【デイリー・コリア・フォーカス】26年10月30日号[カルチャー]:Netflix韓国上陸10年、年末の韓国はミュージカル大作ラッシュ、日韓リメイクの違い鮮明

今週もミュージカルからドラマ、バラエティまで幅広い韓国カルチャーの「今の」を、韓国現地からMisaさんがお伝えします。本ニュースレターは、サポートメンバーおよび一般登録会員すべての方にお送りしております。
Misa 2026.10.30
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。Misaです。ソウルでは急に冷え込み、朝晩は10度を下回る日も。今年も、ソウルの秋は一瞬で過ぎていきました。

今週の目次は、以下の通りです。

(1)Netflix韓国上陸10年、作り手からは「下請け」の声も
(2)年末の韓国はミュージカル大作ラッシュ、スター俳優が舞台に戻る理由
(3)大胆に変えた韓国版『ドクターX』、忠実に再現した日本版『ウ・ヨンウ』
(4)バレー界のスターが監督に挑むバラエティ、「ガチ」な設定が話題
(5)カルチャー韓国語:회전문 관객(フェジョンムン・クァンゲク)

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(1)Netflix韓国上陸10年、作り手からは「下請け」の声も

Netflixが韓国でサービスを始めて10年。同社によると、10月24〜25日にソウルで開いた記念イベントには、2日間で約1万人のファンが集まりました。

舞台にはドラマ『イカゲーム』(오징어 게임)のイ・ジョンジェやイ・ビョンホン、12月配信予定のドラマ『タンタラの詩』(천천히 강렬하게)に出演するソン・ヘギョやコン・ユなど、55人のスターが登場。

イ・ビョンホンは「私たちの言葉で作った私たちの物語に、国や文化を問わず世界中が共感し、愛してくれたことが何より驚きだった」と振り返りました。

Netflix Korea 10周年スペシャルムービー(Netflix Japan公式チャンネルより)

この10年の「光」を象徴するのは、2021年に世界的な大ヒットとなった『イカゲーム』でしょう。その傍らでNetflixは、国内では資金が集まりにくい作品の受け皿にもなっています。

イ・チャンドン監督の8年ぶりの新作、映画『もしもの愛』(가능한 사랑)は、リストラされた労働者の夫婦と、ドキュメンタリー監督の夫婦の出会いを描いた作品。

興行を心配した韓国の投資会社が二の足を踏むなか、Netflixが制作費を全額出しました。9月にはヴェネツィア国際映画祭で、韓国映画として初めて審査員大賞(銀獅子賞)を受賞。日本でも10月23日から劇場で公開中で、11月6日からはNetflixで世界に配信されます。

映画『もしもの愛』予告編。11月6日からNetflixで配信(Netflix Japan公式チャンネルより)

一方で、「影」も指摘されています。

韓国の作り手がNetflixと結ぶ契約の多くは、一定の報酬と引き換えに作品の権利を渡す「買い切り」。ヒットしても、追加の報酬はほとんど入りません。

ドラマ『私の解放日誌』(나의 해방일지)の脚本家パク・ヘヨンは「私たちは結局、グローバルな下請けだ」と語っています。9月には、作り手が配信の収益から報酬を受け取れるようにする著作権法の改正案が、国会に提出されました。

Netflix自身は、いま転機にあります。10月には全世界の従業員の約6%、およそ1,000人の削減を発表。サランドス共同CEOも9月末、視聴時間の伸びについて「望むほど速く成長できていない」と語りました。

そんな中、少ない予算で世界的なヒットを生む韓国は、ますます欠かせない存在に。米メディアの報道によると、『イカゲーム』シーズン1の1話あたりの制作費は、アメリカの大作ドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』シーズン4の10分の1以下でした。

Netflixが韓国に頼るほど、韓国の作り手には交渉する力が生まれるはずです。著作権法の改正案が、その次の10年の第一歩になるのか、注目しています。

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(2)年末の韓国はミュージカル大作ラッシュ、スター俳優が舞台に戻る理由

