【デイリー・コリア・フォーカス】26年10月12日号 [朝鮮半島問題]:米国・朝鮮・ウクライナと3重の軋轢、似通う南北、時事韓国語「한미동맹」

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徐台教 2026.10.12
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。今日は10月12日、月曜日です。今日は韓国から徐台教がお届けします。

「천고마비(チョンゴマビ)」という単語があります。「天高馬肥」と書くもので、文字通り「天高く馬肥ゆる」意を持ち、秋を修飾する代表的な韓国語です。ここ最近の美しい陽気を表現するにもってこいです。

今日お届けする内容のように、明るい話が全くない近ごろですが、空を見上げる時だけは憂鬱を忘れることができます。渡り鳥の姿からは、勇気さえもらいます。

という訳で、今日の目次は以下の通りです。

(1)韓米間に問題アリ?2人のキーパーソンの更迭を求める声
(2)地雷爆発めぐり南北が国連で舌戦
(3)ウクライナとの外交的摩擦は「百害あって一理なし」
(4)李大統領が「最新兵器」を誇示…似通う南北?
(5)今日の時事韓国語「한미동맹」

(1)韓米間に問題アリ?2人のキーパーソンの更迭を求める声

「鄭東泳と李鍾奭を交替させよ」。保守系日刊紙・東亜日報の10日付の社説です。

鄭東泳(チョン・ドンヨン、73)は南北関係を管理する政府部署・統一部の長官で、李鍾奭(イ・ジョンソク、68)は情報機関・国家情報院の長です。李在明政府の対北政策のツートップとも言うべき2人を更迭せよとは、いったいどういうことでしょうか。

背景には、北韓、つまり朝鮮、そして米国との関係があります。

南北軍事境界線(MDL)の南側地点で先月起きた地雷事故について、鄭長官は「まだ(北韓の)地雷攻撃として特定できない」と延べ、国防部や国連軍とは異なる見解を示しました。

さらに朝鮮側の(敵対的)二国家論を受け入れる主張を続けてきた点などが重なり、保守派から「北韓寄り」と集中攻撃を浴びています。

さらに今年3月、鄭長官は朝鮮のウラン濃縮施設の位置として「亀城(クソン)」地域を言及しました。

寧辺(ヨンビョン)と降仙(カンソン)と共に挙げたのですが、米国当局はこれを、韓国当局に非公開を前提に共有した情報が漏れたものと判断、韓国への機密情報の提供を一部中断したと報じられました。 

今月8日行われた合同参謀本部への国政監査で、合同参謀本部長は米国から送られるはずの「北韓の核関連情報」の一部が今なお制限されていることを明かしました。こうした点から鄭長官の更迭を求めているのです。

なお、地上波SBSは10日、「現在はミサイル分野のみ情報が提供されている」と報じています。

李鍾奭・国家情報院長(左)と鄭東泳・統一部長官。筆者作成。

李鍾奭・国家情報院長(左)と鄭東泳・統一部長官。筆者作成。

李鍾奭院長については、米国との足並みの乱れが原因としています。

やはり東亜日報によると、今年6月に米国で開かれた、朝鮮のサイバー攻撃に対応するための韓・日・米の実務会議において、韓国が排除されていたというのです。国情院はこれを認めています。

前述した鄭長官の発言の影響と見られていますが、李鍾奭院長の訪米や米情報機関への訪問が拒否されたという未確認情報が重なり(前者は国情院が否定)、こちらも責任問題に発展しているのです。

一方で、これは見慣れた構図でもあります。

鄭東泳、李鍾奭という二人の人物は、金大中(キム・デジュン、在任1998〜2003)、盧武鉉(ノ・ムヒョン、同2003〜2008)という進歩派政権において、対北政策の中心にいたベテランたちです。

当時は南北交流が最も盛んだった時期でもあり、核問題を追及するブッシュ政権との対立も度々顕在化しました。その度に、保守派は同じように猛攻撃を行っていたのです。

昨年6月の李在明政府の発足時、李鍾奭氏は外交安保分野の重職につくと見られていました。

当時、筆者のところにも「米政府から『反米』と見られ、軋轢の原因にならないか李鍾奭さんが悩んでいる」という声が聞こえてきました。

現在はその「リスク」が表面化していると見ることができるでしょう。

鄭東泳、李鍾奭の両氏は、南北関係の破綻を避けようとあの手この手で朝鮮側を対話に引っ張りだそうとしていますが、これは保守派にとって「親北」とレッテルを貼るのに絶好の形です。

米側としては、関税引き下げの対価としての対米投資をしぶる李在明政権へ圧力をかけようと、韓国の保守派を利用している側面もあります。現に、保守野党・国民の力は「韓米同盟は破綻直前だ」と騒いでいます。

韓国進歩派の宿命とも言える状況ですが、李大統領はどこまで耐えられるでしょうか。

***

(2)地雷爆発めぐり南北が国連で舌戦

次は南北関係を見ていきます。地雷事故をめぐり、国連で「直接対決」がありました。

韓国メディアによると、現地時間8日、国連総会の一般討議演説において、韓国のチャ・ジフン国連大使が北韓に対し「明らかな停戦協定の違反だ」とし、「謝罪と責任ある措置」を求めたのです。

