[26号] 北朝鮮のICBM発射と核施設稼働、沈没した『天安艦』の復活、進む日米韓の軍事協力など全11トピック
(12月26日)サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。
ニュースレター第26号をお届けいたします。金曜日の発行予定が、なんと韓国社会・政治号を出すはずの火曜日となってしまいました。ここ数号見舞われているペースの乱れが極限に達した印象です。それでも新年から持ち直していきますので、ご安心ください。
今号の目次は以下の通りです。
-
[巻頭特集] 北朝鮮のICBM「発射訓練」をどう見るか
-
韓国から見た南北関係(1):韓国国防部長官が「斬首作戦」に言及
-
韓国から見た南北関係(2):『天安艦』が13年ぶりに姿を変え‘復活’
-
韓国から見た南北関係(3):韓国の来年度予算が成立…国防部、外交部は増額、統一部は減額
-
朝鮮半島情勢(1):国連総会で北朝鮮人権決議案が採択…一方で北朝鮮は「人権」を恣意的に解釈
-
朝鮮半島情勢(2):日米韓のミサイル情報共有システム稼働…進む日米韓軍事協力
-
朝鮮半島情勢(3):寧辺核施設で軽水炉の活動が活発化、IAEAが明かす
-
ショートニュース:(1)北朝鮮の外交団が中国外交トップと面談、(2)韓国の国家情報院長と外交部長官が交替へ、(3)ドキュメンタリー映画『ビヨンド・ユートピア』がアカデミー賞の予備候補に、(4)「新型コロナ後初」赤十字国際委員会が北朝鮮に医療支援
-
あとがきに代えて:今年は静かに過ぎ去るのか
[巻頭特集] 北朝鮮のICBM「発射訓練」をどう見るか
先週(というには間が空いてしまいましたが)あった朝鮮半島情勢に関する最も大きなニュースは、北朝鮮が18日午前、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の「発射訓練」を行ったことです。
北朝鮮は翌19日、朝鮮労働党機関誌『労働新聞』を通じ詳細を伝えました。
これによると、今回のミサイルは「火星18型」(北朝鮮では「火星砲-18」)です。北朝鮮にとっては同型では4月と7月に続き今年3回目、通算では今年5回目となるICBM発射でした。
首都・平壌からロフテッド軌道(垂直に近い軌道)で発射されたICBMの飛行時間は74分、最大到達高度は6518㎞、飛行距離は1002㎞であったとのことです。
北朝鮮が発射した「火星18型」。朝鮮中央通信より引用。
北朝鮮は今回の発射を「発射訓練」と称していますが、なぜ発射訓練を行ったのでしょうか。
同記事ではその理由を今月15日(現地時間)に米ワシントンで開かれた米韓「NCG(核協議グループ)」における米韓の共同声明や、来年8月の米韓連合訓練における「核の作戦シナリオ」導入といったものに求めています。
一連の動きを列挙しながら「共和国武力の強い怒りと、超強硬な報復の意志」につながったと主張しています。
さらに、米国の核戦略爆撃機や原子力潜水艦、原子力空母などを頻繁に寄越し「朝鮮半島地域を文字通り米核戦略資産の総集合基地」としていることや、今月17日に原子力潜水艦『ミズーリ』が寄航した点を挙げ、これに対する「攻勢的な対応」の必要性を訴えています。
同記事ではまた、発射訓練を参観した金正恩氏の「敵の軍事的な脅威が続く時には、より攻勢的な行動で強く対応しなければならない」という旨の発言を伝えました。
「火星18型」の発射を見守る金正恩氏。娘も同行しました。朝鮮中央通信より引用。
それでは今回の「発射訓練」をどう見るべきでしょうか。国策シンクタンク『統一研究院』が20日に出したレポートを参考に読み解いていきます。
まず、今年あった「火星18型」の2度の発射の際に「実験発射」と称したものが「発射訓練」に変わった用語の変化に注目しています。これは実験と実戦化の間に位置するもので、武器システムとして現場で運用できるかどうかを検証する「準備段階」にあるとしています。
