【デイリー・コリア・フォーカス】26年2月17日号
皆さまアンニョンハセヨ。
お間違えなく。2月17日号の「デイリー・コリア・フォーカス」です。こんな朝早くに送る理由は、今日はお墓参りに行くからです。昨年亡くなった義父の眠る陰城郡に向かいます。
義父がどんな方だったのかは、この記事をご参考ください。ニュースレターを受け取られている多くの方は既に読まれたと思いますが…。
今日の目次です。
1. ウクライナで捕虜になっている北朝鮮兵士、「韓国への送還」は可能か
2. 今日の時事韓国語「새해 복 많이 받으세요」
1. ウクライナで捕虜になっている北朝鮮兵士、「韓国への送還」は可能か
2024年12月、朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)は、正規軍である朝鮮人民軍をロシア・クルスク州に派遣しました。
同地はウクライナとの国境にある地域です。同年8月、越境攻撃を仕掛けたウクライナにより占領されていました。
後にあるであろう和平交渉の際に領土交換の材料とすること、そしてウクライナ東部に集中するロシア軍の兵力を分散させる目的があるとされました。
朝鮮人民軍はこの奪還作戦に投入されました。派兵の根拠は同年6月にロシアと北朝鮮との間に結ばれた「包括的戦略パートナーシップ条約」です。
条約の第4条にはこうあります。
「双方のうち、一方が個別的な国家、または複数の国家から武力侵攻を受けて戦争状態に瀕する場合、他方は国連憲章第51条と朝鮮民主主義人民共和国とロシア連邦の法に準じて遅滞なく自国が保有している全ての手段で軍事的およびその他の援助を提供する」
これはいわゆる「自動介入条項」、つまりロシアと北朝鮮のうちどちらかが攻撃された場合、もう一方は介入するものと解釈されています。
この内容に従い、北朝鮮は「ウクライナに攻撃されたロシア領」である、クルスク州に派兵したのです。
なお、派兵を持ちかけたのは金正恩氏とされています。目的は、韓国の国策シンクタンク『統一研究院』や国防部は、「ロシアとの‘軍事同盟’を確実に構造化するため」と見ています。
「朝露関係を軍事同盟と位置づけ、米韓同盟に対応する構図を形成することが主要な目的」ということです。これ以外にも金正恩氏は、ロシアからの経済・軍事面での対価を得ているでしょう。
派遣されたのは、朝鮮人民軍の「特殊作戦軍」に所属する精鋭部隊で、その数は1万人以上。約6000人という大きな死傷者を出しながら、25年4月の「クルスク奪還」に「貢献」したとされます。
どんどん話が大きくなっていきますが、今日はこうして派兵され、25年1月に、クルスク州内でウクライナに捕虜となった2人の北朝鮮兵士の話です。
リベラル系日刊紙『京郷新聞』の連載記事の紹介を通じ、彼らについては本ニュースレターでも何度か取り上げました。
その記事の元になっているのは、韓国で最も著名な戦場ジャーナリストであるキム・ヨンミさんが25年10月にウクライナで彼らに対し行ったインタビューです。
新聞紙上に加え、地上波『MBC』の『PD手帖」という看板ニュース番組で今年1月20日、27日と二週連続で取り上げられ、大きな話題となりました。
PD手帖のタイトル。「ロシア・ウクライナ戦争と北韓軍 1部:影の部隊」とあります。MBCをキャプチャ。
私も興味深く拝見しました。特に、彼らが明かす家族への思いや、自身の将来についての展望、そしてそれを可能にする韓国行きへの希望を語る部分には心打たれました。
インタビューは約5時間に及んだそうです。
キム・ヨンミさんに対し、はじめはよそよそしかったものの、別れる際には「お母さんみたいだ。韓国に返したくない」と涙を流す姿からは、金正恩氏が何よりも恐れるとされる「南北朝鮮人の共感」が形成される様子が見て取れました。
この番組の放映後、この2人の兵士への関心は高まり、「はやく韓国に連れてくるべき」という世論につながっています。
果たしてそれは可能なのでしょうか。
『統一研究院』が2月9日にまとめたレポート『北韓軍捕虜の韓国行き送還のための課題と考慮事項:MBC「PD手帖」報道を契機に」を参考に整理しました。
レポートではまず、捕虜の2人が何よりも恐れる「北朝鮮への送還」について考察します。そして、2人が北朝鮮に送還される場合、「国家反逆罪に問われる可能性が濃厚である」とします。
6000人の死傷者のうち、捕虜が2人しかいないことからも分かるように、「捕虜になるなら自爆せよ」と彼らは教え込まれてきました。
それを守れなかったばかりか、韓国メディアに出演し「韓国行き」の希望を明かしたことで同罪が適用され、死刑になる可能性があるというのです。死刑を逃れたとしても、同罪により政治犯収容所(管理所)に送られる憂慮があるとしました。
