【デイリー・コリア・フォーカス】26年7月10日号

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徐台教 2026.07.10
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

今日は7月10日、金曜日です。やはり全国各地で、散発的に強い雨が続いているようです。テレビニュースではかなりの時間を割いて、全国の様子を映しています。

「ソウルだけ、首都圏だけ」という批判を受けないよう、地方(韓国メディアではこの言葉をもう使いません。今は「地域」と言い換えています)の様子もしっかり報じています。

今日は午前から母の病院で長居をしてしまった上に、この後、ソウルで用事あるため、ニュースレターを書く時間があまりありません。

昨日の続きをお伝えして終わろうと思います。

1. 南北関係を考える2本の韓国識者コラム(下)‘二つの国家’と分断体制の例外性

今日紹介するコラムは、国策シンクタンク・統一研究院の洪珉(ホン・ミン)先任研究委員によるものです。安全保障の専門家として、韓国メディアに引っ張りだこの人物です。

洪委員のコラムは、以前も紹介したことがあるのですが、いつもやや難解です。7月6日の京郷新聞に掲載された今回のものも例に漏れず…といったところです。それでも非常に重要な視点を含んでいるので、一緒に見て行きましょう。

コラムは7月6日、京郷新聞に掲載されました。クリックで該当ページに飛びます。

コラムは7月6日、京郷新聞に掲載されました。クリックで該当ページに飛びます。

まず書き出しからして、「韓半島の分断体制の本質的な属性は‘例外性’にある」と難解です。どういうことでしょうか。

洪委員は「南北関係を規定する私たちの視線は、矛盾した四つの層位で絡まりあっている」と指摘します。そして、具体的には以下の内容を挙げています。

(1)韓国にとって北韓は停戦協定上の交戦相手国である、

(2)憲法上(訳注:憲法3条)では修復(領土回復)の対象である、

(3)国家保安法上では反国家団体であると同時に、南北関係発展法の上では交流・協力のパートナーである

(4)南北基本合意書では‘統一を志向する特殊関係’であるが、国際法的には厳然たる別の国家である

確かに、矛盾していますよね。ある枠組みではパートナーですが、別の枠組みでは敵であるという形です。

***

洪委員はこの状態を「模糊とした状態」と表現します。曖昧であるというのです。そして、この土台の上に「例外状態」が築かれているとします。

「例外状態」とは聞きなれない言葉です。イタリアの哲学者ジョルジョ・アガンベンによるものと紹介があります。

その上で朝鮮半島の南北分断にこれを当てはめ、以下のように説明します。

「臨時的な非常状態が常時的な規則になり、法の内と外、規範と事実、合法と不法の境界が入り乱れた状態が分断という名前で、70年以上恒久化されている」

つまり、本来は臨時体制であるはずの停戦体制が、長きにわたって秩序となる過程で、様々な矛盾が生まれているということです。

これについて洪委員は、「(互いに)相手を除去と吸収の対象であると同時に、特殊な管理の対象に設定した臨時体制が、正常な秩序として固まった」と整理しています。

ここまでがコラムの序論です。

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確かに、朝鮮半島の分断80年のあいだ、上記の四つの枠組みの中で動いてきました。ある時には対立が上位になり、ある時はパートナーとしての交流が上位になるといった形です。

さらに、停戦状態という、本来は終戦・平和という秩序に置き換わるはずだった臨時的な状況が、今や「ノーマル」になってしまった点が、まさに「例外状態」に当てはまるのでしょう。

しかし洪委員は、「北韓が主張する‘敵対的な二国家’は、こうした例外状態からの選択的な離脱であり、金正恩式の実用主義の発現として読み解くべき」と主張します。

洪委員はこう続けます。

「北韓は分断という例外状態を維持することが、これ以上、国家の利益に会わないと判断したようだ。南北の国力と国際的な位相(地位)の格差が、取り戻せないほど広がった状況で、特殊関係と停戦体制の臨時性を支えるには、莫大な政治的なエネルギーが消耗される」