一方で、前掲の労働新聞の記事内のいくつかの用語、例えば「国防科学部門の研究者たち」への言及がなく「ミサイル総局の指揮官たち」となっていた点などを挙げ、「実験よりも実戦訓練を強調したものと見られる」としながらも、ミサイルの塗装が碁盤状である点などから「実験目的が強い」と結論付けています。
つまり「発射訓練」という言葉には米韓に対する政治的な意図があるということです。
なお「発射訓練」という用語は過去6年間に成功した10度のICBM発射のうち3度だけ、すわなち今年2月の「火星15型」、同3月の「火星17型」、そして今回の「火星18型」に対し使われています。
こうした点から「発射訓練」という用語はやはり「機能的な実験段階から運用の機動性へと強調点を移すための意図」があると見立てています。難しいですね。政治的な意図と技術的な進捗の両方があると受け止めれば良さそうです。
レポートではまた、上記3つの型のICBMを比べながら「実験発射」から「発射訓練」に移行するまでの期間が徐々に短くなっていると指摘します。15型は6年1か月、17型は1年、そして18型は8か月という具合です。
しかしいずれも1~3回の実験で訓練段階へと移行していますが、技術的な完成度と運用の安定性を実際に確保したかは「依然として疑問」とレポートでは明かされています。
こうした点から、今後、ICBMの発射が続くと結論付けています。
一方でレポートでは、北朝鮮にとっての技術的な課題として「正常角度での実験発射」があると指摘しています。これを通じ大気圏への進入および再進入時の安定性や弾頭の削磨技術能力、正確な爆発および弾着能力などを確認できると言います。
発射された「火星18型」。朝鮮中央通信より引用。
しかし北朝鮮は「地理的な要件や軍事的なリスク」からこれが難しいとしながらも、予想できるルートとして、▲ハワイの北側を経由し米国の西海岸付近に落弾、▲ハワイの南側を経由し米国西海岸の付近に落弾、▲南米方向、▲豪州上空を通過し南極大陸前に落弾の4つを挙げています。
いずれも米国や豪州などによる迎撃といった軍事的な対応が予想される上に、観測用の艦隊を持たない北朝鮮にとって分析は難しいという難点があります。
このため、ハワイ以前まで飛ばす形に推力を調整したり、中距離弾道ミサイルを通じた間接的な技術検証を選ぶ可能性もあるとしています。
また米政府系メディア『RFA(Radio Free Asia)』が20日付けの記事で報じたところによると、米国の『議会調査局』は19日(現地時間)に「北朝鮮の核武器・ミサイル開発」報告書を更新する中で「核武器と大型の在来式の搭載物を高速で遠くまで運搬することができる弾道ミサイルの移動性、信頼性、効能、正確性、生存可能性を高めるための試験を続けることが北朝鮮のミサイル開発の核心だ」と分析しています。
さらに「火星18型」については「信頼性を向上させるために追加の試験が必要だろう」と見立てています。ざっくりとした書き方ですが、上述してきたような『統一研究院』の見立てと一致します。
韓国の国防部も21日、国会への報告の中で、さらなる実験の可能性を提起しました。
◎韓国から見る南北関係(1):韓国国防部長官が「斬首作戦」に言及
冒頭で取り上げたICBMの発射を受け、韓国も強く反応しました。
19日、国家安全保障会議(NSC)緊急常任会議に参席した尹錫悦大統領は冒頭の発言で北朝鮮のミサイル発射実験を「韓半島と世界の安全保障に対する重大で深刻な挑戦」と位置づけると共に、「北韓の政権は自らの挑発が逆に自身により大きな苦痛として返ってくるということを悟ることになるだろう」と述べました。
19日、国務会議(閣議)に出席する尹錫悦大統領。大統領室提供。
ここまでは通常対応でしたが、同じ日の午後、申源湜(シン・ウォンシク)国防部長官は出演したニュース番組の中で「斬首作戦の訓練をオプションとして考慮している」という旨の発言を行いました。