レポートでは、北朝鮮兵士は韓国の憲法第3条の解釈により、大韓民国の国民であるとします。
憲法3条は「大韓民国の領土は韓半島とその付属島嶼とする」という、いわゆる「領土条項」と呼ばれるものです。脱北者の保護の根拠ともなる条項です。
そして彼らを韓国に連れてくる国際法上の3つの根拠について説明します。
(1)1949年に定められた『ジュネーブ協定』では「戦争捕虜は敵対行為の終了後に、遅滞なく送還されなければならない」と規定される。一方、国際赤十字委員会(ICRC)は2020年に改正した注釈書で「捕虜が本国により基本権の侵害の実質的な脅威に直面する場合、送還の義務は例外に該当する」と明示している。
(2)「強制送還禁止の原則」が国際慣習法として確立している。
(3)戦争捕虜の自発的送還の原則は、国際慣行として確立している。1953年の朝鮮戦争の停戦協定51条でも「送還を固執する捕虜だけ送還する」よう規定されているように、捕虜の自発的な意志を尊重し「自由な送還」を行うことが今や、国際慣行である。
根拠は十分ということです。レポートでは2月5日にも、ウクライナとロシアの間に314人の捕虜交換が行われた出来事を挙げ、韓国が積極的に動くことを求めています。
「これ(韓国への送還)は、憲法3条を根拠とする国民保護の義務であると同時に、国際法上の強制送還禁止原則の実現であり、人権保護の具現である」ということです。
『PD手帖』の第二部タイトル。「ロシア・ウクライナ戦争と北韓軍 2部:終わりのない戦争」とあります。MBCをキャプチャ。
それでは実際にどう、韓国への送還を実現するのでしょうか。
ウクライナの国防情報総局は、既に何度も韓国メディアを通じ、この一件が韓国とウクライナの「大統領案件」であることを明かしています。このため、レポートでは特使団を派遣すべきと提言します。
特に、開戦から4年(26年2月24日)を迎えるにあたり、捕虜交換が活発になるため、急ぐよう呼びかけます。
また、国際赤十字委員会を通じ、捕虜2人の韓国行きの意志を公式に検証し、明らかにすべきと提言しています。
赤十字委員会の検証書は証拠力のある公式文書として扱われるため、予想される「国際法違反」という北朝鮮側の反発に対し、有効な資料となるという見立てです。
さらに赤十字委員会により、捕虜2人を「保護対象」とすることで、彼らへの持続的なモニタリングが可能になるとしています。
レポートでは一方、韓国政府はあくまで、人道的な原則を維持すべきと指摘します。こうすることで、ウクライナが求めるであろう軍事的な協力要請の対価としてではなく、国際法上の義務の履行であると正当化することができるという助言です。
ウクライナへの協力も、「捕虜送還の対価」としてではなく、「捕虜送還後の両国関係の強化」として位置づけられる必要があるともしています。
デジタルインフラの構築や、再生エネルギー分野、高付加価値農業分野など、ウクライナ再建のための長期的な協力方案をその候補に挙げています。
レポートでは最後に、韓国入り後のケアについても提言します。捕虜出身の脱北者が韓国では初めてとなることから、トラウマ治療など特別な関心が必要であるという結論です。
自身のFacebookを通じ、捕虜2人の韓国送還を求める国民請願への協力を求める、キム・ヨンミさん。上からイ・ガンウン、ペク・ピョンガン(いずれも仮名)。
レポートの紹介は以上です。
韓国外交部は1月21日、北朝鮮軍の捕虜が望めば全員を受け入れると、改めて明かしています。また今、2人の北朝鮮捕虜の韓国送還を求める国民請願が行われていますが、これは低調なままです。
果たして韓国政府は動くでしょうか。李在明大統領の胸先三寸ですが、同氏はこれまで心中を明かしていません。
韓国への送還を公に行う場合、北朝鮮側は「拉致だ」と反発するのは自明であるため、頭を悩ませていることでしょう。
また、ロシア・ウクライナ戦争への積極的な介入を避けたい姿勢も一貫しています。韓国は尹錫悦政権時には、米国を通じ数十万発の155ミリ砲弾を支援したとされますが、現状はよく分かっていません(取材せよ!という話です)。
いずれにせよ、このままでは2人に北朝鮮兵士が、いつ送還されるか分かりません。韓国政府は早急に動くべきでしょう。やるべきことはやる、という姿勢が大切です。
2. 今日の時事韓国語「새해 복 많이 받으세요」
「セヘ ポッ マニ パドゥセヨ」と発音します。韓国のお正月の挨拶です。日本の「明けましておめでとうございます」に当たります。
直訳すると「新年、福が多からんことを」とでもなりましょうか。この時期にたくさん飛び交う挨拶です。
今日は以上です。
それではまた明日お届けいたします。
いつもありがとうございます。(徐台教)
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