【デイリー・コリア・フォーカス】26年8月28日号:韓国人映画監督「ネパールへの哀悼には怒りを込めよ」、「40%割れ」も…下落つづく李大統領の支持率

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徐台教 2026.08.28
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。韓国の徐台教です。

今日は8月28日、金曜日です。昨日は一日じゅう外で取材と用事があり、どうしてもニュースレターを書くことができませんでした。

今年1月から始めたニュースレターにおいて、初めての欠配となり面目ありません。今後はこのようなことが無いようにいたします。

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(1)「ネパールへの哀悼には怒りを込めよ」、韓国の映画監督が主張

やはり、ネパールの洪水の話を避けて通ることはできません。皆さんもSNSやニュースなどで映像をご覧になられたと思いますが、奔流に街が飲み込まれる様は、とても洪水という言葉では表現しきれないものでした。

たくさんの被災者の中には韓国人も含まれています。発電所建設のため現地で働いていた韓国人9人の安否が確認されていないそうです。

京郷新聞によると、発電所は、氷河が崩落した地点に近い場所にあり、宿舎が土石流に飲み込まれたと見られているそうです。同紙では、韓国の政府公社と民間企業が手を結び、南アジア各地で水力発電所を作っていると伝えています。

外交部では27日に対策本部を設置し、外交官や救助のできる人員で構成された迅速対応チームを現地に派遣しました。李在明大統領は「すべての手段を動員し、捜索・救助に全力を尽くすよう」指示したそうです。

韓国メディアもネパール入りし、地上波MBCでは今日(28日)晩のニュースで、カトマンズから中継していました。家族が行方不明になったネパールの人々のインタビューがありましたが、涙なしには見られないものでした。

やはり背景には気候変動の影響があるのでしょう。事の始まりは氷河の崩壊という報道が出ています。韓国メディアにも「気候危機型災難」という言葉が出ています。

一方、SNSではネパールの惨状と並び、北陸の大雨により水に浸かった車の写真が流れてきました。韓国も日本も朝鮮も、世界中が「国家の生存」を盛んにがなり立てていますが、「人類の生存の方が重要なのではないか」と思わざるを得ません。

↑地上波MBCの現地からのレポート。同社からは記者2人がネパール入りしたようです。スタジオでは2年前、同地において気候変動の影響を深層取材した別の記者がコメント。この3人はいずれも女性記者。皆、信頼できるいい表情でした。

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今回のネパールでの出来事に際し、韓国の映画監督イソン・フィイル(李宋喜一)さんの主張が印象的でした。過去3度、ベルリン映画祭で監督作品が上映された経験があり、気候変動に関する書籍も出版している人物です。

同氏は自身のFacebookに「私たちの哀悼には怒りが込められなければならない」と書きつづったのです。

どういうことでしょうか。イソンさんは「気候変動の背景には、大国が排出した温室効果ガスがある。しかしその悪影響は、ネパールのような炭素排出量が低く、過去25年の間に山林の面積を二倍に増やした国家が被っている」と指摘します。

さらに地球温暖化はヒマラヤにおける降雪量を減らし、アフガニスタンなど地域の国家は深刻な水不足に直面する一方、温暖化は万年雪を溶かし洪水を産むといった悪循環が起きていることを取り上げました。気候型災難の裏にある「不平等」に目を向けよと主張するものです。

今回の出来事を前に、人類の終末を語る人もいるでしょう。しかし、イソン監督はこう語ります。

私たちの哀悼には、怒りがこもっていなければならない。終末が来た、人類が滅亡するという慨嘆は、ほとんど全ての責任を抽象化した‘人間’に転嫁しながら、こんなにも不義な体制の不平等を隠す役割を果たす。

世界が終わったと叫ぶのではなく、もうこれ以上、あの化石燃料を燃やすな、地球をこれ以上燃やすな、あのヒマラヤの万年雪をアイスクリームのように溶かすなと叫ばなければならない。

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(2)「40%割れ」も…下落つづく李大統領の支持率

「世論調査政治」と揶揄されるほど、韓国では世論調査が重要な政治判断の材料とされています。メディアに報道されるのはごく一部で、実際には数倍の数の調査が、政府や政党により行われています。

それでも社会的に最も注目を集めるのは断然、大統領の支持率を測るものでしょう。一般的に「国政運営への肯定評価 or 否定評価」という形で回答を集め、肯定評価が支持率と置き換えられます。

