【デイリー・コリア・フォーカス】26年5月25日号

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徐台教 2026.05.25
誰でも

皆さま、アンニョンハセヨ。

5月25日、月曜日です。韓国は今日、潅仏会の振替休日です。ソウルのカフェから「デイリー・コリア・フォーカス」をお送りいたします。

今日は久しぶりに妻方の家族親族の集まりがありました。けっこうな数の方たちが来て、中には知らない方も。賑やかな会で疲れましたが、こういうのはやはりいいですね。日本の親戚が恋しくなりました。

今日の目次は以下の通りです。

1. 李大統領「ネタニヤフ逮捕を判断」発言の読み方(下)韓国社会の受け止めと課題
2. 今日の時事韓国語「북측」

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1. 李大統領「ネタニヤフ逮捕を判断」発言の読み方(下)韓国社会の受け止めと課題

前回22日のニュースレターで、5月20日の国務会議(閣議)での李在明大統領の発言を細かく見ました。SNSでシェアしたところ、「日本では自己責任論で片付けられてしまうところ」という反応がいくつかありました。

今回イスラエルにだ捕された船団に加わった韓国人2人が、韓国政府から渡航しないよう勧告を受けていたことから、日本で同じようなことが起きていた場合、韓国と違った形になっただろうという指摘です。

果たしてどうでしょうか。この点を判断するためにも、韓国社会の反応を見ていきます。

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まずは各紙社説からです。いわゆる五大日刊紙のうち、ハンギョレを除く四紙でこの話題を取り上げています。

保守紙「朝鮮日報」では、5月22日付けの社説「青瓦台『国民の生命が最優先』、北に抑留された7人は例外か」で言及しました。

朝鮮民主主義人民共和国(以下、朝鮮)には現在、7人の韓国人が抑留されています。

いずれも金正恩氏が父の跡を継いだ2011年12月以上に身柄拘束されたケースで、このうち4人は脱北民出身です。彼らが現在どこにどう抑留されているのか、今なお不明なままです。

社説では昨年末の外信メディア向け記者会見の席で、李大統領自身がこの出来事を知らず、知った後にも何も措置を取っていないと指摘しているのです。

イスラエルに逮捕され抑留された韓国国民が釈放されるや、青瓦台(大統領府)は「わが国民の生命と安全は何よりも重要で、国家と政府の存在理由であるということが李大統領の平素からの原則であり哲学だ」と明かしています。

同紙はこの文句を引用しながら、「同じ原則を北韓に抑留されたわが国民にも同じように適用しているのか、尋ねざるを得ない」と追及しました。

保守紙ならではの指摘で、一理ある内容とはいえ、「イスラエルのネタニヤフ首相の逮捕を検討しては」という李大統領の言及に対する論評としてはややピント外れでした。

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同じ保守紙の「東亜日報」は22日付けで「『ネタニヤフの逮捕を検討』…‘突然の案件と生中継’という続くリスク」という社説を掲載しました。

今回は抑留されていた2人が早期に釈放され、イスラエル外交部が4月の場合と異なり反応しなかったからよかったものの、生中継される国務会議で、李大統領が敏感な外交上の懸案に言及すること自体が「外交関係での危険要因となり得る」と指摘しました。

特に今回、青瓦台の参謀(安保室長など)が慎重な答弁をしたにもかかわらず、李大統領が話し続けた点を問題視しています。「イスラエルは今回の事を忘れないだろう」と不気味な(?)予想をしていました。

もう少し見ましょう。保守紙「中央日報」では21日付けで「外交での波紋が憂慮される、イスラエルに関する大統領の発言」という社説がありました。

自国民が逮捕されたことに対する対応は必要であるとしながらも、李大統領の発言は内容の妥当性にかかわらず波紋を呼ぶ可能性があると、自重を求める論調でした。

ICC(国際刑事裁判所)の125の会員国の大部分も、イスラエルとの関係を考慮し、逮捕上執行についての立場を明かしていないという内容もありました。

これは李大統領の「欧州のほとんどの国家では逮捕令状を発布し、自国にネタニヤフが来たら逮捕すると発表したでしょう。欧州の大部分の国でそうしませんでしたか?」という発言と矛盾します。

