【デイリー・コリア・フォーカス】26年11月3日号 [韓国AI事情/経済]:日韓経済共同体の可能性
皆さま、アンニョンハセヨ。11月3日、火曜日です。今日も韓国から徐台教がお送りいたします。
皆さんは「日韓経済共同体」という単語に触れたことがありますか。近ごろ、日本と韓国の一部でホットなテーマです。
漢字を見るとだいたい分かるものですが、具体的にはどんな話なのでしょうか。
事実上、この概念の発案者であると同時に、誰よりも熱心に提唱している韓国財界2位、SKグループの崔泰源(チェ・テウォン、65)会長の一連の発言から見ていきましょう。

SKグループの崔泰源会長(中央)。11月3日、筆者撮影。
特に、今年9月に朝日新聞に対し語った内容と、同10月に韓国の月刊誌・月刊朝鮮に語った内容は参考になります。
その骨子は、▲韓日が結びつくと約6兆ドル(GDP)、世界4位の経済圏となる上に市場規模が広がり、さらに国際社会で交渉力と発言権が生まれる、▲主要インフラやサービス、安全保障などを共同で行うことによりコストを軽減できる、となります。
いずれのインタビューでも、具体的な協力のスタート地点として、政府レベルでエネルギー調達を共同化することによる、コスト削減を挙げています。10%は減らすことができるというのです。
さらに、両国の人々の往来を今よりも自由化(簡素化)する点や、医療システムの統一などが挙げられています。
他方、民間レベルでは、両国の大学間で単位を共有することや、両国をひとくくりにする観光のパッケージングといったアイディアが提案されていました。
このように、崔氏は長年あたためてきたアイディアを最近とみに強調し、実現に向け動いているのです。
韓国は過去、「輸出中心、重化学工業、世界進出」といった日本の経済モデルを踏襲し成長してきましたが、これからの世界は予測不可能であるという認識から、新たなアイディアとして韓日の経済共同体構想が具体化している形のようです。
むろん、まだ市民権を得ている概念ではありません。それでも激変する国際情勢に対し、韓国と日本が手を結んで対応していくという未来は、経済界を中心に説得力を持って受け止められているようです。
半導体を生産するSKハイニックスの歴史的好景気(26年第三四半期の営業利益は約9.8兆円)にも支えられているでしょう。崔氏は今や、韓国財界の「顔」として大きな存在感を持っています。
そして今日、ソウルでこれに関する大きなイベントがありました。
「2026 未来経済フォーラム」というもので、韓国の通信社・聯合ニュースが主催し、日本の共同通信、韓国の産業通商部、大韓商工会議所が後援し開催されたものです。
3年目となるフォーラムで、今年のテーマは「分節化するグローバル経済、一つにつなぐ韓日の市場」と、ずばり日韓の経済的な結びつきの強化に焦点を合わせたものでした。
経済分野での取材をふだん余り行わない私も出席しました。あちこちで見かける崔氏の「日韓経済共同体」という主張が、具体的にどこまで進んでいるのかを知りたかったためです。
結論としては、まだスタート段階という印象でした。ですが、フォーラムを通じ、いくつか重要な内容に触れることができました。
まず、崔泰源会長の発言からです。三つ、興味深い内容がありました。
一つ目は「日韓両国の国会が日韓経済連帯の実現を超党的に支えてほしい」というものでした。実際にこの日、韓日議員連盟会長のチュ・ホヨン議員(国民の力)と、日韓議員連盟会長の武田良太議員(自民党)が登壇し、それぞれ共同体の必要性を訴えました。
二つ目は、その中身です。先述したように日韓のGDPを合わせると6兆ドルになりますが、崔氏は「最低でも1兆ドル以上のシナジー効果が生まれるべき」と明かしました。
AI、半導体、共通コストの削減、少子高齢化などの社会問題への効果的な(共同の)アプローチから、その価値を作り出すという話でした。
三つ目は、プラットフォームを作るというものでした。韓日がどのように協力しているのかが分かる、「経済連帯専用のデジタルプラットフォームを構築している」と明かしました。
重複した協力などを防ぐ役割も果たすというものでした。これが完成する場合、より日韓経済共同体の輪郭は、よりクリアになるでしょう。
この日が11月3日だったこともあり、崔氏は「1足す1を2でなく、3にしていく日だ」と述べ、スピーチを終えました。

フォーラムの登壇者たち。3日、筆者撮影。
他方、先の朝日新聞の記事で、崔泰源会長は日韓経済共同体を実現する上の障害物として、制度の違いや政治的な反感を挙げていました。
また、同紙のインタビュアーは2019年に当時の安倍政権が行ったいわゆる「輸出規制」について聞いていますが、崔氏は「過去の話」であり、「報復し合っても誰の得にもならないという教訓は得られた」と大人の対応で乗り越えています。
今日のフォーラムでも、崔氏は「政治的なアップダウンは繰り返されるだろう」と見通していました。
特に歴史問題は、日韓経済共同体に向かう上でネックとなるでしょう。
この点、韓国・聖公会大学の梁起豪(ヤン・ギホ)名誉教授が今日、日韓の歴史問題の重要性に言及しながら、「1998年の金大中・小渕パートナーシップに立ち返るべき」と主張した部分には、ハッとするものがありました。
特に、「立ち返る」という表現が新鮮でした。なぜか。これは個人的な考えですが、自民党政権や日本社会には既に、韓国と新しい枠組みを作る力が無いからです。
1998年という日本社会がまだ過去を振り返ることができた、いわば「歴史認識のピーク時」に戻るという概念の方が、現実的だと思うのです。
それでも、休憩時間に言葉を交わした梁教授は、今回の共同体構想について「新しい取組で価値がある」と強調していました。
他にも今日は、印象的な発表内容がありました。韓国のユニコーン企業「リートン」を率いるイ・セヨン代表(30歳)によるもので、今後の韓日共同体の一翼は、ユニコーン企業が担っていくというものでした。
これは、既存の日韓企業には存在しなかった、新しいビジネス的な融合が生まれるということで、日韓経済共同体という新たな器に見合ったビジョンだと思いました。
日韓経済共同体はこれからも、論じられ、試され続けていくでしょう。簡単についていけるテーマではなさそうですが、今後、コリア・フォーカスとして追っていく価値は十分にありそうです。
今日はここまでです。
明日(11月4日)は、午後7時から恒例のYoutubeライブを行います。外部での講演を終えてからと、バタバタの一日になりますが、オンラインでお目にかかります。
それでは、アンニョンヒケセヨ。ありがとうございます。(徐台教)
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