【デイリー・コリア・フォーカス】26年8月24日号:韓国から見る米朝対話のゆくえ

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徐台教 2026.08.24
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。韓国の徐台教です。

今日は8月24日、月曜日です。約20日ぶりにニュースレターをお届けします。その間、いかがお過ごしでしたでしょうか。私はお盆のあいだ、私用で大阪に行ってきました。観光客の多さと暑さの記憶しかありません。

韓国でも日本と同様に、豪雨の被害が相次ぎました。特に8月15日から8月18日にかけては、南東部の巨済(コジェ)市で950ミリという記録的な雨が降り、マンションが土砂に呑まれ死者が出るなど大きな被害が出ました。8月17日だけで638ミリもの雨となり「200年に一度の大雨」と評されました。

現在、たくさんの市民ボランティアの方々の参加の下、復旧作業が急ピッチで進められています。気候変動の影響はすさまじいものです。最近インタビューした朝鮮半島問題の専門家が「南北関係よりも皆の生存そのものを考える時代だ」と指摘していましたが、まさにその通りだと思います。

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さて、先日のクラウドファンディングを経て、リニューアルの行方が気になる方も多いかと存じます。これは現在、少しずつ作業を進めております。

ニュースレターの筆陣を増やし、定期的な寄稿依頼も数人と済ませました。「コリア・フォーカス」のホームページをより見やすい形に変える作業も合わせ、9月には順番に変化を可視化できる見通しです。随時お知らせしていきます。

ニュースレターにつきましては、リニューアル(複数人による執筆)が始まり、定着するまでには9月いっぱいまで時間がかかりそうです。このまま休止にしておく訳にもいかないので、私(徐台教)がひとまず続けていきます。

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●韓国から見る米朝対話のゆくえ

休止期間中にあった最も大きなニュースと言えば、にわかに米朝首脳会談への期待が高まっていることでしょう。

今月19日(現地時間)、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは「トランプ大統領が、年内に金正恩との首脳会談開催を推進しろと、参謀たちに要求した」と書き、同じ日に、トランプ氏もこれを認めました。「金正恩氏と仲良く過ごしている」という言葉も付け加えています。

これを受け、首脳会談の実現性をはじめ、時期や場所、議題などについてたくさんの予想や分析が一気に噴出しています。今日はこうした議論の中で、真に重要なことを整理してお伝えします。一種のFAQ(よくある質問)です。

(1)なぜ今、突如この話が出ているのか

最も重要な質問ですが、この問いへの答えは「イランを攻撃したにもかかわらず、何も得ることができないままのトランプ大統領が、11月3日に中間選挙を控え、米国の世論の目を別の方向に向けるため」という以外にありません。

「朝鮮半島の平和を考え、入念に金正恩氏との対話を準備してきた」という風な痕跡は、今のところ全く見当たりません。一種の虚脱感からスタートする話となっています。

(2)米朝首脳会談はあり得るのか?

その割に(?)トランプ大統領は対話の実現に向け、的確な二つの手を打っています。

まず今月16日(現地時間)、米国防部に米韓連合軍事演習の大幅な縮小を指示しました。これがトランプ氏による「一の矢」です。

どういうことでしょうか。金正恩氏は今年2月の第9回党大会の中で、以下のように述べています。

万一、米国が朝鮮民主主義人民共和国の憲法に明記された、わが国家の現地位を尊重し、朝鮮に対する敵対視政策を撤回するならば、私たちも米国と良く過ごせない理由がありません。

これが一般的に、米朝(正確には距離の近い順なので「朝米」ですが)の和解(に通じる対話)の条件と見なされるものです。

この中で、米韓連合軍事演習は朝鮮に対する敵対視政策の象徴と位置づけされます。演習には朝鮮の攻撃からの防御に加え、「反撃」が含まれるからです。トランプ氏はこれを大幅に縮小することで、対話のカードとしました。

これは2018年1月、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が、同年6月にトランプ氏が米韓連合演習の中止を発表し、対話のテコとした点と似ています。もっと遡ると、1992年の「チーム・スピリット」中止が、南北・米朝対話をもたらした過去もあります。

その存在感は今なお健在です。実際に今年、8月17日から27日まで11日間にわたって行われる予定だった米韓連合演習は,、トランプ氏の鶴の一声により、21日に早期終了となりました。

