【デイリー・コリア・フォーカス】26年1月21日号
皆さまアンニョンハセヨ。寒いですね。韓国の徐台教です。
「デイリー・コリア・フォーカス」1月21日号をお送りします。
今日はどうしても入れておきたい内容が重なり、項目が多めです。テンポ良くいきます。
目次は以下の通りです。
1. 世論重視の李大統領、原発新設に踏み切るか
2. 「第二次総合特別検察法」が閣議で議決
3. 日韓の対ドルレートは連動?その根拠は
4. ウクライナで捕虜になった北朝鮮兵士の「本音」
5. きょう韓悳洙前首相に一審判決…「内乱」判断に注目
6. 今日の時事韓国語「속보」
1. 世論重視の李大統領、原発新設に踏み切るか
韓国では毎週火曜日の午前に、国務会議(閣議)が定例的に行われます。その様子は公開されており、20日も2時間半にわたって生中継されました。
この日の会議は、李在明大統領の冒頭発言の後、各省庁の長官が報告をし、それに李氏がコメントする形で進みました。
「そんなに大統領が全ての分野に詳しい訳がないだろう」と思った方は正しいです。
しかし、大統領本人が全ての分野に細かく口を出すというのが、李在明政権の特徴です。
韓国は尹錫悦氏の非常戒厳を見ても分かるように、大統領が「やれ」といえばやらなければならない体制です。
大統領は行政の長であると同時に国家元首であり、広大な人事を持っているため、その命令は非常に強い権威を持っています。
李氏は明文化されていないものの、明確に存在する一種の「システム」を最大限に活用し、時には市民目線で、時には準専門家(行政などは専門家ですね)の視点から質問をぶつけていきます。
そのスタイルが遺憾なく発揮されたのが、昨年12月11日から23日まで行われた「業務報告」です。各省庁に対し李氏があれこれと尋ね、時に公務員を叱責する姿は大いに話題になりました。
この時に前出の批判も出ました。「あまりにも口を出しすぎだ」というものです。
20日の国務会議での李在明大統領の様子。こんな感じで自身の意見を述べていきます。青瓦台提供。
20日の国務会議で李氏は他にも「女性の生理用品をもっと安くできないのか、無償で供給する方法も研究してみる」と発言しました。
韓国の生理用品は海外よりも40%も高いという現実を受けての発言でした。
良くも悪くも大統領というのは、日本の首相とは異なる存在であることがお分かりかと思います。
李氏の勤勉さ、大きな枠を外さない経済・政治・外交感覚などが60%ほどの支持を集めている今は大丈夫だとしても、今後支持率が下降する場合などは、また違った展開になるでしょう。
前置きが長くなりました。
20日の国務会議では様々な話題は持ちあがりましたが、特に注目を集めたのが「原発の新規建設」についての立場でした。
この際に李氏は、「国民の世論は圧倒的に『いま電気の問題を解決するには原発が追加で必要だ』というものだ。最大限に意見を収れんさせるよう」指示を下したのです。
韓国では現在26基中17基の原発が稼働していますが、昨年策定された電力需給基本計画には2基の新規建設が含まれていました。
韓国産業の命綱である、半導体やAIインフラといった投資には、膨大な電力が必要となるというのがその根拠でした。
李政権はこれを正面から取り上げ、最近、二度の政策討論会を行いました。さらに気候エネルギー環境部を通じ、信頼度の高い世論調査による大規模な世論調査を行いました。
その詳細な結果は非公表ですが、保守系日刊紙『朝鮮日報』が20日に報じたところによると、原発の新規建設については「60%台後半」、原発の安全性への信頼は「60%台前半」という結果だったそうです。
韓国の原発の現況。緑色が運用中、青色三角が整備中です。韓国推力原子力より引用。
李氏の発言は、いわば原発新設への地固めであると各紙は伝えています。
これには納得です。なぜかというと、これまで私も、李氏の政治スタイルを知る人物から「世論調査の重要性」を耳にしてきたからです。
李氏は自分の意がどこにあるのかを隠したまま周囲に議論をさせ、その論点を掴んだあと、最終的には世論がどこにあるかで政策を決めるというものです。
こう見る場合、その意は決まりつつあると見てよいでしょう。
なお、これに先立つ李氏の発言には、原発廃止が「理念の議題となり、合理的な討論よりも政治闘争に似たものになる傾向があるが、これを最小限にし、乱打戦を行ってでも別れて闘わずに集まって論争させよ」というものもありました。
