[37号 J-7]映画『破墓』、世界女性の日、韓国政治:曺国ふたたび、医療界と政府対立の‘本質’、コラムなど全7トピック
サポートメンバーの皆さま、アンニョンハセヨ。無事に日本出張から戻って参りました。久しぶりのニュースレター発行となります。お待ちいただきありがとうございました。
これからふたたび最低週2回の更新(水曜日は南北関係・朝鮮半島問題、金曜日はジャーナル形式+韓国政治・社会)を続けていきますので、改めてよろしくお願いいたします。他に単発記事も出していきます。
今号の目次です
1.巻頭コラム:大阪での節目の講演会を終えて
2.韓国政治:混迷の韓国総選挙、曺国(チョ・グク)ふたたび
3.韓国社会:韓国における世界女性の日
4.ショートニュース
(1)ソウル市長が李承晩記念館の建立を公言、高まる反対機運
(2)深まる政府と医療界の対立、その本質とは
5.カルチャー:映画『破墓パミョ』〜抗日映画とのこじつけ〜
6.あとがきに代えて
それではごゆっくりお楽しみください。
◎巻頭コラム:大阪での節目の講演会を終えて
約ひと月ちかく「どうやろうか」と四苦八苦していた講演会が、今月2日、無事に終わりました。普段から在日コリアンの人権問題をはじめ多文化共生といった分野で活発に活動している、大阪の『コリアNGOセンター』さん主催「朝鮮半島のいまを読み解く市民セミナー」で講師を務めました。会場に約80人、オンラインで50~60人の方々が聞かれたようです。
会場の様子。コリアNGOセンターさんの写真を使わせていただきました。
私にとって今回の講演会は、単なる集会ではありませんでした。その間ずっと温めてきた内容を世に問う意味があったからです。それは「韓国は朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)を国として認めるべき」というものでした。
はて、と思われる方が多いと思います。韓国は現在、北朝鮮を国と認めていません。両国は1991年の『南北基本合意書』により「南北双方の関係は国と国との関係でない、統一を指向する過程で暫定的に形成される特殊関係であることを認める」としています。
過去のニュースレターでも度々言及してきたように、この枠組みの元となっている「南北は同じ民族で統一を志向する」という前提を、昨年末に金正恩委員長は否定しました。広義には1948年の南北両政府樹立時から、狭義には1991年から南北関係を規定してきた「統一」の終わりでした。
今回の講演会における私の主張は、いわばこうしたパラダイムの終わり、転換を受け(もちろん金正恩氏の主張が今後くつがえる可能性が小さいながらもあります)、次の30年を見通すものでした。
それではいったい、こう主張する根拠はどこにあるのでしょうか。私は講演会でその理由を四つ挙げました。
一つ目は「韓国がこれ以上発展できない」という点でした。南北分断の悪影響は韓国社会全体を蝕んでおり、南北の「対立」と「対話」を境界とする政治陣営の分断が固着したことで、政治の機能不全が起きているというものです。
二つ目は「このままだと戦争が起きる」というものです。南北両政府は現在、互いの存在を真っ向から否定し、対話の相手と認めていません。その先に何があるのかは、1948年の南北両政府樹立が1950年の朝鮮戦争につながった歴史が雄弁に語っています。