【デイリー・コリア・フォーカス】26年2月13日号

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徐台教 2026.02.13
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

あっという間に金曜日ですね。今日も韓国から徐台教が「デイリー・コリア・フォーカス」2月13日号をお送りいたします。

韓国は来週火曜日(17日)にお正月を控えています。

陰暦の正月(最近は旧正月とは言いません)で、カレンダーでは来週の水曜日までお休みとなります。

この時期の更新は、お正月ということで短めに行いますね。

それでは今日の目次です。

1.「テレビ局の電気と水を絶て」非常戒厳加担の長官に懲役7年
2. 金正恩の娘‘ジュエ’、後継者「内定」ニュースの読み方
3. 「全斗煥回顧録の記述は名誉棄損」賠償判決が確定
4. 今日の時事韓国語「올림픽」

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1. 「テレビ局の電気と水を絶て」非常戒厳加担の長官に懲役7年

12日、ソウル中央地裁は李祥敏(イ・サンミン)氏に懲役7年を宣告しました。

李氏は24年12月3日の尹錫悦大統領(当時)による非常戒厳宣布時に、行政安全部長官を務めていた人物です。行政安全部は日本の総務省と似た省庁ですが、その違いとしては、警察庁を指揮する権限を有する点があります。

裁判所はこの日、李祥敏氏に「内乱重要任務従事」と「偽証」の二つの罪があるとしました。

まず「内乱重要任務従事」です。日本ではまず聞かない罪状ですよね。これは、内乱を起こす勢力に加担し任務を遂行したというものです。

裁判所の資料によると、非常戒厳当日、李氏は尹錫悦から主要機関を封鎖する計画を聞き、特定のメディアを対象とした断電・断水措置を取るよう指示を受けました。

その後、警察庁長や報道を通じ、警察が国会を封鎖している事実を確認しました。そこで次に、戒厳勢力側が特定のメディアを封鎖し、消防庁に断電・断水に協力するよう要請するだろうと予想しました。

そしてあらかじめ、行政安全部の長官として消防庁長に連絡します。尹錫悦の指示内容を伝達しながら、警察との協力の下、対象となる5つのメディアに対する断電・断水措置を行うよう指示したというのです。

李祥敏前行政安全部長官。写真は昨年11月のもの。ソウル中央地裁提供。

李祥敏前行政安全部長官。写真は昨年11月のもの。ソウル中央地裁提供。

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裁判所はこの日、李祥敏氏が判事出身であり、政府の高官であることからも非常戒厳の意味を知っていたと判断しました。それにもかかわらず、上記のような行動を行ったことは、内乱重要任務従事という「故意」が成立する見て、有罪を認めたのです。

なお、特別検察によると、非常戒厳当時に断電・断水の対象とされたメディアは、地上波テレビ局『MBC』、ケーブルテレビ局『JTBC』、リベラル系日刊紙『京郷新聞』、同『ハンギョレ』、YouTubeチャンネル『ニュース工場』およびその付属世論調査機関『コッ』の5つです。

次に「偽証」については、尹錫悦の「内乱」に関する裁判において、李氏が「知らない」または「記憶がない」としたいくつかの証言が、偽証に相当すると判断されたものです。

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李祥敏氏の「内乱重要任務従事」が成立するためには、24年12月3日の尹錫悦氏による非常戒厳が「内乱」であるという前提が必要です。

既に1月21日にあった韓悳洙(ハン・ドクス)元国務総理への一審判決で、担当する裁判部の李珍官(イ・ジングァン)裁判長は非常戒厳は内乱であったと認めています。

その時の法理は、「大韓民国の領土全部において、国憲を紊乱する目的で多数の人(軍と警察公務員)を結合し、有形の力を行使し、害悪を告示(脅迫)することで、一つの地域(国会など)の平穏を害する程度の暴行を起こした」というものです。

国憲の紊乱とは、憲法や法律の機能を消滅させることです。

詳しくは1月22日のニュースレターをご覧いただくとして、この日の裁判でも裁判部は同様の法理をもって、尹錫悦氏の非常戒厳を内乱と判断しました。

裁判長は「憲法の代議制、民主主義、民主的基本秩序の規範的な効力を喪失させ、国憲紊乱の目的の下に行われた行為であると判断できる」と述べています。

1月22日のニュースレターで「戒厳=内乱」という裁判所の判断について詳しく説明してあるので、ご参考ください。クリックで該当ページに飛びます。

1月22日のニュースレターで「戒厳=内乱」という裁判所の判断について詳しく説明してあるので、ご参考ください。クリックで該当ページに飛びます。

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裁判所が「非常戒厳は内乱」との判断をくだすのは、二度目となります。