また、1月中旬に行われた別の世論調査でも原発の新規建設に賛成54%、反対25%、意見保留21%とありました。
原発新設への高い支持には、経済的な事情がありそうです。
前述したように韓国では半導体産業が輸出の命綱であるため、その事情が最優先されます。
AIインフラも含め多大な電力を必要とするため、再生エネルギーではこれを賄うことができない、原発止むなしという流れです。背に腹は代えられぬ、といったところでしょう。
保守系日刊紙『東亜日報』は21日付けの社説で、この李大統領の姿勢を高く評価しました。
他方、リベラル系日刊紙『ハンギョレ』では、こうした動きに反対する市民社会の声を伝えています。「結果ありきの公論化に、どんな意味があるというのか」というものです。
2. 「第二次総合特別検察法」が閣議で議決
20日の国務会議では、「第二次特別総合特別検察法」が議決されました。国会では1月16日に可決されており、今後は公布を残すのみとなります。
特別検察とは、検察による捜査が政治的な理由などから充分に行われないと判断される場合に導入されるものです。
李在明政権下では、昨年6月から、▲尹錫悦の‘内乱’、▲夫人・金建希氏の各種疑惑、▲チェ上兵事件への介入、という三つの特別検察があり、12月にすべて活動を終えています。
今回の特別検察法は、これらの特別検察が扱い切れなかった内容を扱うものです。
その範囲は最近とみに注目されている、非常戒厳解除決議後の軍の動きなど、17の事件に及びます。検事21人、特別捜査員100人など、最大251人のチームが最長170日間の捜査を行います。
以前お伝えしたように、韓国では今年6月3日に統一地方選挙があります。
このため、最大野党・国民の力は「選挙用の特別検察だ」という意で反対しています。検察が捜査内容を小出しにすることで、尹錫悦を支えた同党に印象が悪くなるという論理です。
この部分は判断が難しいところです。
24年12月3日の非常戒厳については、毎日なんらかの真実が明らかになっていますが、今なお驚くべき内容があります。
「膿を出し切る」ことの必要性を感じる一方、この政治的状況に疲れを感じる人もいるでしょう。私はここまでやって、そこで完全に終わらせるべきと思います。
3. 日韓の対ドルレートは連動?その根拠は
「円が弱い時にウォンの価値もガクッ…一緒に動く理由」
18日の地上波『SBS』に、こんな興味深いニュースがありました。
私は普段、ウォンよりも円での収入が多いため、円-ウォンレートに敏感なので飛びついたのですが、この記事は「対ドル」の価値が日韓で連動しているという内容です。
青が円、白がウォン、赤は人民元です。SBSをキャプチャ。
グラフは昨年6月以降の対ドルレートの推移ですが、実際に日韓は同じ軌跡を描いています。専門家は「同調化」と表現します。
その理由について同局では、▲両国共に米国より金利が低い、▲財政拡大で景気浮揚に臨んでいる、▲日本5500億ドル、韓国3500億ドルという大規模対米投資を控えている、という点を挙げています。
また、日韓は輸出分野が非常に似ているため、片方の国の通貨が弱くなり輸出競争力が上がる場合、もう片方の国の通貨もそれにくっついていく傾向があるとのことです。
こうした動きは当分続くそうですが、日本の金利上昇と、世界国債インデックスへの韓国国債組み入れが今後の変数になると、同局は伝えています。
4. ウクライナで捕虜になった北朝鮮兵士の「本音」
昨日に続き、リベラル系日刊紙『京郷新聞』の特集「ロシア・ウクライナ戦争、北韓軍派兵一年」を見ましょう。
21日に掲載された2回目の記事では、現時点で2人しか確認されていない捕虜となった北朝鮮兵士へのインタビューが掲載されています。
この兵士たちには、昨年2月『朝鮮日報』記者がインタビューしていて、その生々しい写真と話の内容は衝撃的でした。
その後、今なおウクライナの捕虜収容施設にいる彼らの心境には、どんな変化があるのでしょうか。インタビューは昨年10月に行われたそうです。
まず、26歳のキム某氏は、捕虜となったことについて「逆賊となったのと同じ。国を裏切ったのと同じだ」と述べ、自爆できなかったことを悔やむ発言をしています。
