【デイリー・コリア・フォーカス】26年8月25日号:南北の人権協力は可能か?映画『トロフィー』観賞記

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徐台教 2026.08.25
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。韓国の徐台教です。

今日は8月25日、火曜日です。昨晩遅くにお送りしたニュースレターは、久しぶりということもあってか、普段より高い開封率となりました。写真を付ける余裕もなかったのですが、お読みくださりありがとうございます。

現在の時刻は22時45分です。今日は終日、外にいたこともあり、スタートが遅れました。二本の短信をもって内容に代えさせていただきます。

(1)南北の人権協力は可能か?国際会議参加記

朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)に人権問題が存在するというのは、もはや世界に知らない者はいない事実です。もっとも、世界じゅうどの国にも人権問題が存在するのもまた事実。朝鮮の場合は、その度合いが一般的な国家に比べ特にひどいという事です。

例えば、言論や結社、思想の自由が極度に制限されています。市民は自由にものを言うこともできず、メディアを作ることもできません。政府に何かを求める集会を開くこともできません。これらを強行する場合、市民は不利益を被ることになります。

こんな状況は、軍事境界線を挟んで対峙する韓国と対照的です。

私がよくする話に、文在寅政権の際(17年〜22年)、「文在寅を火刑にせよ」と叫ぶキリスト教系の集会が毎週のように行われていたというものがあります。しかし当時の韓国政府はこれを放置していました。それくらい、言論の自由が保障されています。

さらに、韓国の市民の多くは、朴槿惠(パク・クネ)、尹錫悦(ユン・ソンニョル)という二人の大統領を弾劾したことからも分かるように、民主主義に対し強いプライドを持っています。

だからこそ、人権問題を指摘することは、朝鮮の政府を批判する「最も強い矛」として機能します。

とりわけ、保守派にとっては「錦の御旗」のようなものです。

朝鮮半島に存在する二つの政府において、韓国こそが「正当性(正統性でもよいです)」を持つという主張の根拠となっています。尹錫悦氏が「自由民主主義の韓国」を連呼していたことを思い出してもよいでしょう。自由の分だけ、韓国が優れているという認識です。

一方で、進歩派は朝鮮の人権問題を指摘することを躊躇します。指摘する場合、南北対話が止まってしまうからです。

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今日、こんな問題を正面から扱うシンポジウムが、ソウル市内で開催されました。

冒頭のスピーチを行った文正仁(ムン・ジョンイン)延世大学名誉教授は平和と人権のジレンマに関し、故金大中(キム・デジュン)大統領が在任時に明かしてくれたという、エピソードを紹介していました。

文正仁延世大学名誉教授。韓国の進歩派でナンバーワンの影響力を持つ外交専門家です。25日、筆者撮影。

文正仁延世大学名誉教授。韓国の進歩派でナンバーワンの影響力を持つ外交専門家です。25日、筆者撮影。

金大統領は当時、文正仁さんに対し「大統領になってみると、平和と人権の間に反比例の関係があるのが分かる」と言ったそうです。

「韓国政府が朝鮮の人権問題を国連に提起する場合、朝鮮はそれを体制への脅威として受け止め、政治社会的な事案ではなく安全保障の事案となる」という説明です。この差は、体制の違いからくるものです。

金大中大統領はさらに、「人権を取り上げる場合に、対話ができないだけでなく、交流や協力、平和共存が不可能になり、軍事境界線での緊張がより高まる」と感じていたそうです。

だからこそ、朝鮮に対するメッセージは慎重にならざるを得ないのですが、保守派はこれを「卑屈だ」と批判します。

これに対しても金大中大統領は「現実は現実ではないか。北韓の人権が改善されないと指摘したことで南北間の軍事的な緊張が拡大する場合、その責任は誰がとるのか、大統領ではないか」という旨を明かしたそうです。

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会議の様子。筆者撮影。

会議の様子。筆者撮影。

折しも、今日の国際会議の主題は「平和共存政策と南北人権協力国際会議」でした。李在明政府が掲げる朝鮮との平和共存政策に、どうやって人権問題を接続するのかという話ですが、文正仁教授は「金大中大統領の時と変わらない」と、指摘しました。

つまり「人権問題を指摘する場合に、平和共存が難しくなる」というものです。

私は後述する映画鑑賞のため、この日のシンポジウムの途中で抜け、その後戻ってきました。

それでも聞いた範囲での結論としては、「韓国は国連などの国際的なシステムを通じ、衣食住といった『社会権』の分野で朝鮮を『静かに』『忍耐強く』支援すべき」といったところでした。

これは過去10数年にわたって散々いわれてきたことで、聞いている私も思わずため息が出ました。しかし現実として、これ以外に政府が取れる方法はないのでしょう。なお、過去に南北が一緒に「朝鮮の人権問題」を明示し、その改善のため協力したことはありません。

今の時期にそれをすることは、緊張を高めることになる上に、そもそも朝鮮側は1ミリもこれを受け入れないだろうという話もありました。

しかしこれはあくまで、政府間の話です。民間、市民団体はまた別のやり方があるでしょうし、別のやり方をすべできす。これはまた別途取り上げます。今は時間が足りません。

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(2)映画『トロフィー』

シンポジウムを途中で抜けて、映画『トロフィー』を観てきました。ソウル国際女性映画祭で上映されたものです。

在日コリアンの孫明雅(ソン・ミョンア)監督の作品です。日本でも評判なので、読者の皆さんの中には、ご覧になった方もいらっしゃるはずです。私もようやく観ることができました。

映画『トロフィー』の宣伝バナー。

映画『トロフィー』の宣伝バナー。

途中までは「あれ…これはもしかして、舞台装置としての朝鮮学校が選ばれているだけで、監督は青春劇を描きたいのかな」といぶかしんで(?)いました。

なぜなら最近、韓国でも朝鮮(北韓)を「便利な物語の設定」として使うことが増えているからです。

その最たるものが、韓国映画『脱走』です。今をときめくイ・ジェフンとク・ギョファン主演のよい映画でしたが、ここでの北韓は「舞台」に過ぎませんでした。観劇後のやるせない思いを書いたコラムを置いておくので、まだ未読の方はご一読ください。

しかし『トロフィー』はそうではありませんでした。青春劇であると同時に、日本で生きる在日コリアンの一つの家庭をしっかりと描いた作品で、好感を持ちました。

それでいて、人間が持つ普遍的な悩みも扱われており、なかなか懐の深い作品だったなという印象です。SNSを見ると、在日コリアン当事者の中には物足りなさを感じる方もいるようですが、私の経験上、それを満たすのは簡単なことではありません(笑)。

映画は日本でもまだまだ絶賛上映中のようです。詳しい情報は映画のHPをご覧ください。オススメです。韓国でも多くの観客がすすり泣いていました。

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今日はここまでです。リニューアルは少しずつ進めているので、もう少しお待ちください。それではまた明日、お届けいたします。

ありがとうございます。アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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