高く、記事では「KN-23の源流はウクライナにある」と評しています。

北朝鮮は2024年に約150発、25年には150発以上の「KN-23」ミサイルをロシアに引き渡したとウクライナ当局は見ているそうです。

その性能は初期には目標から200メートル以上離れたところに着弾していましたが、今は「非常に正確」で「残念ながら(ウクライナに対し)効果的に打撃を加えている」そうです。

こうした記事はため息無しには読めませんね…。

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4. 統一教会からの金品授受、迫る「Vゼロ」への一審判決

韓国で大統領のことを「VIP」や「V1(ブイワン)」と呼びます。

最高の権力を持つためですが、尹錫悦政権にはさらにその上の「V0(ブイゼロ)」がいるとされました。金建希(キム・ゴニ)夫人のことです。

尹錫悦氏が頭が上がらない上に、党人事など政治に介入したとされることから付いた異名ですが、今や全メディアでこの呼称を使っています。

そして明日28日、その「V0」の金建希氏への一審宣告があります。

十を超えるとされる嫌疑のうち、株価操作・統一教会からの金品授受・政治ブローカーから金品に相当する世論調査結果を授受した、三つの内容です。

金建希夫人。2023年当時の写真です。大統領室提供。

金建希夫人。2023年当時の写真です。大統領室提供。

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日本で興味を持たれそうな、二番目の統一教会からの金品授受とはどんなものでしょうか。

これは2022年4月から7月にかけて、統一教会のユン・ヨンホ世界本部長(当時)から、教団への支援と引き換えに、約900万円相当のネックレスやカバンを受け取ったというものです。

検察は三つの嫌疑を合わせ、懲役15年、罰金20億ウォン(約2億1300万円)、追徴金約9億5000万ウォン(約1億円)を求刑しています。

裁判は生中継されるかどうか、未だ結論が出ていません。尹錫悦氏や韓悳洙元総理のように「公人」ではないという理由のためです。

どんな決定が下るにしても、明日はまた法廷に注目が集まることになります。

しかし、いずれこうなることは分かっていたのに、なぜ悪さをするのでしょうか。権力と欲望とは恐ろしいものです。

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5. 米国防次官「韓国は模範的な同盟国」

昨日の「デイリー・コリア・フォーカス」で、米国の「2026国家防衛戦略(NDS)」について詳しく触れました。

合わせて、その策定に深く関わった国防部(戦争部)のエルブリッジ・コルビー政策担当次官が訪韓したこともお伝えしました。

同氏は26日、韓国で安圭伯(アン・ギュベク)国防部長官と会談した席で、韓国を「模範的な同盟国」と評価したそうです。

この席で安国防長官は「韓国軍が主導する韓半島の防衛を実現するためには、戦時作戦統制権の転換(返還)が必須である点を強調した」と、国防部は明かしています。

米国はNDSを通じ「北朝鮮への一次的な抑止」を韓国が独自に担うことを求めています。

安圭伯国防長官(左)とエルブリッジ・コルビー国防部政策担当次官。韓国国防部提供。

安圭伯国防長官(左)とエルブリッジ・コルビー国防部政策担当次官。韓国国防部提供。

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コルビー氏はまた、李在明政権が国防費をGDP比3.5%に増額し、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の在来兵器を防ぐ役割を強めていることを評価したそうです。

ですがトランプ大統領は26日(現地時間)、突如、韓国の自動車などに対する関税を15%から25%に上げることを明かしました。

今日はこの話で持ちきりです。「トランプ政権にとって同盟とはいったい何なのか」という声は、韓国でも今や珍しいものではありません。

それにしても、戦時作戦統制権の返還には米韓合同軍事演習を重ねることが不可欠です。しかしこれは、北朝鮮が最も嫌うものです。

李在明政権は果たして、戦時作戦統制権を取るのか。それとも北朝鮮との対話を取るのか。完全な択一という訳ではないでしょうが、優先度は前者にあるように思えます。

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6. 今日の時事韓国語「원전」

「ウォンジョン」と読みます。漢字では「原電」です。「原子力発電所」の略後として韓国では使われます。

環境団体などが批判的に呼ぶ場合には「핵발전소」という言葉も使われます。これは「ヘッパルチョンソ」と読みます。漢字では「核発電所」になります。

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今日は以上です。

韓国で暮らしていて思うのは、お金の話を本当によく耳にするなということです。カフェにいても、ニュースでも、人々は不動産などお金の話が大好きです。

それ自体は悪いこととは思わないのですが、お金がない人が感じる社会からの疎外感は、大変なものがあるのではないかと思います。

そのせいでしょうか。韓国で昨年から10代による「金(Gold)」強盗が3件あったそうです。

日本ではいよいよ選挙が始まりましたね。

投開票日の2月8日には名古屋で講演があるので、選挙の雰囲気を私も少しは感じられるかもしれません。

それでは皆さま、アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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