韓国の年末は、ミュージカルの書き入れ時。今年は大作がそろいました。

目玉は、ブロードウェイの大ヒット作『ハミルトン』(해밀턴)の韓国初上陸。ヒップホップとラップでアメリカ建国の物語を描き、トニー賞で11部門を受賞した作品です。

新しいワールドツアーの皮切りとして12月17日に釜山で開幕し、来年1月からはソウルの世宗文化会館に移ります。

韓国のミュージカルは、スター俳優の存在も大きな魅力です。

ドラマや映画でもおなじみのチョ・スンウは、7年ぶりに、無実の罪で妻子を奪われた理髪師の復讐劇『スウィーニー・トッド』(스위니 토드)の主役に。「私はもともと舞台俳優。舞台に立つのは、息をするように当たり前のこと」と語ってきた人です。

映画『ソウルの春』(서울의 봄)のファン・ジョンミンも、昨年に続いて、離婚した父親が、子どものそばにいるため家政婦に変装するコメディ『ミセス・ダウトファイア』(미세스 다웃파이어)に出演します。

10年ぶりにミュージカルに戻った昨年は「正直、少し荷が重い」と打ち明けつつ、「舞台で拍手をもらえる充実感を味わいたい」と話していました。映像で売れても舞台に戻ってくる。それが韓国の俳優の一つの姿です。

左:チョ・スンウが出演する『スウィーニー・トッド』(ODカンパニー公式Instagram @od_musical より)、右:ファン・ジョンミンが出演する『ミセス・ダウトファイア』(公式Instagram @mrs.doubtfire_musical_kr より)

左:チョ・スンウが出演する『スウィーニー・トッド』(ODカンパニー公式Instagram @od_musical より)、右:ファン・ジョンミンが出演する『ミセス・ダウトファイア』(公式Instagram @mrs.doubtfire_musical_kr より)

ただ、業界の懐事情は厳しめです。公演芸術統合電算網の集計では、今年1月〜10月24日のミュージカルの公演件数は前年同期比で約9.7%増えた一方、チケットの販売額は約7.2%減りました。

年末の大作で客足が戻るのか。スターの力がどこまで観客を呼び込めるかが復調の鍵になりそうです。

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(3)大胆に変えた韓国版『ドクターX』、忠実に再現した日本版『ウ・ヨンウ』

いま韓国では、日韓のリメイクドラマ2本が並んで話題になっています。同じリメイクでも、作り方は正反対です。

以前ご紹介した韓国版ドラマ『ドクターX ~白衣のマフィア~』(닥터X: 하얀 마피아의 시대)は、原作の骨格や名物の小道具、時折のコミカルな場面は残しつつ、物語は病院の不正や韓国ならではの医療界の課題に迫るノワール調に作り変えています。

Netflixの非英語番組部門で10月中旬まで2週連続の世界1位になるなど、海外で人気を集める一方、韓国では10月24日放送の6話をめぐって賛否が大きく割れています。

あの「私、失敗しないので」も再現された『ドクターX ~白衣のマフィア~』の予告編(Netflix Japan公式チャンネルより)

6話には、5・18民主化運動(1980年5月、光州で民主化を求める市民を軍が武力で鎮圧した事件)で撃たれた患者が登場。

「原作にない歴史をなぜ持ち込むのか」と一部の視聴者が反発し、キム・ジウォンのSNSにも抗議が寄せられ、放送中止を求める請願も出されました。一方で、国家暴力の被害者が長年抱える苦しみを描いたと評価する声もあります。

対照的に、『南田南弁護士は天才肌』は、自閉スペクトラム症のある新人弁護士を主人公にした原作のドラマ『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(이상한 변호사 우영우)にかなり忠実です。10月19日から放送中で、韓国のNetflixでも10月21日に「今日のTOP10」で5位に入りました。

主演の芦田愛菜は、ボブヘアや指でリズムを刻む癖を細かく再現。好物のキンパはおにぎりに、苦手な回転ドアはエスカレーターに変わり、韓国メディアでは自然な現地化と受け止められています。