このため、彼は今も北朝鮮に送還されることを恐れているそうです。「北韓に戻る場合、家族・親族・友人など3代が滅族の目に遭う」と述べています。
また、戦友が無残にも斃れる戦場の様子を恐怖を共に振りかえっています。その際に、死んでいった戦友’について「恐怖感も生まれ、とても気の毒で、凄絶だという考えが浮かんだ」と繊細に表現した点が目に止まりました。
私が「気の毒」と訳したのは原文では「가련하다」です。
直訳では「可憐だ」となりますが、韓国朝鮮語のニュアンスでは「儚くもかわいそう」というものです。別の表現もあるのに、ずいぶん詩的な表現を選ぶのだな、と思いました。
その疑問は次の段落で氷塊しました。
キム氏は除隊後には声楽を学ぼうと思っていた上に、絵も上手に描くというのです。インタビューの際にも、母を偲ぶ歌をインタビュアーのキム・ヨンミ記者に披露したそうです。その実力はウクライナの看守も驚くほどだといいます。
こんな芸術家肌の青年は今も、韓国行きを強く望んでいるそうです。
もう一人の捕虜、24歳のペク某氏は、とても幼い表情でした。偵察総局という工作機関に所属し、参戦しました。
ドローン攻撃により負傷した彼は、友軍の救助を待つもウクライナ軍に救出され捕虜となります。自爆させないよう、ウクライナ軍はロシア軍と偽って彼に近づいてきたそうです。
なぜ死のうとしたのかという記者の問いに、「捕虜となって情けなく生きることはできない。朝鮮の軍人が敵軍の捕虜になって生きていけるか」と反問したそうです。
彼もまた、戦場での北朝鮮兵士の死について語ります。‘戦友’が斃れる様を見た兵士たちは「復讐する」とムキになり、さらに犠牲者を増やしていったというのです。
「死ぬのが怖くないのか」という記者には、「同じ人間なのに死にたい人がどこにいるのか」と言いながらも、「他に方法がないから、行き止まりでそういう選択をするのだ」と述べました。
彼はまた「(他に)何かできることがあるならば、全てを諦めて簡単に済むこともないだろう」とも語っています。
これも非常に深いひと言です。
実は昨日、仲のよい北朝鮮軍出身の脱北民と、連載記事の内容について話をする機会がありました。
「自爆」の話をする中で、「『これ以上、他に引き下がる所がない』という感覚はよく分かる」と言っていました。
東西は海、南は軍事境界線、北は中国とロシアへの二重の鉄条網、がんじがらめ監視社会の北朝鮮では、他の選択肢がないということです。
思わず唸りました。
このペク氏も「韓国に行きたい」と切実に述べています。法的な壁があるとはいいますが、来るようにすべきでしょう。
5. きょう韓悳洙前首相に一審判決…「内乱」判断に注目
本日午後2時からは、非常戒厳時に行政のナンバー2・国務総理の職にあった韓悳洙(ハン・ドクス)氏への一審判決があります。
尹錫悦氏の非常戒厳を防がず、これに協力した「内乱重要任務従事、内乱の頭目(尹錫悦)ほう助」などの嫌疑です。
求刑は懲役15年となっていますが、この判決が持つ意味は非常に大きいものがあります。
この罪が成立するためには「非常戒厳=内乱」という判断がまず必要であるからです。尹錫悦氏による非常戒厳が犯罪であるからこそ、それをほう助した韓悳洙氏も有罪となるのです。
こんな「非常戒厳が犯罪か否か」という判断が裁判所により行われるのは、今日がはじめてです。
その結果は、2月19日の「内乱の頭目」裁判における尹錫悦氏への一審判決に大きな影響をもたらすでしょう。
裁判は生中継されます。
6. 今日の時事韓国語「속보」
「ソッポ」と読みます。漢字では「速報」。
同業者のスマホには100%、日本の共同通信にあたる『聯合ニュース』のアプリが入っているでしょうが、そこから速報が届くたびにドキッとします。
今日はここまでです。
ササッと書くはずが、書いている内に熱が入り長くなりました。まあ、こんな日もあるでしょう。
実は今日午前10時から李在明大統領の新年記者会見がありました。
昨日書いたように、私は青瓦台(大統領府)に入れないのでおあずけですが、今年の下半期には入れるようになり、直接質問をぶつけてみたいものです。この内容は明日、お伝えします。
それではアンニョンヒケセヨ。
寒さにお気をつけください。(徐台教)
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