最大野党代表の李在明氏、釜山で暴漢に襲撃され入院
●頸静脈の60%が損傷
韓国で最大野党代表に対する政治テロ事件が起き、社会に衝撃を与えている。
2日午前10時半頃、韓国南東部の釜山(プサン)市で共に民主党の李在明(イ・ジェミョン、60)代表が暴漢に襲われ負傷した。
襲撃の一部始終は、同党のサポーターによるYouTubeの生中継映像が捉えていた。
これによると、加徳島(カドクト)新空港建設予定地を見下ろす大項(テハン)展望台から戻り記者団の囲み取材を受けていた李代表に、支持者を装った男性がサインを求め近づくや否や右手に隠し持っていた凶器で首を突いた。まさにひと突き、といった迷いのない行動だった。
李代表は倒れ、男性はすぐに取り押さえられた。周囲では叫び声が上がり、出血した李代表の首にハンカチが押し当てられすぐに救急車が呼ばれた。
襲撃される李在明代表(赤丸)。YouTube「パルンソリTV」よりキャプチャ。
しかし現場は釜山市内から離れた場所であったため、救急車の到着までは23分がかかった。釜山大学病院に運び込まれた李代表は、応急措置を受け、午後1時にソウル市内のソウル大病院へとヘリで移送された。その後、2時間にわたって血栓を取り除くと共に血管を修復する手術を受け、今は重症患者用の病室に入院中とのことだ。
負傷の程度については、襲撃当初から「意識不明」や「傷が深い」などいった噂が出回ったが、首筋に1.5センチの裂傷で、李代表の意識は一貫して明瞭だった模様だ。しかし内頸静脈の60%が損傷しており、場合によっては大量出血の可能性もあったという。
韓国の通信社『聯合ニュース』では釜山大病院の関係者の「損傷部位が頸静脈だったのが不幸中の幸いだった。万一、頸動脈が損傷していたら救急車が到着した時間(23分)を考慮したとき、現場で死亡していたはずだ」というコメントを伝えている。凶器は包丁のようなものだが、刺さらずにかすめたことで、一命を取り留めたと言えそうだ。
●政界も反応「厳正な捜査を」
最大野党代表であり、昨年の大統領選で1600万票あまりを集め僅差の2位となった大物政治家が白昼堂々襲われたことに対し、政界もすぐに反応した。
大統領室は「起きてはならないことが起きた」、「最善を尽くし李代表の移送と治療を支援せよ」という尹錫悦大統領のコメントを伝えた。
また、与党の韓東勲(ハン・ドンフン、50)非常対策委員長(実質的な代表)も「この社会で絶対に、絶対に起きてはならないこと。李代表の早期回復を心より祈る」とし、「捜査当局は厳正で迅速に捜査し顛末を明かし、責任ある者に重い責任を課すべき」と述べた。
さらに共に民主党の幹部たちからは、「一点の疑惑もないよう、捜査を通じ事件の真相を明々白々に明かすことを強く求める」という声が出ている。
やや横道に逸れるが、いくらひどい事件でも元検察幹部で最近まで法務部長官だった者(韓東勲氏)が「重い責任」などと言うのはどうかと思う。
韓国の警察や検察、さらに政治家は何が重大な事件が起こる際にやたら「厳正に捜査」や「厳断に処す」と言う。
「一罰百戒」のような使い方なのだろうが、事件によって捜査の強度を変えている訳でもあるまいし、通常通りに捜査すればよいと考えてしまうのは余りにもうがった見方だろうか。
共に民主党のコメントと合わせ、法の執行における恣意性への疑問が今なお韓国社会に存在することの裏返しとも言えそうだ。なお、今回設置された捜査本部は68人体制だという。
●犯行の動機は分からず
一方で現場で検挙され、殺人未遂容疑で取り調べを受けている犯人について分かっていることは多くない。