【デイリー・コリア・フォーカス】26年7月14日号

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徐台教 2026.07.14
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

今日は7月14日、火曜日です。昨日のニュースレターは目次が「7月10日」となっていました。送り直そうかとも思いましたが、逆にややこしくなってしまうかもと考え、そのままにしました。

「朝鮮への情報流入をどう捉えるべきか」という昨日のニュースレターの内容について、考え続けています。

番組ではある韓国や米国の専門家が「北韓住民のニーズに合った情報が何かを調べて送るべき。例えば『どうやれば農業の収穫が増えるか』や『医療の情報』などがあるのでは」という旨を語っていました。

これも一理ある意見です。すべての情報流入を「非」とすることが果たして、人道的に正しいことなのかも含め、もっと活発に議論が行われるべきでしょう。

南北の共存が実は、朝鮮の住民の犠牲の上に成り立っているという構図から、目を背ける訳にはいきません。

今日の目次です。

1. 原発追加建設を含む政府の「三大メガプロジェクト」、市民団体は‘開発暴走’と批判
2. 今日の時事韓国語「탈북」

***

1. 原発追加建設を含む政府の「三大メガプロジェクト」、市民団体は‘開発暴走’と批判

ニュースレターで何度かご紹介した、李在明政府による三大メガプロジェクト。AI(人工知能)に関するもので、半導体・フィジカルAI・AIデータセンターといった施設を韓国各地に建設するという、数十兆円規模の大きな開発計画です。

サムスン電子、SKハイニックスといった巨大企業が投資し、政府が水や電気、土地といったインフラ面で全面支援を行う青写真です。

李在明大統領が6月にぶち上げたもので、政府は前のめりな姿勢でこれを進めようとしています。特に重大な財政について、李大統領は13日に青瓦台(大統領府)で開催した「2026国家財政戦略会議」で改めて、旺盛な投資意欲を明かしました。

この日はまた、企画予算処長官、副総理兼科学技術情報通信部長官、産業通商部長官、気候エネルギー環境部長官が順に発言し、来年以降の政府の計画を説明しました。

李在明政府の現状認識は、朴洪根(パク・ホングン)企画予算処長官の「人工知能・産業の大転換など、構造的な転換期に国家の命運を決定づける『ゴールデンタイム』を逃がさないように、大胆な投資が必要な地点」という発言に表れています。

韓国という国が今後も発展していくためには、この機会を逃してはならないという、なりふり構わぬ姿勢が感じられます。

13日に開催された「2026 国家財政戦略会議」の様子。中央が李在明大統領。青瓦台提供。

13日に開催された「2026 国家財政戦略会議」の様子。中央が李在明大統領。青瓦台提供。

***

余談ですが、日本では政治家がなかなかこういった雰囲気の発言はしませんよね。韓国はどの大統領もこのような、良く言えば「ハッパをかける」、悪く言えば「国民を脅迫するような」発言をします。

「脅迫」というと「そう受け取るのか?」と驚かれるかもしれません。

しかし保守派であろうが、進歩派であろうが大統領はとにかくこのように「危機」を演出するのです。それは結局、政府への応援、後押しを求める無言の圧力として作用すると、私は受け止めているのです。

私はとにかく、朴槿惠さんであろうが、文在寅さんであろうが、はたまた李在明さんであろうが、この論法が大の苦手でして「ハイハイ、また始まった」とげんなりしてしまうのです。国家権力に何かを強制されるのが、とにかく嫌なのです。まさに余談でした。

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政府の話に戻ります。投資と言いますが、その基盤となる財源は「超過税収」です。

14日付の京郷新聞によると、韓国政府は来年の税収を500兆ウォン(約54兆円)と見ているようで、この中の85兆ウォン(約9兆2千億円)が超過分となります。好調な半導体関連企業などが牽引するものです。

これに加え、予算を一から見直し、50兆ウォンを捻出し、投資に充てる計画とのことです。来年の予算は今年の約728兆ウォン(約79兆円)から、10%以上増える800兆ウォン(約87兆円)プラスアルファになると朴洪根長官は明かしています。

政府の積極性は、原発にも表れています。今年1月26日、韓国政府は原発2基の新設を決め、さらに小型モジュール原子炉(SMR)も新設する計画を決めています。この日、気候エネルギー環境部長官は、さらに原発を増設することを正式に明かしました。

半導体工場やAIデータセンターの稼働には、膨大かつ安定した電力が欠かせません。再生エネルギーでは安定性に問題があるということで、原発という選択になるようです。なお、政府は一貫してこう説明しますが、専門家の中には「そうではない」と主張する声もあります。

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まさに一気呵成とも言える政府の勢いですが、市民団体はこの動きに「待った」をかけています。政府が「2026国家財政戦略会議」を開いた同じ13日、136の市民団体が連名で記者会見を開きました。

