【デイリー・コリア・フォーカス】26年1月7日号

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徐台教 2026.01.07
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。韓国から今日も「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。

今日は文字数の関係から三つのトピックとなります。

あまり長くなると読まれないためです。トピックあたり、600字~800字程度が適当な長さなのかなと考えています。

とにかく毎日続けていけば、それに伴い読者の皆さんの基礎知識も増えていくので、結果的に長さにかかわらず解像度はどんどん高まっていくと思います。

今日のテーマは以下の通りです。

1. 韓国最大の通販サイト、クーパンの「抜け方」
2. 合同捜査本部が発足 旧統一教会に強まる圧力
3. 韓国を象徴する歌手・金光石、没後30年
4. 今日の時事韓国語「탈팡」

***

1. 韓国最大の通販サイト、クーパンの「抜け方」

韓国では生活に欠かせないとされる通販サイト「coupang(クーパンと発音します)」。

売っていないものはないのではないかという程の品揃えに、レビューの充実度、そして何より「明け方配送(前日に注文する際には午前7時以前に配達)」や最近では「当日配送」までしてくれる便利さが売りでした。

2010年の創業後、巨額の赤字が続いていましたが、かの孫正義などから投資を受けるなど業務拡張を進め、2023年には黒字転換。2024年の売上げは約4兆5000億円に達し、韓国最大の通販サイトというばかりか、韓国の流通業のナンバーワン企業となりました。

本社は米国にあるのですが、韓国ではその圧倒的な知名度から「おらが企業」として知られていますが、このクーパンで去年11月、顧客情報流出事件があったことが明らかになります。

流出したとされる顧客情報は約3370万人分とされます。韓国の全人口が約5200万人ですから、とんでもない数です。名前、メールアドレス、配送先住所、電話番号、直近の注文情報、マンション入口共同部のパスワードといった重要な情報が流出しました。金融情報の流出はないされています。

クーパン側は「犯人」は過去、同社に勤めていた中国人職員だと特定し、外部への拡散はないとしました。

その後、事態を重くみた韓国政府により、部署間を横断する対策組織が立ち上げられ捜査を始めると共に、同社の韓国責任者(創業者のキム・ボムは米国在住)に対し国会が聴聞会を開くなど、今も解明が進んでいます。

この過程でクーパン側の事態を矮小化したがるずさんな対応、創業者が公開謝罪しないこと、韓国責任者の国会における横柄な態度などが重なり、同社の印象は悪くなり続けています。

クーパンのPC版ホームページの一部。最上段に「個人情報流出事故に関する追加案内および購買利用券に関し案内します(12月29日)」というバナーがある。購買利用券は「お詫び」にあたるが、高額ブランドサイトの割引券が含まれており、その企業姿勢に疑問を呈する新たなきっかけとなった。

クーパンのPC版ホームページの一部。最上段に「個人情報流出事故に関する追加案内および購買利用券に関し案内します(12月29日)」というバナーがある。購買利用券は「お詫び」にあたるが、高額ブランドサイトの割引券が含まれており、その企業姿勢に疑問を呈する新たなきっかけとなった。

さらに、顧客情報流出事件により、以前からクーパンで問題視されていた従業員の過酷な業務実態がふたたび注目されることとなりました。2025年だけで8人が亡くなっています。冒頭で述べたような巨大な注文をさばく過程で物流センターや配達を担う人々の過度の負担がかかっている構造です。

挙げ句のはてに、クーパン社側がこうした労働災害にしっかり対応しないという遺族からの告発が相次ぎ、社会の一角では「最悪の会社」という印象が形成されつつあります。これについては雇用労働部による正式な調査が始まっています。

このため、クーパンの利用を止める人々が続々と現れています。

韓国メディアによると、同事件発覚以降、12月にクーパンを止めた人々の数は約68万人で、活性ユーザーは事件発覚前から5.8%減少したとされます。入れ替わるように、2位以下の通販会社の加入者が増えているといいます。とはいえ今も、クーパンは圧倒的な1位です。

6日の京郷新聞には、「クーパン利用のやめ方」がネット上で広く共有されているという記事がありました。

例えば、これまで知られてこなかった他の通販会社の長所を教え合ったり、「クーパン中毒(一種の買い物中毒)から抜けだそう」という声が、育児コミュニティを中心に共有されているそうです。

