【デイリー・コリア・フォーカス】26年2月11日号

本ニュースレターは、サポートメンバーおよび一般登録会員すべての方にお送りしております。
徐台教 2026.02.11
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

2月11日の「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。

今日は日本はお休みでしょうか。

韓国は休みではないのですが、わが家は妻も在宅勤務で子供たちは風邪っぴきと、のんびりしています。私も最近ぜんぜん休みがなかったので、久しぶりに遅くまで寝ていました。

と、言い訳をたっぷりした後で、ニュースレターを始めます。

やはり三日も韓国を空けると、読むべきものが溜まる印象です。

そのためにも、幾人かでチームを作り、政治経済文化などと分担しニュースレターを作ることが望まれます。まさに今、その準備を進めておりますので、もうしばらくはこの形でやっていきます。

今日の内容は以下の通りです。

1. ロシア・ウクライナ戦争の狭間で苦しむ「高麗人」たち
2. 鄭東泳統一部長官、北朝鮮に遺憾表明
3. 今日の時事韓国語「통일부」

***

1. ロシア・ウクライナ戦争の狭間で苦しむ「高麗人」たち

11日、これまで本ニュースレターで三度にわたって言及してきた「京郷新聞」の特集記事「ロシア・ウクライナ戦争 北韓派兵1年」が更新されました。

同戦争に対する朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の派兵から約1年を迎え、その影響や周辺事情を現地取材した特集です。

今回は「高麗人(コリョイン、本人たちはコリョサラムと呼びます)」への取材です。

***

「高麗人」とは朝鮮半島にルーツを持ち、旧ソ連の領域に住む人々です。ロシアへの移住は19世紀後半から始まり、20世紀初頭に活性化しました。

「韓国民族文化大百科事典」によると、その数はソ連ではじめての人口調査が行われた1936年には8万6999人にのぼったそうです。この中で、8万5886人、つまりほとんど全てがシベリア-極東地域に居住していたとのこと。

しかし、1920年代末から少しずつソ連当局による移住措置が始まり、1930年代にはスターリンによる弾圧と強制移住政策の直撃を受けます。

1937年8月21日にスターリンは極東地域に居住する朝鮮人全員に対し、中央アジアへの移住を命じます。カザフスタン、ウズベキスタンを中心に移住させられます。

スターリンの死後、ふたたび居住移動の自由が生まれたとされますが、なおも中央アジアに多くが残りました。また、これとは別に、大日本帝国によりサハリン(南樺太)に徴用された朝鮮人もいます。

なお、1989年時点で、ソ連には43万8650人の高麗人がいたそうです。現在、韓国は高麗人の子孫を同胞として、積極的に受け入れています。24年12月基準、韓国に滞在する高麗人同胞の数は10万7381人にのぼります。

***

今日紹介する記事に出てくるのは、ウクライナに居住する高麗人たちです。

先の「韓国民族文化大百科事典」によると、14年にロシアによりクリミア半島が併合されたことで、その数は約9000人とされます。

22年2月にロシアがウクライナに侵攻したことで、彼らの中には生活の基盤を奪われた人々が続出しました。

ドネツク州やザポリージャ州など、ロシアが占領した地域に住んでいた者たちは、戦禍をのがれ首都キーウに避難しました。

しかし経済的な困窮が続く中、韓国からの救護物資が生活の大きな支えになっているということでした。

高麗人による現地市民団体「アサダル(ASADAL)」が受け皿となり、韓国市民からの支援物資を配布しています。現在、1950の世帯が定期的な支援を受けているそうです。

支援セットの中身は、缶詰・砂糖・パスタ・油・ソーセージ・米・お茶や歯ブラシといった中身だそうです。支援を受け取ったある高麗人は「私たちコリョサラムは米が無ければいけない」と述べています。

