[60号] 北朝鮮の「不法な取引収支」は?、人道支援団体に北との接触許可、脱北外交官リ・イルギュ氏の主張 など7トピック

ニュースレター、節目の60号をお届けします。
徐台教(ソ・テギョ) 2024.09.07
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 サポートメンバーの皆さん、アンニョンハセヨ。ニュースレターも60号になりました。単発記事などはカウントに含んでいないので、実際はもう少し多いのですが、もうすぐ開始から一周年を迎えるにあたり、今後どう充実させていくのか常に考えています。

 今号は南北関係と朝鮮半島情勢です。最近よく思うのが、この分野のニュースは毎日たくさん出ているにもかかわらず、韓国社会「ですら」ほとんど伝わっていないということです。

 朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)に対する関心が落ち続けているという点、韓国内に大きなニュースが多い点、そしてNetflixやYouTubeなどが優先されニュースに関心を払わない人が増えている点など様々な理由があると考えられます。

 さらに、この分野のニュースは「分かる人だけ分かればよい」とでも言わんばかりに不親切に書かれたものが多いため、次第に社会から離れていっているように思えます。昔から南北関係は政権固有の、大統領固有の、専門家固有のマターとして扱われてきました。だからこそ、このニュースレターが重要であると思います。

 それでは気を引き締めて本文に進みます。

◎政府機関が北朝鮮の外貨収支の推定値を算出

 韓国の情報機関『国家情報院』傘下のシンクタンク『国家安保戦略研究院』は3日、「対北制裁以降の北韓外貨収支推定2:不法的な取引収支および総合収支(2017~23)」レポートを発表しました。

 タイトルからも分かるように、このシリーズとしては二作目になるもです。「合法的な取引の収支」を扱った一作目は今年5月に同院から発表されています。

 一作目の結論は「国際社会による経済制裁が本格化する以前の00年から16年までの間の北朝鮮の取引収支はプラス55.9億ドル、年平均3.3億ドルの黒字であったが、17年から23年までの累計はマイナス82.5億ドル、年平均11.8億ドルの赤字であった」というものです。

 一方、二番目の本レポートでは「不法的な取引の収支」を扱っています。

 結論から言うと「北朝鮮は不法的な取引を通じ、17年から23年まで合計でプラス57.5億ドル~62.9億ドルの黒字を上げている」というものでした。数値の差は、23年7月から始まったロシアへの武器輸出額を含めるか否かによるものです。

報告書の表紙。筆者キャプチャ。

報告書の表紙。筆者キャプチャ。

***

 どんな内容なのでしょうか。報告書は24ページと短いものであるため、私も読んでみました。

 不法な収入は、以下のように分類されます。

 ▲サイバー外貨稼ぎ(ハッキング)、▲海外への労働者派遣、▲石炭の密輸出、▲精製油の密輸入(支出に相当)、▲武器取引、▲漁業権料、▲金の密輸出、▲送金、▲外交官の不法収入、▲麻薬・偽造紙幣・タバコ、▲海外でのレストラン経営、▲海外での建設および銅像建設

 比較のため、一作目の報告書から合法的な収入の項目も引用してみます。

 ▲無償援助、▲譲許的借款、▲直接投資、▲資本支出(支出に相当)、▲対外貿易、▲外国人観光、▲用船・運送・再保険、▲領空通過、▲羅先特区・常駐国際機関、▲カジノ

 不法な収入の中で、金額が大きい順に並べると以下のようになります。いずれも17年から23年にかけての合計です。

 1位:石炭の密輸出。21.5億ドル

 2位:海外への労働者派遣。17.5億ドル

 3位:サイバー外貨稼ぎ(ハッキング)。13.5億ドル

 4位:精製油の密輸入。11.8億ドル ※支出

 5位:金の密輸出。7億ドル

 6位:漁業権(入漁料)。6.1億ドル

 7位:武器取引。5.4億ドル

 レポートを作成したイム・スホ研究員は、それぞれの項目の算出根拠などをしっかりと提示しているのですが、これをすべて引用すると膨大なものになるので、本項では省略します。

その代わりに、上記7項目の特徴をかいつまんでお伝えします。

***

(1)石炭の密輸出 / (4)精製油の密輸入

 石炭の密輸出は中国を中心にロシアに対しても海路を用い行われています。本報告書では、石炭と精製油(ガソリン、軽油)の密輸量は19年をピークに新型コロナ拡散により減少した後、23年に再び急増したとしています。

 なお、物量については最大値を適用している上に、制裁によるリスクプレミアム(この場合は価値の引き下げ)を考慮する場合、石炭の密輸出価格が減る可能性があるとしています。

(2)海外への労働者派遣

 ここではIT分野の高級労働者と、一般労働者を分けて統計をまとめています。

 IT分野では23年現在、中国に約2000人、ロシアに約500人、東南アジアに約500人(ラオス150人)が勤務しているとします。収入については中国では23年に月3500ドルなどと推定し、17年から23年の間に約4億ドルを得たとしています。

 続いて、縫製・建設・木の伐採などの労働者についてです。中国には現在3万から12万人の労働者がいると推定しながらも計算上では3万人としたそうです。ロシアは17年に3万1500人、21年に3200人でしたが、22年以降は800人として計算しています。月給は中国では524ドルを想定しています。

 この分野で13.6億ドルを得たこととなり、合計で17.5億ドルとなるのですが、傾向としては中国での労働者が増え続けている一方で、今後はロシアに派遣される労働者が急増する可能性があるとしています。

(3)サイバー外貨稼ぎ(ハッキング)

 13.5億ドルのうち13.4億ドルが暗号通貨(ビットコインなど)のハッキングとのことです。法定貨幣については15年以降、15億ドルをハッキングしようとしたものの、最終的に成功したのは約0.4億ドルに過ぎないとしています。

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