これに対し、朝鮮側の代表(名前は不明)は発言権を要求した上で、反論に乗り出しました。

国連で発言する朝鮮側代表。KBSニュースより引用。

国連で発言する朝鮮側代表。KBSニュースより引用。

「正当な主権行使である南側の国境の要塞化を、軍事的な侵略とらく印を押す、不純な妨害のための策動だ」とし、「韓国の自作自演」という従来の主張を繰り返しました。

さらに前項で紹介した鄭東泳統一部長官の発言を引用し、「(朝鮮の)意図的な攻撃であると判断できない」とも述べています。

韓国側は再反論する中で南北韓の対話を呼びかけましたが、朝鮮側は韓国を「敵対国」と予備、これを拒否しました。

***

(3)ウクライナとの外交的摩擦は「百害あって一理なし」

韓国政府は、米国や朝鮮だけでなく、ウクライナとも外交的な軋轢を抱えています。ロシア領・クルスク戦線でウクライナ軍の捕虜になった朝鮮人民軍兵士を韓国に送還する過程で、非公開との約束をゼレンスキー大統領が反故にしたことによるものです。

大統領府は真相究明と謝罪を要求し、外交部は駐ウクライナ韓国大使を召還するという強硬手段まで検討しています。

一方、ウクライナ側は外交ルートを通じ、韓国側に謝罪の意を伝えているとされますが、韓国がロシアに軽油を提供した点を取り上げ、韓国政府を批判しています。

さらに、ウクライナ大統領室のキリロ・ブダノフ秘書室長が先月27日、ウクライナ現地メディアに対し、南北韓の緊張の高まりと衝突可能性を警告しましたが、これを李在明大統領が「韓半島での戦争勃発を企図する」と解釈(曲解でしょう)したことで、事態は泥沼化しています。

今年7月、トルコ・アンカラで首脳会談を行った際のゼレンスキー・ウクライナ大統領と李在明大統領。青瓦台提供。

今年7月、トルコ・アンカラで首脳会談を行った際のゼレンスキー・ウクライナ大統領と李在明大統領。青瓦台提供。

そしてこの枠組みが、Youtubeを通じ極端に煽られています。ウクライナは今や、韓国の進歩派にとっては「韓国を戦争に巻き込む悪魔」のように捉えられているのです。

実際にそうなのでしょうか。私はそうは思いません。強大なロシアに攻め込まれ、4年半にわたって耐えているウクライナ側にもう少し寄り添うことはできないのでしょうか。

ウクライナ政府は外交的な対話で事態を解決することを願うとしています。リベラル紙・ハンギョレが10日付の社説で指摘しているように、大使の本国召還は断交に次ぐ強い措置です。

戦争は今も続き、ウクライナは今後も朝鮮人民軍と交戦することでしょう。そのウクライナを敵とするような韓国政府の外交には、全く整合性がありません。保守紙・リベラル紙ともに厳しく疑問を呈しています。

私も韓国に住み、朝鮮半島問題を憂う人間の一人として、戦争に巻き込まれることを避けたい気持ちはよく分かります。だからこそ、ウクライナを通じ得られるものがたくさんあると考えるのが常識でしょう。李大統領が目を覚ますべきです。

***

(4)韓国政府が「最新兵器」を誇示…似通う南北?

「韓半島の戦場において、核心標的を打撃することができる新たな抑止手段」

今月8日、韓国の青瓦台(大統領府)が新型ミサイル実験に際し発表したコメントです。皆さんはこの「韓半島の戦場における核心標的」という単語から何を想像するでしょうか。そうです、金正恩氏です。

この日、韓国軍は国産極超音速ミサイル(HGV)の発射実験を成功させました。

マッハ5以上の高速で低空を飛びつつ、軌道も変更できるという迎撃の難しい最新鋭ミサイルです。地上波MBCは「米国と中国、ロシアだけが開発に成功した」としています。韓国軍にとって、初めての試験発射でした。

珍しかったのは、李在明大統領が直接、テストを見守っていた点です。李大統領は発射後、「最も高い水準の安全保障は平和であるが、その平和を守る力はやはり、強力な抑止力、国防力から生まれます」と述べました。

8日、玄武ー5ミサイルを視察する李在明大統領。青瓦台提供。

8日、玄武ー5ミサイルを視察する李在明大統領。青瓦台提供。

今回の実験は、多分に北側を意識したものでした。

朝鮮でも10月3日に同ミサイルの発射実験を行っています。そうでなくとも、朝鮮側の核兵器ならびに運搬手段(ミサイル)の高度化が伝えられる中、韓国社会の不安を払拭することが目的と言えるでしょう。

韓国政府は朝鮮とは異なり、ミサイル発射実験を公開することがほとんどありません。

金正恩氏を名指しこそしませんでしたが、「核心標的」という踏み込んだ表現からは、強い抑止力を誇示する韓国政府の意志が感じられました。

この日、李在明大統領は「玄武(ヒョンム)−5」ミサイルの視察も行いました。同ミサイルは巨大な弾頭を持つ弾道ミサイルで、朝鮮の核兵器に対抗する手段として開発され、昨年末から配備されているものです。

上記の写真を見ると、朝鮮が発表するものとよく似ています。ミサイルの側に立つ両首脳の姿は、朝鮮半島の現状をよく表していると言えるでしょう。悲しいものです。

***

(5)今日の時事韓国語「한미동맹」

「ハンミトンメン」と読みます。漢字では「韓米同盟」です。

誤解されがちですが、韓国の進歩派も保守派も、韓米同盟を韓国にとって最も重要なものとして位置付けています。その中で、自律性をどこまで追求するのかに差があるということです。

「進歩派は韓米同盟をないがしろにしている」という話は、素人の戯れ言でしかないので、無視するに限ります。

***

今日は以上です。

日本は休日のようですね。時には秋の空を見上げてみてください。

それではまた明日お届けします。いつもありがとうございます。アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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