***
京郷新聞の該当記事。紙面にも大きく掲載されていました。同紙HPをキャプチャ。

京郷新聞の該当記事。紙面にも大きく掲載されていました。同紙HPをキャプチャ。

「アサダル」の代表ペトロ・パクさんは、地方へと支援物資の配達にも出かけます。京郷新聞の取材班が同行したのは、最大の激戦地であるハルキウ市。

危険をおかし6時間かけて訪れた同地には、やはり周辺から多くの高麗人たちが支援物資を求めて集まっていました。そのルポからは必死に生き延びる人々の様子が伝わってきました。

「1938年生まれの母は、『私は戦争の中で人生をはじめ、今、人生を終えようとするのにふたたび戦争だ』と言っている」

記事で紹介されていた、ハルキウに住むある高麗人の言葉です。

***

記事では他に、高麗人たちが、北朝鮮がロシア側について派兵したことをどう受け止めるのかについても語られています。

夫が戦時下で行方不明となり、女手ひとつで娘2人を育てる高麗人のタチアナさんは、「私たちは同じ民族だと思ったが、なぜこんなことをするのか理解ができない」と述べています。

また、ドニプロで領土防衛軍に所属するヴラドミール・キムさんは「北朝鮮軍は私たちの敵。私はここに住んでおり、彼らはわが国に来た。私はこの国を守る」としたそうです。

一方で同氏は「ウクライナの人々は、私はウクライナの韓国人、彼らは北朝鮮から来た韓国人ということを明確に区分するが、それでも同じ韓国人なので心苦しい」という気持ちを明かしています。割り切れないものがあるのでしょう。

***

京郷新聞は他に、ウクライナ南部ミコライウ州のヴィタリー・キム知事へのインタビューを行なっています。同氏は高麗人4世です。

キム知事は北朝鮮の派兵について、こう答えています。

「とて愚かな犠牲だ。私の感情は…(悩んで)この状況には大きな感情がないというものだ。正直、韓国の軍人たちが私たちを助けに来たならば、おそらく別の感情が生まれただろう。しかし北朝鮮は閉鎖された国で、とてつもないプロパガンダの中で生きてきた人々だ。北朝鮮軍の兵士たちは、何が起きているのが分からなかっただろう」

長くなってしまうので省略しますが、キム知事は長引く戦争によって、人生そのものが変わったことも語っています。

公的な任務を重視する立派な人物という印象を受けましたが、一方で「恐れの中に生きるようになった」と明かしています。

また、こうも述べています。

「よく生きること、子供たちの教育、お金を稼ぐこと、目標の達成、人格の成長といったものが以前は重要だったが、今では生き残り、戦い、耐え、抵抗することが最も重要な優先順位となった」

重い言葉です。

ヴィタリー・キム知事。「京郷新聞」HPをキャプチャ。

ヴィタリー・キム知事。「京郷新聞」HPをキャプチャ。

***

最後に、記事と同様に、前出のタチアナさんの言葉を引用して、この項を終わりたいと思います。韓国へ伝えたいメッセージということでしたが、日本でも響く言葉です。

「本当に‘平和な空’を無くしてみた人は、‘平和な空’という言葉がなぜ必要なのかが分かる。外に出た際に、頭の上に何も飛んでいない時」

***

先の衆院選でも「戦争を止める」という言説が広まりました。

高市政権が戦争を仕掛けることはないというのは分かっていても、戦うことを自明のものとし、その環境を整えたがる姿を「好戦的」と受け止め、それを嫌がる気持ちから生まれた言葉でしょう。

防衛力を高める際には、かならず同時に、平和に対する姿勢も明らかにしなければならないのですが、それが今の高市政権にはすっぽり抜けてしまっています。

単純に状況を比べることはできませんが、今回の記事は、一度始まった戦争がもたらす悲劇について、改めて考えるきっかけとなりました。

***

2. 鄭東泳統一部長官、北朝鮮に遺憾表明

二つ目は、南北関係に関するニュースです。

鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官といえば、南北の「平和的二国家関係」を一貫して主張している人物です。

