選挙用?「空売り禁止」の読み方、李俊錫の評価に陰り?、銀行員の給料が1億ウォン超えなど全7トピック|第13号
(11月7日)サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。
ニュースレター第13号をお届けいたします。今号も日をまたいでしまいましたが、韓国社会・韓国政治をテーマにお届けします。
韓国社会はもうすっかり「政治の季節」です。経済問題も社会問題も、あらゆる話題が来年4月の総選挙へと吸い込まれていきます。メディアにとっても稼ぎ時です。熱く煽るような記事が徐々に増えていくでしょう。
今号の目次は以下の通りです。ごゆっくりお読みください。
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韓国社会(1):選挙用?「空売り全面禁止」の読み方
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韓国社会(2):与党が打ち上げた「金浦市のソウル編入案」に世論は冷ややか
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韓国政治(1):与党発?第二の李俊錫ブームも徐々に下がる期待値
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韓国政治(2):進む正義党の分裂、選挙は「ビッグテント」で
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ショートニュース:「短髪なのでフェミニスト」20代男性がコンビニ女性店員に暴行/セウォル号の裁判は海洋警察庁長の無罪で決着/メガバンクの平均給与が1億ウォンを突破、高まる庶民の不満
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あとがきに代えて:リクエストをください
◎韓国社会(1):選挙用?上場株「空売り禁止」の読み方
韓国政府が日曜日の5日、翌日から全ての国内上場株式市場で「空売り」を禁止すると決定し、これを発表しました。期限は来年6月末までです。
「空売り」とは一般的な株式取引の一形態です。
例えば、現在100円の株式を10株を証券会社に借りて売り1000円を得ます。そして後で50円になった時に10株を500円で買い証券会社に株を返します。そうすると500円の利益になるという形です。
今回の措置をまとめた韓国金融委員会(FSC)によると、直接的な理由は外国系の投資銀行による「違法な空売り」を防ぎ、「国内投資家を保護するため」とのことです。
また、金周顕(キム・ジュヒョン)金融委員長は韓国の株式市場を「割れたガラスが多い道でなく、すべてのガラスが割れていると言えるほど違法が普遍化している場だ」とも述べるなど、市場に問題があるという認識を示しました。
5日、空売り禁止政策を発表する金周顕(キム・ジュヒョン)金融委員長。金融委員会提供。
しかし韓国内ではこんな理由を「後付け」と批判する声が圧倒的に多いのが事実です。どんな内容なのでしょうか。経済紙の社説を見てみましょう。
韓国最大の経済紙『毎日経済』は6日付けの社説で、「違法な空売りを根絶やしにするため」という金融委員会の主張を「苦しい弁明」と指摘しました。
さらに「先進市場では空売り禁止は株価が非正常に急落する場合に発動するもの」と定義すると共に、「結局は株価の下落を空売りのせいにする個人投資家の不満に便乗し、総選挙で票を得ようとする与党のたくらみに金融委員会が屈服したのではないかと疑う」と切って捨てました。
そうです。なんとここで選挙が登場するのです。
何度もニュースレターで言及してきたように、来年4月10月に国会議員300議席を総入れ替えする総選挙が行われます。韓国で「アリ投資家」と呼ばれる個人投資家の数は1000万人とされます。
機関投資家に有利な空売りを禁止することで、株価下落の直撃を受ける個人投資家を保護し、票につなげようという目論見だという指摘です。
二大経済紙の一つ『韓国経済』も同様の見方を示しています。
やはり6日付けの社説で、政府が掲げた零細企業や小規模自営業者に対する4兆ウォン(約4400億円)の緊急融資と合わせ「ポピュリズム色の濃い政策」とし、「市場の信頼と原則を深刻に損ね社会的資源の浪費を招く」と厳しく批判しています。
そしてその背景に「江西(カンソ)区長補欠選挙の敗北以降の、雰囲気を反転させようとしている」点があると見透かしています。
ソウルの西端・江西区では10月11日に補欠選挙が行われ、17.15%という大差で最大野党・共に民主党候補が当選しました。やはりニュースレターで追ってきましたよね。