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事実整理をするとまず、ICCはネタニヤフ首相への逮捕令状2024年11月に発付しています。ガザ地区への攻撃で死傷者が多く発生したことが、戦争犯罪であり、人道に反する罪であると認められたためです。

「中央日報」の別の記事によると、欧州連合(EU)は現在「ICCの決定は全てのEU会員国への拘束力を持つ」としており、フランスとイタリア、オランダ、スイス、オーストリアなどが賛同の意を示しているとします。一方で、英国と米国はICCの決定に従わないとしています。

20日の国務会議で発言する李大統領と魏聖洛国家安保室長。KTVをキャプチャ。

20日の国務会議で発言する李大統領と魏聖洛国家安保室長。KTVをキャプチャ。

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最後に、京郷新聞の22日付け社説、「李大統領のネタニヤフ批判、言ってはならぬ事ではない」を見てみます。

その内容は李大統領の発言に対し「外交的にはやや厳しく映るかもしれないが、戦争狂としか言えないイスラエルの行動を前には、言える内容であり、言わなければならない言葉だと思う」と評価しています。

さすがリベラル紙といったところです。

さらに「イスラエルは米国の盟邦であり、韓国とも自由貿易協定を結んだ国だ。李大統領の発言により、両国関係が悪化するか憂慮する視線も、『逮捕令状の執行検討』の実効性に疑問を提起する者たちもいる。しかし、フランス・イタリア・ドイツ・英国など22か国が抗議し糾弾したように、イスラエルの今回の行状は一線をはるかに越えている。それにもかかわらず何も言えないのならば、国際社会の責任ある一員であり、堂々たる主権国家と言えるのか」と論陣を張りました。

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私もまたこの主張に同意するものですが、一方で、依然として李大統領の問題提起のやり方には疑問を持っています

覚えていらっしゃる方も多いと思いますが、前回4月、李大統領がXを通じイスラエル批判をした際、私はこれに批判的でした。

▲メッセージが整頓されていないこと、▲外交的な準備ができていないこと、▲前例(大統領がSNSで言葉を吐き出すことのマイナス効果)から学んでいない、というのがその論拠です。

今回の李大統領の発言は、舞台がSNSから国務会議(生中継の)に移っただけど、本質的は4月の場合と変わりません。

必要な発言内容であったことに疑いはありませんが、4月のケースから何も学んでいないことが明らかになった出来事でもあったということです。

それでも韓国内の反応は4月よりも静かです。

イスラエルが一貫して非人道的な行動を続けていることが大きい上に、2人の韓国人が早期釈放される成果を得たこと、さらに李大統領のスタイルに対するある種の「慣れ」もあるでしょう。

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今回の件に関し、いくつかFacebookで識者の見解を見ていたところ、興味深いコメントがあったので、これを引用し、記事のまとめとします。

林宰成(イム・ジェソン)弁護士によるものです。

ベトナム戦争における韓国軍による民間人虐殺事件において、被害者側の代理人を務め、さらに日本企業との間での元徴用工裁判でも被害者側の代理人を務める、韓国の代表的な人権弁護士です。

林氏は21日の書き込みの中で、李大統領の発言が「オーバーで、突発的なものである」としながらも、「正当で適法である」と評価しました。

「正当で適法」とはどういうことでしょうか。もう一度、李大統領の発言を振り返ってみましょう。

李大統領は「欧州のほとんどの国家では逮捕令状を発付し、自国にネタニヤフが来たら逮捕すると発表したでしょう」とし、「私たちも判断してみましょう」としました。

この発言に対し、林氏は「実際に逮捕令状を発付した国は無い」とし、「入国したら逮捕すると意思表示した国は20あまりある」と指摘しました。

その上で「『(韓国)国内に入ってくる場合、ネタニヤフを逮捕する』というのは、オーバーではあるが、既に存在する法的な義務の履行を確認することである」とし、「韓国の捜査機関の独自の判断で緊急逮捕をすることができる」と結論づけ、韓国外交部がそのように公表することができるとしました。