●「否定評価の増加」傾向が露に

最近の李在明大統領の支持率はどうでしょうか。信頼できる会社のものを3つ引用してみます。

(図1)8月28日に発表された「韓国ギャラップ」社のもの。調査期間は8月25日から27日まで。全国の18歳以上の男女1001人への調査員による電話インタビューの結果です。誤差範囲は95%の信頼水準でプラスマイナス3.1%(同様の調査を100回繰り返す場合、95回は実際の支持率を含んでいるということ。その際の数値は、抽出された数値のプラスマイナス3.1%の間であるということです)。

(図1)8月28日に発表された「韓国ギャラップ」社のもの。調査期間は8月25日から27日まで。全国の18歳以上の男女1001人への調査員による電話インタビューの結果です。誤差範囲は95%の信頼水準でプラスマイナス3.1%(同様の調査を100回繰り返す場合、95回は実際の支持率を含んでいるということ。その際の数値は、抽出された数値のプラスマイナス3.1%の間であるということです)。

まずは図1の韓国ギャラップ社のものから。青線が肯定評価で、点線が否定評価です。左端は2月第1週、右端が8月第4週です。ずっと肯定評価が否定評価を上回っていましたが、8月2週目に逆転し、最新の8月4週目の調査では肯定評価42%、否定評価50%となりました。

(図2)8月24日に発表された「リアルメーター」社のもの。調査期間は8月18日から21日まで。全国の18歳以上の男女2026人を対象に、同社からの電話音声に回答する方式で行われました。誤差範囲は95%の信頼水準でプラスマイナス2.2%です。

(図2)8月24日に発表された「リアルメーター」社のもの。調査期間は8月18日から21日まで。全国の18歳以上の男女2026人を対象に、同社からの電話音声に回答する方式で行われました。誤差範囲は95%の信頼水準でプラスマイナス2.2%です。

次に図2のリアルメーター社ものを見ていきましょう。左端が6月3週、右端が8月3週です。青色が肯定評価、赤色が否定評価です。この2か月の間、肯定評価が否定評価を上回ったことは二度だけで、全体的に否定評価が高くなっています。

最新の8月3週では、肯定評価40.2%、否定評価56.9%と大きな差が出ています。

(図3)8月27日に発表された世論調査会社4社が合同で行う、全国指標調査(NBS)です。調査期間は8月24日から26日まで。全国18歳以上の男女1001人を対象にした電話面接調査で、誤差範囲は95%の信頼水準でプラスマイナス2.2%です。

(図3)8月27日に発表された世論調査会社4社が合同で行う、全国指標調査(NBS)です。調査期間は8月24日から26日まで。全国18歳以上の男女1001人を対象にした電話面接調査で、誤差範囲は95%の信頼水準でプラスマイナス2.2%です。

最後の図3は全国指標調査(NBS)です。左端の12月4週から、右端の8月4週まで一貫して、赤線で表された肯定評価が。灰色の線の否定評価を上回っています。最新の8月4週では肯定評価50%、否定評価43%でした。

一般的に世論調査はその数値ではなく、傾向を見よと言われます。この3つの調査に共通する傾向として「否定評価の増加」があることは一目瞭然です。

他にも「コリア情報リサーチ」という会社の調査(調査期間8月24日〜25日)では、肯定評価36.5%、否定評価62.0%という結果が出ています(18歳以上の男女1005人を対象とした音声回答方式、誤差範囲は95%の信頼水準でプラスマイナス3.1%)。

こちらの調査では先週(17〜18日)のものと比べ肯定評価は6.8%ポイント下がり、否定評価は7.1%ポイント増加しています。やはり「否定評価の増加」という傾向が見て取れます。

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●30代と中道層における否定評価増加が顕著

どんな層がどんな理由から、李大統領の政権運営に否定評価を与えているのでしょうか。年代別に見る場合、どの年代でも否定評価が目に見えて増えていますが、特に30代の動きは顕著です。

「韓国ギャラップ」の調査では、6月2週(全体の肯定評価57%、否定評価35%)と比べ、8月4週では30代の否定評価が38%から58%へと、20%ポイントも増えています。全年代で最も高い数値でした。

「リアルメーター」の調査では。6月2週(全体の肯定評価51.5%、否定評価44.2%)では、30代は肯定評価36.8%、否定評価58.3%でした。最新の8月3週ではこれが、肯定評価25.9%、否定評価71.8%となっています。