これはブラフではなく、実際にICBM発射があった18日に米韓の特殊戦部隊は合同で「核心地域内部掃蕩戦術訓練」を行っています。
斬首作戦というのは、文字通り敵の指導者の首を取るというもので、今の朝鮮半島では有事の際に北朝鮮の最高指導者・金正恩氏をピンポイントに殺害する作戦を指します。「核心地域」とは金正恩氏や北朝鮮指導部が隠れている場所を指すと見るのが妥当でしょう。
20日に開催された国防革新委員会の第3次会議でも、北朝鮮への「打撃力」が話題に上りました。
「韓国軍は監視と打撃を統合して遂行できる無人偵察・攻撃機、有事の際に北の縦深地域(前方・後方)への浸透・打撃が可能なステルス無人偵察・攻撃機などを早期に確保し、北韓の奇襲挑発に備え態勢を画期的に強める」としています。
こうした動きは、金正恩氏への直接攻撃を示唆するもので、韓国軍の抑止力の一つとなっています。
なお、米国国防省の報道官は21日(現地時間)の会見で「同盟国の最終目標は金正恩の斬首か」という記者の質問に「外交的なアプローチを維持しながら対話を促している」と答えています。
18日、訓練を行う米韓の特殊戦部隊。韓国国防部提供。
◎韓国から見る南北関係(2):『天安艦』が13年ぶりに姿を変え‘復活’
2010年3月26日、韓国西北端の白翎島(ペクリョンド)付近の海上で、北朝鮮軍潜水艇の魚雷により沈没した韓国軍の哨戒艦『天安』。
46人の戦死者を出したいわゆる「天安艦事件」と呼ばれるこの一件により、時の李明博(イ・ミョンバク)大統領は「5.24措置」を発表、南北関係は開城工業団地を残しすべて断絶することになりました。
そして23日、その名を継承した新型『天安』が京畿道(キョンギド)平澤(ピョンテク)市の第2艦隊に実戦配備されました。今年5月の就役以降、7か月におよぶ各種訓練を終えてのものです。同艦隊は西海(黄海)の守護を目的としています。
今月23日に実戦配備された新型護衛艦『天安」
韓国国防部によると『天安』は過去の1000トン級の哨戒艦から2800トン級の護衛艦となり、大幅にスペックが高まりました。探知能力の向上をはじめ長距離魚雷、戦術艦対地ミサイル誘導弾などを搭載し、対潜水艦戦闘に特徴を有しているとのことです。
また、新型『天安』の艦内には「天安艦事件」を追悼する歴史館が存在します。この中には亡くなった46人の名前が刻まれた石版があるそうです。
さらに、同艦の乗組員の中には「天安艦事件」の生存者であるリュ・ジウク中士がいると国防部は紹介しました。
報道資料によるとリュ中士は「最新鋭護衛艦として復活した天安艦に乗艦し、2艦隊に入港したことで、空から(あの世から)海を守っている46人の戦友の側にまた戻ってきたようだ」とし、「13年前に完璧な西海守護を誓った瞬間を胸に抱いて、敵が挑発する場合にかならず応酬し、戦友の名誉を死守する」と述べました。
なお、10年に沈没した哨戒艦『天安』はその後引き揚げられ、現在は平澤市の第2艦隊司令部に展示されています(外国人も事前に予約することで観覧できます)。
平澤市の韓国海軍第二艦隊司令部内に展示されている哨戒艦『天安』の断面。海底から引き揚げた実物だ。船体の下から両断された痕跡がありありと残っている。23年5月、筆者撮影。
軍にまつわるリュ中士のような「叙事」は南北が今なお対峙を続ける朝鮮半島にはいくつも存在します。
新生『天安』が大活躍するような状況にならないことを願ってやみません。
◎韓国から見る南北関係(3):韓国の来年度予算が成立…国防部、外交部は増額、統一部は減額
韓国の国会で21日、来年度予算案が議決されました。
その結果、国防部は前年日4.2%増額の59兆4244兆ウォン(約6兆5000億円)、外交部は同24.8%増額の4兆1905兆ウォン(約4600億円)、統一部は同24.9%減額の1兆301億ウォン(約1100億円)でそれぞれ確定しました。
提携媒体
コラボ実績
提携媒体・コラボ実績