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トランプ氏の「二の矢」は、核にまつわるものでした。

19日に「彼(金正恩)は57個のとても強力な核武器を持っている」と明かしたのです。米国の大統領が朝鮮の具体的な核兵器の数を明かすのは初めてでした。

同時に、金正恩氏に対するまたとないメッセージになっています。

これは、前述の党大会における発言の中にある、「憲法に明記されたわが国家の現地位」に呼応するものです。今年3月に改正された朝鮮の憲法56条にはこうあります。

朝鮮民主主義人民共和国は、国家防衛において、全人民的、全国家的防衛体系に依拠する。朝鮮民主主義人民共和国は責任的な核保有国として、国の生存権と発展権を担保し、戦争を抑制し、地域と世界の平和と安定を守護するために核武器の発展を高度化する

この条文自体は2023年から存在したものですが、核保有を明記し、その発展を義務とする世界に類を見ない内容です。

また2025年9月、朝鮮の金善敬(キム・ソンギョン)外務次官は国連総会の演説で、「朝鮮に対する非核化の強要はすなわち、私たちに主権と存在権を放棄しろと要求することであり、憲法を違反せよということ」と述べています。

こうした一連の内容は、米国に対し「朝鮮が核保有国であると認めよ」と主張するものです。さらに、非核化を議論するテーブルにはつかないとクギを刺すものでもあります。

見てきたように、トランプ氏が米韓連合演習を縮小し、核兵器の存在をも認めたことで、対話の「最低限の条件」が成立したと見ることができるのです。

(3)韓国の立場は?韓国社会の反応は?

米朝対話の話が出て、まだ一週間も経っていない中で、もっとも困難な立場に立たされたのが韓国政府です。

トランプ氏による金正恩氏への対話要請について、李在明大統領は聞かされておらず、その交渉に関わることができていないからです。米韓演習の縮小についても知らされていませんでした。

また、金正恩氏の妹・金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党総務部長が19日、20日と二度出した談話の中で「米国に隷属的」とこっぴどくやられ、メンツを潰されました。

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韓国政府への不満は、朝鮮に対し、過去一貫して対話よりも圧力を選んできた国内の保守陣営から出ています。

例えば保守紙・朝鮮日報は社説の中で、米韓連合軍事演習は安全保障に欠かせないものだとしながら、その縮小は「政府が自ら招いた側面がある」とします。

ロシアへの戦争協力を通じ、最新の戦術に触れている朝鮮に対抗するためには訓練が欠かせないにもかかわらず、李在明政府が朝鮮への「妥協カード」として連合演習を取り上げ続けたことが、訓練の縮小=安保危機を招いているという論調です。

さらに、政府は戦時作戦統制権の転換(米国からの還収)を急ぐあまり、訓練の減少が与える悪影響を過小評価していると批判を重ねます。

一般的に、韓国の保守陣営は進歩陣営に対し、「北韓との対話を急ぐあまり、韓米同盟をおろそかにしてきた」と批判します。南北関係と韓米関係は、ゼロサムの関係ではないにもかかわらずです。

今回のケースはまさに、これに該当するものとして李在明政府は厳しい立場に立たされています。

関税交渉の対価としての米国への投資プロジェクトが一件も妥結しないまま、原潜建造やウラン濃縮許可といった韓国にとって大事な分野での動きも鈍く、政府はどうしても悪い印象が目立ちます。

実際にトランプ氏は「イラン戦争に協力しない」と、韓国政府に対する当てつけも口にしています。米国が朝鮮との対話を進めることが、韓国への圧力となる構図すら存在します。

このため韓国政府には、後述するような「核軍縮」や「軍備統制」という線で米朝合意が行われる場合にも、米韓合同軍事演習や在韓米軍が維持され、韓国の安全保障が急速に損なわれないよう米朝対話に関わっていくことが広く求められています。

膠着状態にある南北関係を動かすには、「韓国が朝鮮半島問題の当事者である」という意識が必要です。これは保守・進歩紙問わず、繰り返し強調されています。

李大統領は繰り返し、韓国は「ペースメーカー」で、米国が平和を作る「ピースメーカー」としてきました。現実問題として他に方法がないのは確かですが、当事者としての気概を発揮すべきというハッパが、識者や市民団体など、各方面から相次いでいます。