過去、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権下でも統一部長官を務めた、今年73歳になるベテランです。

10日、その鄭東泳長官が北朝鮮に対し「深い遺憾」を表明しました。深い遺憾とは、「とても残念だ」ということです。限りなく謝罪に近いものとなります。

コメントの該当部分は、「今回起きた無謀な無人機(ドローン)の浸透と関連し、北側に深い遺憾を表明する」というものです。

***

ドローンの「浸透」というのは、韓国からのドローンが北朝鮮領内に入って行ったことを指すものです。

具体的には先月10日、北朝鮮の朝鮮人民軍が明かしたものです。李在明政権下の今年1月と昨年9月に、韓国から飛来したドローンを北朝鮮領内で撃墜したとする内容です。

韓国では今なお捜査が進んでいますが、軍の情報機関の支援を受けた民間会社の仕業ということがほぼ明らかになっている状態です。

こんな「事実」が、鄭東泳長官の発言の背景となったのでしょう。南北関係を少しでも前に進めたいがための発言と受け止められます。

なお、取材陣に対し「統一部の判断」と説明し、青瓦台(大統領府)との事前の調整がなかったことを明かしています。

10日、発言する鄭東泳長官。天主教(カトリック)ソウル教区提供。

10日、発言する鄭東泳長官。天主教(カトリック)ソウル教区提供。

***

発言は、明洞聖堂で行われた「民族の和解と一致を求めるミサ」の中でのものでした。

同長官は他にも、尹錫悦政権下で北朝鮮への無人機を用いた軍事的挑発があった事を取り上げました。

これを「下手すると戦争が起こりかねない無謀で危険千万な行為だった」と評し、「二度と起きてはならないとても不幸な事件」と位置付けました。

そして尹錫悦政権下で効力停止となった「9.19南北軍事合意(2018年)」が「1日も早く復元されなければならない」と訴えました。

韓国メディアはこんな鄭長官の発言を「李在明政権下で政府高官による初の遺憾表明」と注目する一方、最大野党・国民の力の議員の中にはその姿勢を「屈従」と批判する者もいました。

なお22年には、北朝鮮からの無人機が、ソウルの大統領室付近にまで到達したことがあります。過度の低姿勢という非難です。

先日紹介したように、李在明政権は北朝鮮との「平和共存」を政策目標として掲げています。この日の発言は、その一環であると同時に、スタートであると位置付けられそうです。

***

3. 今日の時事韓国語「통일부」

「トンイルブ」と読みます。漢字では「統一部」です。

政府組織法では統一部長官の業務を「統一および南北対話・交流・協力に関する政策の樹立、統一教育、その他に統一に関する事務を管掌する」と定めています。

他の政府部署と比べ大きな組織ではありませんが、分断国家・韓国ならではの組織です。一方、南北はすでに二国家であることから、「韓朝関係部」や「平和協力部」といった名称に変更すべきという意見もあります。

***

今日は以上です。

17時になってしまいました。

徐々に「デイリー」発行への危機が押し寄せている感がありますが、大丈夫です。こんな日もあるでしょう^^

それではまた明日、お送りいたします。

アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

無料で「「コリア・フォーカス」(徐台教責任編集)」をメールでお届けします。コンテンツを見逃さず、読者限定記事も受け取れます。

すでに登録済みの方は こちら

提携媒体・コラボ実績

誰でも
【デイリー・コリア・フォーカス】26年2月13日号
誰でも
【デイリー・コリア・フォーカス】26年2月12日号
誰でも
【デイリー・コリア・フォーカス】26年2月10日号
誰でも
【デイリー・コリア・フォーカス】26年2月9日号
誰でも
【デイリー・コリア・フォーカス】26年2月6日号
誰でも
【デイリー・コリア・フォーカス】26年2月5日号
誰でも
【デイリー・コリア・フォーカス】26年2月4日号
誰でも
【デイリー・コリア・フォーカス】26年2月3日号