【デイリー・コリア・フォーカス】26年2月5日号
皆さま、アンニョンハセヨ。
今日2月5日も、韓国から徐台教が「デイリー・コリア・フォーカス」をお届けします。
風邪は小康状態です。
5万ウォン(約5300円)も払って検査したところ、コロナとインフルではなくひと安心でしたが、日本出張を控えた身には(スケジュール的にも)なかなか厳しいです。
ということで、申し訳ないのですが今日は少し短めにいきます。
目次は以下の通りです。
1. 李在明政権が北朝鮮政策を公開…「平和共存」掲げるもパンチ不足
2. 今日の時事韓国語「불장」
1. 李在明政権が北朝鮮政策を公開…「平和共存」掲げるもパンチ不足
2月3日、統一部が李在明政権の対北朝鮮政策をまとめた冊子を発表しました。
名前は「李在明政府の韓半島平和共存政策」。31ページにわたるもので、発足から約9か月が経つ中でまとめられたものです。
発表は歴代政府の慣行にのっとったものですが、9か月というのは割と時間がかかった方です。
同じ進歩派の文在寅政権では発足から約6か月、尹錫悦政権ではわずか3か月後に北朝鮮政策を発表しています。
それでは見ていきましょう。
冊子の表紙。これは衛星から東アジアを撮影したものです。もっと北朝鮮がキラキラ輝いてほしいという思いが感じられます。
冊子ではまず、政策の背景とについて「平和があってこそ国民の安全と幸福、未来の繁栄が可能になる」と明かしています。
そして現在、韓半島(以下、朝鮮半島)の平和がいつの時代よりも重要になっているとします。
その要因として、北朝鮮が23年12月に「敵対的二国家関係」を提起した点、さらに、南北間の対話が途絶えた間、北朝鮮が不安定な国際情勢の中で核とミサイル能力をより高度化した点を挙げてします。
さらに「時代的な課題」として、「南北間の敵対と対決を終息させ、平和共存の新たな関係に進むこと」と掲げました。
その上にで、「南北が平和に共存し、共に成長する韓半島をつくるため」に、本政策を推進すると位置付けました。
南北が平和に共存することが、南北に住む人々の幸せと繁栄につながるという認識と理解すればよさそうです。
冊子では次に、政策の哲学的・歴史的な基盤を説明しています。
まず、哲学的な根っことして安重根の「東洋平和論」があるとしました。
これは韓中日が連帯し、平和的な東洋の秩序を作ろうというものです。伊藤博文への「義挙」を行ったあと、中国・旅順の監獄でしたためました。
この部分からは、「東北アジアの平和連帯」を読み取ることができるでしょう。
冊子の該当部分。写真は安重根。
次の歴史的な基盤としては、1991年に南北間で採択された「南北基本合意書」を基に、歴代政府が35年の間続けてきた平和共存政策を継承すると明かしています。
この合意書は、拙著『分断八〇年』でも取り上げたように、南北間がはじめて大韓民国、朝鮮民主主義人民共和国という呼称を互いに使ったものとして重要です。
また、▲相手の体制を認め尊重する、▲相手の内部の問題への不干渉、▲相手に対する誹謗中傷をしない、▲相手を破壊・転覆する一切の行為を行わない、といった内容を含んでいます。
冊子ではさらに、2000年に金大中・金正日による史上初の南北首脳会談で発表された「6.15南北共同宣言」、07年の盧武鉉・金正日会談時の「10.4宣言」、さらに18年に文在寅・金正恩により発表された「板門店宣言」(4月)、「平壌共同宣言」(9月)に触れています。
李在明政権はこれを継承していくこと、つまり「統一志向の平和共存」という大枠を維持することを、明かしていると見るべきでしょう。
一方、冊子では2005年の「9.19共同声明」を取り上げています。これは6者協議の結果、導き出された朝鮮半島の歴史上、最高の合意です。
米朝の対立解消と北朝鮮の核放棄を同時に進め、関連国が互いに体制を承認するという結論に6か国がたどり着き、その実現を約束したものです。
今となっては、これを覚えている人はほとんどいないでしょうが、冊子でも「100年の現代史の中で、周辺の4強(日米露中)を相手に韓半島に対する国際的な合意を導きだした初の成果」としています。
いかにも全て韓国がやったかのような表現にはやや語弊がありますが、4強と南北朝鮮が「東北アジアの恒久的な平和と安定」をどう作るかまとめた、初の文書であることは確かです。
このように、李在明政権は「東北アジアの平和」までを射程に入れていると言えるでしょう。
2005年の「9.19共同声明」発表後の写真。左からクリストファー・ヒル・アメリカ合衆国東アジア太平洋問題担当国務次官補、佐々江賢一郎日本国外務省アジア大洋州局長、武大偉中華人民共和国外交部副部長、宋旻淳(ソン・ミンスン)大韓民国外交通商部次官補、金桂冠(キム・ゲグァン)朝鮮民主主義人民共和国外務副相、アレクサンドル・アレクセーエフ・ロシア連邦外務次官。統一部提供。
さて、ここからはこれらはどう推進していくのかという、政策のお話になります。ちょっとすでにお腹いっぱいかもしれませんが、もう少しお付き合いください。
冊子で推進政策は一枚にまとめられています。翻訳したものは以下のようになります。
頑張って作りました。
これを全て説明していくと、大変な長さになってしまうので、5つのキーワードで取り上げようと思います。
(1)平和共存の制度化
「目標」に含まれている部分です。
冊子の説明には「南北が事実上の二つの国家として存在する現実を考慮し、南北関係を統一を志向しながら平和に共存する関係にしていく」とあります。
政府の文書に「南北が事実上の二つの国家」という表現が登場するのは初めてのことです。
これは李在明政権になってからの特徴で、鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官が積極的に推進している背景があります。