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保守陣営はさらに、独自核武装論を煽り立てています。

最大野党・国民の力の並み居るベテラン議員が自身のSNSで核武装論を論じています。その内容は90年代以前のように、米軍の戦術核を韓国内に配備するものから、韓国独自の核開発まで様々です。

底流にあるのは「核を持つ北韓と平和共存などあり得ない」という切迫感です。

保守陣営に属する、議席3の第四野党・改革新党のシンクタンクが行った世論調査では、「戦術核の再配置に賛成」という回答が75.1%に達し、「反対」の17.2%を大きく上回りました。

これまで朝鮮半島問題を支配してきた構図、つまり「朝鮮の非核化=制裁解除=朝鮮戦争の終結=米朝国交正常化」という方程式は崩れ去りました。

新たなプランを見つけられないまま、韓国内は揺れているということです。

(4)米朝首脳会談では、何が語られるのか?

先に、米韓連合演習を縮小し、核兵器の存在をも認めたことを「最低限の条件」と表現しました。米朝首脳会談が実現する場合には、敵対視政策と核保有に関するより具体的な対話が行われるでしょう。

例えば、「敵対視政策の撤回」の中には、米軍の戦略爆撃機の朝鮮半島への展開や、米韓連合演習の完全な中断、朝鮮の人権問題を指摘することの中断といった内容が含まれるという見方があります。

核保有については、非核化に向けた議論ではなく、これ以上の核開発(運搬手段=ミサイルを含め)をせず現状維持のまま凍結することが議題に上る可能性があります。

いわゆる「核開発の中断」であり、この対価として「経済制裁の緩和」で合意される見立てが存在します。他に既存戦力の運用を調節・規制する「軍備統制」が論じられるとも言われます。

こうした予想は「非核化なき米朝合意」とも称されます。実現する場合、金正恩氏と朝鮮の「位相(存在価値)」は飛躍的に高まることになります。

一方で、「金正恩氏は焦る必要がない」という論調も多く見られます。

ロシアへの戦争協力による軍事・経済的な対価を得ている上に、中国との関係復元が進む中で、金正恩氏の立場は経済的な困窮のただ中にあった7年前とは異なるというのです。

さらに7年前にベトナム・ハノイでトランプ氏に一方的に会談を打ち切られた記憶は、同じ失敗を繰り返さないという教訓となって、金正恩氏の脳裏に刻まれているという指摘も少なくありません。十分な成果が確約される場合にのみ、金正恩氏はテーブルにつくということです。

具体的な時期については、11月18日から19日まで中国・深圳市で行われるアジア太平洋経済協力会議(APEC)が取りざたされていますが、モンゴルや北京で単独で行われるといった予想もあり、現状では定かでありません。

(5)韓国や日本の市民はどうすべきか?

最後です。最も重要な内容です。

従来の私ならば、(4)までの分析で終えていましたが、「コリア・フォーカス」としてはそうはいきません。

韓国や日本、そして世界の市民はどう声をあげるべきかという問いに答えなければなりません。答えは一つ。朝鮮戦争の終結に力を注ぐべきというものです。

拙著『分断八〇年 韓国民主主義と南北統一の限界』にも書いてきたように、朝鮮戦争の休戦体制こそが、今や東アジアの秩序となっています。この戦争が終わらないことが、地域の軍拡の口実となり、絶え間ない対立を作り出しています。

これをひとつひとつ解体する作業を始めるべきです。休戦協定を平和協定に変えるという、戦争の終結を実現しなければなりません。

そのためには、平和協定の先にある未来を具体的に語り、そのビジョンを地域の市民が共有することが欠かせません。その共通の未来像をもって国際的な連帯をつくり、朝鮮・韓国・中国・米国政府に対し、朝鮮戦争を終わらせるための努力を尽くすよう、要求する必要があります。

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今日はここまでです。これからも年内は、目が離せない状況が続くでしょう。しっかりと追い続けながら、(5)の動きに言論をもって貢献していきます。

ニュースレターの読者を、年内に約2倍の5000人にまで増やそうと考えております。今後、私以外の筆陣も加わるので、拡散にご協力ください。

それではまた明日。アンニョンヒケセヨ。ありがとうございます。(徐台教)

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