[65号] 李在明氏一審有罪!風雲急を告げる韓国政治と‘ろうそく集会’、日韓に横たわる「三つのテーマ」、映画『アマゾン名射手』など
サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。年末に向かうせわしさからなのか、それとも陰に陽に濃さを増す世界的なきな臭さにあてられてか、落ち着かない日々が続いていませんか。
私の日常もひと言で「ニュースの洪水」です。私がふだん関心を持って追っている分野は、朝鮮半島情勢、南北関係、韓国政治、日韓歴史問題という形になりますが、これまでにない数のニュースが出てきています。
さらに年末を控えた時期柄、そして米大統領選という世界的イベントを受け、それなりに重要と思えるシンポジウムも毎日のように開催されています。インプットとアウトプットのバランスを考え頭を抱えている中、ざっと一週間を振り返る形で今号をお送りします。
◎風雲急を告げる韓国政治
(1)李在明代表に一審で有罪判決
※この部分の一部は判決が出る前に書いたものですが、参考までにそのまま引用いたします
今日15日と明日16日は韓国政治にとって、大きなターニングポイントになる日です。
まず15日の午後2時半からソウル中央地検で開かれる法廷で、最大野党・共に民主党の李在明(イ・ジェミョン)代表に一審判決が下ります。嫌疑は公職選挙法違反です。前回の大統領選挙(22年3月実施)に臨む過程の21年10月と12月に、李在明氏が嘘をついたというものです。検察は懲役2年を求刑していました。
そして午後3時過ぎ「懲役1年、執行猶予2年」という判決が出ました。
判決の内容が注目される理由は、李氏の政治的評価やリーダーシップに傷がつく可能性があるためです。どう見ればよいのかについて保守系日刊紙『中央日報』が3つのシナリオを挙げ詳しく取り上げています。
共に民主党の李在明代表。10日、筆者撮影。
まずは100万ウォン(約11万円)以上の有罪となる場合です。今回の判決はこの部分に該当します。懲役刑(執行猶予刑)ということで、予想を上回る量刑となったと、韓国メディアは伝えています。
韓国では公職選挙法違反で100万ウォン以上の罰金刑もしくは禁固刑となる場合、被選挙権が5年間(※)制限されます。李氏がこれに該当する場合、次期大統領選(27年3月実施)に立候補できなくなります。
※李氏への判決は罰金刑ではなく懲役刑であるため、これが確定する場合に被選挙権剥奪期間は10年となります。
また、こうした判決が下る場合、前回大統領選で国庫補助を受けた434億ウォン(約47億円)を国に返付しなければなりません。李氏はもちろん、共に民主党にも致命傷となる「最悪のシナリオ」です。
一審判決直後、李氏は控訴するとしました。いずれにせよ大法院(最高裁)までもつれこむことになるので、すぐに何かが起きる訳ではありませんが、現在、党内で絶対的な地位を築いている李氏の立場にヒビが入る可能性があります。
過去に韓国政治を動かした「三金」つまり、金大中(キム・デジュン)、金泳三(キム・ヨンサム)、金鍾泌(キム・ジョンピル)をもじり、「新・三金」と呼ばれる金富謙(キム・ブギョム)元総理、金東兗(キム・ドンヨン)京畿道知事、金慶洙(キム・ギョンス)元慶尚南道知事の三人が動くのではと見られています。
次に100万ウォン以下の有罪となる場合です。
これは「李氏にとって政治的な勝利となる」と中央日報の記事で専門家が述べています。有罪ではあるものの、被選挙権の剥奪には至らないことで、李代表は体面を保つことができます。このシナリオの特徴は「司法も体面を保てる」という点にあるそうです。
100万ウォン以上の量刑にする場合、韓国政治の一つの軸である共に民主党にとって大打撃となり、支持者たちにより判決を下した判事への個人攻撃、司法への圧力などが最高潮に達する可能性が高いからです。
司法への不信を煽るのは韓国政治における悪癖と言わざるを得ない部分ですが、こんな混乱を避ける、いわば玉虫色の決着がこの100万ウォン以下の罰金です。そういう決め方でいいのか、と思うのですが。
最後に無罪です。
この場合には与党・国民の力や大統領にとって不利となります。共に民主党のあらゆる政治的な主張を「李代表を守るため」と攻撃してきたことが、そのままブーメランとなって返ってきます。
そして、14日に野党が国会で可決した大統領夫人・金建希(キム・ゴニ)特別検察法の行方や、大統領夫妻を巻き込んだスキャンダルに注目が移ることになります。
ここ二か月あまり、金建希氏とその知人のミョン・テギュン氏が与党の選挙候補人事や、大統領の人事さらに経済措置に関する情報の事前漏洩に関わっていたのではないかという疑惑が毎日のように報じられています。
尹錫悦大統領の肉声も公開され、限りなく「クロ」に近いという印象が韓国社会に形成されつつあります。
ミョン・テギュン氏。15日早朝、逮捕されました。同氏のFacebookより。
ミョン氏は15日に逮捕されましたが、この捜査をどこまで行うのかも注目の的です。つまり、大統領夫妻が傷つかない範囲で「幕引き」を図ろうとする場合に、世論の強い批判を浴びることになるということです。
李氏に対する無罪判決はこんな動きを加速化させるトリガーになる可能性があります。
判決を控えた今日、裁判所の前では李在明代表の支持者数百人以上が無罪判決を求める集会を開きました。
また、反対に有罪を求める集会もあり、非常に騒がしい雰囲気となったとのことです。25日には李氏が偽証教唆した嫌疑についての一審判決もあります。共に民主党のある関係者によると「今回の裁判はなんとかなるが、25日にものは厳しいという見方」とのことでした。
後述するように「ポスト尹錫悦」に関心が集まる中、今日の判決には大きな注目が集まりましたが、李在明氏に予想外の重い判決が下ったことで、共に民主党の反応を中心にさらに混迷を増す見通しです。
判決後、記者会見に応じる李在明代表。「今日のこの場面も韓国の現代史の一ページになる」とし、判決への不満を強く訴えると共に、控訴することを明かしました。YTNより引用。
(2)高まる尹錫悦大統領退陣を求める声
「国民の命令だ、尹錫悦を弾劾せよ!」
13日、国会議員会館の大ホールで20人あまりの議員がこうコールしました。この日、韓国国会に「弾劾議員連帯」が発足しました。共に民主党から27人、祖国革新党から9人、進歩党から3人、基本所得党から1人、社会民主党から1人の計41人が名を連ねました。