「開発暴走を止めよ!」と銘打った会見では、政府の「三大メガプロジェクト」を「開発暴走」と規定し、これを全面的に再検討することを求めました。

136の団体には、参与連帯や環境運動連合、緑色連合、民主労総、人権運動サランバンなど、韓国の著名団体が多く含まれています。軽視すべき声明ではありません。

環境運動連合のHPにある記事を参考にすると、政府の「三大メガプロジェクト」は、「莫大な国家財政と電力、用水を投入しながらも、生態的な限界と気候危機への対応を全く考慮していない」とのこと。

さらに、「核発電(原子力発電)と、SMR、LNG・石炭発電までを総動員し、国家の温室ガス減縮目標を無力化し、長距離にわたる送電・変電施設の建設により、社会的な葛藤(対立)をより育てることになる」とし、「労働権と労働の安全、農業と農民の生活、地域均衡発展の価値、ひいては民主主義と公共性まで毀損する憂慮が大きい」とまとめています。

13日、記者会見を行う市民団体の代表者たち。環境運動連合のHPより引用。

13日、記者会見を行う市民団体の代表者たち。環境運動連合のHPより引用。

ここでのキーワードは「社会的な熟議」です。記者会見に参加した、韓国一の政策提言(アドボカシー)団体である参与連帯(PSPD)のイ・ジヒョン事務処長はこう述べています。

「国家戦略は私たちの社会の未来を決める選択であるからこそ、より多くの民主主義が必要であるが、三大メガプロジェクトは市民社会と地域住民の参加、十分な情報公開と社会的な熟議が無いまま、速度戦で推進されている。(中略)これは大統領が約束した参与民主主義と熟議公論という原則と正面から対峙するものだ」

この指摘にあるように、開発プロジェクトは政府が一手に決めています。さらにその推進も、とにかく速度を重視せよという李大統領の指示(命令)を遵守する形で行われるでしょう。

イ事務処長はこう続けます。

「国家の財政と電力網・用水・財政の優遇を特定の大企業に集中させながら、投資の危険は国民が抱きかかえ、成果と超過利益は企業が独占する構造は、国家戦略ではなく財閥に特別な恩恵を与える政策だ。超過利益の社会的な還元と、地域相生基金、良質な雇用創出など、企業の公共的な責務を制度化し、市民社会と地域社会が共に決定する民主的な手続きの上で、事業を再設計すべきだ」

政府が「時間がない。今がゴールデンタイムだ」と強調する中、市民社会の声はのんきなものとして受け止められるかもしれません。しかし、原則なき開発が行われ、社会や環境に被害が出る場合、誰がどう責任を取るのでしょうか。妥当な指摘と言わざるを得ません。

こうした指摘を前に、政府は今後どのような対応を取るのでしょうか。注目して見て行きたいものです。

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2. 今日の時事韓国語「탈북」

「タルブッ」と読みます。漢字では「脱北」です。

今日7月14日は、「北韓離脱住民の日」です。

今は「失郷民(실향민、シリャンミン)」とも呼ばれますが、いわゆる「脱北民」と呼ばれる人たちの日です。尹錫悦政権の2024年に制定されました。

この日を迎え、京郷新聞がここ数年、韓国入りした脱北民の統計を分析しています。結論としては、陸路を経る中国経由での脱北は、非常に困難になったというものです。

記事によると、朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)が朝中国境の封鎖を解除した2023年9月から2025年12月まで、中国との国境を越えて韓国入りした脱北民の数は5人以内。

同じ時期に、南北の軍事境界線(MDL)という陸路や、海路を通じ脱北した10人よりも少ないというのです。

一方、朝鮮が新型コロナを理由に国境を封鎖していた2020年1月から2023年8月までの間、脱北し韓国に入国した者の数は100人余り。

国境封鎖を解除した2023年9月から2025年12月までは40人内外ということです。

ややこしいですが、いずれも該当する時期に朝鮮を離れ、韓国に入国した朝鮮住民の数です。

記事では、この中の相当数が、中国やロシアへの正式なビザを持って出国し、その後、韓国大使館に亡命の意思を明かす海外派遣労働者であるとしています。

なお、一般的な「脱北民」の数はこれよりも多いです。2023年には196人、2024年には236人、2025年には223人でした。

上記のケース以外の脱北民は、中国などで長期滞在後に韓国入りした者たちであると記事では説明しています。(下記は記事のリンクです)

記事では、陸路での脱北が困難な理由について、中国との国境の警戒を朝鮮側が強めている点が根本原因としてあるとしながら、監視カメラによる顔認証を利用した中国側のシステムも、脱北からの移動を難しくする要因であるとしています。

同紙はその上で、「脱北は事実上不可能」と表現しています。昨日紹介した報道番組にも通じる話です。

***

今日はここまでです。

最近は自分の取材があまりできておらず、とてももどかしい日々が続いています。

7月末にクラウドファンディングが終わった後からは、がらりとスタイルを変えていきます。近日中に、どういった形にするのかを説明いたします。

韓国北部は、明日まで豪雨と強風です。今もとんでもない勢いで雨が降っています。

また、母はぶじ退院いたしました。何度か病院に通わなければならず、回復まではもう少しといったところです。

それではまた明日、お送りいたします。

ありがとうございます。アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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