男女別に見ると、同時期に30代男性は肯定評価が32.7%から20.0%へ、否定評価が64.5%から77.0%へと変動しました。

30代女性は同様に、肯定評価が41.2%から32.4%へ、否定評価が51.6%から66.2%へと変わりました。女性の否定評価が男性よりも増えています。

30代女性の「支持撤回」については、専門家の興味深い分析がありましたが、ここでは全体を見るために触れません。

簡略に言うと、与党・共に民主党(この延長に大統領がいます)が資産の多い、50代と60代の政党になっているというものです。家庭やキャリアを形成する30代女性にとって、共感できる政治勢力ではなくなったというものです。この話は別途まとめます。

また、中道層でも同様の動きが顕著です。

6月2週では自らを中道(他に「保守」と「進歩」、「分からない」を選べる)と答えた者では、肯定評価60%、否定評価29%でしたが、8月4週では肯定評価41%、否定評価49%となっています。

●支持率低下の原因は複合的、大統領本人にも責任

否定評価が増える理由はどこにあるのでしょうか。

京郷新聞では、「不動産の税制改編案、単一種目のレバレッジ上場指数ファンド(ETF)の導入、警察の雑な捜査、与党・共に民主党の党大会の後遺症が複合的に作用したもの」と診断しました。

少し分かりづらいので補足説明をします。「不動産の税制改編案」というのは、今年8月3日に発表された『2026年税制改編案』一部を指すものです。

特に総合不動産税と譲渡所得税の部分で、居住要件、つまり持ち家に実際に住んでいるか否かが強化されました。これにより、税金を現状よりも多く納める人が生まれることが、反発を呼んでいるということです。

さらに、不動産(マンション)の供給増加策を立てないまま増税策を出した点も原因と見られています。

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「単一種目のレバレッジ上場指数ファンド(ETF)の導入」というのは、今年5月に導入された、サムスン電子とSKハイニックスの指数に連動(2倍連動)した、高リスク投資商品のことです。

株価が上昇する場合には儲けが大きくなる一方、下落する場合の損失は大きくなります。

両社の株価はこの商品が導入された後、様々な理由で下落しており、一般投資者の中には多大の損を被った人が多数出ました。その損失額は数兆円とされています。

李在明政府に対し「こんな投機性商品を誰が作ったのか」という批判の声は強まる一方です。株価指数の上昇は、一時は70%に迫ったほどの政府の高支持率を支えましたが、株価指数の低下と共に、逆風になって政府に襲いかかってきました。

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「警察の雑な捜査」というのはなんでしょうか。

これはニュースレターで紹介したように、現役の警察幹部が殺人犯の息子の証拠品を隠滅し捜査を妨害した事件や、済州特別自治道で警察が行方不明事件を捜査もしないまま勝手に終結させる事件などが相次いだ点を指します。

10月には検察が「公訴庁」へと変わります。

これにより、検察には警察の捜査の不足部分を自らが補う「補完捜査権」を含む、一切の捜査権がなくなり、事件捜査は警察が一任することとなります。

数々の不祥事が明らかになることで世論には「今の警察のままで大丈夫なのか」という不安が存在しています。そうでなくとも公訴庁への「補完捜査権」を望む声が世論の多数を占めていました。警察への不安が、世論を無視した政府への不満へとつながっています。

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「与党・共に民主党の党大会の後遺症が複合的に作用したもの」というのは、どういうことでしょうか。

同党が8月17日に開催した党大会を通じ、新代表に金民錫 (キム・ミンソク)氏が選出されました。李在明政府の下で、初代国務総理を務めた人物です。

しかしこの選挙の過程が泥仕合となってしまいました。

前任の代表だった鄭清来(チョン・チョンレ)氏と金民錫氏は、「金氏の楽勝」という当初の予想をくつがえす展開の中、互いの過去への人格攻撃も辞さない勝負を繰り広げたのです。

これは党内に修復不可能な傷を残した上に、政策論争が消えてしまう悪影響をもたらしました。さらに同党支持者以外の目には「ひどい勝負」という印象を与えたことで、政府への否定評価につながっているというものです。

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李在明大統領個人の責任もあります。

7月28日のニュースレターで、韓国ナンバー2・趙正湜(チョ・ジョンシク)国会議長による「大型炎上発言」を紹介しました。

「権力構造の改編に関係し、現職大統領の連任(大統領を二期続けること)などは結局、主権者である国民の世論と、国民の選択の問題である」というもので、李在明大統領がもう一期大統領をやることがあり得るというニュアンスを明かしたのです。