そして、朝鮮による二国家という主張の背景をこう読み解きます。

「体制競争と対話のストレス、韓・米・日の軍事協力強化の名分など、臨時性の費用は北韓に不利な形でひたすら積み重なって行く。非核化という枠組みの根元からの遮断、南・北・米という3者構図の解体、韓国の当時者としての地位からの排除、そして吸収統一の恐怖からの解放まで、体制の生存に向けた緻密な計算が元にある」

つまり、朝鮮は色々なしがらみから抜け出すために、「二国家」を選択したというのです。

洪委員は「‘敵対’という修辞の裏には、互いに混ざり合うのはやめようという断念と、徹底した断絶を通じた安定の追求が存在する」と説明します。

最近になって朝鮮は南北軍事境界線沿いの防御を強化していますが、これについても「停戦体制を事実上の国境管理システムに変換しようとする、例外状態を北韓式に変換しようとする試みだ」とするのです。

洪委員は2023年12月から続く、こんな一連の朝鮮の変化について、「(北韓は)曖昧さを取り除き、確定された境界の上で、抑止力を整備するという意味」と読み解いているのです。

***

コラムの最後の段落では、韓国の対応について触れています。

癌細胞に例えて説明しているのですが、一般的に癌細胞が発見される場合に、状態を精密に診断し、適切な治療法を探すことが常識であるとします。

しかし今の韓国はまるで、「患者が‘私は癌を認めることはできない」という宣言を繰り返している状態だというのです。

「敵対的な二国家論と核の高度化という現実の悪化を診断し、新しいアプローチを提案する声を‘統一の放棄’と受け止め、統一・非核化・対話という原則だけを繰り返す古い枠組みがこれに当たる」と説明しています。

これは実際に韓国内で起きている反応です。金正恩氏の敵対的二国家論について、「これに惑われてはならない」という声が、政界では今なお最も強い力を持っています。

洪委員はその上で、「癌患者であることを認めよう」と呼びかけます。

発病以前に持っていた生活習慣は、治療の役に立たないとし、「診断と処方に合った、新しい国家安保体系を構築し、戦略的な抵抗力と健康性を回復することが急がれる」と主張するのです。

***

一方で、韓国内でも南北分断が影響を及ぼしてきたとします。

過去には国家権力が分断を権力強化のために活用してきましたが、これは今や「破片化した陣営政治、収益を追い求める1人メディア、極端なアルゴリズム」といった形と癒着し、「嫌悪(憎悪)ビジネスとなっている」と指摘します。

韓国内でもまた、例外状態を利用してきたということです。

先述したような朝鮮側の「脱特殊関係戦略」と、韓国内のこうした状態が相まって、複雑な再編過程に突入しているというのが洪委員が見る、こんにちの朝鮮半島のようです。

洪委員は今後について、「北韓の変化を直視する冷静な目」と「韓国内の矛盾の省察」が必要だと説きます。

その土台の上に「東北アジアの平和的な共存を設計し、主導的な戦略的安全性を確保する、国家的な体質改善に進むべき」と助言し、コラムは終わります。

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いかがでしたでしょうか。このコラムの肝は、これまでの南北分断が「例外状態」であったと認め、その先の関係性について考え直そうというものです。北側は既に考えて結果を出しているが、韓国はまだこれからだ、というところでしょう。

洪委員は6月のシンポジウムでもこの話をしていました。「例外状態」という言葉は強く印象に残りましたが、改めて読むとしっくりくる概念でした。

***

2. 今日の時事韓国語「호우」

「ホウ」と読みます。漢字では「豪雨」です。各地で被害が出ないよう願うのみです。

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今日はここまでです。

これからソウルに向かうのですが、お目当てはジャーナリスト・安田浩一さんの講演です。

18時55分から下記YouTubeリンクで中継されるそうなので、お時間ある方はぜひ。タイトルは「嫌悪は日本をどうダメにしたのか」です。ここでの嫌悪はヘイトのことですね。

それではまた月曜日にお送りします。なお、母は順調に回復しております。たくさんの励ましのお言葉に感謝いたします。

いつもありがとうございます。クラウドファンディングもよろしくお願いいたします。

アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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