【デイリー・コリア・フォーカス】26年2月2日号

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徐台教 2026.02.02
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

今日も韓国から徐台教が「デイリー・コリア・フォーカス」2月2日号をお送りいたします。

昨晩から韓国の広範囲にわたって雪が降り、私が住む金浦にも積もりました。今年の冬は寒さが厳しい印象です。雪が降って喜ぶのはわが家の愛犬ベリー君くらいでしょうか。

今日の明け方のベリー君。私が家に居るときには、側を離れません。

今日の明け方のベリー君。私が家に居るときには、側を離れません。

さて、今日の目次は以下の通りです。

1. 李大統領、「亡国的な不動産投機」に宣戦布告
2. 北朝鮮の第9回党大会、開催迫る
3. 「韓国古典映画」チャンネルが登録者100万人突破
4. 今日の時事韓国語「부동산」

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1. 李大統領、「亡国的な不動産投機」に宣戦布告

韓国では今、李在明大統領の存在感が図抜けています。

同氏はここ数日、頻繁にSNS(特にX)を更新しています。とりわけ、不動産について熱心です。

昨日2月1日、朝7時にはフィナンシャルニュースという韓国メディアの記事を引用しながら、「不動産投機のために国が滅びるのを見てもなぜ、投機の肩を持つのか?」と長文を書き込みました。

これには、短期的には譲渡税の重課制の猶予期間を止めるという政策が関連していますが、実際は国家の大転換とも呼ぶべき変化の萌芽が潜んでいます。

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少し事情を紐解いてみましょう。

韓国では家(マンションや一軒家を含む)を2軒以上所持している者を「多住宅者」と呼びます。

多住宅者に対しては、1軒のみ家を所持する者よりも、所得税、総合不動産税、譲渡所得税(以下、譲渡税)が多くなります。

これは、実際に住む以外の家を資産として所持する者に不利益を与えることで、囲い込みを減らし、住宅市場への供給をうながすための施策です。

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それではなぜ、譲渡税が注目を集めているのでしょうか。

譲渡税とは、家を売る際に、買ったときの値段との差額に課せられる税金です。基本税率は6~45%となっています。

さらに、ソウルの全地域や首都圏の京畿道(キョンギド)の12の地域は「調整指定地域」とされ、この地域で譲渡税はさらに増えます。

2軒家を持つ多住宅者には20%が、3軒家を持つ多住宅者には30%が加算される形です。「重課」と呼ばれる制度です。

つまり、最大で譲渡税が75%になるということですが、この「重課」は文在寅政権下の2021年から毎年、課税が猶予されてきました。

李在明大統領のXアカウント。

李在明大統領のXアカウント。

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そして今、李大統領は「これ以上、猶予はしない」としているのです。猶予の期限は今年5月9日です。

猶予がなくなる場合、譲渡税は跳ね上がります。

先に李大統領が引用したフィナンシャルニュースの記事に出ている例を見てみましょう。

「調整指定区域」で3軒家を持っている者がその内の一軒を売り、その差額が10億ウォン(1億600万円)だった場合、譲渡税は現在の約3億3000万ウォン(約3500万円)から、約7億5000万ウォン(約8000万円)となるそうです。

なお、この金額は、やはり李大統領が廃止のターゲットとしている「長期保有特別控除」を除いたものとのことです。

つまり、この記事は、最も税金が高くなる場合を想定しているのです。これが、李大統領が「投機の肩を持つ」と書いた理由でしょう。

それでも譲渡税の上乗せとなる割合は、大きなものです。

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いずれにせよ、韓国の不動産投機の活発さは日本の想像を絶するものがあります。

50年代の世界最貧国から70年代の高度経済成長を経て、先進国になる中で、開発区域は広がり、その過程で土地と住宅の価格は上がり続けてきました。

その中で、不動産は「不敗神話」と呼ばれるほど、鉄板の投資対象でした。例えば、ソウルのマンション価格(広さ84平方メートル)の平均価格は2004年から4倍に上昇しています。

投資と投機の区分は曖昧ですが、実際に住まずに資産として所有し取引するという点で、線引きされています。この他にも、事前に開発計画を政府職員などが横流しし儲けるという、犯罪にあたる投機も存在します。

