【デイリー・コリア・フォーカス】26年10月20日号[韓国AI事情/経済]:マイノリティを排除するAI、韓国軍がAIで効率化、「AIメガネ」対策など

皆さま、アンニョンハセヨ。10月20日、火曜日です。遅くなりましたが昨日に続き、韓国から徐台教がお送りいたします。
今日は午後に、ホームページのリニューアルに関するミーティングがありました。枠組みが出来上がり、進捗はかなりの所まで来ています。
「公論の場」そして「アーカイブ」としてのコリア・フォーカスの存在を見据えたリニューアルになります。どうかご期待ください。
火曜日は「韓国AI事情・経済」です。内容は以下の通りです。
(1)韓国軍共通の「協業プラットフォーム」が始動、業務効率化へ
(2)「AIはマイノリティを排除する」という衝撃
(3)「AIの発展における格差を解消」李大統領が世銀総裁と会合
(4)入試シーズン迎え政府は「AIメガネ」対策
(5)IMFが韓国の「AI好況」の‘落とし穴’を指摘
(6)今日の時事韓国語「여당」
(1)韓国軍共通の「協業プラットフォーム」が始動、業務効率化へ
いったい、何のことやらというニュースです。私も同じ思いを抱いたので敢えて取り上げてみました。聯合ニュースなどが伝えたところによると、今月19日、韓国軍が全軍に共通する協業プラットフォームを使い始めたというものです。
協業プラットフォームというのは、仕事の進捗をチェックするためのプログラムです。業務チェック、新たな仕事の割り振り、結果確認など、これまで紙やメールでやってきたことを、仕事に関わる全ての人が参加し、確認できるようにするものです。ここ10数年、どの企業でも導入が進んでいます。
韓国では、プログラマーでもあった故盧武鉉(ノ・ムヒョン、在任03年2月〜08年2月)大統領が開発した、協業プラットフォームのはしりである「e-知園」が有名ですが、軍もついにこうした便利なツールを導入したことになります。

「これかは全軍がひとつのDooray!を」というバナー。国防部とNHNの連名で出されている。10月6日に公式オープンしたとある。NHN DOORAY提供。
システムを構築したのは、韓国屈指のIT企業・NHNです。記事によると、民間向けにサービスしていた「Dooray!」を、外部ネットワークと遮断された国防統合データセンター内に構築したとのことです。同社は今後、AIを用いた各種文書作成ツールなどもサービスしていくとしています。
聯合ニュースは記事のタイトルに「全軍30万人の協業プラットフォーム」と書いています。上記のバナーには「国防部・陸軍・海軍・空軍・国直部隊(国防部直轄部隊)」とあります。韓国軍は徴兵された人員を含め約45万人であるため、この中の約3分の2が同システムを使うことになります。
軍とAIの結びつきは日本でも話題だと思います。コリア・フォーカス本体でも今後、継続して追いかけていきます。
(2)「AIはマイノリティを排除する」という衝撃
韓国のリベラル紙・ハンギョレが「らしい」記事を書いています。19日付の「NVIDIA‘韓国人のデータ’の分類から障害者・性的マイノリティが除外…差別そだてるAI」というものです。
記事では以下のように書いています。
大規模な言語モデル(LLM)が多数の集団中心のデータを反復して学習しながら、障害者と性的マイノリティ、国外出生者など、社会的なマイノリティの存在を消してしまう、いわゆる「沈黙の設計」現象が実証的な研究として確認された。
悪意や嫌悪(ヘイト)としてではなく、人工知能(AI)が再現した仮想の現実において、実際の人口比率上、当然存在しなければならないマイノリティは、無限に繰り返される‘選択のアルゴリズム’を通じ排除され、摩耗し、姿を消した。
公共政策の研究および事業全般に人工知能の導入が本格化する中、人工知能のアルゴリズムが、社会的な不平等を固着化・深化させる可能性があるという黄信号が灯ったかたちだ。
「沈黙の設計」という言葉は初耳ですが、言われてみると悪い意味で納得の感があります。
こんな研究を行ったのはソウル大学保健大学院のキム・スンソプ教授の研究チームです。最近公開した論文の中で明かしました。
記事によると、NVIDIAは今年4月、満19歳以上の韓国人100万人の「合成ペルソナデータ」を構築しました。ペルソナ(仮面)という名の通り、韓国という国・社会を表面的に代表するデータです。
韓国語のデータを開発した理由は、英語よりもより正確なデータを学習するためです。
この際に、性別・年齢・結婚状態・兵役・家族形態・居住形態・教育水準・大学の専攻・職業・居住地域・居住国家のデータを取得したとしますが、ここに性的指向や性別のアイデンティティ、障害の有無が除外されているというのです。
さらに研究チームはLLM、つまり大量の文字データを学習するAIモデル自体に問題があるとしています。「マイノリティのアイデンティティを、支配的多数のアイデンティティに置き換えてしまう」というのです。
実際にペルソナデータのうち、ランダムで1万人分をmeta社のAIに入力した後で、「本人の性的指向を最もよく表現する用語は何か」と聞いた際に、1万人全員が「異性愛者」と答えたそうです。実際の人口では6%が性的マイノリティであるといいます。
同じように、障害者であるかを問う場合には、「はい」とした回答はゼロ、どの国で生まれたかを問う場合、全員が「韓国」と答えたとします。前者は590人が「はい」とすべきであり、後者は50人が「韓国以外で生まれた」とすべきでした。他のAIでも同様だったそうです。
記事の末尾で、キム教授はこう問いかけています。
「真に悩むべき地点は、人工知能が‘誰の問題’を解決しているのかだ。マイノリティの人生を沈黙させるアルゴリズムで作動する人工知能は、私たちの社会の不平等を深める可能性がある」
全く知らない事実であったため、記事をだいぶ引用してしまいました。AIがもたらす時代の片鱗が見えた気がします。
(3)「皆のためのAI」ビジョンに共感…世銀総裁が李大統領に明かす
韓国の李在明大統領は19日午前、青瓦台(大統領府)でアジェイ・バンガ世界銀行総裁と会談しました。同総裁は10月20日に韓国で開催される『グローバルAI・デジタルサミット』のため訪韓しているものです。
青瓦台の発表によると、この席で李大統領は、▲今回のサミットが、AIの恩恵がより多くの人に届く契機になることを期待する、▲各国がAIの恩恵だけでなく、副作用に対しても十分に考慮すること、▲AIの発展による国内格差および国家間の格差の解消のための共調(協力)が、より強化される必要がある、と述べたとのことです。