説明資料にはこうあります。

「被告人(李祥敏)をはじめとする尹錫悦、金龍顕(キム・ヨンヒョン、戒厳当時の国防部長官)などの内乱行為は、憲法が想定した正当な手続きを無視し、暴力的な手段を通じ、国会を含む国家機関の権能行使を不可能にし、その昨日を麻痺させようとしたもので、民主主義の核心価値を根本的に毀損したものだ。したがって、国家の存立を危うくした内乱行為に対しては、その目的達成の如何にかかわらず、厳重な処罰が必要だ

ただ、懲役7年という李祥敏氏への宣告は、懲役15年を求刑した検察の判断とは差がありました。

裁判所は情状酌量の理由として、▲非常戒厳宣布以前にこれを謀議したり準備した情況が発見できない、▲李祥敏が繰り返し断電・断水措置を指示し、指示事項が履行されたかを点検し報告を受けるなど、積極的に内乱の重要な任務を遂行したと見る資料がなく、▲結果的に特定のメディアに対する断電・断水措置が実際に行われなかった、という3つの点を挙げています。

なお、李祥敏氏は判決後、控訴することを明かしています。

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今回の判決により、非常戒厳当時の政府高官への判決は2件目となりました。韓悳洙国務総理への懲役23年、李祥敏行政安全部長官(いずれも当時)懲役7年です。

2月19日には、尹錫悦前大統領をはじめ、「内乱」に加担したとされる総勢8人への一審判決があります。尹錫悦氏に対する検察の求刑は死刑ですが、判決に注目が集まっています。

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2. 金正恩の娘‘ジュエ’、後継者「内定」ニュースの読み方

韓国には軍をはじめ、いくつかの情報機関がありますが、ダントツの力を持つのが国家情報院(以下、国情院)です。

すべての情報、特に朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)に関する情報はここに集約されます。

その国情院が12日、北朝鮮の「キム・ジュエ」が現在、「後継内定段階に入ったと判断できる」と明かし、韓国で大きな話題となっています。

なお、私が「キム・ジュエ」にカッコを付ける理由は、北朝鮮当局が一度も「キム・ジュエ」という名前を呼んだことがない点からです。

ジュエに「主愛」という漢字を当てる場合もありますが、同様の理由からこれも採用せず、「キム・ジュエ」と表記します。

「キム・ジュエ」(左)と金正恩。昨年6月12日に駆逐艦『姜健』の進水式にて。朝鮮中央通信より引用。

「キム・ジュエ」(左)と金正恩。昨年6月12日に駆逐艦『姜健』の進水式にて。朝鮮中央通信より引用。

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国情院はこれまで、「キム・ジュエ」は、後継者に向けた「授業」を行っていると言及する程度でしたが、この日はじめて「内定」という言葉を使いました。

韓国メディアによると、金正恩氏の子供について、国情院は2013年生まれとされる「ジュエ」の外に、2010年生まれの兄と17年生まれのきょうだいがいる可能性について言及したことがあります。

文在寅政権下の2020年7月から22年5月まで、国家情報院長を務めた朴智元(パク・チウォン)議員も、兄が海外留学をしていると何度も発言していますが、国情院は「ジュエ後継説」を改めて公にした形です。

同院は2月下旬に開催されるとされる、北朝鮮の朝鮮労働党第九回党大会で、「ジュエ」の後継に関する兆候を集中的に点検するとしています。

また、「後継」の根拠の一つに、「ジュエ」が国内政策に意見を出す情況が存在する点を挙げています。党大会を通じ、後継者を象徴するような呼称を使うのか、党規約に後継を示唆する内容などが入るかどうかに、注目しているようです。

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この一報を受け、韓国メディアでは様々な専門家が見立てを明かしています。

「党大会を通じ、非公式に職責を付与する」というものもあれば、「ジュエ」氏が「入党年齢にも満たない未成年者」である点を根拠に、時期尚早とする見方もあります。

「ジュエ」が北朝鮮の国営メディアにはじめて登場したのは、2021年11月のことです。そこから5年ほど、父親に付き従う過程を経て、この度、後継者として「内定」したと考えられます。