また、若者のコミュニティでも食べ物の配達(クーパンイーツという部署があります)において、別の会社を模索する動きもあるとか。

このような流れがいつまで続くかは分かりませんが、「価値に重きを置いた消費」という概念に消費者たちの考えは向きつつあるようです。

これに「売上げは韓国で上げているのに会社は米国にあり、上場も米国でしている」という民族主義的(?)な思考も加わり、今後もクーパンに関する動きには要注目です。

政府は「一定期間の営業停止」もあり得るとしていますが、そこで働く人々はどうするんだという声もあり、社会全体を捉え直す機会になっているようにも思えます。

***

2. 合同捜査本部が発足 旧統一教会に強まる圧力

日本でも注目されている、世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)による金品を利用した韓国政界へのロビー疑惑。韓国の政治資金法では、宗教団体による政治献金が禁止されています。

この疑惑の中心にいるのが、同会のユン・ヨンホ前世界本部長です。昨年8月、尹錫悦前大統領夫人・金建希(キム・ゴニ)氏を調査する特別検察で、政界に広く金品を渡したと明かしたことが12月になって分かり、大きな話題となりました。

しかし捜査が本格的に始まるや、ユン氏は突如、「そんなことはなかった」証言をひっくり返します。関連する人物の裁判に証人として出席した際にも同様でした。

それがようやく今月5日になり、従来の陳述に戻り、金品を渡したことを認めたとか。

背景には、旧統一教会における政界ロビーの窓口になっていた、ソン・グァンソク前UPF(天主平和連合)会長の自宅を家宅捜索するなど、捜査が進んでいることが関係していると韓国メディアは報じています。

また1月6日には、検察と警察による合同捜査本部が立ち上がりました。正式名は「政教癒着非理合同捜査本部」。非理というのは道理を外れたことという意味です。

検事10人、検察捜査官15人、警察からは22人が投入される大型組織で、旧統一教会を含め、やはり「カルト」との指摘が絶えないキリスト教系の「新天地」による政界ロビー工作を捜査するとしています。

先に日刊紙『ハンギョレ』は旧統一教会の「TMレポート」の存在をすっぱ抜き、その政教癒着の深さの一端を示しました。

李在明大統領も「政教癒着」への捜査に強い意志を示していることから、韓国ではいよいよ本格的に捜査が始まります。日本政界との関連についてはまた別の動きが必要となるでしょう。

***

3. 韓国を象徴する歌手・金光石、没後30年

昨日は国民的俳優・安聖基(アンソンギ)さんの死去をお伝えしましたが、昨日6日は、やはり韓国で広く愛されている歌手・金光石(キム・グァンソク)の没後30年でした。

1964年生まれの金光石さんは1996年1月6日の明け方、自宅で亡くなっているのを夫人が発見しました。自死でした。背景には音楽的な限界を感じているといった精神的な悩みがあったとされます。

生前からその圧倒的な表現力、歌唱力で人気を博していた金光石ですが、今なおその歌に魅了される人は後を絶ちません。たくさんの歌がカバーされていますが、未だ金光石を超える歌声に出会ったことはない程です。

私が金光石を知ったのは韓国の大学に入った2000年と、死後のことでしたが、今も家事をやりながらよく聞くほど大好きな歌手です。

日本でいうとどんな歌手になるでしょうか。思いついた方はお送りください。安聖基さんもそうでしたが、激動の現代史を送ってきた韓国では、ひとりひとりにドラマがあり、そのドラマ性を最高度に刺激する歌声であると思います。

在りし日の金光石さん。公式サイトより引用。

在りし日の金光石さん。公式サイトより引用。

彼に関するエピソードを一つ紹介し、この項を終わりたいと思います。

2001年ころの出来事です。

真冬のソウル・清涼里(チョンヤンリ)駅でバスに乗った際に、金光石の「愛という理由で(사랑이라는 이유로)」がラジオから流れてきました。

満員のバスのスピーカーから、静かなピアノソロのイントロがこぼれ出るあいだ無言で耳を傾けていた乗客たちが、あの低いが張りのある金光石の声で「サランイーラーヌー、イユーロー」と歌が始まるや、一斉にため息をついたのです。

窓はすでに内外の温度差のため曇っていましたが、ため息のために曇ったのではないかと錯覚するほど、乗客たちは同じ行動をとったのです。私もその一人でしたが、あの時の光景は忘れられません。

ああ、韓国の人たちはこうやって歌に癒やされながら生きてきたのだな、と韓国社会の一端に触れた瞬間でした。

YouTubeで「김광석」と検索するとたくさんの歌が出てきます。ぜひ一度、お聞きください。

***

4. 今日の時事韓国語「탈팡」

「탈팡」と書いて、タルパンと読みます。タルは「脱」で、パンは冒頭のトピックで紹介した「クーパン」のことです。

つまり、「クーパンの利用を止めること」という意味になります。

クーパンの顧客情報流出事件後、一気に市民権を得た言葉です。まさに時事韓国語といったところです。

今日は以上です。

それではまた明日!アンニョンヒケセヨ!(徐台教)

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