当時のニュースレター。クリックでお読みいただけます。

当時のニュースレター。クリックでお読みいただけます。

現状では憲法上不可能なアイディアであるため、大騒ぎとなったこの発言ですが、その後いままで李在明大統領本人もまた、「二期やらない」と明言しないままです。

限りなく不可能であるため、「やらない」と言うなり書けば済むものを、頑なにこれを行わない姿が、有権者の不信を呼んでいるのです。

実際に前出の全国指標調査(NBS)が8月27日に発表した調査では、「改憲の議論が不必要な議論に広がらないようにするためには、大統領が次期大統領選に出馬しないという立場を明かすべき」という質問に、63%の回答者が「同意する」と答えました。「同意しない」は28%でした。

共に民主党の支持者の中でも「同意する」は51%にのぼった点も注目です(同意しない41%)。

最大野党・国民の力も、改憲に反対する理由として、李大統領のこんな姿勢を一貫して指摘しています。李大統領の不可思議な態度が、ボディーブローのように世論に悪影響を与えているのです。

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他にもいくつかの理由があります。「韓国ギャラップ」の世論調査では、肯定評価と否定評価の理由に順位をつけて発表しています。

否定評価は1位から順に、▲不動産政策:27%、▲検察の権限の縮小:7%、▲経済・民生:7%、▲道徳性の問題・本人の裁判を回避:7%、▲全般的にうまくやれていない:5%、▲国防・安保:5%、▲独裁・独断:5%といったところです。

「本人の裁判を回避」というのは、大統領になったことで止まっている裁判を、裁判所が「公訴棄却」できる可能性を開いた刑事訴訟法の改正を批判するものです。上記の任期の話と同じように、李大統領が権力を恣意的に活用しようとしているという視線です。

なお、この部分については8月のサポートメンバー向け有料記事で詳しく解説してあります。

●今後、挽回できるのか

長々と見てきましたが、最後に「支持率の挽回は可能なのか」という点に触れて終わります。結論から言うと、そう簡単ではありません。

それは、否定評価が増える原因が多岐にわたっているからです。

むろん、上述したように「韓国ギャラップ」の調査では、否定評価の原因として不動産政策が突出していますが、皆がみな、1億円以上の価値のあるマンションを持っている訳ではありません。

総合的な理由から、ジリジリと下がっていると見るべきでしょう。数百兆円を投資するAI3大メガプロジェクトも、そこから疎外される人々にとっては逆効果をもたらす可能性もあります。

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青瓦台(大統領府)も、一連の世論の変化の結果を重く受け止め、これまでとは異なる李在明大統領のスタイルを模索しているようです。

その一例が、X(旧Twitter)での発信の減少です。韓国のオンラインメディア・スローニュースがまとめたところによると、26年2月に106件、同3月に118件、7月にも101件だったXの投稿数は、8月27日現在31件と、明らかに減少しています。

私もこの方策は有効だと思います。

李大統領は大統領就任後、ワンマン政治家の姿を見せ続けてきました。生中継される国務会議(閣議)では、周囲の閣僚が明らかに萎縮していることもあるほどです。しかし、有権者の間には明らかにこのスタイルに対する疲労感があります。

韓国の有権者は、判断力のない大統領を嫌いますが、同じくらい独善的な大統領を嫌います。

李大統領の姿は、下手をすると後者のように映る可能性があるのです。一方通行のXでの発信はこれに輪をかけるものとなっていました。即興的な書き込みは、副作用も呼ぶからです。

いずれにせよ、任期はまだ45か月近く残っています。選挙も28年4月の総選挙までありません。李大統領としてはしっかりと立て直していく必要があるでしょう。

今日は字数から触れることができませんでしたが、李大統領の低支持率の背景には、最大野党・国民の力の「ぶらさがり作戦」の影響もあります。

とにかく、大統領がやる、あらゆることに反対するという恥も外聞もないものですが、続けていると、大統領のミスが出た際に漁夫の利を得ることになるようです。難しいものです。

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今日はここまでです。日曜日からは日本です。来週の更新からは、私以外の方の記事も入ります。ご期待ください。

それでは皆さま、安寧な週末をお過ごしください。ありがとうございます。アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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