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同氏はしかし、この「逮捕宣言」よりも先駆けて行うことがあると主張します。それは「イスラエルに対する武器輸出の中断」です。

4月22日のニュースレターで取り上げたように、2025年、韓国は世界4位の武器輸出国です(24年は8位)。

そして韓国の独立メディア「ニュースタパ」が24年11月に報じているように、ガザへの攻撃を行っている間の23年10月から24年9月まで、イスラエルに武器弾薬90万ドル以上を輸出しています

林氏も「昨年10月から5か月の間、最低でも18億ウォン(約2億円)の武器類をイスラエルに輸出した」と指摘しています。

そしてこれを中断することこそが「最も象徴的な措置で、多くの国が行っていることで、援用できる国際社会の決定も多い」と、政府に呼びかけました。

このように「できる事からやる」という視点は、とても大事だと思います。今後、イスラエルに対する韓国の外交姿勢が実際に変わって行くのか注視したいところです。

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2. 今日の時事韓国語「북측」

「プッチュッ」と読みます。漢字では「北側」となります。

先日、私も観戦したアジア女子チャンピオンズリーグ。23日に決勝戦が行われ、朝鮮の「ネゴヒャン女子蹴球団」が優勝しました。

試合後の会見で同チームのリ・ユイル監督に対し、韓国のある記者が「北側、北側の女子サッカーが以前からとても水準が高いです」と述べ、質問を続けようとしたところ、リ監督は「あの人の質問は受けません」と拒絶し、そのまま席を立ったのでした。

結局、会見は終わり、選手達もひと言も述べないまま帰国しました。

「ネゴヒャン女子蹴球団」の優勝を伝えるバナー。中央の水色の男性がリ監督。アジアサッカー連盟(AFC)のXより引用。

「ネゴヒャン女子蹴球団」の優勝を伝えるバナー。中央の水色の男性がリ監督。アジアサッカー連盟(AFC)のXより引用。

果たしてどう聞くの正解だったのでしょうか。ちなみに「北側」というのは、蔑称ではなく、南北間の対話で正式に採用され、長年使われてきた用語です。

「朝鮮」と呼べば返事を得ることができたのでしょうか。次の機会があれば試してみたいものです。

なお、韓国記者協会は1995年に制定した(2017年に改定)『平和統一と南北和解・強力のための報道・制作準則』の中で、「私たちは大韓民国(略称:韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(略称:朝鮮)に分かれた南と北の現実を認め、相互尊重と平和統一を準備する次元で、相手方の国名と呼称をあるがままに使うことを原則とする」と明かしています。

実際に「朝鮮」と呼んだ時に保守層から起きる大きなバッシング(ここ数年は記者への個人攻撃が増えています)を考えると、記者としては勇気がいることでしょう。いずれ誰かが先鞭をつけると思います。

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今日はここまでです。

数日内にいよいよ「コリア・フォーカス」を拡大するためのクラウドファンディングを始めます。

明日以降、ニュースレターで取り上げますが、韓国では今、例のスターバックスをめぐる騒動から、ヘイトスピーチや表現にどう対応するべきかが改めて話題になっています。

その答えとして「差別禁止法」という声があるのですが、この話題になるといつも日本のことが思い浮かびます。

例えば、韓国の差別禁止法と、日本のヘイトスピーチ解消法が交わる場所があり、それぞれの社会で起きている出来事から、それぞれが学べることがたくさんあります。

しかいこれは、一部の学者の研究の領域にとどまり、日韓の社会に共有されていないのです。この「もどかしさ」を長いあいだ抱えて記者生活をしてきましたが、これ以上はもう先延ばしできないと判断し、こんな記事を書くための体制を作ることを決意しました。

広くご支援を募る予定です。

朝鮮半島問題にしても然りです。

日本や世界のコリアン社会の視線が、朝鮮半島の南北政府に投げ掛ける意味はとても大きなものがあるのですが、十分に届いていません。新たな「コリア・フォーカス」は日本語、韓国語、そして英語で有意義な記事を配信する「公論の場」を目指していきます。

また改めてお知らせいたしますので、引き続きよろしくお願いいたします。

それではまた明日。アンニョンヒケセヨ。(徐台教)

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