19日、アジェイ・バンガ世界銀行総裁(左)と会談した李在明大統領。青瓦台提供。
これを受けバンガ総裁は、韓国政府が掲げる「皆のためのAI(AI gor ALL)」や「グローバルAI基本社会の実現」といった政策に対し共感を表明したとのこと。
李大統領はまた、各国政府の最大の課題は「両極化の解消にある」と述べたそうです。
両極化というのはこの場合、貧富の格差や不平等が広がった状態を指します。これが緩和されてこそ持続的な成長が可能であるというのを、李大統領は一貫して主張してきました。なかなか現実は変わりませんが…。
(4)入試シーズン迎え政府は「AIメガネ」対策
受験シーズンを控えた韓国では、国を挙げて「AIメガネ(スマートAIグラス)」による不正行為の根絶に取り組んでいます。
各メディアによると、今月15日、教育部(文部科学省に相当)は各地の教育庁と大学に対し、関連した通達を出したとのこと。
しかし、具体的な対策がどんなものなのかは非公開となっています。先に手の内を見せないという念の入れようです。なかなかの緊張感です。

11月19日には、日本のセンター試験にあたる大学修学能力試験、通称「修能(スヌン)」が行われます。受験生を応援する教育部のバナー。同部Instagramより引用。
大学では既に、日常的にAIメガネを用いたカンニングが摘発されているとのこと。
しかし使ったことがないので、どうカンニングできるのかが分かりません。そこで調べてみました。
あるテック系のYoutube番組によると、メガネに登載されたカメラが問題を撮影し、スマホを経てふたたびメガネに正解が写しだされるまで、わずか3秒しかかからないそうです。通信社・ニューシスの記事が伝えています。驚きですね。AIが不公正を助長しないようにしなければなりません。
(5)IMF関係者が、韓国の「AI好況」の‘落とし穴’を指摘
世界的な半導体需要が経済を牽引する韓国。
国際通貨基金(IMF)は今月13日に発表した「世界経済見通し」の中で、2026年の韓国のGDP(実質国内総生産)の成長率を3.3%に引き上げています。これは7月の見通しから0.7Pの上方修正で、韓国内で大きく報じられました。
一方でそのIMFは今月18日に出した「2026年10月世界経済展望」の中で、韓国の潜在成長率を2025年の1.94%から、今年は2.14%、来年2027年は2.20%と展望しました。

3.3%成長見通しという、IMFの展望を伝える韓国・財政経済部のバナー。同部より引用。
潜在成長率とは、労働力や資本、生産性などから算出される基本的な成長見通しです。これを伝えた経済紙・毎日経済によると、韓国の同成長率が2年連続で上昇する場合、40年ぶりの出来事となるそうです。
同紙は他方、今月15日に行われたIMFと世界銀行の年次総会の席における、IMFアジア太平洋局のソナリ・ジャインチャンドラ副局長による、「韓国はAI上昇サイクルにおいて、他国よりも遥かに大きな恩恵を受けている」という発言を取り上げています。
その分、「AI景気が反転する場合の衝撃」が大きいということです。確かにAI景気はどこかで落ち着きを取り戻すことになるでしょう。その時に備え、潜在成長力に投資すべきという声を、同紙は紹介しています。
(6)今日の時事韓国語「여당」
「ヨダン」と読みます。漢字では「与党」です。
韓国の与党・共に民主党は今、四方八方から放たれる矢で青息吐息となっています。自ら招いた事態ですが、これにより支持率も野党に逆転されました。
どういった内容なのかは、明日19時からのYoutubeライブでお伝えします。
今日はここまでです。欲張って5つの話を入れましたが、いずれも興味深い内容ではなかったでしょうか。
前述したように、明日は19時からYoutubeライブを行います。よろしくお願いいたします。ニュースレターは月曜日分(朝鮮半島問題)をお送りします。
それではまた明日。今日もありがとうございました。アンニョンヒケセヨ。(徐台教)
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