【デイリー・コリア・フォーカス】26年10月13日号[韓国AI事情・経済]:軍がAI化拠点を開設、CPTPP加入を再検討、不透明な米国投資など

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徐台教 2026.10.13
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皆さま、アンニョンハセヨ。今日は10月13日、火曜日です。昨日は日中、ソウルは気温が30度まで上がったのですが、今は薄手の長袖では肌寒い感じです。

激しい政治状況を指して「ダイナミックコリア」と自嘲するのは昨日今日の話ではありませんが、天気もずいぶんダイナミックです。

さて、遅くなりましたが今日は韓国AI・経済回です。苦手な分野ですが、欠かさず続けていきます。内容は以下の通りです。

(1)全南光州の半導体団地、崔泰源SK会長「できるだけ早く」
(2)韓国陸軍が京畿道に初の「AX拠点」を新設
(3)李在明大統領、「CPTPPを原点から再検討」と指示
(4)「採算性なし?」くすぶる米国への投資
(5)今日の時事韓国語「스펙」

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(1)全南光州の半導体団地、崔泰源SK会長「できるだけ早く」

今年6月末に韓国政府が発表した「3大メガプロジェクト」。▲半導体生産、▲AI(人工知能)ロボットなどのフィジカルAI、▲AIデータセンターという、三つの分野における産業計画です。政府はこれを韓国の「大跳躍」のためのプロジェクトとして位置付けています。

サムスン電子、SKハイニックスといった企業が200兆円以上を投資し、政府も土地やインフラを優先的に提供する超巨大プロジェクトです。李在明大統領の任期中に終わることはありませんが、順調に進む場合には、政権のレガシーとなることは間違いないでしょう。

その内の一つ、半導体生産分野に動きがありました。9日、SKハイニックスを含むSkグループの崔泰源(チェ・テウォン)会長が建設予定値の光州(クァンジュ)軍空港の一帯を訪れ、工事を急ぐ旨を明かしたのでした。

SKグループの崔泰源会長。最近では「日韓経済共同体」の主張でも知られる。SK提供。

SKグループの崔泰源会長。最近では「日韓経済共同体」の主張でも知られる。SK提供。

崔会長が同地を訪れるのは6月の計画発表以降、はじめてのことです。崔会長は「(政府の)用水と電力が遅れても(中略)先に入ってしまうと考えている」と積極的な姿勢を示しました。

こんな動きは、政府にとっても嬉しいものでしょう。一方で、韓国メディアは「中国企業の猛追に対する危機感もある」と報じています。同地には産業通商部長官も訪れるなど、急ぐ気運が高まっています。

同社は近く着工時期を明かすとのことですが、韓国メディアは「早ければ来年末に着工」と報じています。しかし、3大メガプロジェクトがもたらす環境破壊について市民団体は批判の声を高めており、衝突が予想されます。

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(2)韓国陸軍が京畿道に初の「AX拠点」を新設

韓国の国防部は12日、京畿道(キョンギド)・板橋(パンギョ)テクノバレー内に、「国防AX拠点」を開設し、開所式を行ったと明かしました。

「AX」というのは「AI Transformation」の略語です。「AI(人工知能)への転換」という名の通り、AIを用いて組織の運用を変えていくことを意味します。この場合は、韓国軍がAIを有効活用するということです。

プレスリリースによると、この日開設された拠点は「フィジカルAI技術に特化するもの」とのこと。

「フィジカルAI」というのは、現実の世界で実際に動くAIを指します。どういうことでしょうか。プレスリリースを読み進めると、こうあります。

「世界最高水準の国防フィジカルAIハブを目標に、フィジカルAIデータを収集し、これを活用したAIモデルをヒューマノイド、多足型ロボットなどに学習および実証する計画」といいます。

12日に行われた「陸軍AX拠点」開所式の様子。中央左が姜信哲(カン・シンチョル)国防部長官。国防部提供。

12日に行われた「陸軍AX拠点」開所式の様子。中央左が姜信哲(カン・シンチョル)国防部長官。国防部提供。

つまり、国防用のロボットに載せるAIの研究を、民間と共に進めるというものです。板橋地域は、IT企業の密集地としても有名です。国防部は今後、ソウル、大田(テジョン)、釜山(プサン)などに4つのAX拠点を作るとしています。

興味深いのは、いずれのAX拠点も大学が管理する点です。ソウル大学、高麗大学、KAISTなど、名門校揃いです。以前もお伝えしたように、韓国では国防・AI・大学が一緒になって動いているようです。

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(3)李在明大統領、「CPTPPを原点から再検討」と指示

「CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)」といえば、アジア太平洋地域において、貿易と投資の自由化と円滑化を進める協定です。日本を含む12か国が署名しています。

2016年に12か国が署名した「TPP協定(環太平洋パートナーシップ協定)」が元になっています。17年1月に米国が離脱して以降は、「自由貿易の旗手である我が国が(外務省)」、「日本がリーダーシップを発揮して(内閣官房)」交渉を進め残る国々をまとめています。

現在のCPTPP署名国は、日本、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナム、英国です。

その経済規模は、下図にあるように世界でも屈指の大きさとなっています。韓国もこれに加わる見通しとされていましたが、10月6日の国務会議(閣議)で、李在明大統領は「原点からふたたび対話を始めよ」と指示しました。