一方で、照明が明るすぎて深刻な場面も軽く見える、幼い南が初めて話す場面が漫画のようだと、演出には厳しい声も。主人公の演技をパク・ウンビンと比べる声や、「原作をなぞっただけで、リメイクならではの解釈がない」という指摘も出ています。南の同僚を演じる高橋文哉は、日韓どちらでも「原作の人物そのまま」と好評です。

原作をどこまで変え、どこまで残すか。リメイクならではの難しさが、同じ週に日韓の両方で見えました。日本版には、現地化にとどまらない、日本ならではの改変やメッセージを期待したいところです。

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(4)バレー界のスターが監督に挑むバラエティ、「ガチ」な設定が話題

韓国ではいま、女子バレーを舞台にしたバラエティが最も話題を集めています。

MBCの『新人監督キム・ヨンギョン2』(신인감독 김연경2)。日本のJTマーヴェラスでリーグMVPに選ばれたこともある女子バレーのスター、キム・ヨンギョンが、2025年春の引退後に監督として挑む番組です。

受けている理由は、台本のない本物の勝負と、設定の「ガチさ」です。

番組のために作られたチーム「必勝ワンダードッグス」に集まったのは、プロから放出された選手や、引退から復帰を目指す選手たち。シーズン1では、その中から4人が実際にプロ球団に入りました。

シーズン2の目標は、チームごと企業に引き取ってもらい、7球団ある女子プロリーグの8番目のチームになること。成功しても失敗しても、番組は今季で最後という設定です。初回の視聴率は4.8%で、シーズン1の初回の2倍以上です。

初戦の相手は、岡山の強豪・就実高校。シーズン1でワンダードッグスが現地に出向き、2セットを先取しながら逆転負けした相手です。今回は就実高校が韓国に乗り込み、ワンダードッグスが0-2から3-2で逆転勝ちしました。

第5セット、3度目のデュースを迎えた選手たちは……(10月25日放送分、MBC公式総合チャンネルより)

同じMBCの人気バラエティ『私は一人で暮らす』(나 혼자 산다)では、即興の旅として紹介した企画の事前準備をめぐり、「演出」疑惑が続いています。

そんななか、作り込みのない勝負そのものが、視聴者の心をつかんでいるのでしょう。11月1日の次回は、キム・ヨンギョンの古巣・興国生命との対決です。残念ながら、日本での配信はシーズン1・2ともまだ発表されていません。

※視聴率はニールセンコリア調べ、全国基準

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(5)カルチャー韓国語:회전문 관객(フェジョンムン・クァンゲク)

直訳すると「回転ドアの観客」。同じミュージカルを何度も繰り返し観る観客のことです。劇場を回転ドアのように出入りする姿にたとえた言葉です。

韓国のミュージカルでは、1つの役を2〜3人の俳優が公演回ごとに交代で演じるのが一般的です。年末に開幕する『オペラ座の怪人』(오페라의 유령)も、怪人役を3人が交代で務めます。「今日はこの俳優、次はあの俳優」と、組み合わせを変えて何度も通うファンが少なくありません。

ちなみに、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』の主人公が苦手なのも回転ドア。日本版でエスカレーターに変わったのは、2004年の六本木ヒルズでの事故の後、日本では回転ドアがあまり見られなくなったためとみられます。一方、韓国ではオフィスビルやホテル、病院などで、今もよく見かけます。

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今日は以上です。前回ご紹介した映画のその後も少し。

映画振興委員会の集計では、ヨン・サンホ監督の『失楽園』は公開後初の週末(23〜25日)に約6万7千人を集めて3位、累計は約10万5千人です。海外上映権の先行販売だけで純制作費を回収済みで、監督は「仲間と部活動のように作った映画。年に一度は部活をしたい」と話しています。

映画『ちいかわ』は、28日まで15日連続で興行成績1位。累計は約234万人です。

韓国ドラマや韓国の今については、X(@misam34)でも日々つぶやいています。

それでは皆さま、また来週の金曜日に。アンニョンヒケセヨ。(Misa)

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