【デイリー・コリア・フォーカス】26年10月26日号 [朝鮮半島問題]:金正恩訪中のねらいは?韓国が南北軍事会談を提案 など

皆さま、アンニョンハセヨ。10月26日、月曜日です。朝鮮半島問題を扱う今号は、韓国から徐台教がお送りします。
AI時代に意味のある報道とはどんなものか、特に小規模組織はどこを目指すべきなのというのは、非常に悩ましいものがあります。この考えはずっと頭を離れません。
それでも「コリア・フォーカス」は<公論の場>と<アーカイブ>というコンセプトを持って、少しずつ態勢を整えていきます。やるべき事が多く気が遠くなりそうですが、今の時間が後々、実を結ぶと信じて進めます。
今日の内容は以下の通りです。
(1)金正恩氏が日帰り訪中、朝米首脳会談への関連は?
(2)韓国が軍事会談提案に、朝鮮は「自走砲」で返答
(3)朝鮮が非武装地帯に新たに96万発の地雷埋設か
(4)今日の時事韓国語「혈맹」
(1)金正恩氏が日帰り訪中、朝米首脳会談の関連は?
10月24日、朝鮮の金正恩国務委員長が訪中しました。
今月15日に開通したばかりの新鴨緑江大橋を車で渡り、中国・遼寧省の丹東市に到着した金正恩氏を、中国共産党序列4位の王滬寧(ワンフーニン)全国人民政治協商会議首席が出迎えました。
金正恩氏の訪中は2018年3月の初訪中から数え6度目、昨年9月以降、1年1か月ぶりでした。過去のいずれの訪中も列車や飛行機で行っており、車両を用いたのは初めてです。
25日、朝鮮の国営・朝鮮中央通信が報じた金氏の丹東訪問の詳細を伝える記事によると、金正恩氏は同市にある「抗美援朝記念館」を訪問しました。

24日、抗美援朝記念館を訪問した金正恩氏(中央)。壁の大きな写真は金日成と毛沢東だ。朝鮮中央通信より引用。
朝鮮戦争(1950年6月〜53年7月停戦)時に中国は朝鮮を助けるため人民義勇軍(人民志願軍)を派遣し、参戦しました。美は美国、つまり米国を指します。
この記念館は、写真や武器兵器など、戦争当時の多くの所蔵物を展示するだけでなく、米国に抵抗したという「朝中間の友誼」を支え、再生産する場所としても機能しています。
折しも25日は、抗美援朝記念日76周年でした。
同通信の記事によると金正恩氏は、記念館に献花すると共に、朝鮮と中国の「試練を共に乗り越えた立派な歴史を永遠に記憶し、永遠に固守し、血潮で結ばれた不敗の朝中友好を永遠にしっかり継承していく」と述べたとされます。
金正恩氏は他にも、市内にあるバス工場を見学しました。帰路では新鴨緑江大橋の上に立ち、「この橋が両国をつなぎ、われわれの心も一層しっかりつなぐ歴史的な使命を疑う余地もなく正確に果たす」と明らかにしたと、やはり同通信が伝えています。
さて、今回の訪中の目的はどこにあったのでしょうか。韓国メディアの関心は、朝米首脳会談実現との関連性を探る点に集中しています。
これは2018年5月、トランプ大統領(一期)との初の朝米首脳会談を控えた金正恩氏が大連市を訪問し、習近平首席と会談したことを想起してのものです。
これについて、韓国の国策シンクタンク・統一研究院の鄭恩伊(チョン・ウニ)北韓研究室長は26日に発表したレポートの中で、「両国・両党の核心的な外交ラインの参席は、習近平が北米(朝米)対話を仲裁する可能性を注目させる」と指摘しています。
実際に朝鮮中央通信が配信した写真には、金正恩氏と抱擁する中国の王毅外交部長や、朝鮮の崔善姫外相の姿があります。