父親である金正恩氏は1984年生まれで、国情院も健康上の懸念はあれども、直接の疾病があると指摘していないことから、なぜこの時点で後継者として「内定」するのかという疑問があるかもしれません。

しかし、「内定」と「対内的な公式化」を区別し、「内定」は本格的な後継者教育を正式に始める段階と理解すれば、納得はいきます。

「内定」の次は「対内的な公式化」という段階に入ると見られています。適切な地位や職責が与えられ、北朝鮮国内で後継者と広く周知されることになります。

今回の「内定」説が事実であるならば、北朝鮮は「キム・ジュエ」への4代世襲に向けた、第一歩を正式に踏み出したことになります。

ちなみに「ジュエ」氏が13年生まれ(1月とされます)であるならば、私の娘と同い年です。大変な人生だな、と同情します。

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3. 「全斗煥回顧録の記述は名誉棄損」賠償判決が確定

全斗煥(チョン・ドゥファン、1931~2021)といえば、韓国でクーデターを通じ権力を握った独裁者として知られています。

79年10月26日に朴正煕(パク・チョンヒ、1917~1979)大統領がが暗殺されるや、同年12月12日にクーデターを起こします。

その後、80年5月には民主化を求める声を武力で粉砕し(『5.18光州民主化運動』)、同年8月に大統領に就任します。以後、間接選挙で大統領を二度務めました。退任は1988年2月24日です。

退任後の1995年、同氏は起訴されます。罪状は1979年12月から5月17日にかけての反乱および内乱の首魁(しゅかい)、5月27日の内乱目的殺人罪などでした。一審では死刑判決となるも、1997年4月に大法院(最高裁判所)で無期懲役の判決が確定します。

この時に大法院は、12.12事件(クーデター)は明白な軍事反乱であり、光州での弾圧は内乱および内乱目的のための殺人行為であると、判決を下しています。97年に大統領に当選したばかりの金大中(キム・デジュン)氏の要請により特赦となります。

1996年8月26日、一審判決を待つ全斗煥(右)と盧泰愚(ノ・テウ)両氏。聯合ニュースより引用。

1996年8月26日、一審判決を待つ全斗煥(右)と盧泰愚(ノ・テウ)両氏。聯合ニュースより引用。

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この全斗煥氏が2017年4月、退任から30年を迎え回顧録を出しました。

この中で全氏は光州民主化運動を「暴動」と表現し、戒厳軍のヘリによる市民への射撃を証言した聖職者を「嘘つき」としたことで、関連市民団体と聖職者の遺族から訴えられました。

2018年9月の一審判決で裁判所は、全氏の記述は原告の名誉を毀損したとして、7000万ウォン(約750万円)の賠償を全氏に命じました。

2022年9月の二審判決も同様の判決を維持し、この時に全斗煥氏の夫人と息子は、賠償金を支払った上で上告していました。

そして2月12日、大法院(最高裁)は、二審判決を確定しました。さらに今後、この回顧録は該当部分を削除しない限り、出版・配布できなくなりました。

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4. 今日の時事韓国語「올림픽」

「オルリンピック」と発音します(しかし、単語によってはカタカナ表記は限界がありますね…あくまで参考ということで)。日本語の「オリンピック」です。

ご存知のように今、イタリアで冬季五輪が行われていますが、韓国では中継権をケーブルテレビ局『JTBC』が独占契約しているため、視聴者の不満が高まっている…とされます。

通常は、地上波テレビが共同で放映権を取得し、「どのチャンネルでも無料で五輪が放送される」状況になるはずが、今回はそうなっていないためです。

ここぞとばかりに、各局もニュースでこの件を取り上げ、「JTBCのせいで五輪が見られない」という世論作り(?)に励んでいます。

報道によると、実際にJTBCの独断があったようです。慣例を破り、2026年から32年まで、オリンピックと五輪の中継件を高い金額を払って取得したのです。

しかし、中継権の金額が負担となり、今になって地上波の参加を要請しているとのこと。今年6月にはワールドカップがあります。

しかし地上波『SBS』は、これに誠実に応じているとしながらも、JTBCを擁する中央グループ(中央日報系)の提示する金額を出す場合には、数十億円の赤字が発生すると訴えています。

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今日は以上です。

重要なニュースが多いので、少しずつ追いかけていきます。

それでは皆さん、良い週末をお過ごしください。

アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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