【デイリー・コリア・フォーカス】26年2月19日号

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徐台教 2026.02.19
誰でも

皆さまアンニョンハセヨ。

韓国から徐台教が「デイリー・コリア・フォーカス」2月19日号をお送りいたします。

韓国は今日から平日です。また、様々なニュースがあふれ出てくるでしょう。

何より今日は、尹錫悦全大統領の「内乱の頭目」裁判の一審判決があります。どんな結果になろうと、今晩はその内容で持ち切りとなるのは間違いありません。

今日の目次です。

1. 「戒厳を乗り越えた」韓国市民、ノーベル平和賞候補に
2. 日本の対トランプ「初投資」に焦る韓国
3. 韓国政府が「北朝鮮へのドローン」に公式遺憾表明
4. 今日の時事韓国語「비상계엄」

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1. 「非常戒厳を乗り越えた」韓国市民、ノーベル平和賞候補に

まさに尹錫悦氏による非常戒厳と関連する話です。

私は著書『分断八〇年 韓国民主主義と南北統一の限界』の中で、24年12月3日の非常戒厳を約6時間という早期に終わらせるにあたり、重要な役割を果たした4つのアクターを挙げました。

国会議員、国会事務処・国会議員補佐陣、抗命した軍、そして市民です。

特に市民は早くから「決戦の場」となった国会に集結し、戒厳軍に対する大きな圧力として機能しました。国会前を囲み、その動きを監視すると同時に、軍の動きを身体を張って止め、その過程で「非常戒厳の正当性の無さ」を戒厳軍に伝える役割をも果たしました。

また、非常戒厳解除決議に向け動く国会内部に対しても、勇気を与えました。その働きは、25年4月4日、尹錫悦の罷免を決めた憲法裁判所の決定文にこう書かれている通りです。

「被請求人(尹錫悦)による国会の統制などにもかかわらず、国会が迅速に非常戒厳解除要求決議案を可決することができたのは、市民たちの抵抗と軍警の消極的な任務遂行のおかげであったもので(後略)」

昨年9月末に出た本ですが、SNS上での知名度の割には売れていません。地元の図書館などにリクエストしていただけると大きな支援となります。

昨年9月末に出た本ですが、SNS上での知名度の割には売れていません。地元の図書館などにリクエストしていただけると大きな支援となります。

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その市民たちが、今年度のノーベル平和賞にノミネートされたそうです。18日、リベラル系日刊紙『ハンギョレ』を皮切りに各紙が伝えています。

これらの報道によると、ソウル大学政治学科のキム・ウィヨン教授をはじめ、バレンシア大学(スペイン)政治学部のパブロ・オニャーテ教授、ダブリン大学(アイルランド)のデビッド・ファレル教授、グアダラハラ大学(メキシコ)のアズール・アギアル教授の4人が、今年1月、ノーベル委員会に「韓国の市民全体(Citizen Collective)」を平和賞候補として推薦したそうです。

いずれも世界各地の政治学会で、前・現職の会長を務める人物たちとのことです。

彼らは非常戒厳に立ち向かった(ハンギョレの記事では「阻止した」と表現)市民の努力を「光の革命」と評し、候補として推薦したそうです。

この表現は、若者女性を中心とした市民がアイドル応援棒を持って、尹錫悦の弾劾を求め続けたシーンを象徴し、韓国で使われています。

応援棒を手に、尹錫悦氏の弾劾を求める市民。24年12月10日、徐台教撮影。

応援棒を手に、尹錫悦氏の弾劾を求める市民。24年12月10日、徐台教撮影。

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ハンギョレによると、キム教授はノーベル委員会に30ページの説明資料も提出したとのことです。この中にはこう書かれているそうです。

「2024年12月から2026年初頭まで、韓国社会は不法な非常権限の行使により触発された深刻な憲法的な危機に直面したものの、法治と市民の参与、節制された非暴力に基づき、内戦や大規模な弾圧、国際的な葛藤の拡散もないまま、憲法秩序を復旧させた」

この一文からは、24年12月3日の非常戒厳当日だけでなく、その後の尹錫悦の弾劾を求める平和的な集会、そして25年6月の大統領選による秩序だった政権交替までを含めた過程を支えた存在として、市民が位置づけられているのが分かります。

受賞者の発表は今年10月とのことです。

尹錫悦に一審判決が出る日にふさわしいニュースということで、ニュースレターのトップに持ってきました。

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2. 日本の対トランプ「初投資」に焦る韓国

18日、地上波テレビ『SBS』は20時からのメインニュース番組のトップで、日本政府による第一号となる対米投資の内容を詳細に報じました。

今回の投資金額は昨年9月に合意した5500億ドル(約85兆円)のうち、360億ドル(約5兆5000億円)分です。

既に日本メディアでも伝えられているため簡略に書きますと、まず、テキサス州で「原油を陸上から海上の船まで輸送するプロジェクト(朝日新聞)」があります。SBSによると、年間200~300億ドル規模とのことです。

次に、オハイオ州でのガス火力発電です。やはりSBSによると「最大規模の発電施設」とのことです。朝日新聞によると「ソフトバンクグループが進めるもので、AI(人工知能)向けデータセンターなどに電力を供給する」目的とのことです。

最後に、ジョージア州での産業用ダイヤモンド(人口ダイヤ)製造施設です。これまた朝日新聞によると、この物資は「半導体の製造工程などに使われる重要物資」であり、この施設が完成する場合、「日米が中国から輸入している分の75%を賄えるようになる」ということです。