新鴨緑江大橋(朝鮮では朝中鴨緑江橋)上で抱擁する金正恩氏と中国の王毅外交部長。朝鮮中央通信より引用。
レポートではさらに、「APEC前後のトランプ大統領のアジア歴訪期間に、北米首脳の会合を行うための事前準備の可能性」という見方を取り上げています。APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議は11月18日から19日にかけて、中国広東省の深圳市で開催されます。
朝米首脳会談の早期実現について懐疑的な見方を提示するメディアもありますが、今回の訪中は実現の「含み」を残すものと見ることができそうです。
一方で、鄭室長はレポートを通じ、今回の金正恩訪中により習近平氏が得る政治的な利益についても言及しています。
金正恩氏の訪中を伝える新華社通信の報道に、金氏が「第20期中央委員会第5回全体会議(5中全会)の成功的な開催を祈願した」とある点に注目するものです。
4期目の執権を目指す習氏にとって権力基盤を固めるために重要で、「北韓の最高指導者の支持発言を公式報道に含めたのは、(中国の)対内政治に活用する意図と読める」と見立てました。なお、同会は今日、北京で開幕しました。他方、朝鮮側は経済的な実利を得たとしました。
私は今回の金正恩氏の日帰り訪中を見ながら、18年5月26日に、文在寅・金正恩両氏が板門店の北側で行った日帰り会談をふと思い出しました。トランプ大統領による朝米会談キャンセルを前に、金正恩氏の提案で行われたものでした。
中国も韓国も、数時間で行ける距離です。あれから8年。韓国だけが足踏みを続けているように思えるのですが、気のせいでしょうか。
(2)韓国が軍事会談提案に、朝鮮は「自走砲」で返答か
継続してお伝えしている、軍事境界線を挟んだ南北間のやり取りは23日、大きな転機を迎えました。韓国国防部が朝鮮に対し、南北軍事当局会談を公式に提案したのです。
この提案は、▲軍事境界線の明確な位置を確認することと、▲南北間をつなぐホットラインの復元、▲そして偶発的な衝突を防ぐことを協議、という三つ内容を骨子としています。
その間の経緯や、韓国側の提案の全文訳は、23日にYahoo!ニュースに寄稿した記事の中にあります。リンクを貼り付けておきます。
この提案に対し、現時点(26日22時)まで朝鮮側は回答をしていません。昨年11月にも韓国軍は対話を提案していましたが、黙殺が続いています。
一方、朝鮮側は25日になって、軍事境界線付近に自走砲を配備する行動に出ました。
「北朝鮮が見えるスタバ」で話題になった金浦市・愛妓峰(エギボン)展望台の対岸、黄海北道・開豊郡に3門の自走砲が確認されたのです。聯合ニュースが写真付きで伝えました。
なお、この地域は非武装地帯ではありません。1953年の朝鮮戦争の停戦協定により、漢江(ハンガン)河口は民間用船舶に開放すると決められており、一般的には「中立区域」と称されるためです。
そうとはいえ、これ見よがしに自走砲を配備したのは驚きです。砲門も南側を向いています。
これについては、実戦用というよりも、一種のデモンストレーションとして受け止めるべきとする見方が、韓国メディアの大勢を占めています。実戦での運用時には、相手方への露出を避けるための遮蔽物が必要で、今回はそれがないためというのが根拠です。
ただ、会談提案に自走砲で返事したと見ることもでき、実際にそのような見だしで伝えるメディアもあります。各メディアとも、この写真や映像をこぞって使っています。私はまだ手元に新たなカメラ機材と届いていないので、撮りに行けません。
注目すべき動きは他にもありました。26日、国会では国防部の国政監査での出来事です。
この席で姜信哲(カン・シンチョル)国防部長官は、23日の軍事会談の提案について「(金正恩が)訪中する時点を予想し、こういう時に私たちが提案しなければならないという様々な戦略的な構想の下に行った」と明かしたのでした。

姜信哲国防部長官(前列左、赤いネクタイ)。国防部Xより引用。
自信満々の態度です。姜国防長官は今月21日、朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党総務部長と、朴正天(パク・ジョンチョン)国防省顧問が非武装地帯を訪問した背景にも、「韓国軍の措置」があったと主張しました。具体的な内容には言及しませんでした。
韓国の国防部は、長官が国会議員出身の安圭伯(アン・ギュベク)氏から陸軍大将出身の姜信哲氏に代わったことで、対応が早くなった印象があります。朝鮮側の対談への呼応に期待したいところです。
(3)朝鮮が非武装地帯に新たに96万発の地雷埋設か
2024年4月から国境要塞化作業を続ける朝鮮によって、非武装地帯に約96万発の地雷が新たに埋設されたと、23日、韓国国防部が国会に報告しました。
朝鮮戦争中に大量の地雷がばら撒かれたこの地域には、数十万から最大で200万発の地雷が埋設されているとされ、元より「世界最悪の地雷地帯」と呼ばれてきました。
この報告内容が事実ならば、朝鮮側はこの悪評を更新したことになります。韓国への切り離し措置を徹底する朝鮮側の姿勢がよく分かる出来事です。

コリア・フォーカス作成。
(4)今日の時事韓国語「혈맹」
「ヒョルメン」と読みます。漢字では「血盟」です。文字通り、血で結ばれた同盟を指す言葉です。
朝鮮半島の脈絡では、過去にこのコーナーでも取り上げた「한미동맹(ハンミトンメン、韓米同盟)」、つまり韓国と米国の同盟、そして今日のニュースレターで取り上げた朝鮮と中国の同盟に対し使われます。
韓国は米国と、朝鮮は中国とタッグを組み、朝鮮戦争で闘いました。血を流して闘った仲、ということです。
さらに、ロシアと朝鮮も血盟ではないかとする見方があります。24年6月の「包括的戦略パートナーシップ条約」の締結と、朝鮮人民軍のロシアへの派兵を経て、格上げになったとする見方です。
それほどまでに、朝鮮半島の分断と対立を規定する力は強いということです。この「血盟」という言葉からどんな印象を受けますか。
今日はここまでです。土曜日(31日)のホームページ公開に向けての準備が進んでいます。落ち着かない一週間になりそうですが、皆さまも良い一週間を過ごされますよう。
それではまた明日、お届けします。ありがとうございます。アンニョンヒケセヨ。(徐台教)
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