すなわち、金正恩氏が掲げる「敵対的な二国家関係」を、韓国が「統一を志向する平和的な二国家関係」に書き換えようとする試みです。
統一部は昨年12月の李大統領への業務報告の席で、このために北側との間に「南北基本協定」を結ぶ必要があり、その議論を始めると明かしています。
二国家関係を実現するためには、韓国の憲法3条「大韓民国の領土は韓半島とその付属島嶼とする」を、「大韓民国の領土は軍事境界線の南側とする」と変える必要があるとされます。
改憲は昨日のニュースレターでもお伝えしたように、非常にハードルが高いものです。特に憲法3条の改憲にあたっては、保守派と進歩派の間で激論が交わされるでしょう。李大統領も3条改憲にしぶい反応を見せたという記事もあります。当然でしょう。
一方で、昨年12月に統一部が公開した世論調査によると、「北朝鮮の国家性」を回答者の64.6%が認め、「統一志向の平和的な二国家関係」には回答者の69.9%が賛成しています。
(2)平和体制と核のない韓半島
李大統領は昨年9月25日、国連総会で行った基調演説の中で「ENDイニシアティブ」を公開しました。
これは交流(Exchange)、関係正常化(Normalization)、非核化(Denuclearization)の頭文字を取ったもので、文字通り、敵対と対決の時代を終わらせ(END)、平和共存と共同成長の新時代を開くものとされました。
今回の冊子にも同じ内容が存在します。
さらに平和体制がここに絡んできます。
平和体制というのは、現在の停戦体制、つまり1953年7月の停戦協定のまま決着のついていない朝鮮戦争を、完全に終わらせることを意味します。
具体的には平和協定の締結と、米朝国交正常化(日朝も)です。
これは従来、朝鮮半島の平和を考える際の基本的な枠組みでした。
つまり、北朝鮮は米国から身を守るために核を持ったので、米国との敵対関係が終われば核も捨てるだろういうものです。
ひとつひとつ、平和と非核化のブロックを積み重ねていき、最後に国交正常化しようという未来図です。
先の05年の「9.19共同声明」もこの枠組みです。少なくとも2018年下半期までは、これが一定程度機能していました。
しかし今では北朝鮮は金正恩氏みずから「非核化することはない」と、明確にしています。
昨年9月の最高人民会議(国会の相当)の演説では「非核化は絶対にない」、「非核化交渉も永遠にない」としました。
この時、米国に対し「非核化に対する執念を捨て、真情から平和共存を望むのならば」という、対話の前提を明かしています。
このように、従来の枠組みが壊れた今、朝鮮半島に残る対話進展のテコは「北朝鮮の核開発の凍結」しかありません。
しかしこれを可能にするには、核保有国として認めるというワンクッションが必要となります。韓国や日本社会で反発を呼ぶことは必至です。しかし李大統領は「ここからでOK」としています。
これを受け、冊子には「核のない韓半島を長期的な目標とし、段階的に実現可能な核問題の解法を模索する」としています。
具体的には「短期的には現在の状態での『中断』から始まり、中期的には『縮小』の過程を経て、長期的には核のない韓半島を実現する」とあります。
ですが、冊子にあるような、非核化を終着点とする南北関係の構築かについて、私ははなはだ悲観的です。ですが韓国政府として今はこう書かざるを得ないのでしょう。
核と平和をめぐる方程式は複雑極まりありません。
むしろ「韓国が朝鮮半島の非核化を捨ててこそ」、対話が始まる可能性があるのです。しかしその選択を公にすることもまた、難しいでしょう。
(3)統一のやり方
どういった形の統一なのか、より正確には、どう統一が行われるのかについて、韓国が持つシナリオは二つしかありません。
一つは金正恩体制の崩壊で、もう一つは南北二つの体制が平和的共存が作り出す結果として、成就されるものです。
前者は実際にそうした「有事」が起こる際に、韓国ができることは何もないという論文が韓国に存在します。金正恩体制がなくなっても、国としての北朝鮮は残りますし、その住民も主権を持っているからです。
未来を選ぶのは北朝鮮の人々です。もし彼らが韓国との統一を望むならば、統一は可能でしょう。東ドイツと同じ形です。
後者は今回の冊子に書かれているものです。これもものすごく曖昧なもので、結局は金氏一族の世襲が終わることと同義と見なすこともできます。
つまりもう、現段階では統一を棚上げするしか、南北関係が先に進むことはできないのです。
この話題は尽きないので、いったん今日はここまでとします。
結論としては、この度の李在明政権の北朝鮮政策の冊子は、内容は立派ですが、新しさという点では「萌芽にとどまる」といったところでしょう。
もっと切り込んでズバッと表現すべき部分を、すべて曖昧にしてしまったためです。
南北対話というのは、北朝鮮が応じる場合にのみ、もしくは北朝鮮側から先に提案してきた時のみ始まります。
今のところ、その可能性はまだ見えないといったところでしょう。
2. 今日の時事韓国語「불장」
「プルチャン」と読みます。「プル불」は火を意味し、「チャン장」は漢字にすると「場」となります。
つまり、火のように熱い場となります。
賭場を意味する日本語の「鉄火場」をイメージしてしまいますが、「プルチャン」はマーケットが上昇を続ける様子を示す言葉となります。
株価指数が連日最高値を更新する今の韓国に(日本もそのようですが)当てはまるため、連日ニュースに出てきます。
今日はここまでです。
短くするつもりが、書いていたら長くなってしまいました。これから病院で注射を打ってきます。これが効くんです(笑)
それではまた明日!
アンニョンヒケセヨ。(徐台教)
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