対米投資を伝えるSBS。「なんか意地悪やなあ」な写真です笑 SBSニュースをキャプチャ。

対米投資を伝えるSBS。「なんか意地悪やなあ」な写真です笑 SBSニュースをキャプチャ。

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韓国メディアがこうして大きく報じる理由は、日本の投資決定が韓国にも影響を及ぼすからです。

今年1月26日、トランプ大統領が突如、関税をふたたび25%に引き上げると発表しました。米韓は昨年11月に関税15%への引き下げで合意済みでしたが、その条件となる対米投資が遅れていることが理由でした。

こんな中、日本の「スピード」が韓国にとっては「負担」として作用する現状があります。韓国では関連法を議論している最中で、法の成立は早くとも2月末となる見通しです。

いつ25%へと引き上げられるのかが分からない中、法の成立を待たずに第一弾の投資先をとりあえず決めようという動きが政府内に存在するほど、焦っている状況です。

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なお、産業通商部と財政経済部により構成された韓国の実務代表団が18日、米国に向け出発しています。

SBSによると、この代表団は投資先の協議を行うとのこと。投資先としては、ルイジアナ州の液化天然ガス(LNG)プロジェクトが検討されているそうです。

シェールガスの輸出インフラを構築するもので、韓国がLNG運搬船建造シェアの多くを占めていることから、相乗効果が期待されているとのことです。

3月には高市首相が訪米します。日本政府は、ここで第二弾のプロジェクトが発表されると匂わせています。韓国政府としては、それまでに第一弾を決める必要があるでしょう。

投資先を決める最終決定権は米国にあります。日本により倍加したこの「焦り」が、韓国にとって不利にはたらく可能性があります。なかなか厳しい状況といえます。

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3. 韓国政府が「北朝鮮へのドローン」に公式遺憾表明

「政府はとても厳重に認識しており、北側に対し、公式的な遺憾を表するものです」

18日、鄭東泳(チョン・ドンヨン)統一部長官が会見を開き、韓国が朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)へドローンを飛ばしたことに対し、政府として公式に遺憾を表明しました。

日本のNHKにあたる地上波『KBS』が、21時のメインニュースのトップで報じています。

鄭東泳長官は今月10日にも「深い遺憾」を表明していますが、これはあくまで、明洞聖堂で行われた「民族の和解と一致を求めるミサ」の中でのもの、つまり個人的な発言に近いものでした。

今回の遺憾表明は、鄭長官みずから「安全保障関係長官の懇談会で決まった政府の公式の立場」というように、李在明政権としてのものです。

鄭長官はさらに、遺憾表明の対象に、尹錫悦政権時に行われた北朝鮮への「ドローン浸透作戦」をも含めています。

「尹錫悦政府のドローン浸透に対し、李在明政府の統一部長官として北側に深い遺憾を表します」と鄭東泳氏は述べています。KBSをキャプチャ。

「尹錫悦政府のドローン浸透に対し、李在明政府の統一部長官として北側に深い遺憾を表します」と鄭東泳氏は述べています。KBSをキャプチャ。

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鄭長官はまた、李在明政権になって以降、韓国から北朝鮮にドローンを飛ばした回数が四度にのぼるという新事実を明かしました。

朝鮮人民軍が今年1月に発表したような、昨年9月と今年1月に加え、昨年11月に二度、韓国からドローンを飛ばしたというものです。

いずれも、軍の諜報機関から資金援助を受けたとされる民間人が飛ばしたもので、昨年9月と今年1月は北側で撃墜されたものの、11月の二度の飛行は韓国へとドローンが戻ってきたそうです。

そして韓国政府として、再発防止のために『9.19南北軍事合意』の復元を先制してまず韓国側ら行う姿勢を、改めて明かしました。18年9月に南北が合意したもので、尹政権下で効力停止となっていました。

同合意では、飛行禁止区域を定めています。これを韓国から先に復元し、敵対的な姿勢がないことを改めて示すものです。

鄭長官は「適切な時点に(発表する)方針は決めている。関係部署間で十分な協議と調整が行われた」と明かしています。これは、軍とも調整が終わっていることを示すものです、おそらく、党大会後に発表するものと見られます。

同合意で定められている「空中敵対行為中断区域」。固定翼、回転翼、無人機、気球を飛ばさないBuffer zone(緩衝地帯)として設定されています。同合意の全訳は下記リンクをご参照ください。

同合意で定められている「空中敵対行為中断区域」。固定翼、回転翼、無人機、気球を飛ばさないBuffer zone(緩衝地帯)として設定されています。同合意の全訳は下記リンクをご参照ください。

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北朝鮮では、金正恩氏の妹である金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党中央委員会副部長が韓国に対し、謝罪と真相究明、再発防止を求めています。

今月12日には、先述した10日の鄭長官による遺憾表明を「公式」と名指しし一定の評価を与えましたが、18日の再度の遺憾表明は韓国政府にとって「ダメ押し」と言えるでしょう。

その意図について、開催が直前に迫った朝鮮労働党の第九回党大会において、韓国に対する「敵対的二国家論」が党是として刻まれることをギリギリまで防ごうとするものと、韓国メディアは分析しています。

しかし現実的に、今回の遺憾表明が北朝鮮の路線に変化を及ぼすことはないでしょう。それでもこうせざるを得ない、韓国政府の苦悩が透けて見える会見でした。

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4. 今日の時事韓国語「비상계엄」

「ピサンケオム」と読みます。漢字では「非常戒厳」です。24年12月3日に尹錫悦大統領(当時)が宣布したものです。

今日はここまでです。

出先からの更新となりました。

なかなか焦るスケジュールです。

とにかく今日は、尹錫悦氏の一審判決があります。午後3時からです。

それではまた明日。

アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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