正確な金額は分かりませんが、今回、記事を書くにあたりいくつか調べたところ、少なくともこんな不動産投機市場に、数百兆ウォン(数十兆円)が投入されているようです。

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不動産投機は韓国における不平等の根源の一つにもなっています。

資金をたくさん持っている者は、「マンション転がし」で稼ぐことができ、その過程で住居価格が上昇するので、庶民のマイホーム購入は難しくなっていきます。

以前取り上げたような、世界最悪の少子化の背景の一つにも数えられています。

李大統領はこんな「不動産不敗神話」とも呼ばれる現象には、いつか終わりが来ると警告しているのです。

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日本の不動産バブル崩壊と、それに続く「失われた30年」を例に挙げながら、これを避けるために不動産投機を抑制しようとも呼びかけています。

26年現在、韓国の家計の借金は約1900兆ウォン(約200兆円)とされ、その約6割が不動産を担保としたものです。不動産バブルが崩壊した時の悪影響はまさに破壊的です。

しかし不動産投機の抑制は金儲けを抑制することに他ならず、富裕層を中心に大きな反発を受ける政策です。だからこそ、歴代政権は弱腰になり、譲渡税の猶予も続いてきました。

さっそく不動産専門家からは、「賃貸価格の上昇を招く」といった批判も見受けられます。経済紙を中心に批判も広がっています。

李大統領はいわばこんな、不動産投機という「聖域」に切り込んでいるといえるでしょう。

1月23日、蔚山(ウルサン)市内の市場を訪問した李在明氏。大統領が陥りやすい「万能感」を危惧する声も。

1月23日、蔚山(ウルサン)市内の市場を訪問した李在明氏。大統領が陥りやすい「万能感」を危惧する声も。

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こうなると頼みは世論です。

SNSを通じ、過去の京畿道知事時代の18年から19年にかけて、観光地の渓谷に違法に建築されていた東屋などの商業施設を撤去したこと、さらにKOPIX(韓国総合株価指数)5000を達成したことを例に挙げ、「不可能はない」と連日発信しています。

前者に関しては、当然ながら渓谷で商売していた者達との軋轢がありましたが、政策を貫徹し、2年間に1万以上の違法施設を撤去し市民の憩いの場として渓谷を再整備しました。

後者もながく李大統領の公約でしたが、対立候補に実現不可能と笑われ続けてきたものです。実際に、昨年6月の大統領就任時のKOSPIは3000に過ぎませんでした。

それを市場親和的な発言と政策を通じ、短期間で実現した自負があるのでしょう。

李大統領は「不動産の正常化」は上記二つのものよりも「遥かに簡単」と豪語しています。

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このように李氏は特有の政策推進力を全面に出し、勝負に出ている様相です。

冒頭で私は国家の大転換と書きましたが、それはどんな意味なのでしょうか。

ずばり、住宅市場から株式市場への資金移動です。

韓国メディアが「マネームーブ」と呼ぶもので、付加価値を出さない住宅市場に埋もれていたお金が株式市場へと流れることで、新たな商品・技術・革新を生み出していくような「好循環」を描いているとするのです。

政府の資金だけでは足りない部分を民間の投資が補うことで、生産性を高め、成長の勢いを強めようというビジョンです。それにより配当を得ようという論理です。

1月29日の「デイリー・コリア・フォーカス」にも書いたように、少子高齢化の中で成長を維持するためには、民間の資金が研究開発を活性化させることが不可欠という認識も、そこに読み取れます。

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こんな青写真について、正直なところ、私はワクワクした思いを抱いています。

分かりやすい上に、今よりもまともな国家の未来像を見たように思うからです。

さらに6月に統一地方選を控えた今、敢えてこれをぶつけてくる李大統領の勝負師的な動きにも、なかなか感嘆しています。

もちろん、「株価も上昇を続ける訳ではない」、「市場親和的な政策は最終的には公正になり得ない。さらに不平等を広げるのでは」といった危惧もあります(ちなみに私は李在明さんに投票していません。誰にしたかは秘密です)。

しかし、ずっと韓国社会の「インチキ」の最高峰にあった不動産投機に切り込む姿は、持ち家のない庶民としては、純粋に応援したくなります。

こんな李大統領の明確な姿勢が世論調査に反映されるのは、これからでしょう。今日2日月曜日に発表されたものでは今のところ、否定的な動きはありません。

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政府は1月29日には、首都圏の公共用地をフルに用い、今後6万戸の住居を提供すると明かしています。