CPTPPの経済規模。外務省資料より。

CPTPPの経済規模。外務省資料より。

李大統領はCPTPPに乗り気とされ、年内に加入申請を行うと見られていました。こんな転換の背景には、農民の支持率への気遣いがあります。

実は韓国政府は今年5月から、農地の全数調査を進めていました。これは韓国政府樹立直後の1949年に行われた農地改革以降、70数年ぶりに行われるものです。

政府は憲法にもある「耕者有田」の原則や、農地投機の抑制を掲げこれを行っていますが、現場では農地取引の減少や、農地の借り貸しが止まるなどの混乱が生まれています。

つまり、政府が十分な対策を立てないまま全数調査に乗り出したことで、農民の一部に反感が生まれたことから、農業生産に減少をもたらすCPTPPへの加入を保留したということです。

中央日報の8日付の社説によると、CPTPPへの加入時、農業生産は今後15年のあいだ年平均7100億ウォン(約840億円)減少する一方で、製造業ではは年平均6兆3000億ウォン〜6兆7000億ウォン(約7400億円〜約7900億円)の生産誘発効果があるとしています。

李大統領は先述した国務会議の席で「時限を定めるよりも、真情性をもって農民・漁民の声を十分に聞こう」と関連部署に呼びかけました。韓国メディアでは「年内申請は難しい」と見ているようです。ハンギョレは「農民の信頼回復が先」と指摘しています。

一方、韓国日報では不動産政策などを例に、「(政策を)投げておいて、反発が出ると引っ込める。こんなアマチュア政府がどこにあるのか」と厳しく批判しています。この側面は否めないでしょう。

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(4)「採算性なし?」くすぶる米国への投資

時間は少しさかのぼりますが、9月30日(現地時間)、トランプ大統領は韓国の対米投資第一弾プロジェクトを発表しました。勝手に引き上げた関税を引き下げるための条件として、投資させるものです。

米国北西部のアラスカを北から南に貫通する、天然ガスを運ぶためのパイプライン建設です。長さは1300㎞で、投資額は540億ドル(約8兆5000億円)とされています。2029年にガスを供給し、2031年に輸出を始めるという計画です。

しかし、7日付の京郷新聞に登場した、アラスカの天然ガス管事業に30年関わってきたという専門家は「実現には至らないだろう」とプロジェクトの不確実性を指摘し、韓国政府に注意を促しています。

韓国政府は合計3500億ドルを投資するとしていますが、造船分野の1500億ドルを抜いた、残りの2000億ドルについても、発表がありました。10月1日に米韓で同時にファクトシート(説明資料)を発表しています。

今年7月、トルコ・アンカラでトランプ大統領と歓談する李在明大統領。11月の会合に向け、李大統領はゴルフの練習似励んでいるそう。青瓦台提供。

今年7月、トルコ・アンカラでトランプ大統領と歓談する李在明大統領。11月の会合に向け、李大統領はゴルフの練習似励んでいるそう。青瓦台提供。

韓国の産業通商部が明かしたものによると、テキサスのガス複合火力発電プロジェクトに223億ドル、原発8基建造に1200億ドル、そして先述したアラスカ天然ガスプロジェクトです。

ここでは、アラスカプロジェクトの価格は出ておらず、「同プロジェクトの検討に着手した」とだけ書かれています。

こんな混乱の背景には、中間選挙(11月3日)を前に、トランプ大統領が成果を焦っている点があると韓国紙は指摘しています。特に共和党が優勢なアラスカでは、民主党候補がリードしているとされ、激戦地となっています。

韓国政府も「国富」を大切にする姿勢を明確にし、タフな交渉を米国と続けています。このようなしぶとさがトランプ大統領にとっては嫌なものに映っているのかもしれません。昨日お伝えしたような、韓国政府への圧力の背景の一つと考えられます。

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(5)今日の時事韓国語「스펙」

「スペッ」と読みます。日本語では「スペック(spec)」です。英語のspecificationが元になっているもので、「性能、能力」と訳されます。

韓国では一般的に、「就職活動において自身の能力を証明する要素」のような使われ方をします。若者たちは海外留学や各種資格、ボランティア、インターン経験などの「スペック」を積み重ね、就職戦線を戦ってきました。

しかしAIの普及で、こうした風景も変わりつつあるようです。朝鮮日報は12日付の記事で、韓国の名だたる企業が共同で開催したハッカソンの様子を伝えました。学歴や年齢、スペックではなく、AI活用能力だけを競う大会です。

韓国の就活において今後、AI活用能力が他のスペックを圧倒する時代が来るのでしょうか。それならば人間は必要ないと思うのですが。

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今日はここまでです。冒頭でも述べたように慣れない内容ですが、朝鮮半島の現在と未来を読むためには、避けては通れない分野です。今後も勉強を続けていきます。

明日はYoutubeライブです。前回(先々週)に「18時は早すぎる」という意見をいただいたので、18時30分からスタートします。これでも早すぎるようでしたら、19時にします。

それではよろしくお願いいたします。今日もありがとうございました。アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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