[51号] 尹大統領は陰謀論者?映画『1980』レビューなど
サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。
前回のニュースレターから10日が空いてしまいました。「生きているのか?」と数人に聞かれるほど沈黙している印象のようでしたが、あっという間に時間が経ってしまいました。
まず結論からお話ししますと、曜日が不定期になっていたニュースレター発行スケジュールを、7月から正常に戻します。
毎週『水曜日』に南北関係、朝鮮半島情勢に関する内容を、毎週『土曜日』に韓国政治、社会、文化(書評、映画、ドキュメンタリー評)といった内容でお送りします。曜日厳守でいきますので、改めてよろしくお願いいたします。
本についてはもう少しかかりそうですが、これ以上ニュースレターを放置できません。ギリギリで大変ですが、めげずに頑張ればよい結果を得られそうです。
今号はリハビリを兼ねて、映画評を一つと、韓国政治を騒がす尹大統領の「暴言」についてお伝えします。
◎映画評:『1980』
久しぶりの映画評、今回選んだのは3月に公開された『1980』です。
ある年代以上の韓国人もしくは現代史を知る人たちは、この数字を見たらほぼ自動的に1980年の『5.18光州民主化運動』を想起するのではないでしょうか。

映画『1980』のポスター。知名度の高い、カン・シニルやキム・ギュリといった俳優も出演しています。公式サイトより引用。
映画はまさにその戒厳令下の光州(クァンジュ)を舞台に、ある一家を襲った悲劇をこれでもかと見せつけるものでした。
同じく韓国の民主化運動を扱った名作『1987(邦題は「1987、ある闘いの真実」)』を彷彿とさせるタイトルということもあり、期待して観たのですが…。結論から言うとイマイチでガックリ。
封切り後すぐに観られず気になっていた映画だけに残念でした。その理由は後で述べます。
気を取り直して紹介を。舞台は1980年5月17日の光州。市内中心部のバスターミナルに近い場所で、中華料理店が華々しく開店します。一家の大黒柱は店のオーナーの祖父で、その下に長男夫婦とその息子で小学生のチョルス、他に結婚を控えた次男、大学生くらいの娘という家族構成です。
さらに、この一家の家に間借りしているチョルスと同じ小学校に通うヨンヒ一家との間にストーリーは展開していきます。
美味しそうなジャージャー麺と共に明るく始まった物語でしたが、悲劇はあっという間に襲いかかってきます。
それもそのはず、翌日は5月18日だからです。
この日の午前0時を機に、非常戒厳令が全国に拡大され、光州市内にある全南大学も封鎖されます。そして同じ日にこれに反対するデモが学生達により行われます。
このデモを戒厳軍が非道な暴力で鎮圧するところから始まり、途中、市民の蜂起を経て27日早朝に戒厳軍により市民軍が鎮圧されるまでの10日間が後に『5.18光州民主化運動』と呼ばれるものです。
一行で整理するにはあまりにも重い歴史ですが、その話は後に回すとして、まずは映画の内容を見ていきます。
オープン翌日の18日、チョルスの店に戒厳軍の兵士がやってきて、食事をしていた大学生に「お前はパルゲンイか」とちょっかいを出し、騒動が起きます。
パルゲンイというのは「アカ」のことで、韓国では過去、共産主義者を指すと共に、反政府運動つまり民主化運動を行う人士へのレッテル貼りとして使われた言葉です。
南北対立という構造上、民主化運動を行う人士を北朝鮮のスパイや内通者と決めつけることで、超法規的な弾圧を可能にした構造がそこにあります。
店にはさらに、兵士からの暴行を避けるチョルスの父サンウォンが逃げ込んできます。
サンウォン氏は「夜学」のリーダーという役柄でした。これは実在の人物で、5月27日に戒厳軍に立ち向かい亡くなった運動の実質的なリーダーの一人、尹祥源(ユン・サンウォン)氏をモデルにした設定のようです。

尹祥源さん。以前、ニュースレターで紹介したことがあるように、『518光州民主化運動』後半に合流し、運動を民主化運動に結びつける重要な役割を果たしました。
なお「夜学」とは大学生などが市民や労働者を対象に様々な学問を教える私塾で、民主化運動や労働運動の基盤となってきました。
チョルス一家の店はこうして、軍に睨まれる存在となりました。ふたたび店で騒動が起きた時、兵士を強く制止した弟(次男)が今度は軍に連行されてしまいます。
激しい拷問を受けながら、兄サンウォンの居場所を聞かれます。しかしなんと、彼を拷問する軍人はヨンヒの父でした。サンウォンの幼なじみでもある同氏は拳銃を突きつけ、サンウォンの弟を精神崩壊直前にまで追い込みます。
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