ソウル龍山(ヨンサン)の米軍基地跡地など、投機筋垂涎(すいぜん)の地域が含まれています。

これも自治体から強い反発にあっていますが(6割の自治体が反対との報道も)、公的な住居の提供は不動産投機の抑制には欠かせないもので、腕の見せ所となるでしょう。

すでに最大野党・国民の力はこんな李大統領の姿勢に正面から対決をいどむ様相です。

「そもそも青瓦台(大統領府)の秘書官の3人に1人が多住宅者ではないか。彼らから先に住居を処分させろ」といった具合です。

一段階目の評価は、6月の統一地方選となるでしょう。

李大統領が不動産投機を抑制できるか、それに動きに世論はどう応えるのかは今後、韓国政治の大事なみどころです。

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2. 北朝鮮の第9回党大会、開催迫る

既に3000字を超えてしまったので、ここからは手短にいきます。

朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)で、5年に一度おこなわれる党大会が、早ければ数日内に開催される見通しです。

これは、地方の小さな単位から始まる党大会のプロセスが、市・郡へと進んでいることによるものです。

道(県に相当)についてはまだ報じられていないものの、南北関係を所管する統一部は1月30日の定例会見で「党中央委員会本部代表会を開かれたこと」を根拠に、開催が迫っているとしました。

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今回の党大会は「第9回党大会(韓国や北朝鮮では第9次と表現)」となります。

当初は5年前の前回の例から、一月に開催されるとみられていましたが、なぜ二月の開催になったのでしょうか。

今日2日朝、別の仕事で会う機会のあった統一研究院の趙漢凡(チョ・ハムボム)碩座研究委員に聞いたところ「前回の5か年計画の整理に時間がかかった点と、一月に社会主義愛国青年同盟創立80周年記念大会という大きな大会があったため。特段問題視することはない」という返事が返ってきました。

党大会では新たな5か年計画をはじめ、様々な見どころがありますが、南北関係を主要テーマとする私としては、「敵対的二国家」を党規約にどう位置付けるのかに注目しています。

いずれにせよ、党大会は韓国で6月にある統一地方選と合わせ、26年上半期の朝鮮半島における最大のイベントです。

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3. 「韓国古典映画」チャンネルが登録者100万人突破

今日最後のニュースです。

タイトルからして「出オチ」ですが、韓国映像資料院のYouTubeチャンネル「韓国古典映画」のチャンネル登録者が100万人を超えたと、1日、地上波『SBS』が報じました。

このチャンネル(リンクも貼り付けておきます)では、230編あまりの韓国古典映画を無料で公開しています。

「韓国古典映画」チャンネル。画像をクリックすると該当YouTubeページに飛びます。

「韓国古典映画」チャンネル。画像をクリックすると該当YouTubeページに飛びます。

6000万回以上も再生されている1986年製作の『ポン(뽕、桑の葉)』といった映画もあるそうです。なお、こちらは青少年鑑賞不可とのこと。

登録者数増加の背景には世界での「韓流」の拡散があるといいます。SBSによると、登録者の半分は外国人とのこと。

同チャンネルのすべての映画には英語字幕がついており、さらにタイ語やベトナム語の字幕がついたものも40編あまりあるそうです。

時間の問題で探していませんが、日本語字幕のものもありそうです。

ぜひ一度、チャンネルを訪問してみてください。

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4. 今日の時事韓国語「부동산」

「プドンサン」と読みます。漢字では「不動産」です。

発音からなんとなくイメージが湧くかもしれません。

韓国には不動産に関心がある人とない人という、二種類の人がいると思います。中産層かどうかの境目がそこにあると、私は考えています。

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今日は以上です。

朝に大事な仕事があり、配信が遅くなりました。

それにしても、2月は三か所で四度の講演がある他に、事務仕事や書き仕事も多く、なかなかハードな一か月となりそうです。

8日名古屋を皮切りに、22日大阪、27・28日は福岡です。

ご関心ある方はぜひお越しください。27日の会だけはオンライン配信があります。

また、拙著『分断八〇年 韓国民主主義と南北統一の限界』もよろしくお願いいたします。

それではアンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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