さらに続々と発表される世論調査では、与党が劣勢に立たされていることは明らかです。このことから、空売り禁止が「選挙用」であると見られているのです。
また、スクープというべき写真も話題になっています。
発表の2日前の11月3日に、与党・国民の力の議員が携帯電話で「金浦の次には空売りで注目を集めるつもりだ」とメッセージを送っているシーンが国会で撮影されたのです。
「金浦(キンポ)」というのは、ソウル市に隣接する金浦市をソウル市へと編入しようという与党の政策です。この写真が示すように、政治的な意図の下に政権と与党が空売り禁止を押し出すことは、既に噂されていました。
「金浦の次には空売りで注目を集めるつもりだ」というメッセージ。ニューシスより引用。
発表からひと晩明けた6日の株式市場は、KOSPI(韓国総合株価指数)が5.66%、新興株式市場のKOSDAQでは7.34%の上昇となりました。韓国メディアは「暴騰」と表現しています。
この理由についてやはり韓国メディアはこぞって「空売り全面禁止措置の影響」と見立てています。
空売りが禁止されたため、投資家は返済するための株を買わなければならず、そのために株価が上昇したというものです。
実は韓国で「空売り」が禁止されたのは四度目です。
一度目は08年のいわゆるリーマン・ショック時に8か月間、二度目は11年の欧州債務危機の際に3か月間、そして20年新型コロナが拡散した際に14か月続きました。
いずれも株式市場の暴落を防ぐために行われました。当時は「国際的な金融システムの危機だった」(経済紙)といいます。
しかし空売り禁止は、証券市場を後押ししないという評価を韓国メディアの多くで下しています。
08年にKOSPI指数はマイナス1.7%(3%とも)、11年には5.6%の上昇、新型コロナの際には空売り禁止期間の間に80%上昇しましたが、空売り再開後に27%が下落したそうです。これは量的緩和の影響と見る向きが強いです。
こうした過去の履歴から「中長期的に見て空売り禁止が株価上昇に必ずしもつながる訳ではない」(SBS)としています。
7日のKOSPI指数と一週間のチャート。韓国証券取引所より。
今後の見通しについては、今はまだ分かりません。予定通り来年の6月末まで続けるのかも不透明です。
しかしながら既に、韓国の金融市場は信頼を大きく損ねたと見る他にないでしょう。
前出の『毎日経済』の社説では尹錫悦政権が進める『MSCI(モーガンスタンレーキャピタルインターナショナル)先進指数』への編入も困難になる他にない」と言及しています。
理由は「市場のパニックも存在しないのに空売りを禁止するほど後進的な市場を、先進指数に編入させる可能性は万に一も無いから」と厳しいものです。なお韓国政府は今年4月まで、同指数への編入を目的に掲げていました。
同紙はその上で「空売りを全面的に認めながら金融機関の内部統制システムを改善し処罰規定を強める、親市場的な解決策が優先されるべき」と強調しています。
一方、政府は強気な姿勢を崩していません。
7日には国会に出席した財政トップの秋慶鎬(チュ・ギョンホ)企画財政部長官(兼副総理)が今回の決定に対し「必要な措置」であると述べ、「うまい政策だと思うか」という野党議員の質問に「今はそう判断している」と答えました。
政府は来年6月までの禁止期間中にシステム的な対策を立てるとしています。
まるで現時点では何も考えていないような印象ですが、今回の決定の背景が完全に明らかになるにはもう少し時間がかかるでしょう。
空売り禁止から二日目となった7日のKOSPI指数は一転して2.3%の下落となりました。『聯合ニュース』では「空売り禁止の効果は既に反映された」という識者のコメントを紹介しています。政府はどう着地させるつもりでしょうか。
◎韓国社会(2):与党が打ち上げた「金浦市のソウル編入案」に世論は冷ややか
先月30日に与党・国民の力がぶち上げた金浦(キンポ)市をソウル市へと編入させるという案ですが、今なおトップイシューの一つとなっています。
私自身、金浦に住んでいることもあり、人に会うたびに「つかみはOK」とばかりに笑い話にしているのですが、現実はそう単純ではありません。
最大野党・共に民主党は一貫して反対の姿勢です。
同党所属で金浦市を抱える韓国最大の自治体・京畿道(キョンギド)の金東兗(キム・ドンヨン)知事は「経済と民生(庶民の生活)を後回しにして、国民を仲違いさせるばかりか、国土まで分割しようとしている。選挙戦略として掲げたならばブーメランになるだろう」と正面から批判し、警戒を強めています。
京畿道側も説明に努めています。編入後には地下鉄の延長やバスの運行規制緩和などのメリットがあるとしながらも、予算規模の縮小や、経済開発の規制、低所得者の福祉の縮小などデメリットの方が大きいと発表しました。
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